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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,「SHIPS」の文字を書してなる商標につき商標権を有する両事件原告(シップス)が,①「SHIPS」の文字列を含むデザインを有する布地を製造・販売する被告ダイワボウテックス株式会社に対して,商標法36条1項,2項に基づき,別紙被告標章目録記載の標章(被告標章)を布地に付すこと及び被告標章を付した布地の販売等の差止め並びに同布地の廃棄を求め(甲事件),②被告ダイワボウテックスから購入した上記布地を販売する被告株式会社Y2に対して,同条項に基づき,同布地の販売等の差止め及び廃棄を求める(乙事件)事案です。

 これに対して,東京地裁民事40部(東海林さんの合議体ですね。)は,ほぼ全部の請求を認めました。要するに,商標権侵害あり!ってわけです。

 ここで,商標の事件を紹介するときの,最近のはやりはただ一つです。それは商標的使用の論点のときですね。ですので,今回もそういうことです。

 前提として,双方の商標を見てみましょう。
 まずは,原告の商標権からです。
 登録番号 第4862594号
 出 願 日 平成15年8月25日
 登 録 日 平成17年5月13日
 
 
 商品及び役務の区分 第24類
 指定商品 織物,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー

 被告の方の使用商標ですが,SHPSの文字列ですね(本当は,コピペしたかったのですが,容量不足でダメでした。判決を見てください。)。
 
 ほんで,被告の販売している布地に関して,「被告商品の図柄には,「SHIPS」の文字列で構成される被告標章が付されている。また,被告商品は,本件商標権の指定商品である「織物」に該当する。」ということでした。

 まあ,こういう前提で,指定商品の同一性は問題ないでしょう。また,商標の類似に関しても言い逃れするのは難しい感じです。あとは,これが商標的使用に当たるか,その他の抗弁事由等が成り立つかということになりそうですね。

2 問題点
 ということで,問題点は,上記のとおり,商標的使用に当たるかどうかです。
 ま,商標的使用自体はいいですよね。かなり詳しくちょっと前の事件で書きましたからね。
 
 で,主張立証責任についても重要だということを述べました。
 ちなみに今回も,判決において
「1 争点(1)(被告標章の使用が商標的使用に当たるか否か)について
〔原告の主張〕
(1) 被告商品において,被告標章(「SHIPS」の文字列)は,単なる図柄の一部として使用されているのではなく,それに接した者が独立の表示として明確に見て取れるように表示されており,出所表示機能を果たしているから,商標としての使用に当たる。・・・・

〔被告らの主張〕
(1) 被告商品に付された「SHIPS」の文字列(被告標章)は,単なる意匠を構成するものであり,商標として使用されているものではない。・・・」

 と,原告から先に書いておりますので,商標的使用は,原告の主張立証責任だと考えていることがわかります。
 ちなみに前の判決は,47部で高野さんの合議体でした。今回40部で東海林さんの合議体ですから,4つある東京地裁の知財部のうち少なくとも2つの部は商標的使用を原告の主張立証責任ある事実だと考えていることになります。

3 判旨
「(3) 商標的使用について
前記(2)のとおり,被告商品においては,30cm四方のデザインの一単位に一つの被告標章が配されているところ,証拠〈略〉によれば,被告標章は,そのデザインの中において,他の文字列から分離して表記されており,その「SHIPS」の文字列は,全て大文字で,かつ,「ANCHOR」の文字列とともに,他の文字列よりもやや大きい文字サイズであり,さらに,他の文字列がいずれも文又は句を構成しているのに対して,この「SHIPS」及び「ANCHOR」はそれぞれ一単語のみで独立して用いられていることが認められる。そして,「ANCHOR」の文字列は,それが意味するところの「錨」のマークの上に配置され,同マークの下の「Anchors can either be temporary or permanent.」の英文を含めて,一つの固まりとして一体的に表示されているのに対して,被告標章は,それが意味するところの「船」ではなく,「錨」のマークの下に配置され,同マークの上の「SINCE1981」の文字列を含めて,一つの固まりとして一体的に表示されている。
 このような被告商品における被告標章の配置,文字の大きさ及び表示態様からすれば,被告標章は,被告商品のデザインの中で,十分に独立して認識可能な標章として表示されているということができる。
 このことに加えて,被告標章が,一般に企業や団体の創業年又はブランドの設立年などを表す際に用いられる「SINCE」の表記を伴い,上記のとおり「SINCE1981」の文字列と一体的に表示されていること,及び,前記(1)のとおり,「SHIPS」の文字列からなる本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を持つ商標であることを総合すると,被告商品において被告標章は,その需要者に対して,商品の自他を識別し,出所を表示する態様で用いられていると認めることができる。
 したがって,被告標章は,被告商品において,商標として使用されていると認めるのが相当である。」

4 検討
 被告の反論のポイントは,意匠的・デザイン的に使っているだけで,自他商品等を識別できるような態様で使用しているわけではないぞ!ということに尽きると思います。
 ただ,東京地裁が判断したように,意匠的・デザイン的使用と,自他商品等を識別できるような態様での使用というのは,相反するものではありませんよね。美感を起こさせるようなデザインって,その美感により他社の商品と区別できたりするなんて典型です。ですので,今回のように,「SHIPS」が布地の中でかなり目立つようなバーンとした形で使用されていると,なかなかそれが商標的使用じゃないとするのは難しいでしょうね。

 私がむしろびっくりしたのは,この被告の会社,子会社とは言え巨大なダイワボウグループの一員ですよね。なのに関わらず,この迂闊さ~♪いやあそのうち,ジバニャンとかフユニャンとかダークニャンとか巷で話題のうんちく魔すら無許諾で布地にプリントしそうな勢いですね。

 ところで,平成26年改正商標法の例の,
前各号に掲げるもののほか,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
26条1項6号です。

 一体いつくらいからこの話が今回の改正に入ってきたかっていうのがよくわからないのですね。
 商標制度小委員会って,結構新しい商標(音とか動きとかの)ばっかメインだったようなのです。他方,その委員会の下に「商標審査基準ワーキンググループ」というのがあり,こちらで,結構議論が進んでいたように思えます。
 他方,パブリックコメントにも付したようで,去年の早い時期に,商標的使用については商標権者の立証責任にしてくれというコメントが2団体から上がっております。
 小委員会の方は,このタイミングくらいで以降の開催がありません。ワーキンググループも,このタイミングくらいで以降の開催が中断しております(改正法が出たのはその間)。

 今回の改正法がでたのは,閣議決定された今年の3/11と思います。つまり,パブリックコメ(去年の2/28)から1年間,ブラックボックスに入ったまんま出てきたら,主張立証責任が商標権者ではなく,使用者側にバーンと投げ出された条文になっていたわけです。パブリックコメで,2団体も立証責任は商標権者側にしとくれ~と出されたにも関わらずね。

 いやあ,私も迂闊でした。今年の改正法は,異議申立ての復活っていうことに,頭がカッカカッカしてたもんだから,こんな重要な改正について,成立後騒がないといけなくなりました。解せないのではあるが,実務とは異なる法改正~,今後どうなるんだろうなあ。

 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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