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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,被告が商標権者である「Gold Glitter EVOLUTION」商標(商標登録第5065800号,以下「本件商標」といいます。)につき原告が無効審判請求をしたところ,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,これに不服の原告が,その審決の取消しを求めた事案です。

 知財高裁は,商標法4条1項7号,10号,15号,19号に違反するとする原告の主張はいずれも理由がないとして,原告の請求を棄却しました。

 よくある話のようですね。しかし,最近の傾向が見て取れるので取り上げました。
 その傾向とは?判決の傾向ではないです。事件の傾向です。

2 問題点等
 最近の事件の傾向とは何でしょう。よく商標の判決を見ている方には言わずもがなですが,要は,内部の争い(本家分家の争い,販売店とメーカーの争い,抜け駆けの争い・・)です。
 例えば,この判決以外の最近の判決として,以下のものがあります。
 ①平成22(行ケ)10032号(知財高裁平成22年05月27日)
 本件と同じパターン。原告が無効審判請求したものの,不成立で出訴。そして,訴訟でも請求棄却。
②平成21(行ケ)10220号(知財高裁平成22年03月30日)
 本件とは,逆のパターン。被告が無効審判請求し,無効となったため,商標権者が出訴。しかし,請求棄却。

 その他にもたくさんあります。最近の商標に関する審取訴訟の半分は,この内部争いのパターンではないでしょうか。通常は,見ず知らずの他人から商標権侵害だと言われたため,無効審判を提起し,それが審取訴訟にのぼってくるというパターンとなります。

 もちろん,内部争いのパターンは昔からよくありました。私はプロレス・格闘技好きなので,興味を持って見ておりましたが,大山館長亡き後の極真空手の内部争いから商標を巡る争いが勃発し大きな話題になったことなどあります。しかし,話題になるということは例外だということでもありました。

 ところが,近時は違う傾向のようです。何故この内部争いパターンがたくさん勃発しているのかは,さすがの私もよくわかりません。権利意識の高まり等では説明できません。大体当事者は法人ですので。

 さてさて,まあその系譜学は置いておくとして,確かに内部争い等で先に商標登録をとられると,”本家”としては厳しいのが現状です。
 まず,本家の使用している商標(未登録)が少なくとも周知であれば,まだ対応できます。先使用権(商標法32条)で継続して使用できますし,周知商標に類似として無効審判を起こすこともできます(同法4条1項10号)。
 さらに,商標権者に対し,不正競争行為であるとして,逆に差止め,損害賠償を請求できる可能性すらあります。

 ところが,本家の使用している商標(未登録)が周知でない場合は,苦しいです。商標法も先願主義ですので,商標権者が一応優先されます。本家にもかかわらず,差止め,損害賠償をくらう可能性が出てくるのです。そのときには,権利濫用として,防御できる可能性があることはあるのですが,非常に危険といえます。
 私のような代理人からするといささか宣伝じみた話になるのですが,商標が決まったらすぐに出願を!というのは,近時の商売の基本中の基本かもしれません。

3 判旨
・商標法4条1項7号(公序良俗違反)該当性
「原告商標が本件商標の指定商品たるつや出し剤の需要者及び取引者の間で,原告又は原告と営業上何らかの関係のある会社の業務に係る商品を示すものとして広く認識されていた,すなわち周知性があったものと認めることはできない。」
「被告は,前記のとおり,本件商品の販売を行う上で,第三者から商標権を行使されて不利益を被ることのないよう,防御の趣旨で前件商標登録の商標権を取得したものであったところ,一般に上記のような商標権取得によって利益を受ける者の範囲には製造を担当する原告も含まれると解されるから,原告において,本件商品の販売を担当する被告の上記商標権の取得を少なくとも黙認していたものと推認するのが相当である。」

・商標法4条1項10号(周知商標と類似)該当性
「原告商標が本件商標の指定商品たるつや出し剤の需要者及び取引者の間で,原告の業務に係る商品を示すものとして広く認識されていることを認めるに足りる証拠はない」

・商標法4条1項15号(混同のおそれ)該当性
「原告商標が本件商標の指定商品たるつや出し剤の需要者及び取引者の間で,原告又は原告と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品を示すものとして広く認識されていることを認めるに足りる証拠はないから,つや出し剤(とりわけカーワックス)の需要者又は取引者が本件商標が付されたつや出し剤に接したときに,同商品を原告又は原告と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品と誤認するおそれ,すなわち商品の出所につき混同が生じるおそれがあるということはできない。」

・商標法4条1項19号(不正目的使用)該当性
「原告商標がつや出し剤の需要者及び取引者の間で,原告の業務に係る商品を示すものとして広く認識されていることを認めるに足りる証拠はない」

4 検討
 原告は,いわゆるカーワックスメーカーで,原告商標を付した商品を被告に販売し,被告はこれを第三者に販売しておりました。本判決によると,この友好関係は十数年ほど続いていたようです。ところが,何かの理由で仲違いしたのか,本件のような事件となっております。

 こうなってしまいますと,やぶにらみ状態というか,法曹にわかりやすい用語でいえば,対抗問題でどちらも登記を備えていない当事者間の争い,みたいなものです。
 メーカー側は周知性がなく,不競法で捕捉できず,他方,販売者の商標権者側もその経緯に照らすと,メーカーに対して権利行使するのは権利濫用とされるでしょう。本家と分家的にいつかは落ち着くのかもしれませんが,商標権は半永久権ですので,現在の代表者の目の黒いうちは延々と争いが続くでしょうね。


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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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