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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 昨日,コメダ珈琲の件で,NHK等での報道がありました。

 結構びっくりしましたね。だって,結論が,仮処分の決定でしたからね。今まで,こういうトレードドレスの事件で,裁判所が明確に不正競争行為だとか商標権侵害だとか判断した例は無かったと思いますから,びっくりしたわけです。

2 事案はどこかのマスコミの記事で見てもらうとして,トレードドレスってやつが問題です。

 と言っても,トレードドレスって何らかの定義があるわけではありません。店舗の外装とか内装とか,あと,メニューとか商品の陳列とか,そういうぼんやりしたものを指すのだと思います。

 先例は3件くらいあります。

(1)まずは,ユニクロ事件でしょうか。
 ユニクロと,ダイエーの「PAS」のお店の外装とか内装とかが似ているとなって争われた事件です。これは,仮処分の申立てがあったようですが,その中で,和解が成立したらしく,詳しい内容がわかりません。

(2)つぎに,まいどおおきに食堂事件です。
 これは控訴審まで争われました。
 一審は,大阪地裁平成18年(ワ)第10470号(平成19年7月3日判決)です。一審は請求棄却でした。
 控訴審は,大阪高裁平成19年(ネ)第2261号(平成19年12月4日判決)でした。これも控訴棄却ですね。

 請求としては,「(1)主位的に,控訴人の営業表示として著名であり又は周知性を取得している「ごはんやまいどおおきに○○食堂」の文字から成る表示(以下「控訴人表示」という。)と類似する「めしや食堂」の文字から成る表示(以下「被控訴人表示」という。)を使用する被控訴人の行為が,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項2号又は1号の不正競争に当たると主張して,同法3条に基づき,被控訴人表示中の「食堂」の表示及び被控訴人表示が記載された看板並びにこれらと類似する表示及び看板の使用の差止め及び廃棄等を求め,(2)予備的に,控訴人表示を使用した控訴人が経営する店舗(以下「控訴人店舗」という。)の外観(以下「控訴人店舗外観」という。)は全体として控訴人の営業表示として著名であり又は周知性を取得しているところ,被控訴人表示を使用した被控訴人が経営する店舗(以下「被控訴人店舗」という。)の外観(以下「被控訴人店舗外観」という。)に控訴人店舗外観と類似する外観を使用する被控訴人の行為は,不競法2条1項2号又は1号の不正競争に当たり,仮にそうでないとしても,民法上の不法行為を構成すると主張して,主位的に不競法3条に基づき,予備的に民法709条による被害回復請求権に基づき,被控訴人表示中の「食堂」の表示並びに被控訴人表示が記載された看板,メニュー看板,蛍光灯及びポスターの使用の差止め及び廃棄等を求め」たわけです。

 ポイントは(2)の予備的請求で,店舗の外観が営業表示として著名だから,不競法2条1項2号(著名表示の冒用)に該当するという所ですね。

 そこで,控訴審は,「前記引用にかかる原判決の認定・説示のとおり(原判決第4・2(5)),控訴人店舗外観全体について周知性・著名性が認められるか否かはともかくとして,店舗外観全体の類否を検討するに,両者が類似するというためには少なくとも,特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似しており,その結果,飲食店の利用者たる需要者において,当該店舗の営業主体が同一であるとの誤認混同を生じさせる客観的なおそれがあることを要すると解すべきであるところ,双方の店舗外観において最も特徴がありかつ主要な構成要素として需要者の目を惹くのは,店舗看板とポール看板というべきであるが,いずれも目立つように設置された両看板に記載された内容(控訴人表示又は被控訴人表示)が類似しないことなどにより類似せず(前記(1)参照),かかる相違点が,控訴人店舗外観及び被控訴人店舗外観の全体の印象,雰囲気等に及ぼす影響はそもそも大きいというべきである。
 そして,前記イのとおり,外装については,木目調メニュー看板,ボード状メニュー看板,店舗脇に設置された幟,店舗内部のメニュー看板に,いずれも軽視し得ない相違点がある。
 内装については,①玉子焼き専用の注文を受けてから焼くコーナーであることを示す表示があること,②カウンターの上にカフェテリア方式の3列の陳列台が設置されていること,③目隠しバーの設置された横長の大テーブル及び吊り下げ式の長い蛍光灯が設置されていることが共通するものの,①については,このような営業形態は役務提供の方法そのものであり,かかる形態で注文を受ける旨の表示が共通することをもって営業表示が類似しているとして表示の差止めを認めうるとすると,上記の営業形態そのものについて控訴人に独占権を認める結果を招きかねず妥当でないし,②③については,セルフサービスを用いるなどした多集客型の飲食店の店構えとしてきわめてありふれたものであるから,上記各点を捉えて控訴人店舗外観と被控訴人店舗外観との類似性を基礎づける事情とすることはできない。」として,控訴棄却しました。

 ま,判決にはその外観の写真とか載っていないので何とも言えないのですが,要するに,似ていないよね!と判断したわけです。
 ただ,上記の判示のとおり,規範は明記されていますので,特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似して,混同のおそれもあるってことになる事例ならば,請求認容の可能性はあります。

(3)そして,西松屋事件です。
 これは一審で決着がついたのかもしれません。
 大阪地裁平成21年(ワ)第6755号(平成22年12月16日判決)です。

 請求は,「原告が被告に対し,原告店舗でベビー・子供服の陳列のために使用している別紙原告商品陳列デザイン目録記載1ないし3の商品陳列デザイン(以下「原告商品陳列デザイン1ないし3」という)。 は,主位的にはそれぞれ独立して,第1次予備的に原告商品陳列デザイン1及び2の組み合わせにより,第2次予備的に原告商品陳列デザイン1ないし3の組み合わせにより,子供服等の販売を業とする原告の営業表示として周知又は著名であるとして(以下,原告商品陳列デザイン1ないし3の商品陳列デザイン及び上記組み合わせにかかる商品陳列デザインを総称して「原告商品陳列デザイン」ともいう。),不正競争防止法3条1項(2条1項1号又は2号)に基づき,被告の特定店舗を対象として,被告が使用する商品陳列デザインの使用の差止めを求める事案」というわけです。

 つまり,商品陳列が,営業表示として周知等だから,不競法2条1項1号(混同惹起)に該当するんだ!という請求ですね。

 ほんで大阪地裁は,「(ウ) したがって,原告商品陳列デザイン1ないし3が顧客に認識記憶されるとしても,それは,売場全体に及んでいる原告店舗の特徴に調和し,売場全体のイメージを構成する要素の一つとして認識記憶されるものにとどまると見るのが相当であり,顧客が,これらだけを売場の他の構成要素から切り離して看板ないしサインマークのような本来的な営業表示(原告における「西松屋」の文字看板や,デザインされた兎のマーク)と同様に捉えて認識記憶するとは認め難いから,原告商品陳列デザイン1ないし3が,いずれもそれだけで独立して営業表示性を取得するという原告の主張は採用できないといわなければならない。
 またしたがって,この原告商品陳列デザイン1ないし3を,いくら組み合わせてみたとしても,同様のことがいえるから,原告商品陳列デザイン1及び2を組み合わせた商品陳列デザイン及び原告商品陳列デザイン1ないし3を全て組み合わせた商品陳列デザインについても,営業表示性を取得することはないというべきである。
エ なお仮に,原告商品陳列デザインが,それ自体で売場の他の構成要素から切り離されて認識記憶される対象であると認められる余地があったとしても,原告商品陳列デザインは,以下に述べるような観点に照らし,不正競争防止法による保護が与えられるべきものではないというべきである。
 すなわち,上記( )エ認定2 の事実によれば,原告において売上増大を目的としてされた商品陳列デザイン変更の到達点として確立した原告商品陳列デザインは,商品の陳列が容易となるとともに,顧客が一度手にとった商品を畳み直す必要がなくなり,見やすさから顧客自らが商品を探し出し,それだけでなく高いところの商品であっても顧客自らが取る作業をするので,そのための店員の対応は不要となり,結果として少人数の店員だけで店舗運営が可能となって,店舗運営管理コストを削減する効果を原告にもたらし,原告事業の著しい成長にも貢献しているものと認められるのであるから,原告商品陳列デザインは,原告独自の営業方法ないしノウハウの一端が具体化したものとして見るべきものである。
 そうすると,上記性質を有する原告商品陳列デザインを不正競争防止法によって保護するということは,その実質において,原告の営業方法ないしアイデアそのものを原告に独占させる結果を生じさせることになりかねないのであって,そのような結果は,公正な競争を確保するという不正競争防止法の立法目的に照らして相当でないといわなければならない。
 したがって,原告商品陳列デザインは,仮にそれ自体で売場の他の視覚的構成要素から切り離されて認識記憶される対象であると認められたとしても,営業表示であるとして,不正競争防止法による保護を与えることは相当ではないということになる。

 これはなかなか厳しいですね。そもそも営業表示じゃない!って判示されたわけです。

3 上記のとおり,過去の事例は,いずれもネガティブという判断だったわけです。
 
 で,本件ですね。

 日経の記事には結構詳しく載っています。おっと嶋末部長の合議体ですか~。ここは,例のA教授と蛇蝎先生の争いでもなかなかアグレッシブな決定をした所ですね。

 まあ,しかし,コメダ珈琲側の発表によると,仮処分で1年半もかかっております。知財の仮処分の審理期間って長いんだよねえ。本案をやった方がいいくらいなのですが,案の定,本案も同時にやっております。

 コメダ珈琲は大手でリソースもあるでしょうから,法務費用も青天井でこういうことができるのかもしれません。

 決定を早く精査したい所ですが,現時点(12/28のAM11:30現在)ではまだアップされていないようです。

4 追伸
 散歩のコーナではありません。ちょっときな臭い話です。

 昼過ぎに弁理士会より,以下のようなはがきが来ていました。
 
 別冊パテントの16号を急遽回収するとのことです。いやあ私も弁理士になってそこそこの時間は経っていますが,こんなことは初めてかなあ。

 あ,別冊パテントって何かっていうと,パテントというのが,弁理士会の会報なのですね。ま,弁護士でいうと「偽善と欺罔」(通称,自由と正義)ですね。

 その別冊ですから,弁理士会の附属機関である,中央知的財産研究所とかでまとまった研究が一段落つくと,その研究成果を発表するという所だと思います。

 ちなみに,今回の問題となった別冊パテント16号はこんな感じです。
 
 目次はこんな感じです。
 
 特集は2つあります。一つが過半を占める,「知的財産と国境」です。要するに渉外系の論文集ですね。
 もう一つが,今年の2月にあった進歩性に関する公開フォーラムの再録ですね。
 この公開フォーラムの出席者はこんな感じです。
 
 まあ錚々たるメンバーですね。ちなみに,私も当日現場でこのフォーラムを聞きました。

 でね,どうして,「編集上の都合により回収」となったかよくわかりません。渉外の話は,話の性質上大学の先生が殆どで,特に差し障りのある話とも思えません。
 フォーラムの方は,そもそも公開のやつの再録なので,これもちょっとわかりません。
 
 ただ,強いて考えれば,本当に強いて考えると,公開フォーラムの方かなあって気がします。もしかすると,これ,再録するという事前承諾をとっておらず,それで話が違うじゃないか~となったのじゃないかと・・・ま,当て推量ですけどね。
 またはその中で実際の事件をケーススタディにしたので,事件関係者から,クレームが入ったのかもしれませんね。ま,こっちも当て推量ですが。

 てなこと書いていると,このブログのこの記事も,そのうち無くなるかもしれませんねえ。わお!,クワバラクワバラ。
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