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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,別紙商標権目録記載の商標権(本件商標権といい,その登録商標を本件商標といいます。標準文字による「ゆうメール」です。指定役務は35類で,「各戸に対する広告物の配布,広告,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,広告用具の貸与」です。)を有する原告が,被告である郵便事業㈱が本件商標と同一又は類似の標章(「ゆうメール」の標章(被告標章1)や「配達地域指定ゆうメール」の標章(被告標章2))を本件商標権の指定役務と同一又は類似の役務に使用し,本件商標権を侵害しているとして,被告に対し,商標法36条1項に基づき上記標章の使用の差止めと,同条2項に基づくスタンプ等の廃棄を求める事案です。

 かなり話題になった事件ですが,裁判所のアップは遅れておりました。当事者は,双方法人ですし,特段何か問題があったとも思えませんが,不思議です。

 さて,これに対し,東京地裁47部(阿部さんの合議体ですね。)は,ほぼ,原告の請求を認めました(認めなかったのは一部の廃棄だけです。)。

2 問題点
 問題点としては,被告使用の標章の方が,有名であり,さらに,元々本件商標権は識別力小なので,権利濫用にあたるか,というところでしょうね(被告は,もっと主張していますが,形式的には,商標同一,指定役務が少なくとも類似なので,効果的な抗弁としては,これだけだと思います。)。

 さて,本件とは直接関係ないのですが,知財で,権利濫用の抗弁として思い出されるのは,キルビー判決ひいては,特許法104条の3の抗弁ですよね。そして,商標法も39条で,特許法104条の3を準用しております。
 ところが,商標法は,究極的には,商標に化体した信用の蓄積を保護するものですので,商標法47条により,無効審判に除斥期間が設けられております。つまり,既に一定の信用が化体しているようなものは,そっとしときましょうや,というわけですね。ですので,商標法の法領域では,キルビー判決の意義がまだまだ大きいと言えますし,さらに,キルビー判決の射程外の権利濫用ってのはどういうものだろうということもあります(それが,いわゆるポパイ事件,最高裁H2.7.20判決なのだと思います。).

 ですので,上述のとおり,これはポパイ事件の系統の方という気がしますが,判決の方はどうでしょうね。

3 判旨
 権利濫用のところのみ。「被告は,原告による本件商標権の行使が権利の濫用に当たる理由として,被告標章1が被告の役務を識別するものとして全国の需要者に広く認識されていること,本件商標の出所識別力が乏しいこと,原告による本件商標権の行使の時期が被告の商標「ゆうメール」が需要者に浸透してからであることなどを主張している。
 しかし,上記2(2)エで説示したとおり,郵政公社は,自らの第35類の広告等を指定役務とする「ゆうメール」の商標登録出願が,本件商標の存在を理由に拒絶されたことを認識しており,その上で,郵政公社から事業を引き継いだ被告があえて被告標章1(ゆうメール)を使用して,本件指定役務と類似する役務を行っているのであり,このような事情の下では,その結果として,被告標章1が全国の需要者に広く認識されることになっているとしても,原告による本件商標権の行使が権利の濫用に当たるということはできないというべきである。
 また,被告は,本件商標の出所識別力が乏しいことの理由として,「ゆう」が「郵便」を表すものであることを主張するが,この主張が失当であることは上記2(1)エで説示したとおりである。
 そして,被告が平成19年10月に被告各標章の使用を開始してから1年6か月後である平成21年4月には,原告が,日本知的財産仲裁センターに本件について調停の申立てをしていること(甲18の1)にかんがみれば,原告による本件商標権の行使の時期が遅きに失するものであるとはいえない。」

4 検討
 私の最近アンチョコと化している小野昌延先生と三山峻司先生の「新・商標法概説」の該当ページには,こんな一文があります。
 「・・・権利濫用が要件事実(主要事実)で,これを基礎づける事実は間接事実で,間接事実には証明責任の分配の問題は生じず,権利濫用が抗弁である以上,被告側に立証責任があるので,被告に同情すべき事情があり,一理あるといった程度の間接事実の積み上げによる立証では足りないということになる。
 結果は予想の範囲の話であり,何故,被告がこの商標に拘ったかはよくわかりません。控訴しているようですし,今しばらくは争いが続くのでしょうが,どう見ても,被告には筋が悪いとしか言いようがないですが,何か隠し玉でもあるんでしょうかね。

 ところで,この事件,原告・被告とも東西の有名知財弁護士が代理人です。何故か札幌の会社が西,東京の原告が東(これは別にいいのか~)なのですが,そういう興味も尽きない感じの事件ですね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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