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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,原告(ファッションヴィレッヂ)が,被告各商品を販売した被告(サン・カツミ)に対し,被告各商品は原告の販売する原告各商品の形態を模倣した商品であり,その販売は不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に当たると主張して,法4条に基づく損害賠償金1378万4266円(法5条1項による損害1247万2060円,弁護士・弁理士費用131万2206円)及びこれに対する不正競争行為の後の日である平成27年5月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに法14条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案です。

 これに対して,東京地裁民事46部(長谷川さんの合議体ですね。)は,原告の請求を一部認めました。要するに,形態模倣あり!ってことです。

 ときどき,不正競争防止法の事件を取り上げますが,今回,色々と考える所もあるなあということで取り上げた次第です。

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,形態模倣の有無ですね。
 まずは,条文を見てみましょう。
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
三  他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
4  この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。
5  この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。」

 形態模倣関係だとこんな感じです。

 で,形態模倣ってどんなときに使われるかというと,意匠権が取れていないとき!もうこれ一本って所でしょう。
 意匠権の場合,類似の意匠まで権利が及ぶのですが(意匠法23条),形態模倣の場合は,裁判例上,デッドコピーくらいじゃないとダメ(実質同一)という違いがあります。つまりは,本来的には,意匠権の方が強いと思います(あ,そうそう,模倣も要らないですね。偶然の一致でも,意匠権ならコラーって言えます。)。

 ところが,意匠権って出願して,審査して,登録になるので,商品のタイムスパンの短い類型のものって使いにくいです。しかも,いちいち,特許庁に納める費用や,弁理士に払う報酬なんか必要です。
 権利はある程度強いのですが,使い勝手が悪いのです。

 例えば,車のデザインなどは意匠権でやるといいと思いますね。でも,今回のようなアパレルって上記の意匠権の欠点がモロに出て,実にやりにくいと思います。
 だって,アパレルの商品の寿命って,数ヶ月ですよね。
 夏物は秋には売れません。当然冬にも。売れるのは,春から初夏にかけてだけです。売れ残ったものは,次のシーズンに?なわけねーだろッて感じですよね。10年前20年前に流行ったものって,多少いいかもしれませんが,数年前に流行ったものって一番恥ずかしいんじゃないですかね。

 そうそう,全然話は違いますが,今日出勤の途上,PILのTシャツ来ている若者を見ました。いやあ,流行りって2周くらい回ってまた来るのですね。
 PILって知りませんか?public image limitedの略ですね,確か。
sex pistolsのボーカルだったジョニー・ロットン改めジョン・ライドンが作ったバンドです。私が大学生のころ,こういうパンク・ニューウェーブ系がお洒落~♫みたいな感じで,PILのTシャツやBAD(big audio dynamite。clashのギタリストだったミック・ジョーンズが作ったユニットですね。)の帽子が流行ってたもんです。
 ま,常に金がない私は,そのころも金がなく,そういう新品で良い物は買えず,古着屋によく行ってました。そういえば,原宿にあったデプトももうないんですよねえ。

 と,ひとしきり議題が逸れたところで戻りますが,アパレルって,その上,種類がたくさんあります。男物なら少ないのかもしれませんが,女物はすごく多いです。
 今回の,被告商品目録も11個あります。これねえ,意匠登録出願だと,恐らく,1つの出願じゃ無理ですわ。ブラウス,シャツ,ワンピース,丈の長いの短いの~とかなり違います。

 だとすると,まともに意匠登録出願するとなると,11個も出願しなきゃいけません。いくらかかるでしょうかな~。しかもそれを3,4ヶ月おきくらいにやらないといけないわけですよ。
 バカバカしいったりゃありゃしないですよ。

 だから,もう意匠権なんか使わず,形態模倣で捕捉するのが,デフォーなのかもしれません。

3 判旨
「原告は,原告各商品及び被告各商品の形態は別紙対比表のとおりであり,下線を付した部分を除き両者の形態は同一である旨主張する。
 そこで判断するに,証拠(甲3,44)及び弁論の全趣旨によれば,原告各商品及び被告各商品の形態は,上記の下線部分のほか,商品5~10のギャザー加工の有無,商品11の袖部の広がりの有無において相違するものの,その余の基本的形態及び具体的形態はいずれも同一であると認められる。また,原告各商品と被告各商品は生地,糸等の色にも相違がみられるが,被告はこの点について特段の主張をしておらず,実際,これらは単に色違いであるとの印象を与えるにとどまり,これにより異なる形態であると認識させるものでないと解される。
 そして,原告各商品及び被告各商品の形態の要点は以下の(1)~(9)の各ア記載のとおりであるところ,同イにおいて詳述するとおり,基本的形態は同一(商品9以外)又はほぼ同じ(商品9)であり,具体的形態も若干の相違点を除けば同一である上,形態中の特徴的な部分はいずれも共通するということができる。また,上記の相違する部分は,以下のとおり,一見しただけでは識別できず,若しくは全体的な形態に与える影響が乏しいもの,原告各商品に比し手間若しくは費用を掛けない方向へ変更したもの,又は婦人服という商品の性質上極めて容易に変更できるものである。そうすると,原告各商品と被告各商品の形態はいずれも実質的に同一であると評価することが相当である。」

4 検討
 今回,原告各商品の実際の写真とか図とかがないのですね。
 ですので,細かい事実認定の所は省きました。こういう風に書くってことはかなり似ていたのでしょうねえ,としか言いようがありません。

 で,上に色々考えることがあるって書いたのは,やはり時間です。

 この裁判,H25のものです。東京地裁で,2万番台ってことは,さすがに年の後半だと思いますが,それにしても,判決は7月ですので,2年近くかかっているってことです。

 意匠権と違って,権利をとる時間などかからない不正競争防止法を使っても,結論が出るのに,こんな時間がかかるのです。
 本件では当然差止など求めていませんが(上記のとおり,数ヶ月で寿命の切れるアパレルで差止なんか求めても意味がない!),時間が掛かり過ぎるのではないですかね。

 じゃあどうするか。それを考えさせるニュースが先月の初めありました。

 「洋服模倣容疑で逮捕の2人釈放 大阪地検

 要するに,本件と同様,洋服の形態模倣で逮捕者が出たってことです。実は,この形態模倣で逮捕者が出たのは初めてだそうです。

 民事で結論が出るには,2年もかかります。そして,別にその結論が最終じゃあありません。だとしたら,もう刑事でやる方が早いのでは?と誰もが思うところ,もう既に,その方向が始まっているのかもしれません。

 これって何かの事例と似ていますね。そう,著作権です。著作権も数年前,民事で色んな判決が出たころがありました。特にテレビをネットで見る関係のやつです。最近は全然見かけませんね~。皆やらなくなったからでしょうねえ~ム?

 いやあアグレッシブな人はどこにも居て,結構色んな方策を考えているようです。ただ,何故民事の判決が少なくなったかというと,権利者側が呑気に民事でやりましょう~!ってことをやらなくなったからですね。
 もう,問答無用で,刑事告訴をしてきます。いやあそしたら,警察もすぐに動きます。早い早い~。

 だから,不正競争防止法の形態模倣も,これからは刑事告訴がデフォーになると思いますよ。
 
 ちなみに,条文はこれです。
2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
三  不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行った者
 不正競争防止法,21条2項3号です。


 でもなあ,そうすると,なかなかうちみたいな弱小の事務所には辛い感じがするのですね。
 というのは,刑事って賠償金は取れないでしょ。そうすると,賠償金をアテにして弁護士に頼むような中小企業としては,頼みにくいわけです。弁護士が受けにくいですので。

 大手の事務所が大手企業から刑事告訴を受任する場合はいいのですよ。大手事務所は,民事でも刑事でもバカ高いタイムチャージで課金し,依頼する方も払う金はありますからね。賠償金なんてアテにせず。
 だから,お金のことなど考えず,実効性のある方策を選べるわけですわ。

 でも,全部の企業がそんな方策できるとは限らず,しかし,不正競争防止法の形態模倣では刑事告訴がデフォーなんて広まったら,安いお給金で告訴状をシコシコ書かないといけなくなるわけっすよ。

 あ,私が心配し気にしているのは,常に金,しかも私に入るはずの金!ですので,勘違いなきよう。

 まあ兎も角も,今後,どの方策が有効か,ちょっと考えないといけなくなりましたね。

5 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日はここ山本橋に来ております。
 
 いやあ夏って感じですね。本日で,東京は6日連続の猛暑日(最高気温が35℃以上)です。

 本日はまた弁理士の先生と飲みに行ったのですが(しょっちゅう行ってますなあ。),こう暑い日のビールは最高ですね。私なんかずっと暑くていいのですが,そうもいかないのでしょうね。

 ということで,最近お気に入りは,椎名林檎の「長く短い祭」ですね。
 ボコーダー使っているのは,ザップかと思いましたが(ザップも一時は正当なファンクの後継者だと思ったのですがねえ~。),もうめちゃくちゃいいですね。ファンキーかつメロウという理想的な夏うたですわ。

 まあ,椎名林檎自体もかなり良くて,自他ともに認める中出し弁護士としては,うーん寝てみたい~♪感じですわなあ~ムフフフ。

 さて,明日も暑そうだわい。
 

 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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