忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 機が熟した,そんな感じです。

 このブログ,基本タブーはありません。ですので,私の失敗談も載っけているようにしています。例えば,このだとか。

 勿論,負けること失敗することは恥ずかしいですよ~私も人間ですので。でも,そんなことよりも,挑戦したからこその失敗でしょ~攻めてるってことですよ~こっちを自慢したい気持ちの方が強いのです。だから,これからもドンドン挑戦し,ドンドン失敗しますよ~。

2 さて,任官って弁護士が裁判官に応募することです。
 あんた裁判官志望だっけ?ということですが,実はそうだったのです。それはここでも書いてきております。

 司法試験を目指すきっかけは,弁護士になりたかった,というかなる必要があったからです。その話はここで長々と書いたので,もうしません。ですが,修習に入る前にその必要性は無くなってしまったので,基本やる気のない修習で,しかしそれでも実務修習後に一番魅力的だったのは裁判官だったのですね。

 だって,所詮理系の人嫌い~営業が必要,人付き合いが必要な弁護士に向いてるわけありません。でも,歳の問題がありましたので,仕方なく弁護士になったわけです(それしかなれない。)。

 まあでもなってみると弁護士というのも悪くなく,特に独立してからは,誰に指図を受けるわけでもありませんから,非常に気楽に伸び伸びと過ごしてきており,そんな中で任官に応募しようなんて思いもよらないことでした。

3 話は,去年の1月に遡ります。ここでも自慢気に書いた日経の私見卓見の件,ありましたよね。その件で,ごく親しい人に,載りますので見てくださいというメールをしました。

 その中に,ソニーの知財部の同僚だったWSさんがいます。WSさんは,実は私よりも20歳近く上の方です。ちょうど20年前,そしてちょうど今頃,私は中途の知財部異動者が参加する社内の研修に参加して,そこでWSさんと知り合ったわけです。
 
 場所もこの近くの旧ソニー本社圏,研修を受けていた会議室を抜けると三省堂書店があった,そんな所でした(ソニー出身の人,覚えてますかね。)。

 WSさんは当時お取り潰しになった総研の出身で,自分で数百件もの特許の発明者でもあった優秀なエンジニアでした。エンジニア歴が高々8年,しかも冴えない私とは大違いなわけです。 
 ですが,歳の差とも関係なく,非常に馬が合い,私がソニーを退社し,弁護士になったあとも,そして,WSさんもソニーを辞め,今は弁理士をされておりますが,そんな風にお互い環境が変わっても,折にふれてお会いしていたのですね。

 ということで,私見卓見に載りますよ,どうですか,凄いでしょ,というメールを出したわけです。

 ところが,WSさんからの返事はなかなかおもしろいものでした。
 その私見卓見の主題は,特許権侵害訴訟が現在東京地裁と大阪地裁でしか提起できず,地方を蔑ろにしており問題だ!というものでしたが,WSさんからの返事は全く予想できないものでした。

 何と,そんなことは大した問題じゃなく,「岩永さんが裁判官にはなれないことが一番の問題ではないかと思っております。」と来たのです。

 ま,要するに,知財部→弁理士となり,文系のお利口さんである裁判官の判断を見てきたけど,やっぱり信頼できん!技術者出身じゃないと技術の機微は結局わからんのだ,でも岩永さんみたいな人が裁判官になれんとは,終わっとる!こんな趣旨でした。

 ま,私としては,うーんそう言われても・・・という感じだったのですが,WSさんのこの,裁判官になれない,というのに多少カチンと来ました。
 いやいやいや,裁判官になれないかどうかはまだ決まった話じゃない,やってみないとわからん話だ,じゃあやってみよう!とこうなったのですね。

4 と言ってもどうやって応募するのかよくわからないのが実情です。恐らく,任官が上手く行った人たちは派閥の支援だとか受けていたと思いますけど,私にはそんなしゃらくさいものはありません。

 ただ,記憶を辿ると,毎月毎月一弁から送られてくる資料(会報とか入っているやつです。)の中に,任官応募がどうのこうのとかいうのがあったような気がするなあということに気づいたのです。

 で,その年初から数ヶ月して,確か去年の夏前だったかな~一弁から送られてくる資料の中に,任官希望しますか?というアンケートがあり,それをしっかり書いて出したのです。

 なので,任官希望なんだけど,何からやっていいかわからないという方は,このアンケートで意思表示するというのが大事だと思います。

 で,それから基本的には何の音沙汰も無かったのですが,9月に入り,10月に事前面談をするので,一弁に来てほしいという連絡が入りました~。ヨッシャーです。

 このころは,いやあ本当に任官になったら,仕事とか全部整理しないといけないし,様々諸事を整理し,そうだ弁理士の方もまた抹消せんといかんな~♡などと妄想に励んでおりました~。
 同時に一弁からは,事前面談の前にオリエンテーション(説明会)があるので,それに出るとよい~みたいなことの連絡もあり,その説明会にも出ました。

5 今年のその説明会の案内は,昨日一弁から届いた資料の中に入っています。去年は10月20日だったのですが,今年は早くて9月7日です(希望者は要注意です。)。

 で,去年のその説明会は弁護士会の3FのでかいA会議室で行われたのですが,結構な人でした。ま,弁護士の経営環境は厳しい昨今ですから,任官応募しようと人でいっぱいと言ってよい感じでした。恐らく100名以上は来ていたのではないかと思います。

 で,その説明会では,昨今裁判所も多様性に気を配るようになった,専門的分野の任官もありだ,というような話がありました。なので,私もそうそう,それそれ!みたいなところでしたね。

6 ですが,そんな浮ついた気分も,その後行われた事前面談で吹き飛びました。以下はそのときの模様の抄録です。

 面談者は,中央に昨年の任官推進委員会委員長の若林茂雄弁護士(今年は一弁の会長です。),右陪席の位置に,昨年の担当副会長だった二島豊太弁護士,そして左陪席の位置に,任官推進委員会の副委員長の先生でした(スミマセン,ここは名前を忘れました。)。

若林弁護士:どうして任官を希望するのか,その辺を
私:ええーと,じゃあ今年の正月に日経に私の小論文が載って,その話から・・・
若林弁護士:手短に,ね。(え?事前面談なのに,その辺聞くつもりないんだ・・・)
私:(省略,上記に書いたとおりの話をした次第です。)
若林弁護士:うーん,あなたの話は本音過ぎるなあ。もうちょっと,こう経歴を活かすとか,そっちの方面に話を持っていった方がいいかなあ。
二島弁護士:仕事はどんなのやっているの?
私:まあ知財,特許の事件とか,そもそも数が少ないですけど。あとは中小企業の企業法務とかで,債権回収とか労務処理だとか,そういう感じですね。
若林弁護士:一般民事は?
私:やってませんねえ。
二島弁護士:国選は?
私:やってません。
二島弁護士:やってないの!うーん,あなたのような偏った経歴の人だとそういうのがないとなあ~ (あ,今「偏った」って言ったか。聞き違いじゃないよな。)
 社会人経験があるって話だけど,理系でどうせ研究とかずっとやってきただけでしょ,そして今も特許とかそういうなんだよねえ。広い見識とかね,そういうのを持ってないとなかなかねえ。(この人なんか偏見バリバリだなあ。)
私:いや説明会では,専門裁判官も募集しているというふうなこともあったと思いますけど。
二島弁護士:あれ?,あれは何と言うか,まあはっきり言ってそんなことないでしょ。そう書いているだけだよ。(うそ!マジか。)
 いや私もね,知財高裁ができるときにちょっとかんだんだけど,まあそのときの議論もあったのよ。技術系の裁判官を入れるだとか。だけど,倒産ばっかやっている事務所の弁護士とかねえ,どうなんだろう。留学とかもね,英語が凄くできるやつを行かせるよりも,何というかもう少し若くて柔軟な方がいいとか,そういう感じかなあ。
私:・・・・(こんなやつがかんでたから,知財高裁もあの程度なわけね。)
二島弁護士:成績はどうなの,修習のときの。
私:いや,10年過ぎての判事任官だと関係ないみたいな話だった気がするんですけど,この前の説明会でそんな話が出たと思いますけど。
若林弁護士:あれね,いやあれはね・・。
二島弁護士:10年でピッタリ考慮しなくなるってわけないでしょ。
私:ええ,どういうことですか?
二島弁護士:そりゃ20年,30年も弁護士やれば,弁護士の経歴の方だけですよ,そりゃ。だけど,10年少しだったら,成績の方も検討するに決まってますよ。
 で,どうなの成績?
私:いやあ,請求してないので,何とも。
二島弁護士:いやあ凄く悪いとかだったら,困るよねえ~ハハ(いちいち腹立つなあ,この人)。
私:まあ凄く上位の方じゃないとは思いますけど・・・。
左陪席:非常勤の任官とかどうですか~ (助け舟を出してくれたんだろうなあ,しかし・・)
私:今の所あんまり (だから,知財の所にしか興味がないんだよっ!)
二島弁護士:今までの話からすると,今回はなかなか厳しそうだなあって感じがしますね。
私:つまり,弁護士会としては推薦できない,ってことですか?
二島弁護士:そう。今のままじゃダメ。いや昔はね,こんな人推薦したってどうせ受からないって人も弁護士会から推薦してたのよ。でも最近は厳選してやるようにしてるんだよね。
私:はあ~そうですか。
二島弁護士:あなたの場合,経歴が偏っているから,その辺をちょっとアレしないといけないなあ。まだ52歳,もう数年応募できると思うから,その間国選とかちゃんとやって,そうすると間に合うんじゃないギリギリ。 (また偏ったて言ったな。ちなみに任官応募は定年10年前の55歳が限度のようです。)
若林弁護士:じゃあ大体いいですかね。本日はご苦労様でした。
二島弁護士:国選やって,国選。 (やるかバーカ)

7 その後,リーガルテックの催しがあったので,そこに寄ってから事務所に戻ったのですが,実に重い足取りでした。

 まあこんな具合で事前面談でコテンパンにやられたわけです(ほぼ二島弁護士の独演会でしたが。)。

 ですが,そもそも変ですよね。
 上記のとおり,一弁での事前面談は,受からない人を削るためのもので,つまりは裁判所の意向を忖度というかそのものという感じのものです。一弁としてはポリシーを持って,こういう人を裁判官として送り出したい~みたいなものはありません。

 ま,三流進学校が,東大とかに合格しやすいカリキュラムを組むみたいな話で,それから外れた場合は,ハイハイ,別な学校に行ってくれるかな~そういう匂いがプンプンします。

 しかも,面談するメンバーは,一弁の幹部中の幹部と言ってよい人達ですから,この忖度制度の重要度がわかります。

 でも本当思いませんか。こんなの意味あるのかねえっと。本来裁判所がやるべきの足切りみたいなものも弁護士会がやり,勿論,それは裁判所の基準であって,弁護士会独自のものなんてない!

 いや,弁護士会は忖度し過ぎなのです,我が裁判所は多様な人材を求めているのです~なんて,そんな可能性,あるわけがありません。
 私もいい歳,大体世間のからくりってわかりますからね。裁判所の方から,弁護士会に,はっきりきっぱりと,こういう奴じゃないと取らないから,ヨロピコ~ときつくお達ししているのでしょうよ。

 いやあ,世の中の99%はプロレスだと豪語したのは,この私ですが,やられました。

 それでも私は挑戦したことを後悔していませんよ。にこやかな顔の裏に隠された拭い去れない差別意識や,任官制度の裏側もよーく見えましたからね。
 それに,「偽善と欺罔」(別名,自由と正義)に連載している,謂わば成功者の愚にもつかない任官のエッセイなんて,本当に希望している人には何の役にも立ちませんから,こういう話もニーズがあると思うのです。

8 で,今後ですが,弁護士会を通しての謂わば正攻法ではダメですね。事前面談のとおり,弁護士会からの推薦は受けられないでしょう。

 じゃあどうするかってことですが,考えていることはあります。

 それは知財高裁やら知財部に居る調査官です。

 この調査官の制度は,基本的には手続的正義に反しているものです。

 去年,裁判所主催で秋にでかい模擬裁判やらフォーラムやらやったのを覚えていませんか。まだ清水さんが知財高裁の所長だったときの話です。
 で,今年の春先,弁理士会か何かの研修で,そのときの様子を清水さんが話していたのですが,日本の調査官制度をアメリカの裁判官に紹介したところ,アメリカでは絶対にこんな制度は導入できないと言われた,ということを話されておりました。

 そりゃそうですよね。被告の可能性がある特許庁から解説やら説明やらに来ているわけですからね。実質的に公平なら問題ない,そんなわけありません。

 私がここでいつも言う,拷問と自白の話があります。拷問はなぜいけないか,その件について,虚偽自白が増える,冤罪が増えるという理由があります。でもそうだとすると,虚偽自白がなく冤罪が増えなきゃやっていいということになりかねません。
 現行犯人逮捕で複数の目撃者,客観的証拠もばっちり,こんな事例なら拷問してもいいのですかね。

 手続的正義というのはそうじゃないのです。実質良ければいいのとは一線を画した考え方です。拷問が悪いのは,拷問そのものが悪手だからダメ,こうしないといけないわけです。

 そうすると,上記のとおり,現在の知財の調査官制度は,手続的正義に反していることこの上なしってわけです。

 ですが,この制度をきちんとする方法はあります。それは技術系裁判官へ昇格させることです。勿論,特許庁への戻りもなくして(裁判官ですから。)。

 なので,ま,そういう制度に法改正されたときに,また任官応募しようかなって,今の気分はそんな感じです。ムフフフ。

 あと,WSさん,今の所,裁判官になれていませんので,申し訳無い所です。

9 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日は,ここ山本橋に来ております。
 
 東京は小雨と風という感じの天気です。土曜まではこんな感じらしいですけどね。

 さて,任官応募は,上記とおりの顛末なのですが,事前面談は妙にアウエー感満載でしたね。
 特に,二島弁護士の,お前なんか任官できるわけ無いだろう,そんな心理の裏がヒシヒシと感じられ,実にドラマティックでした。

 ま,私が言うのはアレですけど,人には親切にしておいた方がいいと思いますけどね。何が起きるかわかりませんもん,お互い様ですからね。
PR
1586  1585  1584  1583  1582  1581  1580  1579  1578  1577  1576 
カレンダー
10 2018/11 12
S M T W T F S
2 3
4 5 7 8 9
11 12 13 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]