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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,原告(アップル)が,入力装置等に関する特許権(発明の名称を「接触操作型入力装置およびその電子部品」とする特許権(特許番号第3852854号。本件特許権。)を有しており,本件特許は,平成10年1月6日にされた特許出願(平成10年特許願第012010号。原出願。)から,平成17年5月2日に分割出願され,平成18年9月15日に特許権の設定の登録がされたものです。)を有する被告(こちらも法人です。)に対し,原告の小型携帯装置の輸入販売が被告の特許権を侵害しないと主張して,被告が上記特許権の侵害を理由とする損害賠償請求権を有しないことの確認を求め,反訴は,被告が,原告に対し,原告の上記輸入販売が被告の特許権を侵害すると主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金627億4800万円のうち100億円及びこれに対する不法行為の後の日である反訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 これに対し,東京地裁民事47部(高野さんの合議体です。)は,原告アップルの訴えを却下し,被告の反訴請求について,一部認めました。

 そう,漸くHPにアップされました,例の発明家が,アップルに勝ったってやつです。

 で,判決を見るとわかるのですが,個人発明家ではなく,法人ですね。あと,番号に注目です。H19年に提訴ですから,6年も前です。しかも若い番号ですので,H19年の前半に提訴されたのでしょうね。丸6年かかったと見ていいでしょう。

2 問題点
 問題点は,別に個人発明家がアップルに勝ったということではありません。このやり方ですね。というのは,報道や,上記の出願の経緯を見てわかるとおり,アップルのipodが発売されたのを見計らって,2005年に分割出願した特許によって権利行使をしたというところでしょうね。
 ですので,構成要件充足性はあんまり問題にならないでしょうね。つーかこれで,構成要件充足性がないなら代理人がアホなだけです。だって,実物(ipod)を見てクレームを作成したのでしょうから,充足するのは当たり前,というわけです。

 ですので,問題は,通常そんなことをすると,分割要件違反やら,補正や訂正の新規事項追加となる可能性がありますので,その無効の抗弁の辺りということになります。
 ちなみに,本件で問題となったクレームは以下のとおりです。

  A  指先でなぞるように操作されるための所定の幅を有する連続したリング状に予め特定された軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーが配置され,前記軌跡に沿って移動する接触点を一次元座標上の位置データとして検出するタッチ位置検知手段と,
    B  接点のオンまたはオフを行うプッシュスイッチ手段とを有し,
    C  前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡に沿って,前記プッシュスイッチ手段の接点が,前記連続して配置されるタッチ位置検出センサーとは別個に配置されているとともに,前記接点のオンまたはオフの状態が,前記タッチ位置検出センサーが検知しうる接触圧力よりも大きな力で保持されており,かつ,
    D  前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡上における前記タッチ位置検出センサーに対する接触圧力よりも大きな接触圧力での押下により,前記プッシュスイッチ手段の接点のオンまたはオフが行われる
    E  ことを特徴とする接触操作型入力装置
    F  を用いた小型携帯装置。

 おお,何かまさにipodのクリックホイールそのものだわい,って感じがしますね。

 ま,この内容がもともとの出願書類に書かれていれば,分割要件違反にはならないし,その出願の範囲内で補正・訂正していれば,新規事項追加ともならないわけですね。

 で,裁判所はこの辺どう判断したのでしょう。

3 判旨
(1)構成要件充足性
 「原告各製品は,本件各発明の技術的範囲に属する。 」

(2)訂正要件
 「 したがって,訂正事項1の訂正は,本件訂正前明細書及び本件図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 」
 「したがって,訂正事項2の訂正は,本件訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。 」
 「したがって,訂正事項3の訂正は,本件訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 」
 「訂正事項4の訂正は,本件訂正前明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。」

(3)進歩性
 「本件各発明は当業者が甲5・・・に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでない」

4 検討
 それぞれの箇所は非常に大部だったので,省きました。気になる方は,原本を当たってください。
 兎も角も,構成要件充足性は当然OK。訂正要件は,明細書の範囲内。進歩性もいい引例が見つからなかったのでしょうね。

 ということで,個人発明家側が万々歳の結果です。うーんプロパテントですねえ,とも思えるのですが,別な感じもします。

 それは,上記のとおり,分割出願にも関わらず,分割の要件を争っていないのです!これは何か理由があったのでしょうかね。いやあ上記のとおり,あとで実物を見てクレームを立てると,普通は結構な無理をしないといけません。そうすると,分割要件に違反している可能性が極めて高くなるのですが,なぜアップルは主張しなかったのでしょう?不思議~。

 いやあ私が攻められたら,絶対この分割要件違反を主張しますね。だって,訂正要件って,分割後のうまく作った明細書を基準にしますので,それで新規事項追加になんかなりませんよ!変だなあ。

 ま,この件は,勝った側も負けた側も控訴しておりますので,知財高裁で続きが見られます。ま,ポイントは分割要件だと思います。

 あと,代理人の所も見ましたが,アップル側は,基本いつものメンバーなのですが,モリソンフォースターの方たちが,復代理人でしか入っていないですね。これは結果が悪かったこともあり,二審では嵐が起きそうですニャ~。
 他方,個人発明家側は,基本,日比谷パークの先生方ですね。本気で,攻められると恐らくボロが出ると思いますので,早めに和解した方がいいと思いますね~。

5 追伸
 念のため,無効審判を検索してみましたが,ここでも不思議なことがわかりました。
 実は,訴訟後の,
平21.3.17に無効審判の請求はされているのですね。勿論アップルからです(無効2009-800060)。
 ところが,早くも,平21.5.18に審判請求が取下げられているのです。ほんで,その後は審判請求されておりません。

 その昔,審判請求書の補正が厳しかったころ(例えば,今回のように訂正したりした場合,それに合せて審判請求書も補正したいのに,できなかったのです。それが私が弁理士試験の受験生だったころ,改正されました。),一度請求したものを取り下げてまた請求するということもありましたが,今回は違うのですかね。それとも,もう一度請求しようとしたけど,何らかの原因でそれがポシャったか~。

 うーん,係属期間はわずかに2箇月~。何か色々謎の多い事件だなあ~♫

6 更に追伸
 昨日雨で順延になったパ・リーグのCSが行われ,先程楽天が勝って,決まりました。良かった,良かった,相手方も1位が出てくるようで,やっぱこう来なくっちゃいけません。下剋上とか下らねえことにならずにホット一息です。
 いやあ今からマー君との対戦が楽しみですねえ。

 あと,スポーツでもう一題。土曜に箱根駅伝の予選があったのですが,いつもなら午後にやる時間に放送がありません。あれ~どうしたんだろうと思ったら,何と,午前中に生中継してたらしいですね。

 いやあ来るところまで来ましたねえ。予選会で生中継ですか。もう箱根駅伝の怪物化に歯止めなし!って感じですね。
 ま,それはそうと,BS日テレで録画のやつをやっていたので,見れたので良かったのですが,何とびっくりしたことがありました。
 それは我が母校,東工大のちょっとの活躍です。チェックポイントで何人の選手が通過した,というやつをやるのですが,そこに東工大の文字が・・。
 ゼッケンは466じゃなかったかな。一人だけ何かもの凄い速いやつがいるようです。ゴールもトップから3分以内で帰ったと思いますよ。ただ,総合は,ケツから数えた方が早いという結果。まあしょうがないですね。弱小の国立大ですからね。

 しかし,今年は記念大会だというのに,国立大の参加は一校もありません。記念大会と言えば,慶応,という感じの慶応も今は下位に低迷するくらいですから,国立大の出る幕はなしというわけです。

 ま,ちょっと楽しませてくれたので,良かったとしますかね。

 文句も言いますが,本選もちゃんと見ますよ~。

7 控訴審判決についての追伸(2014/5/22)
 控訴審関係は,4/24に判決が出ていたのに,漸くアップです。双方とも上告したということですので,そのために若干時間がかかったのでしょうかね。

 二審の認容額は,3億3664万1921円及び内1億1163万8369円に対する平成19年9月29日から,内1億1185万6491円に対する平成20年9月27日から,内8912万4927円に対する平成21年9月26日から,内880万8704円に対する平成22年9月25日から,内745万7557円に対する平成23年9月24日から,内775万5873円に対する平成25年3月30日から,各支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員です。
 一審の認容額は,3億3664万1920円及びこれに対する平成19年3月14日から支払済みまで年5分の割合による金員です。

 ですので,遅延損害金の起算日を区々に考えた点を除いて,ほぼ一審とおりです。
 中身も見ましたが,若干無効の抗弁で新しい主張・立証があったようですが,知財高裁1部(飯村さんの合議体ですね。)は,勿論プロパテント上等の部なので,そんなのに見向きもしません。

 しかし,上記のとおり,分割要件違反の件と,無効審判をすぐに取り下げた件については,謎だなあ。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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