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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,「CENTURY21」の名称を用いてフランチャイズチェーンを営む原告(株式会社センチュリー21・ジャパン)が,別紙ドメイン名目録記載のドメイン「CENTURY21.CO.JP」(本件ドメイン)の登録名義を有する被告(センチュリー住宅販売株式会社)に対し,フランチャイズ契約又は不正競争防止法2条1項12号,3条,4条に基づき,本件ドメインの使用差止め,登録抹消及び損害賠償を求めるとともに,原告は横浜不動産株式会社に未払サービスフィー請求権を有しているところ,被告の法人格は濫用であって横浜不動産と同視すべきものであるとして,被告に対し,原告が横浜不動産に有する,平成22年3月8日付け支払合意に基づく未払サービスフィー5162万2641円及び同支払合意後に発生した未払サービスフィー370万6534円,並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成24年3月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。

 これに対して,東京地裁民事第29部(大須賀さんの合議体ですね。)は,請求を全部認めました(珍しい!)。

 ま,今更のドメイン名,また今更の法人格否認,という珍しさもあって取り上げました。

2 問題点
 問題点としては,端的に,被告の使っているドメイン名「CENTURY21.CO.JP」が,不正競争防止法2条1項12号でいう原告の特定商品等表示に類似するかどうかという点と,被告(センチュリー住宅販売株式会社)の法人格を否認し,原告→横浜不動産間の債権を請求できるかどうか,ということになります。

 それはそれで重要な話なのですが(判旨もそのことについてです。),私が取り上げたのは,それだけじゃないのですね。実は,この事例,典型的,本当ど典型の企業間の債務不履行事例だからです。

 企業やそれに類した団体間で,色んな思惑の下,色んな提携系の契約を結び,色んな皮算用をします。しかし,うまくいくことはそれ程多くありません。いや,問題となるのは,うまくいかない場合ではなく,うまくいった場合の方が結構多いと思います(本件はその辺定かではありませんが。)。

 というのは,うまく行かなかった場合って,後始末が問題になるだけで,別に事業も大きくなってないし,当事者の皮算用も大きくなってないので,折り合いはつけやすいわけです(損をどう配分するかだけの話ですからね。)。ところが,うまく行った場合は,本当にトラブルになります。例を挙げましょう。

 研究段階 → 一方の企業,研究機関,大学等が,他方の企業,研究機関,大学に黙って特許を出願した
 開発段階 → 一方の企業が他方の企業に無断で,第三者に試作させた
 上市段階 → 一方の企業が独断先行して販売した
 成熟段階 → 一方の企業が提携先の企業ではなく,第三者の企業と提携した

 本件の例は,成熟段階での違うパターンとして,これも結構よくある例だと思います。ま,このように提携系での事例だけではなく,単なる取引関係(売買,請負,委託)だけでも,トラブルとなることがあるのは当然です。

 で,問題なのは,こういう裏切り行為があった場合,何で,相手方を追及していくか,ということです。普通は,契約当事者間でのトラブルなので,債務不履行(契約違反)で追及するのが第一義です。ところが,様々な理由で(多くは,契約書の文言の詰めが甘いことが要因ですが。),契約当事者間の話であるにも関わらず,知的財産権法を使うという場合もあります。

 こう書いていると,知財部員やら弁理士やらは,はあ何が問題なんだろう??と思われるかもしれませんね。でもそれは契約というものを本当に理解していないからでしょう。
 だって,面倒な契約書を何故作成するか,それは,すべて契約違反のときのためです。永久に仲の良い両者ならば,契約書は要りません,当然ですよね。契約書は,違反されたときにどうなるのだ?どういうことが契約違反になるのか?これらのことが明白に書かれていないと全く意味がありません。

 ですので,契約当事者間での紛争にも関わらず,知的財産権で追及しなきゃいけないというのは,イレギュラーつーか,上記のとおり契約書が甘かったという情けない事案なわけです。

 とは言うものの,結構,この契約当事者間での話に関わらず,債務不履行で行こうか,知的財産権法で行こうか,迷う事案は多いです。で,その場合の切り分けとしては,相手のやっていること(ダマの特許出願,外部への試作,自分だけ先行販売,浮気)が外から捕捉可能ならば,知的財産権法を考えてもよいと思います。

 今回の事例も,被告の保有し,使用しているドメイン名が外からわかりましたので(そりゃドメイン名なので当たり前ですが。),知的財産権法が使いやすかったと思うのですね。
 恐らく,契約書には,契約終了後,同一類似の標章を使ってはいけないという条項はあったのでしょうが,同一類似のドメイン名を使ってはいけないという条項まではなかったのだと思います。

 他方,被告のやっていることが外からわからない場合は,債務不履行で行った方がいいんじゃないかなあ,と思います。
 知的財産権法は,基本的には不法行為の特別法なので,見ず知らずの第三者との間の紛争前提のため,契約関係にあった当事者間では,契約書の条項で追及した方が普通は早いからです(契約書には,開示義務だとか,あるはずですから,通常相手の手の内はわかるはずです。)。

 ま,兎も角も,最新の債務不履行事例では,必ず,契約違反だけではなく,知的財産権法も考えるべきだということです。ですが,そのような事例は,知的財産権法が分かっていないとなかなか発想できません。
 というわけで,そのような事例の場合は,私にご用命頂ければ馳せ参じます,というステマですね。

3 判旨
 「甲13及び弁論の全趣旨によれば,原告は,米国法人であるセンチュリー21・リアルエステートLLCから,「センチュリー21」の名称を含む商標サービスマークの再使用許諾権を与えられ,日本国内において,原告及びそのフランチャイジーが,建物の賃貸の媒介,建物の売買の媒介,土地の賃貸の媒介,土地の売買の媒介等の役務に,「センチュリー21」「CENTURY21」等の標章を使用していることが認められる。
 そうすると,「CENTURY21」は,原告の標章その他の役務を表示するものであり,原告の特定商品等表示であると認められる。」

「原告は法人格濫用による法人格否認を主張しているところ,被告が法人格を濫用しているものと認めるためには,①法人格が支配者により意のままに道具として支配されており(支配要件),②支配者が違法又は不当な目的を有すること(目的要件)が必要であると解される。・・・
 横浜不動産が原告に対する5000万円を超える債務の返済を滞らせた(上記(2)カ)直後に被告が設立され(上記(2)ア),特段の契約関係や対価の支払いを伴うことなく営業所や従業員を引き継ぎ(上記(2)ウ,オ),横浜不動産が契約した案件の手数料等や横浜不動産が代理店として契約した案件の火災保険料の振込先を横浜不動産の口座から被告の口座に変更するよう指示があった(上記(2)キ,ク)というのであるから,被告は,横浜不動産の資産を移転し,原告の横浜不動産に対する強制執行を妨害するという違法不当な目的のために設立されたものと認めるのが相当である。
イ また,横浜不動産の代表者であったAは,被告の代表者であるBに指示,命令を出せる立場にあったというのであるから(上記(2)ケ),被告は,Aにより意のままに道具として支配されているものと認めるのが相当である。」

4 検討
 判旨の方は,まあ,こりゃあまりに確信犯的な事例で,そりゃそうでしょ,という特段問題になるようなものではありません。

 ですが,事実の話として,債務不履行があったとき,契約書の条項だけではなく,知的財産権法についても一顧はする,という最近の傾向がわかる事案ということでした。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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