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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は昨日配信された弁護士ドットコム経由の記事です。
 ま,前にここでも書いたとおり,こういうのは私の方で元となるコメントを用意して,それを弁護士ドットコムの方で適当に修正(特に縮小)して,公表するわけですね。

 ただ,前回のコメントもそうですが,やはり短くすると舌足らずの所が出ます。ですので,今回も私の元コメントをそのまま掲載しようと思います。自分のメディアを持っているとこういうときは実にいいですね。比較すると面白いかもしれません。

2 *以降 弁護士ドットコムへの当初コメント*

1 立体商標というのは,商標法2条1項に定義があるとおりです。
この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

一  業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

二  業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
 要するに,商売する人が使う識別標識(これが商標のことです。)のうちには,立体的形状も含まれるというわけです。ですので,ロゴやキャラクターの文字や図形の代わりに,立体的形状が構成として加わったのみで,通常の商標と変わりないと考えることもできます。

 しかし,通常の商標は,包装紙や,スマホ・パソコンの筐体や,ディスプレイ内のウェブ上などの,様々な媒体に付されると思います。ところが,立体商標の場合,このような媒体でなく,と言うよりむしろ媒体そのものが商標の役目をしていますから,多少考えにくい所があると思います。

 

2 さて,問題となるのは,この立体商標について,どのような場合に商標権侵害となるかだと思います。

 ちょっと考えると,例えば,今回のジャポニカ学習帳の場合,他社が今回の商標と似たようなデザインのノートを売り出したら,それが商標権侵害になりそうです。このような場合に商標権侵害といえるなら,真似する会社を片っ端から排除でき,企業にとって極めてメリットがありそうです。

でもちょっと待ってください。商標制度とはデザインを保護する制度ではないのです。デザインを保護するのは,意匠制度という別の制度になります。ですので,似たようなデザインのノートが出たから,即立体商標の商標権侵害と言えるかどうかは非常に難しい話だと思います。

 

この点について,特許庁の出している審査基準では,

「「9.(1) 立体商標の類否は、観る方向によって視覚に映る姿が異なるという立体商標の特殊性を考慮し、次のように判断するものとする。ただし、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿が立体商標の特徴を表しているとは認められないときはこの限りでない。

() 立体商標は、原則として、それを特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を表示する平面商標(近似する場合を含む。)と外観において類似する。

() 特定の方向から観た場合に視覚に映る姿を共通にする立体商標 (近似する場合を含む。)は、原則として、外観において類似する。

() 立体商標は、その全体ばかりでなく、原則として、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿に相応した称呼又は観念も生じ得る。

(2) 立体商標が立体的形状と文字の結合からなる場合には、原則として、当該文字部分のみに相応した称呼又は観念も生じ得るものとする。」とあります。

また,最高裁判決では,「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」(最高裁昭和43年2月27日,氷山事件)とあります。

つまり,これらの審査基準や最高裁判決によると,類否つまり侵害が問題となるのは,平面商標(ジャポニカ学習帳の立体商標に類した絵や写真の商標ということ)や,他の立体商標(例えば,文房具屋や本屋の軒先での立体的な看板)などの,「商標」が相手ということになります。

要するに,似たようなデザインのノートが出たとしても,それが「商標」と言えない場合にはそもそも侵害とはならないということです。

 

実は,近時立体商標での商標権侵害の事件で判決まで出たものがありました(東京地裁平成25年()第31446号,平成26年5月21日判決)。これはエルメスのいわゆるケリーバッグの立体商標(5438059号)に対し,完全コピーの海賊品について商標権侵害が争われたという実に興味深い事件でした。しかし,海賊品の販売業者が,答弁書を出したきり,弁護士も付けずに欠席裁判で判決まで行ったため,上記の点,つまり「商標」でない場合には侵害とならないのではないかという点などが,十分に議論されませんでした。

 

その昔,立体商標が話題になったときは,不二家のペコちゃんや,ケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダースの人形などだったため,仮にそれらを真似た人形を掲示した場合,立体商標の商標権侵害となることに異論はなかったと思います。その真似た人形は,通常「看板」であり,「商標」と言えたからです。

他方,今回のジャポニカ学習帳や,ちょっと前に話題になったスーパーカブの場合,実用品ですので,立体「看板」と言える人形の類と同様に考えることが果たして妥当かどうか実に難しいと思います。

 

上記のとおり,商標制度はデザインを保護する制度ではありません。自分の商売と他人の商売とを混同させないようにするための識別標識(商標)を保護し,ひいてはその商標に化体した信用を保護するためのものです。ですので,識別標識としての使用でない場合,つまりは「商標」でない場合には,商標権侵害とならないのです。そのため,「商標」と言えるかどうか疑義の残る実用品の立体的形状の場合,このハードルが厳しいものとなると思います。

例えば,ジャポニカ学習帳と全く同じレイアウト・デザインであったとしても,例えば「ドットコム学習帳」と大きく記載し(こういうのを「打ち消し表示」といいます。),これはジャポニカ学習帳ではない,レイアウト・デザインが似ていてもそれを「商標」として使っているわけではない,とアピールできれば,商標権侵害とならないと思います。何故か?それは商標制度が自分の商売と他人の商売を混同させないようにするためのものだったからです。たとえデザイン等が似ていても,大きく「ドットコム学習帳」とあれば,ショウワノート製ではないと分かり,混同しませんから。

 

兎も角も,これは現時点での私見であり,そのようなエクスキューズを付けないといけないほどの難しい問題だと思います。正確には,立体商標の商標権侵害が争点となり,双方にきちんと弁護士がついた上での最高裁判決などがないと決着が付かない難しい問題です。

ですので,現時点での企業のメリットというと,そういう商標がとれたという宣伝の効果と,弱気な同業他社に対する牽制の効果に留まると思っておいた方がよいと思います。


3 どうでしたか?結構短くなってますよね。弁護士ドットコムのもまとまってはいるのですが,若干短すぎるかなあと思っております。ま,これはこの程度にしておきますかな。

4 追伸
 昨日は何だかはっきりしない天気だったのですが,今日の東京は,爽やか晴天です。気温も若干上がっております。まさに絶好の散歩日和です。

 ということで,品川の運河の方へ散歩に行きました。屋形船が結構浮かんでおります。東京の屋形船といえば,ここ品川と,浅草と,あとは浜松町あたりが有名でしょうかね。そろそろシーズンオフに向かっているのかもしれませんがね。

 ところで,台風が太平洋上にあるのに,湘南はイマイチな波が続いております。結局先週も波が無くてサーフィンできませんでした。あーあ。今年もそうですが,去年も夏の間,あんまり波が無かったんですよね。

 今週末はどうでしょうかね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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