忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 特許の無効審判の不成立審決に対する審決取消訴訟の判決です。

 発明は,「衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式」を名称とするものです。
 前審たる審決は,29条2項(進歩性)に違反するという請求人(原告)の主張に対し,そうではないとして請求不成立としました。
 これに対して,請求人は,審決取消訴訟を提起しましたが,知財高裁は,請求を棄却しました。

 それだけならばよくある事例なのですが,この事例で重要なことは,被告である特許権者は,「適法な呼出しを受けたが本件口頭弁論期日に出頭しないし,答弁書その他の準備書面も提出しない。」というところです。

2 問題点等
 審決取消訴訟は,行政訴訟です。行政訴訟ですから,職権主義が基調だと言われております(行訴法24条)。ただし,そうはいうものの,民事訴訟の一部でもありますから,当事者主義(処分権主義,弁論主義)がとられる部分もあります(行訴法7条)。

 したがい,本件の問題点を端的に述べるならば,どこまでが当事者主義で,どこからが職権主義かということに尽きると思います。

 例えば,通常の民事訴訟,例えば貸金返還請求訴訟や建物明渡請求訴訟で,被告が口頭弁論期日に欠席し,答弁書等も全く提出しないと,通常,以下のとおりとなります。
 被告について擬制自白成立(民訴法159条3項)→裁判所が出席した原告に意見を聞くなどして,終局判決(民訴法244条)→原告の請求認容(全面勝訴)

 したがい,審決取消訴訟といえども,ほぼ全面的に当事者主義がとられるならば,本件でも請求認容して,不成立審決を取り消すことになると思います。しかし,後述のとおり,そうはなりませんでした。

3 本件判決の判旨
「被告は,上記のとおり本件口頭弁論期日に出頭しないし,答弁書その他の準備書面も提出しないから,請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審決の内容)の各事実は明らかに争わないものとして,これを自白したものとみなす。・・・以上の次第で,原告主張の取消事由は全て理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。」

4 検討
 原告は,審決の進歩性に関する判断について,取消事由を5個主張しました。しかし,いずれも理由がないとして,請求は棄却されることになったのです。
 以上まとめますと,当事者主義がとられるのは,請求原因のうち,特許庁における手続の経緯,発明の内容,審決の内容程度であり,他方,職権主義がとられるのは,少なくとも取消事由である,ということになります。
 特許権者が,こんな特許いらんと言っているものを,わざわざすばらしい発明であると認めてあげるのは,余計なお節介のような気もしないでもないですが,行政訴訟ですから,結果としてこういう判断もありえるところでしょう。

 しかし,目も当てられないのは,原告の代理人です。やる気0の戦わない相手に思いっきり負けてしまっているからです。
 もちろん,事件の勝ち負けというのは,事件の筋が全てと言ってよく,筋の悪い事件では,いかに有名代理人を立てようとも負けます。
 この辺議論もあるところですが,少なくとも裁判所は,金持ちが良い代理人をつけたからと言って釈明権の行使などをすることもなく,漫然と金持ち側を勝たせるようなことはしないようです。正義の心が疼くのでしょう。審決取消訴訟だと,なおさらですね。

 ただ,一般の訴訟はそれで何ら問題はないと思うのですが,知財の訴訟は,ほぼ全件,裁判所のHPに判決が登載されます。そして,自然人の当事者は匿名となるのですが,法人の当事者や代理人は,そのまま掲載されてしまいます,ガーン。
 したがい,この事例だと,特許権の放棄の交渉を打診していくというのがデフォルトのような気がします。ただ,そのようなことができない事情があったのかもしれませんね。

 ところで,平成21(行ケ)10211号(知財高裁平成21年12月1日)が,同様にやる気のない被告(これは商標権者)の事例ですが,本件とは,全く逆の審決取消の請求認容です。結局,被告はいらんのかいなという結論になるのでしょうか,ふふふ。
PR
12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2 
カレンダー
06 2017/07 08
S M T W T F S
1
3 5 7 8
9 11 12 13 15
16 17 19 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]