忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は,本日行われた弁理士会の研修所主催の研修です。

 弁理士会の研修って,2月3月に行われることが多く,その時期は結構研修によく行ったりするのですが,この時期は珍しいかもしれませんね。

 さて,内容はタイトルのとおり,例の経産省から今年の2月に出た「秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上に向けて~」の解説と,これまた今年の5月に改訂された「先使用権制度事例集「先使用権制度の円滑な活用に向けて—戦略的なノウハウ管理のために—」の解説の豪華二本立てっていう研修です。

 やっぱこういうのって弁理士会ならではだなあ~不競法については,弁理士は特定不正競争行為しか取り扱えないのに,非常に良い感じです。

2 で,内容ですが,それぞれ,前半は,経産省の知財担当(つまりは不競法担当)の部署の人,後半は特許庁の総務部の法制専門官(ジョーンズデイから出向中の若手の弁護士ですね)が講師でした。

 個人的には,抗弁でしか使えない先使用権なんぞより,前半の例のハンドブックの話が聞きたくて行ったのですが,まあ相変わらずの盛りだくさん具合ですね。
 なお,このハンドブックは,昔の営業秘密管理指針を必要最小限のニュー営業秘密管理指針と,高度に漏洩防止の保護ハンドブックに分けたうちの後者の方です。なので,盛りだくさん具合が変わらないってわけです。

 私も事前に一読はしていたので,読めばわかる内容だってことは知っています。ただ,本当解説を聞いて少しだけこのハンドブックでやりたいことがわかったって所でしょうか。
 なので,弁理士と違い何か事が起こってから相談を受けることが多い弁護士にとっては,第5章と第6章が大事ってことでしょうね。

3 次に後半の先使用権の方ですが,講師のおかげか,期待していなかったこっちの方が頭に残りましたよ。
 で,実務上重要なのは,事実実験公正証書とかのやり方だとは思うのですが,私が口酸っぱく言っている特許出願とノウハウの切り分けの基準,リバースエンジニアリングで分かるかどうかでやれば,この問題も,原則大丈夫ですからね。

 どういうことかというと,リバースエンジニアリングで分からないものをノウハウ化するんでしたよね。
 そうすると,仮にその技術で第三者が特許権を取得した所で,リバースエンジニアリングで分からないんだから,その第三者が侵害立証出来るわけがないのです。

 だから,わざわざ袋とじするとか,確定日付をもらうとか,そんなことをしなくても,侵害で訴えられたときに慌てずに済みます。

 他方,そうじゃなくて,特許を出す金が惜しいから,リバースエンジニアリングで分かる技術をノウハウ化しちゃうと,今日の講師が言ったように,わざわざ袋とじするとか,確定日付をもらうとかのクソ面倒臭い先使用権構築をしなきゃいけないわけです。

 意味分かりますかね。

 いや,勿論,あるときにはリバースエンジニアリングで分からなかったものが,技術の進歩でリバースエンジニアリング出来るようになるっていう場合もあるとは思いますよ。でもそりゃ例外ですからね。
 そのあるときに,既にリバースエンジニアリングで分かるものをノウハウ化したのとは訳が違います。

 なので何度でも何度でも言いますが,特許出願とノウハウ化の切り分けは,リバースエンジニアリングで分かるかどうか,ただそれだけ!特許出願の金を惜しむと,将来もっと大きな金を失うことになる~♬って所です。

 ま,とは言え,結構面白い研修でした。ただ,この手の特許庁とか経産省の役人が講師をする研修にしてはまあまあの混み具合でしたね。やはり,弁理士にすると,不正競争防止法系ってイマイチ傍系なんですよね。

4 追伸
 本日の東京は実にはっきりしない天気でした。上の研修に行くとき傘が必要なギリギリの雨で,まあうっとおしい所でした。ほんで帰りはもうやんでましたね。

 ま,日曜の6/5に東京も梅雨入りしたわけで,これから一ヶ月半ほどこんな天気が続くわけです。
 そういえば,GWに千葉で今年一発目のサーフィンをしてから結局5月は一回もサーフィンできないままでした。もう4週くらい湘南には波のない週末が続いています。湘南ってそんなに波がないので,そういうこともあるさって所でしょうが,それにしてもこれだけ続くのは珍しいです。先週末もNGでしたし,梅雨どきってそもそも波は立たないのですよね~。夏前に何回かは行きたい所です。

 さて,研修の話に戻りますが,帰りがけ,霞が関ビルの近くにあった本屋さんの跡(書原だったかな。もう閉店して半年近くになると思いますが。)を見たところ,何と歯医者になってました~いやあそうきたかって感じですね。
 前の書原は知財の本がかなり充実してて,ちょっと時間のあるときにはよく立ち読みしてました。私の本もずっと平積みにしてくれてましたし,いやあ無くなって本当悲しいですね。
PR
1 またまた本日もプリンスの話で行こうかと思いましたが,まあやめておきます。
 期待とおりじゃ面白くないですからね。

 ということで,本日はちょっとまともな話です。

2 首記は,経産省のHPからタダでダウンロードできる,不競法のコンメンタールです。
 http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/unfair-competition.html#chikujo
 上記URLになります。

 タダと言って馬鹿にできません。何と言っても,普段有斐閣から出ているやつ(最新がH23・24ですかね。他にH21,H16・17版などあります。)の最新版と言ってよいものです。

 ちなみに最新版のH23・24をアマゾンで買おうとすると,中古だけでしかも6000円以上します。

 それが,タダなのですから,これはお得です。まあ個人的には,有斐閣から本が出て欲しいなあと思うのですけどね(私は古いタイプの人間なので,紙の本じゃないときちんと読む気がしないのです。)・・・。

3 不正競争防止法って,特許庁に出願の手続を経て権利が発生するタイプのものではなく,他方ある決まった団体がキチキチとやっているようなものでもなく(何のこと言っているかわかりますね。),基本鬼っ子です。

 とは言え,意外と使えますので,知財に携わっている人はしっかり勉強していた方がいいでしょうね。

 私も現時点で何点か不正競争防止法の事件を抱えておりますので,早速使えそうです。とは言え,引用するときに,「発行者」とかボーンと出せないので若干迫力に欠けるきらいはあると思うのですね。

 しかし,本当に有斐閣から出ねえのかなあ。もう有斐閣としては知財関係は兎に角お断り~♬とかね~。著作権判例百選の件が相当なトラウマになりましたかなあ。
1 概要
 本件は,原告(ファッションヴィレッヂ)が,被告各商品を販売した被告(サン・カツミ)に対し,被告各商品は原告の販売する原告各商品の形態を模倣した商品であり,その販売は不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に当たると主張して,法4条に基づく損害賠償金1378万4266円(法5条1項による損害1247万2060円,弁護士・弁理士費用131万2206円)及びこれに対する不正競争行為の後の日である平成27年5月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに法14条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案です。

 これに対して,東京地裁民事46部(長谷川さんの合議体ですね。)は,原告の請求を一部認めました。要するに,形態模倣あり!ってことです。

 ときどき,不正競争防止法の事件を取り上げますが,今回,色々と考える所もあるなあということで取り上げた次第です。

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,形態模倣の有無ですね。
 まずは,条文を見てみましょう。
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
三  他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
4  この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。
5  この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。」

 形態模倣関係だとこんな感じです。

 で,形態模倣ってどんなときに使われるかというと,意匠権が取れていないとき!もうこれ一本って所でしょう。
 意匠権の場合,類似の意匠まで権利が及ぶのですが(意匠法23条),形態模倣の場合は,裁判例上,デッドコピーくらいじゃないとダメ(実質同一)という違いがあります。つまりは,本来的には,意匠権の方が強いと思います(あ,そうそう,模倣も要らないですね。偶然の一致でも,意匠権ならコラーって言えます。)。

 ところが,意匠権って出願して,審査して,登録になるので,商品のタイムスパンの短い類型のものって使いにくいです。しかも,いちいち,特許庁に納める費用や,弁理士に払う報酬なんか必要です。
 権利はある程度強いのですが,使い勝手が悪いのです。

 例えば,車のデザインなどは意匠権でやるといいと思いますね。でも,今回のようなアパレルって上記の意匠権の欠点がモロに出て,実にやりにくいと思います。
 だって,アパレルの商品の寿命って,数ヶ月ですよね。
 夏物は秋には売れません。当然冬にも。売れるのは,春から初夏にかけてだけです。売れ残ったものは,次のシーズンに?なわけねーだろッて感じですよね。10年前20年前に流行ったものって,多少いいかもしれませんが,数年前に流行ったものって一番恥ずかしいんじゃないですかね。

 そうそう,全然話は違いますが,今日出勤の途上,PILのTシャツ来ている若者を見ました。いやあ,流行りって2周くらい回ってまた来るのですね。
 PILって知りませんか?public image limitedの略ですね,確か。
sex pistolsのボーカルだったジョニー・ロットン改めジョン・ライドンが作ったバンドです。私が大学生のころ,こういうパンク・ニューウェーブ系がお洒落~♫みたいな感じで,PILのTシャツやBAD(big audio dynamite。clashのギタリストだったミック・ジョーンズが作ったユニットですね。)の帽子が流行ってたもんです。
 ま,常に金がない私は,そのころも金がなく,そういう新品で良い物は買えず,古着屋によく行ってました。そういえば,原宿にあったデプトももうないんですよねえ。

 と,ひとしきり議題が逸れたところで戻りますが,アパレルって,その上,種類がたくさんあります。男物なら少ないのかもしれませんが,女物はすごく多いです。
 今回の,被告商品目録も11個あります。これねえ,意匠登録出願だと,恐らく,1つの出願じゃ無理ですわ。ブラウス,シャツ,ワンピース,丈の長いの短いの~とかなり違います。

 だとすると,まともに意匠登録出願するとなると,11個も出願しなきゃいけません。いくらかかるでしょうかな~。しかもそれを3,4ヶ月おきくらいにやらないといけないわけですよ。
 バカバカしいったりゃありゃしないですよ。

 だから,もう意匠権なんか使わず,形態模倣で捕捉するのが,デフォーなのかもしれません。

3 判旨
「原告は,原告各商品及び被告各商品の形態は別紙対比表のとおりであり,下線を付した部分を除き両者の形態は同一である旨主張する。
 そこで判断するに,証拠(甲3,44)及び弁論の全趣旨によれば,原告各商品及び被告各商品の形態は,上記の下線部分のほか,商品5~10のギャザー加工の有無,商品11の袖部の広がりの有無において相違するものの,その余の基本的形態及び具体的形態はいずれも同一であると認められる。また,原告各商品と被告各商品は生地,糸等の色にも相違がみられるが,被告はこの点について特段の主張をしておらず,実際,これらは単に色違いであるとの印象を与えるにとどまり,これにより異なる形態であると認識させるものでないと解される。
 そして,原告各商品及び被告各商品の形態の要点は以下の(1)~(9)の各ア記載のとおりであるところ,同イにおいて詳述するとおり,基本的形態は同一(商品9以外)又はほぼ同じ(商品9)であり,具体的形態も若干の相違点を除けば同一である上,形態中の特徴的な部分はいずれも共通するということができる。また,上記の相違する部分は,以下のとおり,一見しただけでは識別できず,若しくは全体的な形態に与える影響が乏しいもの,原告各商品に比し手間若しくは費用を掛けない方向へ変更したもの,又は婦人服という商品の性質上極めて容易に変更できるものである。そうすると,原告各商品と被告各商品の形態はいずれも実質的に同一であると評価することが相当である。」

4 検討
 今回,原告各商品の実際の写真とか図とかがないのですね。
 ですので,細かい事実認定の所は省きました。こういう風に書くってことはかなり似ていたのでしょうねえ,としか言いようがありません。

 で,上に色々考えることがあるって書いたのは,やはり時間です。

 この裁判,H25のものです。東京地裁で,2万番台ってことは,さすがに年の後半だと思いますが,それにしても,判決は7月ですので,2年近くかかっているってことです。

 意匠権と違って,権利をとる時間などかからない不正競争防止法を使っても,結論が出るのに,こんな時間がかかるのです。
 本件では当然差止など求めていませんが(上記のとおり,数ヶ月で寿命の切れるアパレルで差止なんか求めても意味がない!),時間が掛かり過ぎるのではないですかね。

 じゃあどうするか。それを考えさせるニュースが先月の初めありました。

 「洋服模倣容疑で逮捕の2人釈放 大阪地検

 要するに,本件と同様,洋服の形態模倣で逮捕者が出たってことです。実は,この形態模倣で逮捕者が出たのは初めてだそうです。

 民事で結論が出るには,2年もかかります。そして,別にその結論が最終じゃあありません。だとしたら,もう刑事でやる方が早いのでは?と誰もが思うところ,もう既に,その方向が始まっているのかもしれません。

 これって何かの事例と似ていますね。そう,著作権です。著作権も数年前,民事で色んな判決が出たころがありました。特にテレビをネットで見る関係のやつです。最近は全然見かけませんね~。皆やらなくなったからでしょうねえ~ム?

 いやあアグレッシブな人はどこにも居て,結構色んな方策を考えているようです。ただ,何故民事の判決が少なくなったかというと,権利者側が呑気に民事でやりましょう~!ってことをやらなくなったからですね。
 もう,問答無用で,刑事告訴をしてきます。いやあそしたら,警察もすぐに動きます。早い早い~。

 だから,不正競争防止法の形態模倣も,これからは刑事告訴がデフォーになると思いますよ。
 
 ちなみに,条文はこれです。
2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
三  不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行った者
 不正競争防止法,21条2項3号です。


 でもなあ,そうすると,なかなかうちみたいな弱小の事務所には辛い感じがするのですね。
 というのは,刑事って賠償金は取れないでしょ。そうすると,賠償金をアテにして弁護士に頼むような中小企業としては,頼みにくいわけです。弁護士が受けにくいですので。

 大手の事務所が大手企業から刑事告訴を受任する場合はいいのですよ。大手事務所は,民事でも刑事でもバカ高いタイムチャージで課金し,依頼する方も払う金はありますからね。賠償金なんてアテにせず。
 だから,お金のことなど考えず,実効性のある方策を選べるわけですわ。

 でも,全部の企業がそんな方策できるとは限らず,しかし,不正競争防止法の形態模倣では刑事告訴がデフォーなんて広まったら,安いお給金で告訴状をシコシコ書かないといけなくなるわけっすよ。

 あ,私が心配し気にしているのは,常に金,しかも私に入るはずの金!ですので,勘違いなきよう。

 まあ兎も角も,今後,どの方策が有効か,ちょっと考えないといけなくなりましたね。

5 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日はここ山本橋に来ております。
 
 いやあ夏って感じですね。本日で,東京は6日連続の猛暑日(最高気温が35℃以上)です。

 本日はまた弁理士の先生と飲みに行ったのですが(しょっちゅう行ってますなあ。),こう暑い日のビールは最高ですね。私なんかずっと暑くていいのですが,そうもいかないのでしょうね。

 ということで,最近お気に入りは,椎名林檎の「長く短い祭」ですね。
 ボコーダー使っているのは,ザップかと思いましたが(ザップも一時は正当なファンクの後継者だと思ったのですがねえ~。),もうめちゃくちゃいいですね。ファンキーかつメロウという理想的な夏うたですわ。

 まあ,椎名林檎自体もかなり良くて,自他ともに認める中出し弁護士としては,うーん寝てみたい~♪感じですわなあ~ムフフフ。

 さて,明日も暑そうだわい。
 

 
1 ちょっと固い話になって恐縮なのですが,6/22(先週の月曜)付で,経済産業省から侵害判定諮問委員に任命されました。
 
 この侵害判定諮問委員って聞きなれないネーミングでしょうが,税関での水際対策のやつで,従来「不正競争防止法調査員」と呼ばれていたやつです。こっちの名前の方がわかりやすいですね。

 つまりは,不競法違反の輸入品を水際で押さえたいのですが,専門家に聞かねえとわからないやつもありますよね。そういうときに,あーじゃこーじゃ言う人,ま,平たく言うとこんな感じなわけですね。

 ほんで,非常勤の経済産業省の職員扱いとなり,国家公務員となってしまったのです~柄にもなく~♪とは言え,弁護士の仕事は従来とおりですので,別に変化があるわけではありません。

2 いやあでも不思議なもんですね。こういうのって本当何の前触れもなく突然オファーが来ます。ただ,よく考えると,レクシスネクシス・ジャパンからの本の執筆のオファーも,判例時報からの評釈のオファーも,そう言えば何の前触れもなく突然でしたわ。

 世の中色々突然なわけですね。

 これで私もエスタブリッシュメントに近づいてきたわけっすかな。こんなブログで与太話書いている場合じゃないってことかなあ。ムフフフ。
1 すっかり春のような日が続いている東京です。このまま暖かくなるといいのですが,さすがにもう一度くらい寒の戻りもあるかなあ。でも今週末は,もう彼岸ですので,寒の戻りって言っても大したことはないかもしれませんね。

 で,金曜に続いて,法改正絡みの話です。一般には,こちらの方が大きく取り上げられている不正競争防止法の改正の話ですね。
 今日の日経の法務面「営業秘密、企業が自衛強化」も,それに関する話ですもんね。

 ま,とは言え,空中戦であーでもないこーでもないって言ってもしょうがないので,主な条文を見て,それにコメントを付けるという,この前の特許法のやり方と同じやり方でいきましょう。

2 では条文のハジメの方から,改正案を見て行きましょう。

 不正競争行為とは何かを定義する,2条1項に,新たに10号が加わりました。以降の条文は一個づつずれます。

十 第四号から前号までに掲げる行為(技術上の秘密(営業秘密のうち、技術上の情報であるものをいう。以下同じ。)を使用する行為に限る。以下この号において「不正使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(当該物を譲り受けた者(その譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生じた物であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)が当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を除く。)

 経産省によりますと,「営業秘密侵害品の譲渡・輸出入等を禁止し、差止め等の対象とする(民事)とともに、刑事罰の対象とします。(刑事)」というので,まずは,定義に加えたということでしょう。

(技術上の秘密を取得した者の当該技術上の秘密を使用する行為等の推定)
第五条の二
技術上の秘密(生産方法その他政令で定める情報に係るものに限る。以下この条において同じ。)について第二条第一項第四号、第五号又は第八号に規定する行為(営業秘密を取得する行為に限る。)があった場合において、その行為をした者が当該技術上の秘密を使用する行為により生ずる物の生産その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為として政令で定める行為(以下この条において「生産等」という。)をしたときは、その者は、それぞれ当該各号に規定する行為(営業秘密を使用する行為に限る。)として生産等をしたものと推定する。

 政令で定める行為が何かはまだわかりません。ただ,推定の条件としては,条文上,①第二条第一項第四号、第五号又は第八号に規定する行為があったこと,②その行為をした者が当該技術上の秘密を使用する行為により生ずる物の生産その他技術上の秘密を使用したことが明らかな行為があったこと,とありますので,これらの事実については,原告で主張・立証しないといけないようです(つまりは推定規定を使うための要件事実か)。

 罰則です。21条1項です。
八 不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第二号若しくは第四号から前号までの罪又は第三項第二号の罪(第二号及び第四号から前号までの罪に当たる開示に係る部分に限る。)に当たる開示が介在したことを知って営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

 これは,経産省によりますと,「不正開示が介在したことを知って営業秘密を取得し、転売等を行う者を処罰対象に追加します。」ということですので,転売した業者を罰するためのものですね。

 同じく,罰則に追加されたものです。
九 不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、自己又は他人の第二号若しくは第四号から前号まで又は第三項第三号の罪に当たる行為(技術上の秘密を使用する行為に限る。以下この号及び次条第一項第二号において「違法使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者(当該物が違法使用行為により生じた物であることの情を知らないで譲り受け、当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供した者を除く。)

 これは,上記の「営業秘密侵害品の譲渡・輸出入等を禁止し、差止め等の対象とする(民事)とともに、刑事罰の対象とします。(刑事)」のうちの刑事の所ですね。

 あと,罰則等に関しては,かなり改正されていますが,読めばわかると思いますので,これらの純新設で,わかりにくいと思われるものだけにしておきました。

3 こう見ると,今回の不正競争防止法改正は営業秘密に関する改正がメインであり,しかもそのうち,技術上の秘密を特別視していることがわかります。

 ようするに,技術上のノウハウについて,っていうことですね。で,日経の朝刊もそのことについて先進的な企業を紹介したってわけです。

 まあそれはいいのですが,特許とノウハウの切り分けの話は気になります(転職の自由とか憲法上の論点についてはそういうのが好きな暇人の所を見て下さい。)。

 ここで何度も書いているし,自分の書いた本「知財実務のセオリー」でも書いてますが,メルクマールはたった1つです。
 それはリバースエンジニアリングでわかるかどうかです。製造法など物が手に入っても痕跡が全く見つけられないっていうのも含みますが,世界で1つしかないシステム,大きな機械・構造物など,手に入れたら痕跡はわかるだろうが,手に入れることは実際難しい~というようなものもリバースエンジニアリングできません。

 ノウハウか,特許出願かは,このメルクマールで選別するのみです。お金が無いからノウハウ化するというのは,やらないよりはマシかもしれませんが,その程度のものです。リバースエンジニアリングでわかるようなものを金を惜しんで特許出願しなかったら,出願費用の100倍1000倍で,損害を被ることもあるでしょうね。

 ま,こういうことは,私よりも馴染みのインチキ知財コンサルに聞いた方が早いかもしれませんね,オホホホ。

4 あとこの話とは全然違うどっちかというと特許の話になるのですが,発明者名誉権について,そこそこ重要な高裁レベルの判断が出ていますので,ちょっと注目しておいた方がいいでしょう。

1 本件は,被告(One-Blue,LLC。ブルーレイディスク製品(BD)に関する標準必須特許のパテントプールを管理・運営するアメリカ合衆国の法人)が,原告(イメーション株式会社。米国法人3M社から分離独立して設立されたImation Corporationを中心とするグループ(イメーショングループ)に属する日本法人。「TDK Life on Record」ブランドのBDを販売。)の取引先の小売店3社(エディオン,ヤマダ電機,上新電機)に対し,平成25年6月4日付けで,被告の管理する特許権に係るライセンスを受けていないBDの販売は特許権侵害を構成し,特許権者は差止請求権を有する旨の通知書を送付した(本件通知書,本件告知)したことから,原告が,被告に対し,(1)本件告知は,不正競争防止法2条1項14号の虚偽の事実の告知又は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条の不公正な取引方法に該当すると主張して,不競法3条1項又は独禁法24条に基づき,告知・流布行為の差止めを求める(本件請求(1))とともに,(2)本件告知は,不競法2条1項14号の虚偽の事実の告知に該当し,又は原告の法律上保護されるべき営業上の利益を違法に侵害するものであると主張して,不競法4条又は民法709条に基づき,損害賠償金1億1000万円(本件告知による損害1億円と弁護士費用1000万円の合計)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年10月17日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(本件請求(2))事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(嶋末さんの合議体ですね。)は,原告の請求の一部(特に本件請求(1)の方)を認容しました。要するに,虚偽の事実の告知はあったということですね。

 まあよくある,特許権侵害での告知が,不競法2条1項14号にあたるパターンのやつではあるのですが,注目すべきは,いかなる理由で,特許権侵害が否定などされた場合に,信用毀損行為に当たるかという点です。

2 問題点
 特許権侵害の場合,相手方の取引先に訴訟提起や権利侵害の事実を告知することってあります。でも,それが,「虚偽の事実」告知ならば,不正競争行為に当たるというわけです。

 ついこの間も,大阪地裁の事例を取り上げました。この事例の場合,そもそもイ号に当たるものの取引がなかったわけで,要件事実的に行くと,構成要件充足性の話の前の「実施」の部分で切られたってやつです。

 ま,兎も角も,客観的には特許権侵害ではなかったということになり,「虚偽の事実」になったわけです。

 これ以外で,客観的には特許権侵害にはならない場合としては,構成要件充足性がなかった場合,さらに,抗弁のうち,無効の抗弁が認められて特許権侵害にならなかった場合なども考えられます。

 で,それ以外には何かありますの?っていうのは問題です。
 特許権侵害の抗弁ってそんなに多くないです。でも,最近何か加わりませんでしたか?そう,あれです。
 FRAND宣言による権利濫用の抗弁ってやつがありましたね。知財高裁の大合議まで行って,日本版アミカスブリーフだとか何とかで,裁判所のおぼえめでたくしたい弁護士連中がわんさか集ったっていうしょうもない事件です。

 で,この事件によると,FRAND宣言による特許に関して,差止請求をした場合,権利行使できない場合もあるということになったわけです(「FRAND宣言の目的,趣旨に照らし,同宣言をした特許権者は,FRAND条件によるライセンス契約を締結する意思のある者に対しては,差止請求権を行使することができないという制約を受けると解すべきである」という判示あり。)。

 ただ,とは言え,この大合議の事件,本案については,あくまでも損害賠償請求権の不存在であることに注意すべきですね。つまり,上記の判示はあくまでも傍論です。聞いていないことにに答えただけであって,先例性のあるレイシオ・デシデンダイにはならないものです。

 で,本件に戻りますが,特許権者というかその委任等を受けたパテントプール側が,BDの必須特許に基づいて,小売業者に権利行使というか警告書を打ったのですね(「被告は,被告プール特許権者からの委託に基づき,原告の取引先であるエディオン,ヤマダ電機及び上新電機の小売店3社に対し,平成25年6月4日付けで,被告の管理する特許権に係るライセンスを受けていないBDの販売は特許侵害を構成し,特許権者は差止請求権及び損害賠償請求権を有する旨の本件通知書を送付した。」)。
 他方,原告は,パテントプール側に,「公正で合理的」な実施料を支払う意思はあると言い続けていたようです。
 この原告とパテントプール側との交渉過程は重要なのですが,ポイントしては,パテントプール側は,うちはFRANDでやってまっせ,大丈夫でっせ,と言うだけで,何故そう言えるかという資料的なものを出さなかったようなのですね。そして,FRAND条件ならもっと低い料率のはずだという原告と,これで契約しろというパテントプール側とでの,よくあるデッドロックに乗り上げたあげく,パテントプール側が小売業者に警告書を発してしまったと思われます。

 さて,そんなこんなで判決を見てみましょうかね。

3 判示
「(4) 「虚偽の事実」について
ア 本件告知は,「上記特許権の各特許権者は,貴社に対し,上記特許権侵害行為の差止めを請求する権利及び上記特許権侵害行為によって生じた損害の賠償をする請求する権利を有しております。」と記載しているところ(甲4),原告は,FRAND宣言を行った被告プール特許権者による差止請求権の行使は権利濫用となり,被告プール特許権者が即時の差止請求権を有しているとはいえないのに,これを有しているかのように記載したことは虚偽の事実の告知に該当する,と主張する。
イ そこで,まず,FRAND宣言と差止請求権の行使の関係について検討するに,FRAND宣言された必須特許(以下「必須宣言特許」という。)に基づく差止請求権の行使を無限定に許すことは,次に見るとおり,当該規格に準拠しようとする者の信頼を害するとともに特許発明に対する過度の保護となり,特許発明に係る技術の社会における幅広い利用をためらわせるなどの弊害を招き,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害するおそれがあり合理性を欠くものといえる。
 すなわち,ある者が,標準規格へ準拠した製品の製造,販売等を試みる場合,当該規格を定めた標準化団体の知的財産権の取扱基準を参酌して,当該取扱基準が,必須特許についてFRAND宣言する義務を会員に課している等,将来,必須特許についてFRAND条件によるライセンスが受けられる条件が整っていることを確認した上で,投資をし,標準規格に準拠した製品等の製造・販売を行う。仮に,後に必須宣言特許に基づく差止請求を許容することがあれば,FRAND条件によるライセンスが受けられるものと信頼して当該標準規格に準拠した製品の製造・販売を企図し,投資等をした者の合理的な信頼を損なうことになる。必須宣言特許の保有者は,当該標準規格の利用者に当該必須宣言特許が利用されることを前提として,自らの意思で,FRAND条件でのライセンスを行う旨の宣言をしていること,標準規格の一部となることで幅広い潜在的なライセンシーを獲得できることからすると,必須宣言特許の保有者がFRAND条件での対価を得られる限り,差止請求権行使を通じた独占状態の維持を保護する必要性は高くない。そうすると,このような状況の下で,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者に対し,必須宣言特許による差止請求権の行使を許すことは,必須宣言特許の保有者に過度の保護を与えることになり,特許発明に係る技術の幅広い利用を抑制させ,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害することになる。
そうすると,必須宣言特許についてFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者に対し,FRAND宣言をしている者による特許権に基づく差止請求権の行使を許すことは,相当ではない。
 他面において,標準規格に準拠した製品を製造,販売する者が,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しない場合には,かかる者に対する差止めは許されると解すべきである。FRAND条件でのライセンスを受ける意思を有しない者は,FRAND宣言を信頼して当該標準規格への準拠を行っているわけではないし,このような者に対してまで差止請求権を制限する場合には,特許権者の保護に欠けることになるからである。もっとも,差止請求を許容することには,前記のとおりの弊害が存することに照らすならば,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの認定は厳格にされるべきである。
 以上を総合すれば,FRAND宣言をしている特許権者による差止請求権の行使については,相手方において,特許権者が本件FRAND宣言をしたことに加えて,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であることの主張立証に成功した場合には,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されないと解される(以上につき,知財高裁平成26年5月16日決定・判時2224号89頁[乙21大合議決定])。
ウ これを本件についてみると,被告プール特許権者は,被告パテントプールに属する本件特許権につきFRAND宣言をしているのであるから,FRAND条件によるライセンスを受ける意思のある者に対して差止請求権を行使することは権利の濫用として許されない。
 そして,原告がFRAND条件によりライセンスを受けた場合には,原告が適法に製造又は輸入した原告製品を小売店が販売することも適法となるのであるから,原告がFRAND条件によるライセンスを受ける意思があると認められる場合には,被告プール特許権者が,原告の製造又は輸入した原告製品を販売する小売店に対し差止請求権を行使することは,権利の濫用となるものと解するのが相当である。・・・・・
 上記に鑑みると,原告ないし米イメーション社は,被告ないしOne-Blue Japan株式会社に対し,FRAND条件によるライセンスを受ける意思があることを示してライセンス交渉を行っていたものと認められ,原告が米イメーション社を中心とするイメーショングループに属する日本法人であること(前記前提となる事実(1)),前記のとおり,FRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの認定は厳格にされるべきことにも照らすと,原告はFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であると認めるのが相当である。
 この点,原告ないし米イメーション社と被告との間には,妥当とする実施料について大きな意見の隔絶が存在する。
 しかし,ライセンサーとライセンシーとなろうとする者とは本来的に利害が対立する立場にあることや,何がFRAND条件での実施料であるかについて一義的な基準が存するものではなく,個々の特許の標準規格への必須性や重要性等については様々な評価が可能であって,それによって妥当と解される実施料も変わり得ることからすれば,原告ないし米イメーション社の交渉態度も一定程度の合理性を有するものと評価できる。加えて,被告の交渉態度も,必ずしも原告ないし米イメーション社との間でのライセンス契約の締結を促進するものではなかったと評価できることからすると,両社間に大きな意見の隔絶が長期間にわたって存在したとしても,原告においてFRAND条件でのライセンス契約を締結する意思を有するとの認定が直ちに妨げられるものではない。
オ 上記のとおり,本件告知の時点では,原告はFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有していたと認められるから,被告提示実施料がFRAND条件に違反するものであったか否かにかかわらず,被告プール特許権者が原告やその顧客である小売店に対し差止請求権を行使することは,権利の濫用として許されない状況にあったと認められる。
 そして,上記のように,差止請求権の行使が権利の濫用として許されない場合に,差止請求権があるかのように告知することは,「虚偽の事実」を告知したものというべきである。
 このように解することは,平成16年法律第120号により特許法104条の3が追加される前は,無効事由を有する特許権の行使は権利の濫用とされていたところ(最高裁平成12年4月11日第三小法廷判決・民集54巻4号1368頁[キルビー事件]),そのような特許権に基づく特許権侵害警告は「虚偽の事実」の告知と解されていたこと(東京地裁平成16年3月31日判決・判時1860号119頁等参照)とも整合する。」

4 検討
 上記のことをまとめると以下のとおりになると思われます。

 「虚偽の事実」に当たる場合
→差止請求権の行使が権利の濫用として許されない場合
→特許権者が本件FRAND宣言をしたこと+相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であること

 ということでしょうかね。つまりは,「虚偽の事実」に当たる場合のパターンが,また1つ増えたということになるでしょう。

 ま,必須標準特許って,このBDとか,通信規格とか,基本そういうものに限られると思います。要するに,規格を統一した方が,多くの人の便利に資するような技術分野ですね。

 そういうような特許の場合,通常FRAND宣言しているでしょうから,「虚偽の事実」の告知になってしまうことも今後あり得ることになったわけです。でも,そうじゃない技術分野や,そうである技術分野でも必須標準特許になっていない特許では関係のない話です。

 ですので,この話~あんまり大きな展開を求めてもしょうがないと思いますけどね~どっかの誰かさんへ。ムフフフ。

 ま,兎も角も,本件,事例としては,結構面白いものですので,今後たくさん評釈等もされるのではないかと思います。
 あ,あそうそう,独禁法関係の判断はしていませんし,お金の請求は棄却されていますのでね(この判断も結構重要。)。
1 概要
 本件は,被告(日亜化学工業)による本件プレスリリース(東京地方裁判所平成23年(ワ)第32488号,第32489号という先行訴訟に関する文章,後の方参照。)の掲載が不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当し,先行訴訟の提起等が不法行為を構成するとして,原告(立花エレテック)が,同法4条及び民法709条に基づき,損害の合計額である500万円及びこれに対する平成26年4月13日(不正競争行為及び不法行為の後日である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。

 これに対して大阪地裁第26民事部は,原告の請求を一部認めました。つまりは,被告のプレスリリースは,不正競争行為に当たるという判断です。

 ちょっと,ニュースにもなった結構大きな会社同士の,特許権侵害VS信用毀損行為の関係の事件です。

2 問題点
 メインの問題点としては,上記のとおり,プレスリリースが,不正競争行為に当たるかどうかというやつです。

 不正競争防止法2条1項14号です。

 「十四  競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

 これは短くてわかりやすいのではありますが,この「虚偽の事実」っていうのが問題です。これは客観的真実に反する事実のことを言うとされております。

 そうすると,結構厳しいですよね。どういうことかというと,神でもない人間に真実なんてわかるわけがありません。まあそんなことを議論し出すと私の大好きな哲学的諸問題にぶち当たるのですが,そこまでも行かず,初めは,こりゃ絶対真実だと思っていても,後でひっくり返った場合の話です。
 具体的には,特許権侵害の事件で,構成要件充足性がバッチリなので,絶対侵害じゃ,こんなやつの商品は扱うな,模倣者だ,コピーキャットだ~と散々煽ったのはいいものの,構成要件充足性は確かにあったけど,進歩性なしで無効!ってなる場合もあります。

 これは初めにはなかなかわかりにくい話です。でも,侵害じゃないってことがはっきりしたわけで(後々の話ですが。),客観的真実には反することになりますよね。

 まあ,そういうこともあり,訴訟を提起しようとする直接の相手方以外に,何らかのアクションをするのはリスクが高い行為と言えます。

 でもねえ~,結構やっちゃったりするんだよねえ。早い段階で,ここら辺に詳しい代理人が就いていれば,その指示で警告書とか記者発表会とかIR関係をやるならまだしも,独自の考えや,最初に頼んだ弁理士やら弁護士にそこら辺の塩梅がわかってない場合,後で悲惨なことになります。

 ただ,こういうことって,当然,独自に法務部とか持っておらず,スポット的に弁護士などに依頼せざるを得ない中小企業で陥りやすい話です。結構大きな企業,それこそ法務部だけではなく,知財部も有している企業が,迂闊に余計なことをするってことは滅多にありません。
 
 会社内部でモミ,それでも結論が出ない場合は,外部の弁護士等に,こういうプレスリリースやっても大丈夫かねえってことで,案文のチェック等までやりますからね。

 ところが,被告の方は,こんなプレスリリースをしちゃったのですね。

「               プレスリリース目録
 台湾Everlight社製白色LEDに対する新たな特許侵害訴訟の提起について

 2011年10月4日,日亜化学工業株式会社(本社:●●●●●●,社長:●●●●)は,株式会社立花エレテック(本社:●●●●●●,社長:●●●●。以下「立花社」)を被告として,台湾最大のLEDアッセンブリメーカーであるEverlight Electronics社(本社:●●●●●●●●●●,董事長:●●●。以下「Everlight社」)が製造し,立花社が輸入,販売等する白色LED(製品型番:GT3528シリーズ,61-238シリーズ)について,当社特許権(第4530094号。以下「094特許」)に基づき,侵害差止め及び損害賠償を求める2件の訴訟を東京地方裁判所に提起致しました。

 当社は,これまでも当社特許を侵害する企業に対しては,全世界において当社の権利を主張し,とりわけ,日本市場での当社特許の侵害行為に対しては,断固たる措置を取ってまいりました。しかしながら,昨今の中韓台LEDチップ及びパッケージメーカーによる,特許権を無視した日本市場での行動は目に余るものがあります。このような日本市場での当社特許の侵害行為に対する対抗措置の一環として,今年8月にEverlight社製白色LEDを取り扱っていた会社に対する訴訟を提起し,当該事件の被告は当該白色LEDが当社特許の権利範囲であることを認め,その販売等を中止しました。今回提起した訴訟は,この訴訟に続くものであり,立花社に対してもその販売等の中止等を求めるものです。

注:対象特許の概要:現在一般に流通している白色LEDは,青色発光のLEDチップに黄色など様々な色を発光する蛍光体を組み合わせて,白色系の発光を得ております。今回の対象特許(094特許)は,このような白色LED内の蛍光体の濃度について規定した技術であり,蛍光体の種類に限定はありません。

 他方,原告とEverlight社には,白色LEDのディールは全く無かったようです。原告のHPで取扱いメーカの中に,Everlight社が挙げられていたものの,多少のディールがあったからで,詳しくは,有色のLEDのみだったというわけです(今回の特許のポイントは白色LED)。
 つまりは,ちょっと調べりゃ,原告の取扱商品にイ号が全く含まれないってことはもう明白も明白だったような気がするのですが,何故か,被告は,原告を相手取って特許権侵害訴訟を提起するは,上記のプレスリリースはするは,で喧嘩腰だったのですね。

 ちゅうことで,裁判所の判断に行ってみましょう。

3 判旨
「(1)本件プレスリリースの記載内容 本件プレスリリースには,「台湾Everlight社製白色LEDに対する新たな特許侵害訴訟について」との見出しの下,第1段落において,被告が,原告を相手方として,エバーライト社が製造する本件製品を,原告が輸入,販売等したとして,本件特許権に基づいて侵害の差止め及び損害賠償を求める2件の訴訟(先行訴訟)を提起したことが記載されている。被告が原告を相手方として先行訴訟を提起したこと自体は客観的な事実であり,エバーライト社が製造した本件製品を原告が輸入,販売等する旨の記載は,先行訴訟における被告の主張内容をそのまま説明するにとどまる。本件プレスリリースの読み手が,見出し及び第1段落のみに接した場合,原告が本件製品を輸入,販売等したことを理由に本件特許権を侵害するとして被告が先行訴訟を提起した旨を公表するものであると理解するとしても,本件プレスリリースに記載された内容に虚偽の事実があると認めることはできない。
 他方で,本件プレスリリースの第2段落において,中韓台LEDチップ及びパッケージメーカーによる,特許権を無視した日本市場での行動は目に余るものがあり,日本市場での被告の特許権への侵害行為に対する対抗措置の一環として,平成23年8月にエバーライト社製白色LEDを取り扱っていた別会社に対する訴訟を提起した旨とともに,上記別会社が上記白色LEDが被告特許の権利範囲であることを認めて販売等を中止した旨が記載されており,第1段落においてエバーライト社が台湾最大のLEDアッセンブリメーカーであると紹介されていることを併せ考えると,上記別会社が,中韓台LEDチップ及びパッケージメーカーが被告の特許権を侵害していることに関わりを有していたと読み取れる。その上で,先行訴訟が上記別会社に対する訴訟に続くものであり,原告に対しても販売等の中止等を求める旨が記載されている。このように,見出しの下,第1段落と第2段落を併せ読むと,これらの記載は,原告を上記別会社と同列に扱った記載となっており,先行訴訟が上記の対抗措置の一環に含まれるものであり,原告が,エバーライト社製の本件製品を輸入,販売等することにより本件特許権を侵害しており,少なくともその点において,中韓台LEDチップ及びパッケージメーカーによる特許権を無視した侵害行為に関わりを有しているということを意味していると認められる。特に,第2段落では,上記別会社が,被告の提訴直後,被告の特許権侵害を認めて販売等を中止したと記載されているため,読む者をして,原告も上記別会社と同様の侵害行為を行っているものと強く思わせる記載内容となっている。
 このような記載は,被告が,原告を相手に訴訟(先行訴訟)を提起したのに伴って,訴訟提起の事実を公表し,先行訴訟における自らの主張内容や見解を単に説明するという限度を超えており,原告の営業上の信用を害するものである。・・・」

4 検討
 上記の判旨に続き,客観的真実に反する→過失有り,ということで,不正競争行為と認定しています。

 他方,訴訟の提起自体は不法行為じゃないよとしたみたいですね。

 まあしかし,こんな大手がどうしてこう何か焦ったようなことをしたのか非常に疑問ですね。ほんで,更なる疑問はどうしてこれを法務や弁護士が止められなかったのかということです。

 こういう系の事件では,知財高裁平成18(ネ)10040等(平成19年10月31日判決)が有名です。これは特許権者が,小売のスーパー(スーパーですよ!)に置かれた台湾製の液晶テレビに対し仮処分の申立てなどをして,ご丁寧に記者会見までした件の後始末のやつです。

 やっぱこういうのって内部や依頼された弁護士等で,いやあ,これってちょっとマズくないですか~って抑えるべきなんでしょうねえ。あ~あ,クワバラクワバラ。

5 昨日の研修
 ということで,昨日,弁理士会と二弁との合同研修に行ってきました。
 議題は,「電子化された出版物に関する著作権法上の問題」です。

 昨年までは,何故かお金を取る研修だったためか,20~40名程度という非常にほそぼそとした研修だったのですが,今年からお金を取るのをやめて,すごい人の入りでした。100名以上来ていたのではないでしょうかね。

 まあ,弁護士の人は知っていると思いますが,今,研修ってちょっと気の利いたものってほぼ全部有料になっています。テキスト費に500円だ~1000円だ~って感じです。
 でもこれ,おかしくないですかね。会費を払っているにも関わらず,こんなお金を取られるわけですよ。

 現在,弁護士はどんどん増えていますので,会費,つまり売上げはドンドン増えているわけです。勿論,それに応じて,経費も発生しますが,変動費と固定費ってわかりますかね。人が2倍になると売上げは2倍になりますが,じゃあ経費は?2倍になるものと,そうじゃないものに分かれるわけです。
 損益分岐点を越えて売上げが伸びると,通常,利益も大きくなるわけです。日弁連も単位弁護士会だたってそうです。ですので,ちょびっとのテキスト費なんて取らなくても赤字なんかにはなりません。

 その証拠に,司法制度改革の余波で,会員の増えた弁理士会の方は,数年前に,2万円だった会費を15,000円に値下げしたのですよ。3/4です。
 日弁連と弁護士会だって,やろうと思えば,併せて3万円くらいの会費でできるはずです。でも,クソサヨク御用達の,弱者だの人権だのという,狂信的カルト活動にお金をジャブジャブ使っているので,本当に必要なことが見えないのでしょうね。

 ま,これをおかしいと思わない感覚,本当どうかしてます。こんな団体,全中同様潰してもらうのがいいと思いますよ。どうするかな~。大分,土建ネットワークからウシシシって言うのがいいでしょう。大学の先生もそうですが,俺らがこんな目に遭うとは~ってことを弁護士会の幹部連中にも,そのうち味あわせてあげますよ~♡

 おっと議題が逸れました。
 で,そんな大盛況の研修ですが,弁理士会からは,所謂電子出版権の改正法の解説でした。

 この所謂電子出版権って,知る人は知ってますが,出版社がレコード会社みたいに著作隣接権が欲しいよ~って言ったことが発端です。
 で,その後経団連から,著作隣接権には猛反対!でも電子出版権ならいいよ~って言うのが出て,その後結構あっさりと収束して,改正に至ったわけです。

 しかし,そもそもおかしいと思いませんか?

 この電子出版権って,非常に唐突に出てきたわけです。企業法務戦士の雑感さんのブログにも,「あっと驚くようなカウンターパンチ」と書かれておりました。
 いやあ,経団連に,電子出版権なんて構想する力はありませんよ。ねえ,これねえ,元ネタがあったのです。それが,弁理士会のパテントなどに載った記事です。

 この記事などを見た経団連の方がいただき!と思ってこの方向へ一気に進んだようなのですね。いやあ驚きですね。

 弁理士会の自画自賛~しかもデマ?違います,上記の記事を書かれた先生が,経団連の担当者から直接聞いたということなので,間違いないです。
 ですので,その記事を書かれた先生が講師をした昨日の研修は極めて有意義だったわけですね。行きそびれたあなた~残念でした。

 そうだ,そうだ,重要なことを一つ。
 昨日研修に来ていただいた方,特に弁護士の方は,研修終わり間際,こんなことを思ったのではないですかね。何故,妙な質問コーナーを伸ばす??~早く締めろよバカ司会者!
 違いますかね。ちなみにこのバカ司会者は私です。この研修の司会者だったのですね。

 実は,終われない理由があったのです。弁理士会は弁護士会と異なり,監督官庁があります。経産省です。更に具体的にはその外局の特許庁ということになります。
 昨日の研修は,法定の継続研修(弁理士は一定の研修を受けることが法上の義務となっております。弁理士法31条の2です。)になっており,当然に,特許庁の監督を受ける対象です。

 ですので,20分早く終わったからって,研修終了!ってできないのです。1時間1単位で,昨日は2時間の講義で2単位だったので,早く終わったなら,つなぎの出し物をしないといけないわけで,それが質問コーナーだったわけですね。
 まあ,弁護士の皆さんには義務のないことに付き合わさせて悪いなあとは思うのですが,何故早く終わったかについては,弁理士だけの責任じゃありませんので,ね。

 とは言え,全体的になかなか良い研修だったのではないかと思います。今回のこの研修,開催までにも本当一悶着ありまして,昨日盛況のうちに終わったのは非常に良かったと思います。

 で,研修終わりで,講師の弁理士の先生と,会場が弁護士会だったため,地下の桂で懇親会などもやりました。これも実に楽しかったですね。

 先週の金曜も,研修終わりに弁理士の先生と飲みに行ったのですが,実は今日もこれから異議申立の研修があり,その後,またまたまた弁理士の先生と飲みに行くことになっております。いやあ元気だなあ私って。

6 追伸(16/02/15)
 この判決について,知財高裁の控訴審判決が出ました(知財高裁平成27(ネ)10109,平成28年2月9日判決)。
 驚くことに,一審被告が逆転勝訴です。

 どういう論理で,請求を棄却したかというと,過失なし!ということらしいです。

「上記の状況によれば,一審被告は,一審原告のウェブサイト及びこれとリンクされているエバーライト社のウェブサイトを見て,一審原告がエバーライト社のウェブサイトに掲載されている白色LED製品等を取り扱っており,取引業者からその商品を購入したいとの申込みがあり,価格等の条件が合致すれば,これを販売すると理解したものであり,一審原告がエバーライト社のウェブサイトに掲載されている本件製品を含む白色LED製品について譲渡の申出をしていると理解したとしても,無理からぬところである
 そして,一審被告は,その後本件製品と本件製品に使用されているLEDチップの構造,構成材料等を分析し,本件特許発明の当時の請求項1の技術的範囲に属することなどを確認した上で,先行訴訟を提起し,本件プレスリリースを掲載したのであり,一審被告が本件プレスリリースを掲載したとしても,一審被告には過失があったものとは認められない。
 なお,本件特許発明の請求項1については,その後訂正がなされているものの,一審原告は,本件訴訟において,仮に一審原告が本件製品の譲渡等をしていたとしても,本件製品は本件特許権を侵害するものではないから,一審被告による本件プレスリリースの掲載は,不正競争行為に当たる,等の主張はしていないのであるから,本件の不正競争行為の過失の判断において,本件製品が本件特許発明の訂正後の請求項1の技術的範囲に属するか否かに関し,これ以上詳しく判断する必要はない。」

 まあ,私,別にこの一審原告の方の肩を持つわけではないですが,どうですかね~この判示。しかも,このなお書き。

 これ頭に来ませんかね。そう判断するなら,そう釈明でもすりゃあいいのに,偉そうに「これ以上詳しく判断する必要はない。」って所ですからね。本当,バッカじゃねーのって思いますね。

 こういうのって何なんでしょ,事なかれ主義?って言うんですかねえ。まともな審理を期待する方がアホってことでしょうか。
 

1  2  3  4 
カレンダー
05 2019/06 07
S M T W T F S
2 3 8
9 12 13
16 19 22
23 26 27 28 29
30
ブログ内検索
プロフィール
HN:
inagawaraw
性別:
男性
職業:
弁護土・弁理土
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]