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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 昨日第一報が,そして,本日の朝刊には大きく載っていました。一般の方には馴染みがないかもしれませんが,法曹関係者では知らない人がいないと思われる刑事法の大家の方です。

 私は当然直接お会いしたこともありませんし,著作を読んだこともありません。歴史上の人物というような感じです。ただ,どういう学説というか,考え方をした方か位は知っております。

2 今はどうか知りませんが,刑法を勉強するときに,真っ先に選ばないといけないのが,行為無価値か結果無価値かの選択でした。
 司法試験の論文試験も,この2通りのパターンがあり,当然,基本書も違うため,最初に選ばないといけない,という訳なのでした。

 傍から見ると何それ,どういうこと?と思うかもしれませんが,知り合いの弁護士に聞くと,そうそう,途中で変えるのは面倒だった~などと言うでしょう。

 さて,刑法でポイントとなるのが,何が犯罪かってことですが,刑法を初めとする刑罰法規に形式上合致するだけで,即犯罪になるかどうかは問題です。そして,この形式上合致するかどうかっていうことは,構成要件該当性と言います。おっと,特許とおんなじですな~♫

 犯罪として咎め,刑罰を課すには,それ以上に,実質的に悪いこと(違法性),やった人にそれなりの非難が可能であること(責任)がないといけないわけです。この2番めの要件,違法性をめぐって繰り広げられる議論が行為無価値と結果無価値の争いということです(「無価値」=違法と思ってください。)。ちなみに,団藤先生は,行為無価値の大物学者でした。

 ですので,学説の争いでもあるのですが,実際に刑罰を課すべき犯罪とは何か?につながる議論なので,結構大事なわけですね。その上で,行為無価値というのは,行為を重視するもので,結果無価値というのは,結果を重視するものです。

 そうなると,行為無価値を貫くと,こうなります。近所のデパートで包丁を買って,そこら辺を歩いている人を手当たり次第刺し,3人殺すと,大体殺人で死刑になります。
 他方,同じようにするつもりで,手当たり次第刺そうとしたんだけど,最初に狙ったおばさんが,実は合気道の師範で,かわされた上に,投げ飛ばされて捕まった場合でも,殺人で死刑にしないといけません。だって行為はおんなじなんですから~。

 他方,結果無価値を貫くとこうなります。自動車の事故で人が死んでも,喧嘩で殴った相手が倒れ,当たり所が悪くて死んでも,ヤクザから買った拳銃を至近距離から発砲して人が死んでも,これはみんなおんなじ罪。だって,結果は人が一人死んだっていうことでおんなじなんですから~。

 ということで,さすがの学説も,こんな極端な説はありません。ただ,極端にした方が,理解はしやすいですからね。

 刑法というのは,こういう理論が非常に重要で,とても面白いものです。非常に哲学的だと言ってよいでしょう。例えば,普通の教科書にカントも登場するくらいですからね。

3 おっとと,また主題からずれておりますが,団藤先生は他に,死刑廃止論者としても有名でした。
 私は修習中,特に前期修習中に,研修所の図書館によく行っていたのですが,そこには団藤先生の死刑廃止論の著作が数多く置いてあったことをよく覚えています(後期は全く行きませんでした。まあ弁護士志望はそんなもんです。)。

 私は,財産犯にも死刑をと考えているくらいのバリバリの死刑推進論者ですが,しかし,団藤先生ほどの大家が死刑廃止を唱えているというのはそれなりの理由があるものとずっと思っていました。
 自分と相容れない考えだからと思考停止するのは,本当頭の悪い対応ですからね。

 ところが,数年前の日経紙の夕刊に団藤先生の自伝が連載されたのを覚えていますかね~。その自伝には,GHQから言われて超特急で,現行刑事訴訟法を起草したことなどが載っており,興味深く読んでいました。そして,団藤先生が何故死刑廃止論者になったのか,そのエピソードも載っていました。

 それは,裁判官時代(そうすると,最高裁の判事だったころです。),死刑の判決をしたときに,傍聴席から,「人殺し」というヤジがあり,それにショックを受けたからという旨が載っておりました。

 それを読んだときの私の感想は,えええええーえー!いやいや,何か特別なポリシーでもあるのかと思っていましたよ。要するに,ヤジにビビっただけというヘタレな理由だったわけです。何だよそれ~ですわな。

 はっきり言いましょう。最高裁の判事になるべきではなかったのです。学者によくいるタイプで,褒められたことしかない,頭がいいだけのタイプっていますよね。私がこのブログでしつこく学者を馬鹿にしているのは,まさにこういうところです。

 実務は厳しいのですよ。民事の相手方からの理不尽な暴力で,弁護士がここ数年で何人死んだことか。
 裁判官も例外ではありません。書記官もそうです。近時,オウムの残党が捕まりましたが,松本サリン事件って誰を狙ったか知っていますかね。あれは裁判官を狙ったのですよ。ヤジにびびるようじゃ,研究室で縮こまってた方が良かったですな。

 このブログを見ている方は実務家がメインで,学者の連中はあまり見ていないようなので,ここで言っても仕方ないとは思いますが,今後とも,実務の峻厳さに耐えられない秀才のオボッチャマは,象牙の塔にずっと居た方がいいし,国民のためにもそうするべきだと思いますね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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