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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,原告が,被告による商品名を「キューティーベアー  チャビー(ブラウン)」とする別紙5記載の商品(JANコード:4994372129154,被告商品1)及び商品名を「キューティーベアー  チャビー(ベージュ)」とする別紙6記載の商品(JANコード:4994372129161,被告商品2)の販売が,原告の商品の形態を模倣した商品を販売する不正競争行為(不正競争防止法2条1項3号)に当たるとして,不正競争防止法3条1項及び同2項に基づき被告商品の販売等の差止め及び廃棄を求めると共に,同法4条に基づき,1100万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年7月9日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 原告の商品と被告の商品は,こちらになります。別紙1から4が原告の商品(しゃべる熊のぬいぐるみ)で,別紙5と6が被告の商品(しゃべる熊のぬいぐるみ)になります。

 これに対して,大阪地裁第21民事部(谷さんの合議体ですね。)は,原告の請求をいずれも棄却しました。つまりは,形態を模倣したものじゃないよということです。

 何だか久々の判決の紹介です。それもそうですね。新年度,一発目のようですから。

 これを紹介したのは,え!,そうだっけ?そうじゃないんじゃないの~?!っていう所があったからです。

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,被告の商品が,原告の商品の形態を模倣した商品,と言えるかどうかです。

 ほんで,形態模倣の不正競争防止法2条1項3号は,こんな感じです。

他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

 商品の形態と模倣についても,定義があります。

この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。

この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。

 まあ,ですので,実質的に同一じゃないとダメで,これは判決などから,デッドコピーじゃないとダメって言われています。

 ところで,不正競争防止法って,意匠法と違って,創作を保護するものではありませんので,特段独自の創作であることは必要ないとされているのです。例えば,知財高裁が出来た当時の,知財高裁平成17年12月05日判決(カットソー事件)というのがあり,そこでは,「同号の規定によって保護される商品の形態とは,商品全体の形態であり,また,必ずしも独創的な形態である必要はない。」と判示されています。
 
 他方で,形態模倣の規定には,カッコ書きで,(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)とあるわけで,その形態をとらない限り,商品として成立しえないような形態については,そもそも形態模倣の「形態」から外れるようになっております。こういう所からしても,創作的なものを保護するのではなく,公益的な面があることわかります。つまりは,意匠法や著作権法ではなく,商標法(特に4条1項18号参照)に近いかなあって感じがします。

 そうすると,どうなるかというと,独自だとかありふれていないとかは,創作法(意匠法や著作権法)ではその創作物の本質みたいな話ですが,商標法や不正競争防止法では,独占不適とかの政策的な話にならざるを得ず,逆に言えば,明確に規定する必要があるわけです(今回のカッコ書きのやつとか,商標法の3条とか,ですね。)。
 ですので,仮に,こんなありふれた形態,まったく独自でない形態なので,保護したくないなあという場合は,明文規定のこれ!に該当するので,保護しないのだよ~♫ってきちんと言う必要があると思うのですね。

 さて,判決はどう言ったのでしょうか。

3 判旨
「 不正競争防止法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等を不正競争行為と定めるところ,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいい(同条4項),「模倣する」(同条1項3号)とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいうとされる(同条5項)。
  前記商品形態の模倣を不正競争行為と定める趣旨は,資金,労力を投入して新たな商品の形態を開発した者を,資金,労力を投入せず,形態を模倣することでその成果にただ乗りしようとする者との関係において保護しようとする点にあるから,前記不正競争行為が成立するためには,保護を求める商品の形態が,従前の同種の商品にはない新たな要素を有し,相手方の商品がこれを具備するものであると同時に,両者の商品を対比し,全体としての形態が同一といえるか,または実質的に同一であるといえる程度に酷似していることが必要であり,これらが認められる場合に,後者が前者に依拠したといえるかを検討すべきものと解される。 」

「 ア  前記(4)のとおり,原告商品1と被告商品1は,全体が毛で被われた動物の座った状態をかたどったぬいぐるみであり(共通点ア),首付近に設けられたリボンの形状及び色彩(共通点イ)や全身を覆う毛の色や巻の態様(共通点ウ)のほか,目の位置,形状及び色彩(共通点オ),口鼻の位置及び形状(共通点カ)に共通点が認められる。しかし,これらの点は,原告商品1の販売に先立って市場に存在した同種商品にも認められるものであり(乙1~9),これらの点が共通することを理由に,原告商品1の形態と被告商品1の形態が実質的に同一であるとすることはできない。
      イ  原告商品1では,口鼻部の突出が約30mm と比較的大きく,需要者は正面視及び側面視のいずれでもこの突出を容易に認識することができ,この点を捉えて,原告商品1を熊のぬいぐるみとして認識するものと思われる。ところが,被告商品1は,口鼻部の突出の程度が原告商品1と比べて元々小さいことに加え,顔部全体を毛が深く覆っているため,需要者において,正面視及び側面視のいずれからも,原告商品において熊であることを認識させる要素となる口鼻部の突出を容易には認識することができない態様であり,顔部全体が平坦な印象を与える。また,被告商品1の顔部は,目,口,鼻が長い毛である程度覆われているため,原告商品1を含め,熊のぬいぐるみとして一般に商品化されているものとは(乙1~9),異なる印象を与える。結果として,被告商品1の形態については,毛むくじゃらの種類不明の動物と認識しうるものではあるとしても,当然にこれを熊と識別しうるようなものではないといわざるをえない。
      ウ  被告商品1は,熊を意味する言葉(ベアー)を商品名に使用し,言語を再生する機能を有することから,外装等に接した需要者はこれを熊と認識するため,実質的に原告商品1と競合することが考えられる。しかしながら,不正競争防止法が形態模倣を規制する前記趣旨に照らすと,両者の同一性の問題は,商品に付された表示や商品の機能を考慮することなく,商品の形態それ自体の対比により,判断すべきものである。
      エ  原告商品1と被告商品1は,いずれも動物のぬいぐるみであり,その顔部は需要者が特に注意を払う部位であるが,そのような部位において特徴的な共通点が認められない一方で,上記のように需要者への印象を異にさせる差異が存在する以上,両商品を対比して,その形態が同一である,あるいは実質的に同一といえるほど酷似しているということはできない
      オ  以上によれば,原告商品1の形態において,従前の同種の商品にはない新たな要素は何であり,被告商品1がこれを具備しているか,あるいは,被告商品1が原告商品1に依拠するものであるかを論じるまでもなく,被告商品1が,原告商品1の形態を模倣したということはできない。」

4 検討
 何か変な判旨ですね。わざわざ規範の所で,従来の下級審判決にない「保護を求める商品の形態が,従前の同種の商品にはない新たな要素を有し,相手方の商品がこれを具備するものであると同時に」という規範を創作したのにも関わらず,実際のあてはめでは,従来のデッドコピーか否かだけを判断し,「従前の同種の商品にはない新たな要素は何であり」については,論じるまでもなく~なーんて言ってるわけですからね。

 こりゃ,完全に創作法的なものと誤解をしていますね~,裁判官達が。創作法では,同一性の議論と,ありふれているものかの議論は,渾然一体となるものですが,商標法とか不正競争防止法とかでは,全く別異の議論になります。

 つまりは,規範のところに,「従前の同種の商品にはない新たな要素」というのをくっつけたのがそもそもおかしかったわけです。この要件は,明文のカッコ書き(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)で,判断すればよいことです。

 これが何故カッコ書きになったか,恐らく,裁判官らは知らないんじゃないですかね。
 平成17年改正法でこうなったのですが,その前は,「当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く。」とあったわけです。今回の要らん要件とよく似ていますね。
 改正法で今の条文になっても,以前除外されていた形態はそのまま除外されることに変わりなんかありません。

 本件では,同種の商品によくあるありふれた形態(モコモコした毛のぬいぐるみなんて,ぬいぐるみには不可欠な形態ですわな。)と思えば,カッコ書きで切ればいいし,同一性の方がねえなあと思えば,模倣じゃないとして切ればいいだけの話です。

 ですので~言いたいことはただひとつ,上手の手からも水が漏れる~♫分かり切ったことでも死ぬ気で調べんかこんバカタレが,コンメンタールを読みゃあ,誰でんがわかっちゃ。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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