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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,商標登録異議の申立てに基づいて原告の商標の登録を取り消した決定(公序良俗違反)に不服の原告(商標権者)が,提起した取消訴訟の事件です(いわゆる審決取消訴訟と同様のものです。)。

 これに対して,知財高裁2部(塩月さんの合議体です。)は,原告の請求を棄却しました(要するに,取消決定のままでよいということ。)。

 商標の異議が問題になることは比較的珍しいのではないでしょうか。しかも公序良俗違反が正面から問題になるのも珍しく,ここで取り上げました。

 なお,商標は,「激馬かなぎカレー」(標準文字)で,指定役務は,第43類「食材に馬肉を用いたカレー料理を主とする飲食物の提供」です(商標登録第5346443号)。

2 問題点
 問題点は1つで,公序良俗違反かどうかです。

 まず,異議申立ですが,商標法43条の2~です。
 これは同様の制度がちょっと前まで特許にもあったのですが,何故か理由は定かではありませんが(皮肉ですよ~。),廃止されてしまいました。ところが,アメリカが似た制度を採用したのに影響されたのかどうか知りませんが,また復活するらしいです。馬鹿ですね~。まあ二流三流の人間の集まりって,所詮こんなものです。おっとまた脱線しそうだ。

 元に戻ると,商標登録出願が,登録になり,その後商標掲載公報が発行されるのですが,その発行の日から2月以内に,商標法3条(識別性のやつ)や4条(不登録事由のやつ)に違反していることを理由として,特許庁長官に異議を申し立てるという制度です。要するに再審査ですね。特許庁の審査官も万能ではなく,特に,公報関連の資料はたんまり持っていますが,それ以外の世間一般の資料はそんなにありませんので,むしろ,一般の国民に意見を聞くというわけですね。

 そして,その効果として,取消決定があると,商標権は初めから存在しなかったものとみなされます(商標法43条の3第3項)。料金も高くないですし,再審査をやってもらうということで,手間もかかりませんので,良い制度だと思いますね。勿論,権利者からすると鬱陶しいのでしょうけどね。


 つぎに,公序良俗違反というのは,商標法4条1項7号です。条文は,
 「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
です。
 この公の秩序,善良の風俗を略して,公序良俗というのです。
 ですので,また話はずれますが,探偵ナイトスクープのオープニングで,「ハートスランプ二人ぼっち」の演奏にあわせて,「・・・公序良俗・安寧秩序を守るべく・・・」という字幕みたいなものが入りますが,これは秩序が二度入っており,誤りとまでは言いませんが,不当ではないかといつも思っております(細かいねえ~ウフフ)。

 さて,ということですので,この公序良俗違反っていうのが実際どういうことをいうのか問題になってきます。
 こういう場合は,特許庁の審査基準を見ると早いので,それを見ましょう。
 「「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれるものとする。

 まずは,卑わいなものはだめってことですね。それこそ,ち○ぽの図柄に,「ちん○じる」なんて商標はこれに該当するのでしょう(指定商品は何にしようかな~)。

 つぎに,差別的等です。「征露丸」が駄目だっていうのは,教科書的によく載っています。別にいいんじゃないの~ワイルドだろ~って気がしますけどね。ちなみに,今なら,「露」の字を別な字にした方がいいかもしれませんね。
 その他で有名なのは,弁理士会と発明学会との仁義無き戦いの舞台となった「特許管理士」がありますね。
 詳しくは,弁理士会のHPを見てください。所謂非弁の取締りと同じことで,これはこれでいいのですが,弁理士会も特許事務所内部の非弁に甘いからなあ~(これを読んでドキッとしたあなた,そのうち私が告発しちゃうよ~ムフフ。)。

 そして,今回のように,先回りした剽窃登録も,この公序良俗違反にあたるとされています。
 最近の私の商標の種本である「新・商標法概説」(小野昌延,三山峻司著)も,「出願から登録までの経緯を勘案して,先回り登録が社会的妥当性を欠く場合も本号に該当することがある。」と書いております。で,実際,どういう場合が,社会的妥当性を欠く場合かというと,不正の利益を得ようとする不正な意図がある場合だと思います(これは私見)。

 ともかく,公序良俗違反っていうのは,こういうようなことですから,まああんまり多くないです。当たり前ですよね。

 ということで,判旨を見てみましょうか。

3 判旨
 「これらの経緯からすれば,地域住民及び商店のために活動する申立人が,国の経費支出を受け,伝統ある金木町全体の地域活性化のために行う本件事業の一環として,金木町特産の馬肉を使用したカレーを開発し,その名称「激馬かなぎカレー」を考案したにもかかわらず,金木町内で飲食店を営む原告が,申立人の活動に参加したに止まるのに,申立人において上記名称に係る商標登録出願をしていないのに乗じて,本件商標の登録出願に及んだものと評価せざるを得ない。また,原告が申立人からの本件商標権の譲受けの申入れに応じず,申立人が特定非営利活動法人であることからみて必ずしも少額とはいえない金額の対価による通常使用権の設定にこだわっていることにかんがみると,原告の意図次第で,申立人や金木町内の他の飲食店等が本件商標の使用を妨げられることにもなる。だとすると,「(原告の本件出願は)該事業の遂行を阻止し,公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら,『激馬かなぎカレー』の名称による利益の独占を図る意図でしたものであって,剽窃的なものといわなければならない。」との決定の判断は是認することができる。
 2 原告は,名称「激馬かなぎカレー」が新聞報道で取り上げられ公知のものとなった以上,無関係の第三者が権利化に及ぶ事態が予想されたので,原告は地域の利益を図る一心で,本件出願をしたなどと主張する。
 しかしながら,前記のとおり原告は有償での通常使用権の設定にこだわっている上,民事調停においては,申立人が原告に対して本件商標の出願に要した費用や移転登録申請費用を負担する旨提案し,また譲渡に応じない原告には,民事調停の調停委員から第三者に対して本件商標権を譲渡する案が示されたのに(なお,原告訴訟代理人弁理士も青森県や五所川原市を間に立てて調整することを提案していた。),原告が譲渡等に応じなかったこと(乙6)にかんがみると,原告の上記主張は自らの言動と矛盾しており,原告が専ら地域の利益を図るために本件出願をしたとは到底認めることができない。
 また,本件事業が地域の活性化のためにされる経済的な性格を有するものであるにもかかわらず,その一環として開発された商品に関して商標登録出願をすることに対し,国の担当官が消極的な発言をしたことや,この発言に従って申立人が必要な商標登録出願を遅らせたとしても,原告が,申立人の活動の一参加者でありながら,開発済みの商品にならいその名称を得て,これと同一の本件商標の登録出願をし,その使用を独占することは許されない。」

4 検討
 まあ抜け駆けして,登録を得て,銭儲けに走ったら,このザマってやつです。裁判所の事実認定とおりだとしたら,全く同情の余地のない話です。

 ところで,今回の判決では,原告である商標権者の名前は伏されておりますが,商標の登録番号がわかりますので,IPDLで検索できます。
 そうすると,この原告,本件で問題となった「激馬かなぎカレー」商標以外に,「激馬かなぎ」という商標も出願しております。異議申立人の方々は,こちらも気をつけた方がいいですね(もうわかっていると思いますけど。)。

 しかし,余計なお世話ですが,この原告,こういう地方の街でこんなことして,今後自分の商売はどうすんでしょうね~。というのは,原告は飲食店経営者で,まさに自分の店で,「激馬かなぎカレー」を提供したいのに,異議申立人の,特定非営利活動法人が今回のことを許すとは思えないからですね。

 ですので,原告は,上記の係属中の登録出願を取下げし,何とか許してもらった方がいいんじゃないですかね。それで,特定非営利活動法人も水に流す~と。小さい町でいがみ合っても仕方ないですぜ~。ムフフ。

5 追伸
 今法曹の間では,大阪の判事補が盗撮で逮捕されたという話題でもちきりです。スカートの中身が気になったようなのですね。

 とすると,何と私と研究対象がほぼ一緒です。ほぼ一緒と書いたのは,彼は若干年上を研究対象としており,私は高校生とか若い娘を研究対象としている,という違いがあるからなのですね。しかし,とても他人とは思えません。
 ところで,この研究は実験するとなかなか危険が伴います。ですので,私は理論に徹しております(元々理論物理学出身ですし。)。しかし,彼はそういう危険を顧みず,実験の方に進んだわけですね。うーん,惜しい(何が惜しいんだか。)。

 まあ人の性癖というのは色々ありますね。なまじ固い仕事だと色々言われてしまいます。私も捕まると,こんなブログ書いている変態エロ弁護士なのに,固い職業前提として書かれてしまうのでしょうね~。いやはや。

6 さらに追伸(2015.7.15)
 上記のとおり,本件と同じ原告による「激馬かなぎ」の商標についても(商願2010-25524号),公序良俗違反が問題になりました(知財高裁平成26(行ケ)10247号, 平成27年7月9日判決)。

 拒絶査定が,平成25年3月25日で,拒絶査定不服審判の審決が平成26年9月24日ですから,結構時間がかかりましたね。

 で,結論や理由は,上記の前の判決とほぼ同じです。

 「原告は,金木町区域内で飲食店「車門」を経営する者であるが,・・・そうであれば,上記認定事実からみて,原告は,五所川原市金木町区域の活性化を図るという公益的な施策に便乗して,公費の投入や公的機関等の広報活動によって広く知られるに至った地方特産品との位置付けである「激馬かなぎカレー」の標章につき,そこから得られる利益の独占を図ろうとする者と同視され,本願商標は,公正な競業秩序を害するものであって,公序良俗に反するものというべきである。

 まあ剽窃ということですわ。

 でね,まあこの当事者の人はいいとして,この事件,当然弁理士がついているわけですよ。こういうのっていいのですかねえ。
 昨年,弁理士及び特許業務法人に対する経済産業大臣による懲戒処分に関する運用基準が改訂されました。
 そこには,新たに冒認出願への関与が入りました。

 商標の剽窃出願って,冒認出願ではありませんが,似たようなものです。個人的には,冒認出願が懲戒になるなら,剽窃出願もそうなってしかるべきだと思います。

 まあ,色んな理由があるのでしょうが,色んなことをきちんと考えてた方がいいですよね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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