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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 キャッチフレーズのようなタイトルですが,今月号の弁理士会の会報,「パテント」の特集はライセンス契約。
 なかなか興味深い論説があり,参考になるところが多いと思います。ただ,ライセンス契約ってそれに至るまでの準備というか,前段階が非常に重要で,私としては,ライセンス契約自体よりも重要だと思っております。

 ですので,「パテント」の特集に載っていなかったような話で,行きましょう。まあ,知財の良い判決がない,ということなのですけどね。

2 準備が大事,前段階が大事というのは,おそらく,これを読んでいる事務所勤めの弁理士や弁護士よりも,企業の知財部,法務部の人は先刻ご承知のことだと思います。

 ですので,ヤバいのは,中小企業で,急にライセンスの対応をしなければならなくなった,いつもは人事やら総務やらやっている担当者や,さらには代取ですね。さらには,そこから相談を受けた弁理士やら弁護士もヤバい場合が多いです。

 この前紹介した「下町ロケット」のような話は極端で,訴訟になって弁護士の力量で差が出るなんていうのは,そう宣伝したい弁護士の販売促進の売り文句に過ぎません。
 というのは,訴訟には裁判官がいますので,おかしな方向に行くような場合でも,是正があります(釈明というやつです。)。

 他方,ライセンス契約の段階,さらにはその前段階には,当然裁判官はいませんので,おかしな方向に行っても,是正する人がいません。紛争後に,ライセンス契約を精査した場合でも,契約書の文言自体そんなにおかしいものではないものの,どうしてこのライセンス自体を締結したのかがわからず,首をひねらざるを得ない場合などがあります。
 つまり,ライセンス契約こそが,準備段階が勝負で,それで決まると言ってよいものです。
 したがって,ちゃんとしたというか,専門の弁護士に頼むのは,訴訟ではなく,本来このかなり早い段階なのです(皆さんトラブってから来ますが,それでは手遅れですよ。)。

3 二つに場合分けをしましょう。1つが,侵害訴訟などの後始末のライセンス契約,もう1つがそうでない場合のライセンス契約です。

 まず,前者の場合,大してやることはありません。いや,準備が重要だって言ったじゃん?そのとおり。でも準備はもう終わっているのです。
 だって,侵害訴訟の中で,侵害かそうでないかの検討は終わっているし,有効性の話も終わっているし,それで,ケリをつけるための,ライセンス契約なんですから,やることはありませんよ。
 ライセンス契約の文言も,本来は多少クレームをつけて変えて欲しいところはあると思いますが,何せ,ミズーリ号での降伏文書の調印と同じですから,文句をつけて変えてもらえるわけはありませんね(バーゲニングパワーに著しい差がある,ということです。)。

 ですので,準備(この場合は訴訟)が大事なわけです。

4 つぎに後者の話です。典型的なものは,いわゆる技術的シーズを見つけた場合でしょうね。
 そうすると,まずはその技術をきちんと評価できないといけません。

 それから,良い技術としても,その権利者っぽい人からライセンスを受けることですべてが収まるかどうか,検討しないといけません。
 特許の場合は,ここが一番重要で難しいところだと思います。というのは,良い技術があり,何個か特許を持っていたとしても,その特許を実施するには,他の会社の特許も用いなければならないとか,他の会社の特許で無効になってしまうとか,だと折角大枚をはたいても無駄になるおそれがあるからです。

 ですので,このタイプのライセンス契約については,締結前に該当特許のDD(デューデリジェンス)をしないといけないわけです。
 通常,これは当該分野に詳しい弁理士に頼むのが一番です。ある程度のお金はかかりますが,しょうがありません。だって,パソコンでも車でも買う場合には,ちょっとはカタログ見たり,口コミを見たりして検討するでしょ,特許も同じですよ。相手の言いなりで契約するなんて愚の骨頂ですね~♪

 また,そのDDで他に良い特許を持っている他の会社などもわかりますから,その分野での商売が是非とも必要なら,その他の会社をライセンサーとして選び,クズ特許でだまくらかそうとしている会社を見切ることもできます(必要ならば,そのクズ特許を無効審判で潰しておくというのも良いでしょう。)。

 そのように準備をすれば,あとはライセンス契約自体は大したものではありません。そこら辺に転がっている雛型で十分だと思います。

5 今回,特許のライセンス契約を例に取り上げましたが,実はこういう話は特許に限りません。

 よい技術かどうかの目利きが重要だっていうことは,ブランドやキャラクターの目利きの話と全く同じですし,この権利者っぽい人からライセンスをもらって大丈夫かという話は,商標や著作権,さらには肖像権などにも通じる話ですからね。

 こういうことは知財部や法務部のある大企業は日常茶飯事ですので,非常に詳しく,またしくじりがありません。そして,こんなことで,外部の弁護士に頼むことは少ないと思います。

 他方,中小企業はあまりこういうことに慣れておりません。ですので,中小企業でライセンス契約を結ぶときは要注意です。外部の弁護士に,ライセンス契約書の文言だけをちょちょっとレビューしてもらって,ハイOK!,これでは後で弁護士に寄付をするようなものです。

 とにかく,ライセンス契約は,その契約締結に至るまでの準備が重要だ,という話でした。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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