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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件について,被告は,登録第4460739号商標(本件商標「信濃のくるみっ子」,指定商品「くるみを用いた菓子及びパン」 )の商標権者ですが,他方,原告は,平成22年5月25日,特許庁に対し,本件商標につき商標法50条1項に基づく不使用による商標登録取消審判を請求したものの,特許庁は,同年12月22日,不成立審決(「くるみを用いた菓子」の包装に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した)をしたため,これに不服の原告が知財高裁に出訴したものです。

 これに対して,知財高裁3部は,原告の請求を棄却しました。要するに,審決とおりでよい,ということですね。

 本件については,判決は極めて短いものです。ですので,まああまりこれという判決もなかったので,箸休め程度と思っていただければちょうど良いと思います。
 敢えて言えば,屁理屈のこね方を勉強しましょう,というところでしょうか。

2 問題点
 不使用取消審判の趣旨はわかりますよね。商標は,使ってナンボのものですので,権利だけとって使用しなければ,商標法の趣旨に反しますし,何より,使ってないなら俺に使わせろ,という人もいるわけですから,使っていない商標を整理,処分する必要があるわけですね。

 ですので,原則として,3年以上日本国内において,指定商品での不使用が要件です。
 そして,条文上,「指定商品」とありますので,類似の商品等ではダメなわけです。ただ,この同一性は狭いものではなく,ある程度の幅のあるものでよいのです。形式的に判断したのでは,社会常識などに反する場合もありますからね。

 さて,最初に書いたように,今回は屁理屈のこね方を学ぶのでしたね。被告商品は,以下のようなものでした。
被告商品は,くるみを加熱して,たれと砂糖を加え,さらに,胡麻風味の場合は白胡麻を,味噌風味の場合は粉末味噌をからめたものである。

 これって,指定商品の「くるみを用いた菓子」そのものではないですかね。
 さて,原告はこれをどう主張したかというと,「加工果実」だ!と主張したのです。お菓子じゃないよ,くるみを加工した食品じゃないか~というわけです。

 さて,裁判所はどう判断したのでしょうか。って予想できますけどね。

3 判旨
「原告は,被告が被告商品を「自然食品」と説明し,被告商品の容器の裏面に「味付くるみ」と表記していること,「乾燥果実」,「ピーナッツバター」及び「ひき割りアーモンド」等はいずれも第29類の「加工野菜及び加工果実」に含まれていること,審査例でも,「クルミ入りのみそで味付けをしたピーナッツ」,「味噌・砂糖であえ煎りした落花生」及び「炒って味付けした食用種子」はいずれも第29類の「加工果実」とされていること等を根拠として,被告商品は「加工果実」に該当すると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり,採用できない。 すなわち,前示のとおり,商標法50条所定の商標不使用取消審判請求を審理するに際して,商標権者(専用使用権者又は通常使用権者を含む。)において商標を使用している当該商品が,審判請求人が取消しを求めた「指定商品」に含まれるか否かを判断するに当たっては,使用に係る当該商品について,単に形式的,画一的に考察すべきでなく,取引の実情や需要者,取引者の認識,社会通念等を総合して考察すべきであるから,たとえ,味付けした食用種子等が「加工果実」に該当すると判断された例があったしても,そのような判断が,具体的な取引の実情等に照らし,需要者,取引者の社会通念を前提として,被告商品が「くるみを用いた菓子」と認識,理解されるとの判断に,およそ影響を与えることはないというべきであるから,原告の上記主張は,その主張自体失当である。
なお,念のため,原告の主張に対し,補足して判断する。 「自然食品」は,一般的に人工的な肥料・調味料・香料・色素・防腐剤などを用いていない食品を指すのであって,人工的なものを用いないで製造される菓子も含むと解されるから,被告商品について,「自然食品」の表示がされたからといって,菓子の性質を有しないものと解すべき根拠とはなり得ない。また,「ピーナッツバター」,「ひき割りアーモンド」等が,「加工果実」に含まれるとされる場合があったとしても,そのことから直ちに,被告商品も,同じように,専ら「加工果実」の性質を有し,菓子の性質を有しないと解すべき根拠とはならない。さらに,被告商品が,店舗によって,一般の「菓子」と離れた場所で販売されていた事実があったとしても,商品の陳列場所等は,さまざまな事情に左右されることから,そのことをもって,需要者等が,被告商品を菓子と認識していなかった根拠となるものではない。
以上のとおりであり,原告の主張を採用することはできない。 」

4 検討
 まあ今回の原告の屁理屈は敗れ去りましたが,こういう態度というか,生き様は重要です。

 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる,ではないですが,裁判所で裁判官が一体何を重要視して,何をそう視ていなかはよくわからないことが多いと思います。比較的期日がよく開かれる一般の民事訴訟でも,なかなかわからないのが実情だと思います。
 そうすると,実質書面審理と言ってよい審決取消訴訟では,尚更裁判官の考えはわかりません。弁準が開かれるのは双方の主張をかなりやりあった後ですからね(商標も同じですかな~?)。

 ですので,いやあこんなへんてこな主張しても,や,これじゃあ裁判官に馬鹿だと思われるなあ,という思いは脇に置いて,とにかく主張してみた方がよいと思います。もしかすると,大金星もありえますからね。もちろん,お客さん対策として,同じようなことをする場合もありますけどね。

 今回はダメもとだったのか,それともお客さん対策だったのか,どちらかわかりませんが,代理人はつらいよ,という話でした。

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