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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は,本日の日経紙朝刊の法務面の記事です(法務は週一月曜で,休刊日と重なり,なくなることも多いですね。)。

 内容は例の新日本製鉄VSポスコの訴訟の話です。ですので,新聞見てくださいと言うしかありませんが,折角の法務面の特集と思いきや,特に踏み込んだ話もなく,何のための特集じゃあという感じです。

 あ,1つありました。「公認不正検査士」って知ってますか?
 いやあ私は今回の記事で初めて知りましたね。ちょっと調べると,また例によってアメリカ発の資格ですよ~。

 ところで,アメリカ発の最大の資格商法って知ってますか?
 それは,MBA(Mac Book Airじゃなかった,Mattaku Baka de Aho)ですね。まあ,これは,取得するとそこそこ今でも儲かるようですから,それはそれでいいのですかね~。オホホホ。

2 また,本題からずれそうなので,戻しますと,本件アメリカでは特許権侵害の事件なのですね。特許番号がわからないので,何とも言えないのですが,そうすると,日本国内で特許を出願せず,アメリカでも優先権主張をせずに出願したのかもしれません。

 そうすると,何がいいか,と言いますと,アメリカ国内のみの出願に対しては,出願公開がなされないのです!(USC35,122(b)(2)(B)(i) If an applicant makes a request upon filing, certifying that the invention disclosed in the application has not and will not be the subject of an application filed in another country, or under a multilateral international agreement, that requires publication of applications 18 months after filing, the application shall not be published as provided in paragraph (1).)。

 で,出願公開がされないと何がいいって,出願人にとっては基本良いことばかりです。
 普通,特許を出願するのは真似されたくないからですが,特許制度自体,マネを前提とする制度なのです。矛盾するようですが,そのとおりです。
 ほんで技術というのは,マネをされて発展するものです。何でもそうです。いいものなんだけど,ちょっと不満だ~,あとから来る人はそういうところを良くしようとして技術って発展するのですね。

 ですので,特許制度の趣旨を一言で言うと(弁理士試験の口頭試験のようですね,司法試験には口頭試験はなくなりましたので。),公開の代償としての特許権の付与,となります。ただ,出願人にとっては痛し痒しであり,権利だけもらいたい,こちらの技術なんて公開したくないってえのが本音ですよね。
 まあただ,結局上市して販売等をした場合,実際の商品からリバースエンジニアリングできるものについては,あまりとやかく言っても仕方ないところがあります。特許の公開された明細書で隠れてても,商品からわかるのですからね。

 他方,リバースエンジニアリングできない場合は別の考慮が必要です。こういうものを出願公開されてしまう特許出願にしてしまうと,その虎の子の技術がタダで知られてしまうわけです。そうすると,特許を取得しても,真似した他社のものも,リバースエンジニアリングしても当然わかりません!。
 ですので,こういう場合は,特許出願せず,営業秘密(ノウハウ)として,厳重に管理する,ということがデフォーになります。

 そうそう,時々相談があるのですが,特許出願した方がいいかどうか,メルクマールはただ1つです!リバースエンジニアリング(解析)してわかるかどうか,です。わかるものは特許出願で,わからないものは特許出願しない方がいい,ということです。

 やっと最初の話に戻ります。
 特許出願にはこういうメリットデメリットがありますが,上記のとおり,アメリカのみの出願の場合,特許権を取得できるまで秘密にできるわけです。特許後公開されてはしまうのですが,公開のスケジュールをかなり後ろ倒しにできます。
 今回新日鉄が,アメリカのみ特許権侵害訴訟を提起したのは,そのような特許戦略で動いたのではないかと推測できるわけです。
 日本でも特許出願して特許権があり,その上での特許権侵害訴訟の方が,戦いやすいことは確かですからね(こういう製法の不競法訴訟で,きちんと認められたのは,おそらくこの,出光興産のポリカーボネート事件くらいしかないのではないかと思える位にハードルが高いものです。)。

3 あと,技術流出ってえのの対策は本当難しいです。
 退職時に守秘契約,ってのもありますが(私もソニー辞めるとき結ばされましたね。),実効性はどうなのかなあ~って気がします。

 結局,技術者の頭の中まで縛ることなんてできませんし,会社のノウハウか,それともその人のノウハウかって,明瞭でないことも多いわけですしね。
 ですので,後付けの契約よりも,属人のノウハウを極力削ぎ落とし,会社のノウハウということに構成し直すことがまず第一です(難しいですけどね。)。

 次に,人からの技術流出を阻むため,サンクションでない,対策を十分に施すことです。流出させたら,罰則だ賠償金だ,というのは頭の悪いやり方です。会社を辞めさせずに済むようにしなきゃ,そもそもリストラで人を減らすというのはアホですね(そういう会社があとで技術流出というのは,信義則違反ですわな。)。
 そうでなく,うまい具合に持っていかないと。勿論,それでも整理解雇等が必要な場合もあると思いますが,そのときでも,会社に恩義を感じさせるようにやらないとね。
 基本,人からの技術流出なんてえのは,モラルハザードの典型ですから,訴訟だとか弁護士だとかよりもよい処方はある筈です(身近にね。)。

 今回の件は,法律だ~弁護士だ~で済む話ではないのです。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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