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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,原告(オーディオマニアには有名なアメリカの会社です。)が,商標法50条1項の規定に基づき,被告を商標権者とする登録商標(ロゴで英文字「sure」)について,その指定商品の一部に係る商標登録の不使用取消審判を請求したところ,特許庁が,同請求は成り立たないとの審決をしたため,これに不満の原告が,同審決の取消しを求めた事案です。

 これに対し,知財高裁4部は,審決を取り消しました。

 よくあるパターンの不使用取消審判系のものですね。それに判決は2年近く前のものです。
 ですので,何故こんな事件を取り上げるのか?といぶかる方も多いと思います。

 しかし,この件にまつわる事件が最近大きく報道されました。理由は,商標法79条の「詐欺の行為の罪」により,逮捕者が出たからです。

2 問題点
 商標制度は,最終的には,商標に化体した信用を保護するものと言われております。したがい,ポッと出の商標には信用などが化体しておりませんので,保護の必要性は,実は低いのです。他方,商標登録していなくても,長年使用している商標には,信用が化体しておりますので,逆に保護の必要性は高くなります。

 ところが,日本の商標制度は,登録制ですので,保護の必要性の高低にかかわらず,とにかく早い者勝ちで登録させ,その後,保護の必要性を個別具体的に判断するという制度となっております。ですので,一旦登録しても,使用していない商標については保護の必要性が低くなりますので,3年の不使用を要件として,商標の登録を取り消す制度があるのです。
 これが,いわゆる不使用取消審判(商標法50条)です。

 本件も,古い登録商標があり,そのため自らの商標権をとることができない原告が,不使用取消審判を請求し,その部分に風穴を開け,開いた部分に自らの権利を構築しようとしたものです。

 ところが,審決では,被告の納品書などに商標の使用が認められるからという理由で,不使用ではなく,審判請求は成立しないとしたのですね。
ですが,審決でも,「しかしながら,「納品書」,「領収証」及び「納品書(控)」に「通し番号」,「伝票番号」及び「受注番号」がなくても,「納品書」,「領収証」及び「納品書(控)」は,その役割を果たし得るものであるから,「通し番号」,「伝票番号」及び「受注番号」がないことのみをもって,これらの書証が真正でないとまではいい難いものである。」と一応グレーの部分はあるという判断をしておりました。

 したがい,訴訟での主たる論点は,本当に納品書での商標の使用があったのか,さらに言えば,納品書は偽造でないのか,ということになります。

3 判旨
「 本件売買1及び2が真実存在したのであれば,本件売買1及び2に関し,**作成に係る注文書,商品受領書等が存在し,**においてこれらを所持しているのが通常であると考えられるところ(なお,被告は,本件売買1及び2に係る注文等が口頭によりなされた旨主張するものではない。),被告は,本訴において,これらの取引書類を提出しないばかりか,審決において認定判断の対象となった書類でないとして,「提出の必要はない」と主張している。」

「 また,本件売買1及び2が真実存在したのであれば,上記1(1)エ(ク)及びク(ク)のとおり本件納品書(控)1及び2に押捺された「領収済」との各印の存在に照らし,**は,**に対し,本件売買1及び2に係る各領収証を発行し,その各控えを所持しているのが通常であると考えられるところ,被告は,本訴において,そのような領収証の控えを提出しない。」

「**と**との間には,現在まで30年以上にわたる取引関係があるものと認められるのであるから,被告において,**の協力を得て,そのような納品書及び領収証を提出することにさほどの困難があるとは考えられないにもかかわらず,被告は,本訴において,そのような納品書及び領収証を提出せず,また,これらに係る文書送付嘱託の申出等の手続もとっていない。」

「そうすると,本件売買1及び2が存在することを前提に,**が,本件予告登録前3年以内に日本国内において,スピーカーについて本件使用商標1及び2を使用していたものと認めた審決の認定は誤りであるといわざるを得ない。」

4 検討
 裁判は,主文を導き出すことに必要最低限のことしかやりませんから,納品書が偽造だと断定することまではしておりませんが,まあ言わずもがなということでしょうね。

 民事裁判での事実認定の基本,あるはずのものがなく,ないはずのものがある,場合には疑え!に忠実です。しかし,書証から心証を得ることは特許庁審判でも大得意なはずですが,ちょっと油断しましたかな。

 さてさて,ということですので,被告は,証拠を偽造し審判に提出→これにより審判は大勝利→しかし,訴訟で見破られ大敗訴,という流れです。戻った取消審判では取り消されたようです。

 そして,上記のとおり,つい最近,この証拠を偽造して審判に提出したことが,商標法79条の「詐欺の行為の罪」にあたるとして,検挙されてしまったということになります。この犯罪は全国初らしいです。

 何事もインチキせず真面目にやる方が,結局得になるのだということを肝に銘じて欲しいものですね。


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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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