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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,平成20年6月17日,「ユニヴァーサル法律事務所」の文字を標準文字で表してなり,第45類「訴訟事件その他に関する法律事務」を指定役務とする商標(商願2008-47888)を登録出願した原告が,拒絶査定を受け,同年7月6日,さらに不服の審判(不服2010-15007号事件)の請求をしたものの,特許庁より不成立審決(商標法4条1項11号に該当)をされたため,これに不服の原告が,審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁3部(飯村さんの合議体ですね。)は,審決を取り消しました。要するに,引用商標と非類似というわけです。

2 問題点
 何故,この判決を取り上げたかわかりますね。まあ,本日は箸休め程度です。
 商標を見てください。出願人もこの事務所の所長さんのようです。

 他方,引用商標は,指定役務を第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務」とするもので(登録第3122326号),地球と思しき図形の下に表わされたリボン状の図形内に筆記体「Universal」の欧文字を書した構成です。

 審決は,本件商標の識別力のある部分が,「ユニヴァーサル」であり(「法律事務所」部は弱い),そうすると,引用商標と,称呼と観念が共通して,類似!としたのですね。

 ちなみに引用商標の商標権者も,某特許事務所の所長さんですね。

3 判旨
 「本願商標は,「ユニヴァーサル」と「法律事務所」により構成されているが,標準文字からなる「ユニヴァーサル法律事務所」の各文字は,同一の大きさで,等間隔にまとまりよく配列されていること,片仮名部分と漢字部分との間に切れ目がないこと,本願商標中の「ユニヴァーサル」は,「普遍的な,全世界の」等の意味を有する一般的な語であって,格別に強い印象を与える名称とはいえないこと,また,本願商標中の「法律事務所」は,弁護士の事務所を称するものと規定され(弁護士法20条),日本弁護士連合会の法律事務所等の名称等に関する規程3条において,弁護士はその法律事務所に名称を付するときは事務所名称中に「法律事務所」の文字を用いなければならないとされていること(乙4),したがって,「ユニヴァーサル」のみの表記によって,弁護士としての業務を行うことは,通常は想定されないこと等に照らすならば,需要者,取引者において,本願商標中の「ユニヴァーサル」との部分のみによって,指定役務の出所が識別されることは,通常はないものと解するのが相当である。
 本願商標は,「ユニヴァーサルホウリツジムショ」の称呼が生じ,また,「全世界の,普遍的な」等の意味を有する「ユニヴァーサル」という語を名称の一部として有する法律事務所との観念を生じると認められる。」

 「以上によれば,本願商標と引用商標とは,外観において著しく異なり,観念において相違し,称呼において一部共通するものの,取引の実情を考慮するならば,類似するとはいえない。したがって,本願商標と引用商標の類否について,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,具体的な取引状況に基づいて全体的に考察すると,本願商標と引用商標が,役務における出所の誤認混同を生じるおそれはなく,両商標は,類似しないから,本願商標が,商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断には誤りがある。」

4 検討
 ポイントは「法律事務所」の部分というところでしょうね。これを考慮しなくてもよいならば,審決の判断になるでしょうし,考慮するならば,この判決のような判断になるでしょうね。
 よっぽど,有名な事務所名になっている場合はともかくも,「法律事務所」なしで,それとわかるということはありえませんから(特に,本件のように,所長などの名前を使わないような事務所名の場合),この判決の判断は妥当と言えるでしょう。

 しかし,法律事務所も商標戦略が重要な時代になってきたわけです。若干何だかな~という気がします。
 実は,私も,同業者から相談を受けることがままあります。ただ,基本的に自分の名前を付け,ロゴも無ければ(うちの事務所のように),検討の必要はないでしょう。
 他方,今回のように,一般的な言葉を付ける場合や,ロゴを付ける場合には,若干検討した方が良いと思います。だって,今回も審決取消訴訟とはいえ,非類似のお墨付きは得られたわけですが,これが,スルーなどだった場合,引用商標の特許事務所の所長が,本件商標の法律事務所の所長を商標権侵害で訴えるという笑えない状況に陥ることもありえたわけですからね。

 とにかく商標が問題になっているということは,「業として役務を提供・・する者」ということで,商売でやっているということが明確なわけです。私のような金権弁護士としては見習わないといけませんな~♪。

5 追伸(2011/11/9)
 この判決後,こんな判決もありました。
 これは司法書士法人間での商標権侵害訴訟です。言わんこっちゃないって感じですね。
 上にも書きましたが,一般的な言葉を付ける場合や,ロゴを付ける場合には,知り合いの弁理士(弁護士に聞いても,どうせ弁理士に回されますので。)に,聞いて,是非ともそのネーミング等にしたい場合は,調査してもらった方が良いですね。これはデフォーです。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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