忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,在外者である原告が,本件の特許出願について拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたものの,特許庁から審判請求を却下する旨の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案です。

 ポイントは,却下ですね。

 知財高裁は,この審決を取り消しております。

2 問題点
 弁護士業務と弁理士業務の違いは,多々ありますが,対お上に関して言うと,期限関係が全く違います。

 例えば,裁判所に出す準備書面は,大体期日の一週間前が相場です。しかし,1,2日遅れたところで,相手方も裁判所も特段の文句は言いません(私がよく遅れるという意味ではないですよ。きちきちした固苦しい人間ですので。)。裁判関係で厳格なのは,上訴の期限くらいなものです。

 他方,特許庁に出す意見書・補正書等を1,2日遅れたらもう大変です。それ自体を治癒するすべはありません。拒絶査定等が来ます。ですが,まだそれならば分割等により,出願を治癒できる手段があるので,ましです。
 しかし,審査請求等の期限徒過が取下げみなしとなるようなものでこれをやるともう大変です。まったく治癒できません。クライアントに平謝りでは済まされません。大体,損害賠償金として数百万円単位のお金を払い,勘弁してもらうことになります。
 私が,弁理士試験に受かった弁護士・弁理士であるにもかかわらず,特許の出願をあまりやらないというのはこのような所にも理由があります。あまりにリスクが高いのです。さらに,そのような厳格な期限管理を出願から20年(特許の寿命)もやり続けないといけないわけです。20年もかかる訴訟なぞまあないですからね。

 ですので,時々必死の思いの代理人の必死さがにじみ出た審取訴訟にお目にかかることがあります。あちゃー期限徒過やってクライアントから怒られたんだろうなあ,そしてこのままだと切られちゃうんだろうなあ・・・,今回も一応そのパターンです。
 すなわち,拒絶査定の謄本の送達があった日から3ヶ月以内(4条により,1ヶ月付加)に,不服審判を請求したのかどうかが論点です。

3 判旨
「平成21年11月2日になされた本件審判請求は,法定期間を経過していない適法なものといえるから,その請求を法定期間経過後の不適法なものとし特許法135条の規定により却下すべきであるとした審決の判断は誤りである。」

4 検討
 良かったですね~。なお,謄本の送達日は,平成21年6月30日で,初日不参入により,期間の初日は,7月1日となります。そうすると,7月1日から4ヶ月というと,末日は本来10月31日です。ところがこれが土曜だったのです。そうすると,休日に期間の末日設定はできませんから(特許法も3条2項にその規定があります。),休日明けの月曜11月2日が末日になったわけですね。

 特許庁も,何故間違ったか不思議ですが,人間がやる以上,こういうこともあるでしょう。昔の弁理士試験の短答にはこの手の期限に関する複雑な問題(国内優先権と出願公開絡みなど)が出て,非常に苦しんだ経験があります。
 司法試験の場合は,上記のとおり緩やかですから,民法で期限の問題なぞは出ません。出たところで皆さんスルーだと思います。

 しかし,今回はぎりぎりセーフでしたが,危ない橋であることは間違いありません。金曜の10月30日に請求していたら,こんな大問題にもならなかったと思うのに,代理人がグズだったのかクライアントがグズだったのかわかりませんが,何事も早め早めがよいようです。

PR
62  61  60  59  58  57  56  55  54  53  52 
カレンダー
06 2017/07 08
S M T W T F S
1
3 5 7 8
9 11 12 13 15
16 17 19 22
23 28 29
30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]