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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,引用商標の商標権者である被告(自然人)の請求に基づき,原告(法人)の有する本件商標がその指定商品の一部に関して商標法4条1項11号(他人の先願登録商標と同一又は類似の商標)に該当するものとしてその登録を無効とした審決の取消訴訟です。

 これに対して,知財高裁2部(清水さんの合議体ですね。)は,訴えを却下しました。
 え!何かの聞き間違いではなく,却下です。前訴の蒸し返しに当たるという判断です。ポカーン。

 この判決を取り上げた理由は,上のとおりです。こういう事例で,却下って何よ?!ってことが気になったからです。さらに言えば,毎年,年明けに一弁の知財系の委員会で判決の紹介をやるのですが,大体私の判決紹介って面白判決の紹介になるのが通例なのですね。何と言っても,へそ曲がりなもんで。
 で,そこで紹介するのに,今のところ一番相応しいかなあって感じもあったからです。

 兎も角も商標はこんな感じです。
 原告の無効にされそうな登録商標です。
 
 
 ①登録番号 商標登録第5244937号
 ②出願日 平成20年11月28日
 ③登録日 平成21年 7月 3日
 ④登録時における商品及び役務の区分並びに指定商品
第14類 身飾品,キーホルダー,宝石箱,宝玉及びその模造品,貴金属性靴飾り,時計
第18類 かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,革ひも,毛皮
第25類 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴 
 なお,平成25年11月8日,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」についての登録を無効とする旨の審決が確定しております。

 引用商標です。

 
 ①登録番号 商標登録第5155384号
 ②出願日 平成18年10月30日
 ③登録日 平成20年 8月 1日
 ④商品及び役務の区分並びに指定商品
 第14類 貴金属,キーホルダー,身飾品(「カフスボタン」を除く。),貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,宝玉の原石,時計
 第18類 かばん類,袋物,傘,革ひも,原革,原皮,なめし皮,毛皮
 第25類 洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,乗馬靴

2 問題点
 問題点は上記のとおり,前訴の蒸し返しかどうかですね。

 ま,その前に,訴訟の審理がダブるということは,既判力の話ですから,これをちょびっと。
 民事訴訟法114条第1項です。

 「第百十四条  確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。

 ま,この既判力ってやつの作用によると,訴訟物が同一の場合,基本的に請求棄却になります。それがこの条文の話です。

 で,本件の場合,前訴が,上記のとおり,同じ登録商標についての一部の指定商品に関してのものだったのですね。判決によると,経緯は以下のとおりです。

 「⑴ 被告は,平成24年8月6日,本件商標の指定商品中,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」(以下「別件審判の請求に係る指定商品」という。)についての登録無効審判請求をした(無効2012-890067号。以下「別件無効審判請求事件」という。)。被告は,後記引用商標の商標権者である。
 特許庁は,同年12月3日,本件商標の指定商品中,別件審判の請求に係る指定商品についての登録を無効とする旨の審決(以下「別件審決」という。)をした。
 原告は,別件審決の取消しを求めて審決取消訴訟(平成25年(行ケ)第10008号。以下「別件審決取消訴訟」という。)を提起したが,知的財産高等裁判所は,平成25年6月27日,原告の請求を棄却するとの判決を言い渡した(以下「別件判決」という。)。
 原告は,別件判決を不服として,上告及び上告受理申立てをしたが(平成25年(行ツ)第391号,同年(行ヒ)第411号),最高裁判所は,同年11月8日,上告棄却及び上告不受理の決定をし,別件判決及び別件審決が確定した。

 ということで,審決取消訴訟の訴訟物って難しいのですが(審決の違法性一般),少なくとも今回の争いは,前訴で争いになっていない指定商品についてですから,審理対象のダブリはないのですね。

 こういうのは,よくあるパターンで,一部の凄い重要な指定商品について無効審判を起こして,OKそうなら他の商品についても無効審判を起こしちゃえ~♡というやつです。ですので,審理対象の指定商品がダブることはそもそもあり得ないわけです。

 で,前訴に続いて,審決では,引用商標と類似だよね~だから,商標法4条1項11号に該当するよね~って話になったわけです。

 ですので,原告としては,この審決に違法性がある!と主張しただけであり,裁判所としても,違法性がなく取り消すほどでなければ,請求棄却でいいし,取り消すほどの違法性があれば請求認容となる,ただそれだけのように思えるわけですね。

 ですが,今回の判決は~~。

3 判旨
「1(1) 前記第2の2において認定した事実及び証拠(甲3,乙1)によれば,①原被告間における別件無効審判請求事件において,本件商標と引用商標との類否(商標法4条1項11号)が主要な争点となったこと,②別件審決は,請求人である被告及び被請求人である原告の各主張を踏まえながら上記争点について検討した上で,本件商標は,引用商標に類似する商標であり,商標法4条1項11号に該当するものである旨認定し,本件商標の指定商品中,別件審判の請求に係る指定商品についての登録を無効とするという結論を導いたこと,③原被告間における別件審決取消訴訟においても,本件商標と引用商標との類否が争点となり,別件判決は,別件審決の類否判断の誤りを指摘する原告主張の審決取消事由及び被告の反論を踏まえつつ,別件審決の前記認定の当否を検討した上で,同認定に誤りはなく,原告主張の審決取消事由はすべて理由がない旨判断し,原告の請求を棄却したこと(なお,本件商標が引用商標に類似するとの判断において,別件審判の請求に係る商品のみに限定されるような事情は認められない。),④別件判決及び別件審決は,いずれも確定したことが認められる。
(2) 他方,前記第2の2及び3のとおり,原被告間における本件無効審判請求事件においても,本件商標と引用商標との類否が争点となり,本件審決は,請求人である被告及び被請求人である原告の各主張を踏まえながら上記争点について検討した上で,本件商標は,引用商標に類似する商標であり,商標法4条1項11号に該当するものである旨認定し,本件商標の指定商品中,本件審判の請求に係る指定商品についての登録を無効とするという結論を導いたことが認められる。
そして,本件審決取消訴訟は,原告が,被告との間において,本件商標と引用商標とが類似するという本件審決の上記認定は誤りである旨主張して本件審決の取消しを求めるものであり,争点は,本件商標と引用商標との類否である。
2⑴ 本件審決取消訴訟は,本件審決の取消しを求めるものであり,別件審決の取消しを求める別件審決取消訴訟とは訴訟物が異なる。
 もっとも,前記1のとおり,本件審決及び別件審決はいずれも,原被告間における本件商標の登録に係る無効審判請求事件につき,本件商標が引用商標と類似し,商標法4条1項11号に該当する旨を認定した。したがって,本件審決取消訴訟及び別件審決取消訴訟のいずれも,原被告間において,上記認定をした審決の判断の当否を争うものであり,①当事者及び②本件商標と引用商標との類否という争点を共通にしている。
⑵ この点に関し,本件審決取消訴訟における原告の主張の骨子は,前述したとおり,両商標の外観につき,「ジョリー・ロジャー」又は「頭蓋骨と骨のハザードシンボル」から由来する「基本的構図」という概念を掲げ,「基本的構図」が既に出所識別力を失っているとして,それ以外の構成要素によって類否を決すべきであるというものであるのに対し,別件審決取消訴訟における原告の主張の骨子は,そのような概念を用いず,頭蓋骨及び骨片の位置,眼窩部の形状などといった両商標間の9つの相違点を個別に挙げるというものであり(乙1),両主張の内容に差異があることは,明らかである。
 しかしながら,上記差異は,本件商標と引用商標との類否について異なる観点から検討したことによるものにすぎず,いずれの主張も,両商標が類似している旨認定した審決の判断の誤りを指摘するものであることに変わりはない。そして,本件審決取消訴訟と別件審決取消訴訟との間に,各商標の外観など類否判断の前提となる主要な事実関係について相違があるとは,認められない(前述したとおり,特定の指定商品についてのみ妥当するような判断もない。)。
⑶ 以上によれば,本件審決取消訴訟は,実質において,本件商標と引用商標との類否判断につき,既に判決確定に至った別件審決取消訴訟を蒸し返すものといえ,訴訟上の信義則に反し,許されないものというべきである(最高裁昭和51年9月30日第一小法廷判決・民集30巻8号799頁,同昭和52年3月24日第一小法廷判決・集民120号299頁,同平成10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1147頁参照。)。
 したがって,原告による本訴の提起は,不適法なものとして却下を免れない。」

4 検討
 どうですか~お客さん~。
 そりゃ,登録商標としては同じだから,類否の判断も原則として同じになるでしょうよ。でもさあ,これは無いんじゃないの~,本当。

 上記に判例として挙げた最高裁昭和51年9月30日って,農地買収処分の無効を前提としての,買戻契約に基づく所有権移転登記手続等を求める訴が前訴で,後訴は買収処分自体の無効に基づく所有権移転登記の抹消登記手続に代る所有権移転登記手続等の請求なのですね。

 そうすると,司法試験の答案流に書くと,①実質的に同一の紛争に関わること(蒸し返し),②後訴の主張が前訴でなされた主張と同視できる事情,③訴え提起までの時間の経過等を考え,信義則に照らして許されない場合には,不適法却下もやむ無しってなると思います。

 これを本件で当てはめると,①商標って特許と異なり,「商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる(商標法46条1項柱書)。」なので,そもそも同一の紛争じゃないと思いますよ。商標て,自分の使うものだけ消せればよく,だからこそ,指定商品に分けて無効審判を請求するなんて本当よくやります。それ故,指定商品が違ってたら同じ紛争になるわけがない。
 ②だから,実質的に同じ主張としても,前訴でもできた主張になんかなるわけがない,ですよね。③しかも登録はH21年だから,まだ判決の時点で5年程度です。

 何これ!おかしいんじゃないの。ちゃんと請求棄却にすりゃあいいのに。
 裁判所に,何か省エネ指令でも出ましたかね。判決は,長々書いちゃいかん!訴訟要件で切れるやつはそれで切るように,以上!
 てか?昔の横浜地裁での揉め事(しゃべりすぎる裁判官)と真逆ですな。

 こんなんで信義則違反なんて言われたら,審決取消訴訟なんて起こせないよ!これねえ,原告が本人訴訟なもんで,なめられましたかな。いやあ,本当酷いって思いますね。上記のとおり,この事案で,却下の答案なんか書いたら,民訴だけで落ちるんじゃねえの~って思いますけどね。実におかしな判決だと思います。あーまた血圧が上がりそうだ。

5 追伸
 隣の家に塀ができたってね〜カッコイいー〜。
 ソニーの昔の本社に塀ができたってね〜とりこわっしー〜。
 
 ということで,いつものとおり,散歩ついでにソニー通りからの写真です。植込み削除に続き,囲いができました。いやあ本当に取り壊すのですね〜。

 取り壊しの模様も,追って追跡〜♡
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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