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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 今日は前の記事の続きではあるのですが,美味しそうだねえ,仲間に入れてよ~♫という話2題です。
 両方,本日(12/28)の日経紙に載っていたことです。

2 まず,1件目。
 例の裁判員裁判の情報ダダ漏れだった件の続報です。
 本日の日経紙には,最高裁が日弁連に調査を求めるという話が載っております。恥ずかしいことですね。さらに,その日経紙には,ダダ漏れさせた事務所名も載っております。武士の情けで,敢えて固有名詞は書きませんが,東京弁護士会が設立したパブリック事務所のようです。

 このパブリック事務所,我が一弁にもあります。しかし,昨今の不況と弁護士数の増加により,その経営は火の車のようです。ですので,一弁の場合,運転資金の貸付等を行なっているような有様です。そうすると,もはやそんなもん,潰せばいいじゃんという話にはなるのですが,そうも行かない事情もあるのです。

 例えば,普通の弁護士がとても受けたくないような案件,ありますよね。具体的に書くのはやめておきますが,民事・刑事のそういう案件を放っておくわけにはいきませんが,かと言って好事家のマニア弁護士に手弁当でやってもらうというのも限界があります。
 そこで,売上げやその他諸々の事をあまり気にせず,やってもらえる法律事務所の必要性が出てくるわけです。都会だから,弁護士が多いから,という理由だけで解決できない,誤解を恐れずに言えば,ドブ浚い中のドブ浚い,をやってもらうわけです。
 これによって,普通の弁護士もドブ浚いするリスクを軽減できますので,多少会費の中から資金の援助をしたところで,まあまあ納得納得,というところになると思います。

 今回問題となったパブリック事務所も恐らくそういう目的で作ったのだと思います。
 しかし,私が今回気になったのは,その目的は良いとして,この手段はどうなのかな,という部分です。
 例えば,この東京新聞のウェブによると,ダダ漏れさせた弁護士は,他に30件の裁判員裁判の事件を抱えているように読み取れます。30件ですよ,30件。私が民事で一年で依頼される件数って,漸く30件を超える程度です。それが,裁判員裁判だけで30件なわけです。どうして,特定の弁護士にそんなに依頼があるんでしょうかね??

 裁判員裁判などの刑事裁判での国選弁護人は,裁判所が法テラス宛におたくの候補者の中から選んでくださいね,という指名通知依頼書を発し,それを受けて法テラスが,例えば,ある日時にある場所に弁護士連中に来てもらい,事件を応諾した(これが今やくじ引きになるほどの大盛況)弁護士を指名し,指名された弁護士が最終的に裁判所で選任されるという手はずです。ただ,これは東京の,しかも国選Bという非裁判員裁判事件の指名方法です。
 他方,裁判員裁判対象の国選Aですと,表に現れているのは,法テラスが指名打診する,ということのみです。

 したがって,裁判員裁判の国選弁護人が,実際どういう基準でどうやって選ばれるのかは,全くブラックボックスの中,というわけです。

 そうすると,下衆の勘繰りではないですが,法テラスと弁護士会と裁判所で,裁判員裁判で経験不足の者が来ると困るし,パブリック事務所の目的がこうだし,取り敢えず,パブリック事務所の弁護士を集中して指名打診することにしよう!となってもおかしくはないですね。じゃないと,30件も来ませんもん。

 でも,これってOKなんですかね?
 今や弁護士は増えに増えて,ドブ浚いでも何でもござれ,という感じの若手は多いと思います。そうすると,裁判員裁判なんか,すごく美味しい仕事の一つになっていると思いますよ(この辺の事情は前の記事で書きました。)。ですので,それを公平に配点するというのではなく,パブリックとはいえ特定の事務所,特定の弁護士に集中して配点するというのは本当にOKなんですかな。

 情報ダダ漏れももちろんまずいですが(また,緊急FAXが来ました。),こういうこともまずくはないんでしょうかね,という話でした。

3 続いて2件目。これは武富士の会社更生の話です。
 本日の日経紙によると,既に決まっていたスポンサー,韓国のA&Pが撤退し,新たにスポンサーを選びなおすらしいです。何やってんだかね。

 事件の中身は詳細には書けませんが,私の依頼者でも1名だけ,武富士に過払いがあって,債権届を出した経緯があります。ですので,ちょっと注目していたのです。

 さて,今回DIP型の手続をとっていますが,この会社更生って本来DIP型ではありません。私の見立てでは,ここが失敗のポイントだと見ています。

 倒産法理は,大きく4つあります。破産,民事再生,会社更生,特別清算です。清算型か再建型か,DIP型(debtor in possession。債務者に管理処分権が残る方式)か非DIP型かで,2×2のマトリクスとなります。
 さきほどのものをこのマトリクスに当てはめると,破産(清算,非DIP),民事再生(再建,DIP),会社更生(再建,非DIP),特別清算(清算,DIP),となります。

 ですので,今回の武富士のように,再建したい,かつ管理処分権も残したい,となると,民事再生が原則なのです。ところが,民事再生は,中規模程度の会社の再建を念頭に置いているため,利害関係人が莫大な大企業の再建では使い勝手が良くないところがあります。

 例えば,典型的なものが,抵当権などの取扱です。民事再生だと別除権となり,民事再生手続に関係なく,デフォルトで競売も可能です(まさに,別・除・権~♫)。いや,破産ならいいんですよ,ただ,再建しようとしているのに,工場の敷地が競売されたりなーんてことになったら,再建もガッツンガッツンのガス欠エンスト状態で,うまく行きません。
 勿論そのために,スポンサーに金を出してもらって受戻しをやったりするのですが,交渉事なので,時間はかかりますわな~(弁護士になって1年経つか経たないくらいに,まさにそういう事件を担当しましたが,かなり大変でした。でも非常に勉強になりました。)。

 他方,非DIP型の会社更生は,大企業を念頭に置いていますので,抵当権者も吹っ飛ばせます(いちいち交渉なんてしてたら利害関係者が多くて日が暮れちゃう。)。でも原則非DIP型なので,管財人等のリスクがあります。

 管財人リスク?知りませんか。これも別にぶっ潰す場合は誰でもいいのですが,多少事業を切り出して再建しようとしたら,うるさ型の管財人が指名されて,いちいち許可取れだ何だって五月蝿い場合ってあるじゃないですか(これは弁護士より,銀行とかM&Aをやっている人とかが,身を持ってわかる話かな。)。こうなると,こっちはこっちでスムーズな再建にはほど遠いとなります。

 そういう実務の要請みたいなものがあり,2008年末のNBLで,当時東京地裁8部(更生担当部)の部長が,DIP型の会社更生の論文を書いたことなどが契機となり,DIP型会社更生が大流行となったわけです。
 本件の武富士の案件も,そういう中で,DIP型の会社更生でここまで来たわけです。

 まあしかし,この申立時の書面を見ますと,申立代理人がそのまま管財人に横滑りしたわけですね。しかも調査委員しか選任されておりません。東京地裁の民事再生ですと(法人),監督委員が選任されるので,少しは,監視監督できます。しかし今回のように,申立代理人→管財人,横滑りで,調査委員のみだと,こりゃやりたい放題,というか,だれも監督していないわけですよ。これはダメじゃないですか~。

 実務の要請はわかりますが,手続内で抵当権などを吹っ飛ばせる代わりに,管理処分権は第三者に移して,公明正大迅速にやろうというのが会社更生の趣旨なんじゃないですかな。

 ただでさえ,この申立代理人→管財人の所属しているいわゆる倒産村と,裁判所の間にはよくわからない密着度(例えば,上記の裁判員裁判での国選弁護人の指名同様,管財人の指名というのも,全くブラックボックスです。地裁20部,地裁8部の裁判官が,退職した後どんな仕事をやっているか調査すると非常に面白い結果になるかもしれませんねえ。ホホホ。)があるようですから,李下に冠を正さず,会社更生は原則通り,非DIP型でやった方がいいんじゃないですかねえ。そして,大企業向けのDIP型再生が本当に必要なら,立法すべきです!王道歩きましょうや。

 ということで,本件の武富士の処理については,職権で破産移行が妥当じゃないですかね(更生法250条)。既に,資産は腐っており,これ以上手続が遅くなると更に腐って,破産時の財団すら目減りする一方ですからね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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