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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 さてさて,今回は趣向を変えていきましょう。結構長いですよ。
 
 さて,今年はうるう年ではなく,そうすると,2月と3月の曜日の並びは一緒です。2月4日が土曜なら3月4日も土曜日です。 3月4日が土曜日・・・,そう,平成12年(2000年)と同じですね。  
  思い出します,あの年に何が起こったか。そして,それが多少格好つけた言い方をすれば,弁護士岩永利彦の誕生のきっかけだったと。   

 これまで私が何故弁護士になったか,その核心の部分を開示することはありませんでした。ま,それはオッサンの動機なんて誰もあんま興味がないだろうということでもあるし,私の美学,「粋」にも反するからですね。言わぬが華ってことも多いですしね。   

 でも,弁護士になって丸10年経ちました。もういいでしょ。そろそろ時効というか機が熟したか,そんな所です。いつまでもこのブログもあるかどうか分かりませんし。
 また,今年の日の並びが上のとおり,同じってこともあるのです。

 なので,その話を書くことにしました。長いので3回に分けます。今回はその1回目,Mメモリ編です。 

2 さて,場面は,今からもう17年!も前の,平成12年(2000年)3月6日の朝に遡ります。  
 その日は月曜日。私は,珍しくやる気に満ち,充実した思いで,厚木テックの103Gにある知財部の居室のデスクにて,一件書類を眺めながら,旧知のLCD事業部のメンバーにメールを書いておりました。   

 実は,その前の週の途中までは,都心の霞が関で,弁理士会の主催する新人研修に参加していたのです。前年の平成11年(1999年)の秋に長年の夢だった弁理士試験に合格することができ,明けた平成12年(2000年)の1月2月は新人研修に参加し,3月1日から漸く知財部に復帰したという所だったのです。   

 弁理士会の新人研修では多くの同期の人と知り合いになれ,また非常に勉強になりました。まあ自慢するわけではありませんが,私の受験期間はたった1年だったので,業界の知り合いが殆どいなかったのです。ですので,新人研修で事務所やら他の会社の人達と知り合いになれたのは実に良かったわけです。  
 そして,その新人研修の間に,弁理士の登録も完了しましたので,本格的復帰となる週明け3月6日の朝は,インハウスの弁理士として,いよいよ実務に携わることになるということで燃えていたのです。   

 会社(ソニー)とはそれまで様々の紆余曲折はありましたが,新人研修の費用も(勿論参加も認めてもらいました。),弁理士の登録の費用も出してもらいましたので,何だかやっと和解できたかな~という感もありました。恐らく,この時期というか,この時が,11年間の会社生活での一番良い時だったのではないかと思います。なので,この3月6日の朝は特別だったのです。    

 で,メールの場面に戻りますが,LCD事業部というのは,私が平成10年(1998年)に知財部に異動するまで,在籍していたエンジニア時代の部署です。
 プライベートでも付き合いのある人が多くいたので(今だにサーフィンやら飲みやらスノーボードなどに行ってます。),その月曜の直前の土日に行ってきたスノーボードの話をメールで書いていたのですね。 

 で,いつもなら,スノーボードの話ならすぐにレスが来るのですが,何故かその月曜は全くレスが返ってこなかったのです。とは言え,新人研修の間放っておいた中間処理が本当山のようになってましたので,その処理をするのにこちらも一所懸命で,レスが返って来ないことを深く考えることもありませんでした。 

 そうして,昼休み前になり,そろそろとメールを見たところ,いまだLCD事業部の誰からもレスが来ていないことがわかり,さすがにムムムと思った私は仕事にかこつけて,LCD事業部に電話をかけてみました(当時の私の担当の部署の一つがLCD事業部でもあったのです。)。 

 電話には,女性の*さんが出ました。

「ああ,*さん。今日皆厚木に来てる?さっきスノーボードのメール書いたんだけど,誰からもレスないんだよね。何か突然歩留まりが下がって皆出張に行ったとか・・・?」

「岩永さん,ああ,あのね。あの・・,Mさんが亡くなられて,それで,色々・・・。」

 3 M君は1992年入社で,私の2年後輩になります。私もバブル期の入社で同期は多いのですが,92年入社はそれ以上に多かったのです(91は修士終了の人が丙午に当たるので,人が少ないですね。)。    

 ソニーに限らず,メーカーは製品ごとのプロジェクト制をとっていることが多いと思います。ご多分に漏れず,当時のLCD事業部もそうでした。  
 例えば,M君と一緒にやっていたLCX***という開発品があったのですが(早すぎたPlayStation VRとも言えるグラストロンに搭載されたLCDですね。),その場合,設計は誰々,TFTの開発は私,液晶の開発は誰々,実装は誰々,周辺ICは誰々,測定はM君,そして,それらを統括するプロジェクトマネージャーは主幹技師の*さん,こんな感じでした。  
 ということで,私はTFTの開発,M君は測定と,やることは違っていたのですが,エンジニア時代はよく一緒に仕事をやっていたわけです。   

 なので,*さんの電話でM君が亡くなられたと聞いて,まじか~と驚くとともに,何かこの土日に交通事故にでも遭ったかなあと考えるので精一杯でした。*さんによると,本日が通夜で,明日愛甲石田の円光寺で葬儀・告別式とのことでした。   

 私はこの月曜からヤボ用があり(ま,不良社員時代の名残ですかね。),通夜には行けないけど,告別式には行くということを告げて,*さんへの電話は切りました。  
 でも,この時点ではショックではありましたが,その後の私の人生も大きく変わるようなことにまでなろうとは本当全く思いませんでした。まあ,何事もそういうものでしょうけどね。 

4 その夜,都内でヤボ用を済まし,ついでに葬儀・告別式用の黒ネクタイも買ってきて,当時住んでいた相模原市の自宅に戻り,ボケッとしていた所,携帯に電話がかかってきました。  
 携帯の主は*君でした。M君の同期で,私ともプライベートでも親しいということで,今夜の通夜の話でした。 

 「岩永さん,今大丈夫ですか?」  
 「ああ,全然。ちょっと今日は色々あって通夜に行けなかったけど,どうだった~?」
 「あのね,M,自殺だった。」  
 「え・・・」 

 聞けば,ソニーで最近,ISOを取るという全社プロジェクトをやっていて(当時ISO11000とか環境ISOとか流行っていた記憶ありませんかね。今のコンプライアンスブームみたいなもんですわ。),LCD事業部での担当はM君だったらしいのですね。通常の業務に加えてそういうISO担当になったことで,業務が過重になったのでしょう。   

 で,その話を聞きながら,私は2つのことを思い出しました。  
 まずは,前年の平成11年(1999年)に弁理士試験に受かったのですが,その合格発表の前,社内で偶然M君にばったり出会い,ちょっと話をしたことです。   

「岩永さん,LCDに戻ってきてよ。もう*さんの相手するの疲れたよ。」
「ええ~,まあいいんじゃないの~。何とかなるんじゃないの。」(いつものとおり,超適当な私。あと,*さんというのは上でちょっと出ましたね。研究所出身なので,優秀だとは思うのですが,頼りにならないプロジェクトマネージャーでした。)   

 そのときは,弁理士試験もそこそこ手応えがありましたし,知財部の仕事にも慣れてきたころでしたので,戻るわけねえじゃん~というのが本音だったのですが,まあ冗談にマジ返ししてもねって所でした(冗談では無かったのかもしれませんが。)。   

 つぎに,その件の先週のことです。2月まで弁理士の新人研修だったので,3月1日から厚木の知財部に復帰したのですが,その木曜か金曜の朝,9時20分ころ会社の出勤途上(本厚木駅からの県道602号かな),私の先を小走りで走るM君を見かけたことです。   
 何故そんなことが印象に残ったかというと,M君はいつも出勤が早かったからです。LCD事業部時代の私も出勤は早かったのですが,それ以上にM君の出勤は早かったです。朝8時前,恐らく7時半過ぎには会社に来ていたのではなかったかと思います。勿論,帰る時間は私よりずっと遅かったと思います(私は不良社員だったので,残業もせず,いつもとっとと帰ってました。)。   

 そのM君が,9時20分ころという遅刻ギリギリでの出勤です。どうしたんだろう,おかしいな~と思ったわけですね。なので,追いついて話しかけようと思ったくらいなのですが,小走りだったので,邪魔かなあと思い,話しかけるのはやめたのです。   

 電話で*君と話していて,そういうことも思い出し,いつの間にか私は泣いておりました。
 M君は本当真面目で大人しいやつでした。そのため,仕事を放り出せなかったんだろうなあ,いやあ酷い話もあるもんだなあ,酷い会社だなあ,仇を取りたいなあ,私の知力をもってすればソニーの片腕ぐらいはもげるかなあ・・・決心はそのときについていたかもしれません。まさにビギンズナイトです。 

5 次の日の火曜日,円光寺での告別式は凄い人でした。同期も友人等も多かったのでしょう。大阪の方からご両親も来られておりました。   

 告別式に来ていたLCD事業部の元同僚の人達とも色々話しました。金曜に変な形式張った挨拶に来たから,おかしいな~と思ったけど,ああこういうことかとわかったとか,ISO関係で忙殺されてたようだとか(ここでもね。),課長の*さんに結構厳しく責められてたみたいだったとか(課長の*さんは昔から知っている人で悪い人ではないのですが,厳しい面は確かにあります。),まあ本当様々でした。 

 M君のお棺を載せた霊柩車は,厚木テック(厚木市旭町)の正門と裏門前で停まり,ホーンを鳴らしました。私は後続の車に乗っていてそのときの光景を見ていたのですが,それに合せて礼をしていた社員の人達が居ました。あれは,人事とか総務とかその系の人達だったのですかね。 

 それから,私は焼き場まで行き,M君の骨を拾い,その後の会食までお供させて頂きました。話は若干ずれますが,そのときの住職の織田無道氏(覚えていますか?),テレビと違い,実にちゃあんとしておりました。TFTの開発の後輩で,M君の同期でもある*君もその場に居たのですが,ガチでも行けるってやつかなあと話したのをよく覚えております(彼も私同様,格闘技好き。)。   

 そんな告別式の帰り,愛甲石田駅までの道すがら,空が実に青く,もう春だなあと,そして,いやあ酷い話もあるもんだなあ,本当にこんな酷い事が起きるもんなんだなあ,しかし弁理士ってこんなとき何の役にも立たねえやって,ずっと繰り返していたような気がします。  

 私自身その前日の朝までは絶頂と言ってもよいくらいでしたが,いやあこんな事になるとは思いませんでしたね。 告別式は午前中までの予定だったので,会社には半休届けは出していたのですが,こんなんじゃ仕事になりません,なので,その日は全休にして,相模原市の自宅に戻った次第です。   

 ちなみに,M君が亡くなったのは,前の週末の土曜,そう3月4日です。平成12年3月4日,1234ということで,プレイステーション2の発売日で,ソニーが盛り上がっていた頃です。 そして,これがタイトルの由来です。

6 次の日,会社には行きましたが,まあ沈んだままですよね。しばらくはそんな調子でした。 で,そんな沈んだ気分を何とかすべく,ちょっと,ほんのちょっとだけ考えて,月曜の夜に少し思い浮かんだ仇討ちの手段を実行に移すことにしました。  
 
 あれですよ,あれ。司法試験に受かり,弁護士となって,M君の両親から委任を受け,ソニーをぶっ潰す!ってやつです。何それ?!と思うのは冷静なしかも通りすがりの感想ですね。私はそのころ実にマジでした。   

 ほんで,まずは,司法試験の予備校を選ぶことから始めました。弁理士受験で専門の予備校でうまく行ったことから,今回も専門の予備校にすることにしました。
 そうすると,当時で,伊藤塾か辰巳になります。弁理士の新人研修で知り合った文系の人にそれとなく聞いた所,当時は,伊藤塾の絶頂期だったようで,伊藤塾がオススメだということでした。で,その2つの予備校のパンフレットを取り寄せ,入門講座の検討を始めました。 

 ところが,講座スケジュールを見ると,伊藤塾の方には通えないということがわかりました。伊藤塾は,大学生を対象としているらしく,社会人だととても通えない時間帯に口座をやっていたのです。なので,社会人が通える平日の夜と土曜という,辰巳の入門講座の天野先生講座しか選択の余地は無く,そこに申し込むことにしました。 

 決心から数日後の土曜,高田馬場で予備校の申し込みを済ませた後,弁理士の新人研修で知り合いになった方とたまたま時間が合ってちょっとだけお茶をしました。
「岩永さんならやれると思いますよ」
 その方は,私と違って調子に乗るということもなく,アホみたなウケ狙いをすることもない方でしたので,蛮勇しかない私も少しだけ安心しました。でも結局山あり谷ありでしたけどね。 

 ま,兎も角も,入門講座の申し込みをしたことで少しは心の平静を取り戻すことはできました。
 仕事もしないといけませんし,まあ辛い時期もそのうち終わるだろう,そのときも近いだろう,そんな感じでした。本当にそのときは,そう思ってました。 でも更なる悲劇が待ち構えていようとはさすがの私も予測できませんでした。 

→1234ビギンズナイト その2 Sメモリ編へ続く
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
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