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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 すっかり春のような日が続いている東京です。このまま暖かくなるといいのですが,さすがにもう一度くらい寒の戻りもあるかなあ。でも今週末は,もう彼岸ですので,寒の戻りって言っても大したことはないかもしれませんね。

 で,金曜に続いて,法改正絡みの話です。一般には,こちらの方が大きく取り上げられている不正競争防止法の改正の話ですね。
 今日の日経の法務面「営業秘密、企業が自衛強化」も,それに関する話ですもんね。

 ま,とは言え,空中戦であーでもないこーでもないって言ってもしょうがないので,主な条文を見て,それにコメントを付けるという,この前の特許法のやり方と同じやり方でいきましょう。

2 では条文のハジメの方から,改正案を見て行きましょう。

 不正競争行為とは何かを定義する,2条1項に,新たに10号が加わりました。以降の条文は一個づつずれます。

十 第四号から前号までに掲げる行為(技術上の秘密(営業秘密のうち、技術上の情報であるものをいう。以下同じ。)を使用する行為に限る。以下この号において「不正使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(当該物を譲り受けた者(その譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生じた物であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)が当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を除く。)

 経産省によりますと,「営業秘密侵害品の譲渡・輸出入等を禁止し、差止め等の対象とする(民事)とともに、刑事罰の対象とします。(刑事)」というので,まずは,定義に加えたということでしょう。

(技術上の秘密を取得した者の当該技術上の秘密を使用する行為等の推定)
第五条の二
技術上の秘密(生産方法その他政令で定める情報に係るものに限る。以下この条において同じ。)について第二条第一項第四号、第五号又は第八号に規定する行為(営業秘密を取得する行為に限る。)があった場合において、その行為をした者が当該技術上の秘密を使用する行為により生ずる物の生産その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為として政令で定める行為(以下この条において「生産等」という。)をしたときは、その者は、それぞれ当該各号に規定する行為(営業秘密を使用する行為に限る。)として生産等をしたものと推定する。

 政令で定める行為が何かはまだわかりません。ただ,推定の条件としては,条文上,①第二条第一項第四号、第五号又は第八号に規定する行為があったこと,②その行為をした者が当該技術上の秘密を使用する行為により生ずる物の生産その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為があったこと,とありますので,これらの事実については,原告で主張・立証しないといけないようです(つまりは推定規定を使うための要件事実か)。

 罰則です。21条1項です。
八 不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第二号若しくは第四号から前号までの罪又は第三項第二号の罪(第二号及び第四号から前号までの罪に当たる開示に係る部分に限る。)に当たる開示が介在したことを知って営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

 これは,経産省によりますと,「不正開示が介在したことを知って営業秘密を取得し、転売等を行う者を処罰対象に追加します。」ということですので,転売した業者を罰するためのものですね。

 同じく,罰則に追加されたものです。
九 不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第二号若しくは第四号から前号まで又は第三項第三号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号及び次条第一項第二号において「違法使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者(当該物が違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者を除く。)

 これは,上記の「営業秘密侵害品の譲渡・輸出入等を禁止し、差止め等の対象とする(民事)とともに、刑事罰の対象とします。(刑事)」のうちの刑事の所ですね。

 あと,罰則等に関しては,かなり改正されていますが,読めばわかると思いますので,これらの純新設で,わかりにくいと思われるものだけにしておきました。

3 こう見ると,今回の不正競争防止法改正は営業秘密に関する改正がメインであり,しかもそのうち,技術上の秘密を特別視していることがわかります。

 ようするに,技術上のノウハウについて,っていうことですね。で,日経の朝刊もそのことについて先進的な企業を紹介したってわけです。

 まあそれはいいのですが,特許とノウハウの切り分けの話は気になります(転職の自由とか憲法上の論点についてはそういうのが好きな暇人の所を見て下さい。)。

 ここで何度も書いているし,自分の書いた本「知財実務のセオリー」でも書いてますが,メルクマールはたった1つです。
 それはリバースエンジニアリングでわかるかどうかです。製造法など物が手に入っても痕跡が全く見つけられないっていうのも含みますが,世界で1つしかないシステム,大きな機械・構造物など,手に入れたら痕跡はわかるだろうが,手に入れることは実際難しい~というようなものもリバースエンジニアリングできません。

 ノウハウか,特許出願かは,このメルクマールで選別するのみです。お金が無いからノウハウ化するというのは,やらないよりはマシかもしれませんが,その程度のものです。リバースエンジニアリングでわかるようなものを金を惜しんで特許出願しなかったら,出願費用の100倍1000倍で,損害を被ることもあるでしょうね。

 ま,こういうことは,私よりも馴染みのインチキ知財コンサルに聞いた方が早いかもしれませんね,オホホホ。

4 あとこの話とは全然違うどっちかというと特許の話になるのですが,発明者名誉権について,そこそこ重要な高裁レベルの判断が出ていますので,ちょっと注目しておいた方がいいでしょう。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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