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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 先般ここで書いたように,通勤時間に前の夜のWBSを見ております。
 従前は,ワンセグのウォークマンで見ていたので,随分画質はアップです。ただし,その場で,ストリーミング再生をすると,無茶苦茶容量を取りますので,朝,LANで持ち出すようにしているわけですね。

 で,水曜のWBSにちょっとこれは・・・というサービスが紹介されておりましたので,その話です。

 見た人は分かると思いますが,給料の日払いに関する話です。

 アベノミクスか何か知りませんが(本日2万円突破ですね。),好景気であることは間違いなく,人不足がどこの業界も顕著です。
 で,そういうときに給料の日払い対応をすると,アルバイトが凄く集まるらしいのですね。WBSでは3倍とか言ってましたかな。

 まあそれはそうだろうし,色んな働き方に対応して,色んな支払い方法もあればいいわけで,そこまでは特段文句のある話ではありません。

 ところが,その日払い対応のためのサービス(アプリで対応するようです。)の話を聞いて,私はこれは・・・と思ったわけです。

 スキームは,こうです。
 アプリで日払い金額を申請するとそのお金を振り込んでもらえるということです。それはそうだし,ここまではいいのですが,問題はその後です。

 このビジネスモデルはどこでマネタイズしているかというと,支払いを受けるアルバイトや従業員からアプリ使用料名目で金をとっているわけです。
 その額は,何と固定で700円。額が多額になれば,さらに%で金をとるような説明もしていました。

 他方,給料を支払う側の企業からは金を取らないようです。つまり,このビジネスモデルは,従業員側にリスクを被せているわけです。

2 どうですか?労働問題や消費者問題の弁護士の先生の皆さん,看過できる話ですかね。

 まあ私は金権・悪徳弁護士。長いものには巻かれろ,寄らば大樹の陰,正義も人権も大嫌い,野球は巨人,車はトヨタ,政党は自民党,という生粋の御用弁護士でございます。

 でもねえ,インチキは嫌いなんだよねえ。

 まず,問題になりそうなのが,労働基準法24条ですよ。
(賃金の支払)
第二十四条  賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
2  賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

 1項に直接労働者に全額を,と書かれております。700円の控除って許されるのでしょうか?
 例えば,振込の場合,振込手数料を控除してもいいのでしょうか?これはダメですよね。

 なので,このアプリを通しての,例えば,10000円の給与に対して,700円を控除して9300円の支払いということになると(WBSはこのような例でした。),労働基準法24条違反のような気がします。

 これねえ,罰則があるのですよ。労働基準法120条1号,30万円以下の罰金ですけど,逮捕・勾留も当然できるものです。

3 とこんなことを書くと,いやいやいやいや,給与の支払いじゃないですよ。あくまで,アプリのサービス業者と従業員の話で,会社は関係ない~♪ってなるかもしれません。

 でもね。そうすると今度はさらにことは重大です。

 じゃあ,なんでこのアプリ・サービス業者は,700円控除してはいるものの9300円もの金を振り込むのかってことです。伊達や酔狂でやっているわけではありません。
 仮にどこからも支払いが無ければ9300円の持ち出しです。

 だとすると,後で会社からアプリのサービス業者に,10000円振り込まれるわけですよ。

 そうすると,これは何ですか?信用供与ですわ。
 早い話,給与債権を担保にしての金貸しと変わらないわけです。まあ別に資本主義の世の中,頭の良いやつがうまいアイデアで金を儲けるのは悪いことではありません。

 でもね,金貸しなら,貸金業法の規制があり,少なくとも都道府県知事の登録を受けないといけないわけです(3条)。

 さらに,利息制限法という法律もあります。10000円だとこの利息制限法の制限では年20%が限界です。

 そして,みなし利息という規定もあります。

(みなし利息)
第三条  前二条の規定の適用については、金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなす。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。

 本件のスキームだと,1日分の10000円で700円ですから,日率7%という物凄い暴利です。年に直すと2500%という闇金も真っ青な金利なわけです。

 ちなみに,暴利行為には,出資法の罰則があります。

(高金利の処罰)
第五条  金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
2  前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
3  前二項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。

 これが保証料だとしても,同様の規定があります。

 つまり,給与の支払いじゃないとなると,単なる金貸しってことになり,貸金業法や利息制限法に抵触するのではないかということが問題になります。

 さらにこう書くといやいやいやいや,金貸しじゃないですよ~だって9300円の支払いなんかバイトの人に求めるわけないですよ,あくまで会社に求めるだけですわ~となるかもしれません。

 しかし,じゃあその会社がデフォルトになったら?
 沢山日払いに応じたため,資金繰りが悪化して,月末のアプリのサービス業者に払えなくなりました~ってなったら?そのアプリのサービス業者は誰に支払えって言いますかね。

 そりゃ,従業員の人でしょ。

 ね,給与ならば,返せって言えません。ところが実質的に貸金だったりすると,こういうときに返せってなるのです。

4 色々書きましたが,このアプリのサービスは,従業員からマネタイズしている時点で筋悪です。

 これは会社の方の手間暇を省くのですから,会社の方からマネタイズしないといけないスキームですよ。あとは広告費とかそういうのでマネタイズするというそういうことにしておかないといけません。

 何かねえ,今やITに詳しい弁護士も沢山居るわけで,そんな弁護士にちょっと尋ねてやってるはずです。にもかかわらず,ちょっと考えただけで,上に書いたようなリーガルリスクがあるのです。

 いやあ今からでも遅くないので,どこかのIT弁護士に頼んだ方がいいのではないでしょうか。
 あ,私?私はITはITでもInTikiのITですから,力不足ですニャー。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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