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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,別紙2記載の被告の商品(商品名:ハッピー★ベアー,Happy★Bear,JANコード:4582302052773,色:①ピンク・②ベージュ・③ブラウン。被告商品)が,別紙1記載の原告の商品(商品名:シュエッティーベア,Chouettie  Bear:マネしておしゃべりぬいぐるみVer.5,JANコード4994793049468。原告商品)の形態を模倣したものであり,その販売は不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為にあたるとして,被告に対し,同法3条1項及び同2項に基づき被告商品の販売等差止め及び廃棄を求めるとともに,同法5条2項に基づく損害賠償,弁護士費用及び遅延損害金の支払を求めた事案です。

 これに対して,大阪地裁第21民事部(谷さんの合議体ですね)は,原告の請求の一部を認容しました(殆どの認容)。

 いやあ,ぬいぐるみの形態模倣2ですよ(原告は一緒)。1は,こちらです。

 で,今回紹介したのは,何だそういうことだったの~でもそうすると更にレベルが低いんじゃないのかなあ,ってところだったからです。

2 問題点
 問題点は,不正競争防止法の2条1項3号の形態模倣に当たるかどうかです。
 条文を示します。

 「他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

 ちなみに,これは平成17年に改正されておりますので,昔の条文も示します。

 「他人の商品(最初に販売された日から起算して三年を経過したものを除く。)の形態(当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入する行為
 
 
若干細かい点が違うのですが,それはいいとして,大きく違うのはカッコ書きの中身です。同種の商品云々が,機能を確保するために・・・に変わったのですね。

 なので,本件のように最近の事例は当然改正後の条文が適用になるはずですよね~。

 厭味ったらしく条文を比較したところで,判旨に行きますか。

3 判旨
「(1)  はじめに
  不正競争防止法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等を不正競争行為と定めるところ,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいい(同条4項),「模倣する」(同条1項3号)とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいうとされる(同条5項)。
  前記商品形態の模倣を不正競争行為と定める趣旨は,資金,労力を投入して新たな商品の形態を開発した者を,資金,労力を投入せず,形態を模倣することでその成果にただ乗りしようとする者との関係において保護しようとする点にあるから,前記不正競争行為が成立するためには,保護を求める商品の形態が,従前の同種の商品にはない新たな要素を有し,相手方の商品がこれを具備するものであると同時に,両者の商品を対比し,全体としての形態が同一といえるか,または実質的に同一であるといえる程度に酷似していることが必要であり,これらが認められる場合に,後者が前者に依拠したといえるかを検討すべきものと解される。 」

「(7)  実質的同一性
ア  被告は,原告商品の特徴が,他の市場に存在する類似商品と概ね一致するもので,「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」として,クマのぬいぐるみを制作販売する場合,その外見的特徴として似てしまうのもやむを得ないものである旨主張する。しかし,被告が類似商品と指摘するものが原告商品より以前に存在したと認めるに足る証拠はなく,また,熊のぬいぐるみであれば,上記で認められる原告商品の形態を備えることが不可欠といえるものではないことは明らかであり,原告商品の具体的形態からしてもありふれたものとまではいえず,前記(2)で認定した開発の経緯に照らしても,原告商品の形態は,不正競争防止法2条1項3号の保護の対象となるものといえる。
イ  原告商品と被告商品とは,上記(5)のとおり,その形態全体にわたり多数の共通点が認められ,できあがった原告商品と被告商品の全体の寸法もほぼ同じであることからすれば,本体の形状はほぼ同一であるといえる。・・・
 したがって,原告商品と被告商品の形態は,全体のつくり及び顔のつくりにおいて酷似しており,その相違点を考慮しても,実質的に同一であるといえる。」

4 検討
 いやあ何ちゅうかさあ,自分で規範を提示したなら,その規範どおりに当てはめましょうよ。そう研修所で習わなかった~?
 前回は棄却だったから一部の規範を使わずに済んだけど,今回一部でも認容でしょ。判旨で提示した規範に全部当てはまらないと認容できないはずだと思いますがね。

 前回私はここで,創作的法的なものと混同したのではないかと述べましたが,ゴメンゴメン一旦ごめ~ん~♪(元ネタわかるかな。)
 そうじゃないですね,そんなレベルの高い話じゃありませんね,これ。こんな規範を用いた下級審はないと前に書きましたが,そりゃ現行法になってからはないと思います。でも,以前はありました~。だって,上記のとおり,平成17年法改正の前は,条文上,「同種の商品」ウンたらという文言が入っていたのですから。

 ですので,前回の判決も今回の判決も,単に,法改正前の,昔のテンプレート集・雛形集を,特段の検討無く使っただけですね。何ちゅうレベルの低い仕事なんだろう。

 裁判官って本当悪しき先例主義者というのがよくわかりますね。法改正しているっちゅうのに,改正前の規範を何食わぬ顔で使い,それを徹底するんだったらまだいいですよ!上記のとおり,そういう徹底もなく,当てはめのところでは,改正後の条文「不可欠」何たらの方を使っているのです!

 もう開いた口が塞がらないとはこのことですね。いやあびっくりしますね。法改正のこと知らないのかなあ,いやあ知っているはずですよ,いくら何でも。当てはめのときに不可欠・・・って書いてますからね。

 それなのに,この有り様~。石頭っていうか融通が効かないっつうか・・・ですね。日本の夜明けは遠いぜよ~♡

 
 あ,そうそう,具体例を離れて空中戦で裁判官の悪口を言っても仕方がありません。前回は同じ原告で棄却だったのに,今回は認容です。

 その違いは,やはり被告のぬいぐるみの似てる具合ですね。前回の被告のぬいぐるみは,チューバッカというかビッグフットというか,鼻口部も毛むくじゃらなのですね。他方,今回の被告のぬいぐるみは,原告のぬいぐるみ同様,鼻口部がクマっぽい感じになっております。ですので,今回の被告のぬいぐるみは,似ているな~って感じがします。
 写真は,このブログで見れるようになっているので,見比べてください。

 じゃ,ということで。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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