忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 これは,今やっている特許制度小委員会で議論された,恐らく特許庁から出てきた案です。

 まあ,これは経緯から説明しないとわからないでしょうね。

 実は,現在,特許に関して,けっこう抜本的な改正の話が進んでいます。正確に言うと,特許だけではなく,知財の紛争処理という名目です。

 要するに,昨今,特許出願もサッパリ少なくなった,特許訴訟もサッパリ少なくなった,日本発のイノベーションもサッパリ起こらん,それは知財の紛争処理システムがちゃんと機能してねえからじゃないか,という話がありましたので,ここ3年くらい,様々な会議体で議論をしていたのです。

 まずは,約3年前の,知財紛争処理タスクフォースからです。このブログでも少しだけ紹介しました。

 つぎに,約2年前の,知財紛争処理システム検討委員会です。これは,知財紛争処理タスクフォースで議論した内容をさらに具体的に検討するというものです。やはりこのブログでもちょっとだけ紹介しました。

 そして,それが改正条項等の具体的な検討へ,ということで,特許制度小委員会に移り,ここ1年くらい検討していたということになります。
 ちなみに,メンバーはこんな感じです。

 淺見 節子  東京理科大学大学院イノベーション研究科教授
 蘆立 順美  東北大学大学院法学研究科教授
 飯田 香緒里  東京医科歯科大学研究・産学連携推進機構教授
 金子 敏哉  明治大学法学部准教授
 國井 秀子  芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授
 東海林 保  東京地方裁判所知的財産権部総括判事
 杉村 純子  プロメテ国際特許事務所代表弁理士
 高林 龍  早稲田大学法学学術院教授
 辻居 幸一  中村合同特許法律事務所パートナー弁護士・弁理士
 戸田 裕二  一般社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権委員会委員長 株式会社日立製作所知的財産本部副本部長兼知財ビジネス本部長
 萩原 恒昭  一般社団法人日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会委員 凸版印刷株式会社執行役員法務本部長
 長谷川 英生  株式会社名南製作所取締役
 春田 雄一  日本労働組合総連合会経済政策局長
 別所 弘和  日本知的財産協会副理事長 本田技研工業株式会社知的財産部長
 宮島 香澄  日本テレビ放送網株式会社報道局解説委員
 矢野 恵美子  日本製薬工業協会知的財産委員会専門委員 アステラス製薬株式会社知的財産部次長
 山本 和彦  一橋大学大学院法学研究科教授
 山本 敬三  京都大学大学院法学研究科教授

 まあ錚々たる顔ぶれです(敬称略)。

2 で,今回上記のとおりのまとめが出たわけです。特許庁のサイトで見れますので,ちょっと見た方がいいと思いますよ。

 軽くまとめると,こんな感じです。

Ⅰ. 適切かつ公平な証拠収集手続の実現
特許権侵害訴訟における証拠収集手続については、「知的財産推進計画2016」において、「営業秘密の保護や濫用防止を考慮した適切かつ公平な証拠収集手続が実現されるよう、書類提出命令を容易に発令できるようにするための仕組みや証拠調べにおける査察制度(裁判所が選任した中立的な第三者の専門家が被疑侵害者に対して査察(工場等への立ち入り調査等)を行う制度)の導入等について、検討する必要がある」とされた。
 本検討事項については、特許権の侵害訴訟では、技術的に高度な専門的知見を基にした適切な判断が求められることや、特に製造方法の発明等で証拠が被疑侵害者側に偏在し、構造的に侵害立証が困難であるといった特殊性に鑑み、証拠収集手続を強化する措置を講ずる必要があると考えられる。
 ただし、制度設計にあたっては、権利者と被疑侵害者の攻撃防御のバランスや、被疑侵害者の営業秘密の保護及び証拠収集制度の濫用防止、一般の民事訴訟に関する規律との整合性について考慮する必要がある。
 以上を踏まえ、中立的な第三者の技術専門家に秘密保持義務を課した上で証拠収集手続に関与できるようにする制度、及び書類提出命令・検証物提示命令のインカメラ手続で書類・検証物の提出の必要性を判断できるようにする制度の導入について、特許法の改正を視野に検討を進めることが適当である。

→要するに,査察を検討したけど,査察の導入はせん!代わりに,中立的な第三者の技術専門家が証拠収集手続に関与できる新制度を導入する,ってことです。報道も一部されています。
 あ~あ。

Ⅱ. ビジネスの実態やニーズを反映した適切な損害賠償額の実現
特許権侵害訴訟における損害賠償額については、「知的財産推進計画2016」において、「ビジネスの実態やニーズを反映した適切な損害賠償額が認められるよう、通常の実施料相当額を上回る額の算定を容易に行い得るようにするための方策及び実態に即した弁護士費用等の知財訴訟に必要な費用の請求を容易に行い得るようにするための方策等について、検討する必要がある」とされた。
 本検討事項については、現行制度の運用状況やビジネスの実態を踏まえ、権利者と被疑侵害者とのバランス、差止請求権との関係、民事法体系との整合性等に留意する必要がある。
 また、我が国裁判所で認定された特許関連訴訟における損害賠償額は、米国と比べて著しく低いとの指摘があるが、近年、米国の裁判官による認定額と比較した場合は必ずしも低いとはいえなくなっていることに留意する必要がある(別紙1)。加えて、損害賠償額の算定は被疑侵害品が販売される市場の規模によっても左右されることから、日米の市場規模の違いを勘案する必要もある。さらに、米国においては、近年、陪審による高額の損害賠償額の認容が問題視されている状況も考慮する必要がある。
 こうしたことから、ビジネスの実態やニーズを反映した適切な損害賠償額の実現に向けては、まずは証拠収集手続を強化する立法的な措置を通じて、より適正な損害賠償請求が認容されやすい環境を整えた上で、損害賠償額の認定に関する裁判所の運用や国際的な動向を注視しつつ、引き続き慎重に検討を進めることが適当である。

→要するに,何もせん!ってことです。ケッ!

Ⅲ. 権利付与から紛争処理プロセスを通じての権利の安定性の向上
権利の安定性の向上については、「知的財産推進計画2016」において、「特許権の有効性に関する特許庁の判断を裁判所がより参照できるようにするための制度や侵害訴訟における訂正の再抗弁の要件緩和等について、検討する必要がある。権利付与段階に関しては、特許庁における審査・審判の質の向上に向けた取組を更に進めることや弁理士・出願人といった特許の出願側においても一層の対応が必要である」とされた。
 本検討事項については、我が国の特許権侵害訴訟や無効審判の現状に鑑みるに、国際比較の観点からも、特許権は一定程度安定していると評価できる(別紙2)。また、特許庁と裁判所の特許無効の判断基準が異なることとなるような制度変更は適当ではないことにも留意する必要がある。
 こうしたことから、権利の安定性については、権利の早期安定化のために導入した特許異議申立制度の効果を確認するとともに、裁判所による特許の有効性に関する判断の動向やユーザーニーズの状況を注視しつつ、引き続き慎重に検討することが適当である。

→要するに,何もせん!ってことです。

 Ⅲは兎も角も,ⅠとⅡはマジか!って感じです。

 ここ3年ぐらい,色々と~様々に~検討した結果,第三者の技術専門家が証拠収集手続に関与できる制度を作るだけ!に落ち着いたという有様です。いやあ本当お疲れ様でした(オカダカズチカ風に)。

 いやあダメだなあ,この国。

 だって,今のままじゃダメだから,今の制度を変えようと言ってたのに,今のままでもあんま不都合がないから変えるのはナシよ!っていうわけですよ。大山鳴動して鼠一匹とはこのことですなあ。本当バカバカしいというか,バカそのものですわ。

 やはり,既得権益者に議論させると結局こうなるんですなあ。
 今年は2017年ですが,霞が関周辺に,ゴジラの光線かコアの割れた彗星が落っこちて欲しいもんです,本当に。

4 追伸
 ほんで,本日,この上記の案が公開されるとともに,パブコメがかかったらしいです。と言っても,単なるアリバイ作りですけどね。

 だって,今更査察を復活せんかとか,法定損害賠償を導入せんかとか書いた所で誰が聞きますかね。そう所詮,(皆さんご一緒に),この世の中の99%はプロレス~(ロス・インゴベルナブレス・デハポン調で)ですからね。
PR
1339  1338  1337  1336  1335  1334  1333  1332  1331  1330  1329 
カレンダー
02 2017/03 04
S M T W T F S
3 4
5 6 7 9 11
12 13 14 15 16 18
19 20 22 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]