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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,本件商標権(指定商品を「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」(5類),PITAVA (標準文字),第4942833号の2)を有する控訴人(興和)が,被控訴人各標章を付した薬剤(被控訴人各商品)を販売している被控訴人(小林化工)に対し,当該販売行為は本件商標権を侵害するものであると主張して,本件商標権に基づき,被控訴人各商品の販売の差止め及び廃棄を求める事案の控訴審です。

 原審の東京地裁民事40部(東海林さんの合議体ですね。)は,「被控訴人各商品に付された被控訴人各標章は,商標としての自他商品識別機能又は出所表示機能を果たす態様で使用されているということはできず,被控訴人各標章の表示は商標的使用に該当すると認めることができないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した」わけです(平成26(ワ)767,平成26年10月17日判決)。
 ちなみに,このときは,例の商標法26条1項6号の施行前ですので,商標的使用の立証責任は原告にあり,と考えていたようです。

 で,やはりこの結果に気に入らない原告が控訴したのが本件というわけです。   

 これに対して,知財高裁1部(設樂さんの合議体ですね。)は,控訴を棄却しました。その理由は,商標的使用はしていないってことではなく,商標法26条1項2号該当だから~です。
 ズル―って感じです。

 1ヶ月ちょい前に同じような話を2件紹介しましたね。そう!これも,原告も商標権も同じで,被告が違うだけです。  
 そして,これも何かの判決で書かれたように,後発薬を商標権で牽制したものの,見事に失敗~♫の事例の一環です。   

 で,わざわざこんな同じような事件を取り上げたのは理由があります。上記にちょっと書きましたが,色んなパターンがあるなあってことです。

2 問題点
 問題点は,まあ商標的使用なのですが,今までの知財高裁の判示で2つパターンがありました。

 もう正面から商標法26条1項6号の適用を行い,この条項の主張立証責任は,被控訴人(被告)だと考えた4部パターン。
 他方,そこはスルーで一審に乗っかり,商標的使用の主張立証責任は,控訴人(原告)だと考えた2部パターンです。

 これ以外のバリエーションはあろうと思いますが,今回は,ええそこかよ~ってパターンですね。商標法26条1項2号の話です。

(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条  商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
二  当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標

 いわゆる記述的なやつですね。例えば,車の商標で「くるま」とか,法律事務所で「ローファーム法律事務所」とかのやつで,審査基準には,「うまーい」とか載っています。
 こんな商標は,そもそも登録できませんので(商標法3条3号など),過誤登録なのですが,無効審判を起こすまでもない~という所ですね。

 で,この条文と商標的使用の関係なのですが,こういういわゆる記述的なやつに当たらなくとも,価値判断的に,これで権利行使可能としちゃあマズイ~♫って場合をどうにかしようと考え出されたのが,商標的使用の概念でした。
 
 なので,厳密に言うとダブリはないのかもしませんが,両方主張されることは多いと思います。

 ただねえ,この事件,一審で判示されたのが,商標的使用の件だからねえ,どうでしょうね??

3 判旨
「当裁判所は,被控訴人各標章は,本件商標権の指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」の有効成分の略称であり,「…指定商品…の…品質,原材料…を普通に用いられる方法で表示する商標」(商標法26条1項2号)であると認められ,同条同項本文により,本件商標権の効力は,被控訴人各標章には及ばないから,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。・・・
 本件事案に鑑み,争点(3)(被控訴人各標章の表示が指定商品等の品質等の普通に用いられる方法での表示(商標法26条1項2号)に該当するか)について判断する。
(1) 争点(3)に係る主張立証責任について
 争点(3)については,被控訴人において,被控訴人各標章の表示が指定商品等の品質等の普通に用いられる方法での表示に該当することを主張立証すべきことになる。・・・
(4) 小括
 以上によれば,被控訴人各標章は,本件商標の指定商品の品質,原材料を普通に用いられる方法で表示したものにすぎないと認められるから,商標法26条1項2号及び同項本文により,本件商標権の効力は,被控訴人各標章には及ばないというべきである。
 したがって,その余の争点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がない。」

4 検討
 うーん,逃げたな~って感じです。
 被告の方は,それこそ色んな否認や抗弁の主張をしていますので,そのうちどれを採用して請求棄却(控訴棄却も)にするかは裁判所の勝手です。

 ですが,一審では商標的使用の判断だけだったので,控訴審でもそれを引き続き~と思いますよね。でも,これですわ~。

 まあ当事者,特に被告にしてみれば,別に請求棄却の結論が変わらないなら理由は何でもいいよ~って所でしょうが,この無責任な野次馬の第三者としては,そんなわけにはいきません~♡。

 とは言え,判決で,主張立証責任がどっちにあるか明示するものって実は珍しいです。なので,商標的使用の条文ではなく,昔からある商標法26条1項2号だとしても,これは抗弁だ!と明示したのにはそれなりの意義があったのかもしれません。

 兎も角も,新たなパターンも加わり,この商標的使用の主張立証責任については,まだまだ注目し甲斐があろうってなもんですね。

5 追伸
 昨日も大雨のことを書いたのですが,今日も全然やみません。
 何と言っても,去年広島に甚大な被害をもたらした線状積乱雲がどんどんやって来ているらしいですからね。

 これだけの降りの雨がこれだけ続くというのは,記憶にないです。明日は天気が良い予報なのですが,本当に止むのかなあ。

 何と言っても明日は例の,アレ,「知財実務のセオリー  ~特許制度の基本、クレーム活用、特許戦略の理論と実践~ 」の本番なので,何とかいい天気になって欲しいなあと思いますね。

 ちなみに,もう資料の方は,主催者に提出しており,講師である私以外は完璧って所でしょうかね。大過なくできればいいなあと思っております。と,あんまり書くと緊張してくるからやめておきましょう。
 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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