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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
0 はじめに
 今年もようやく本格始動ということで,まずは,軽いジャブ程度の判決紹介から参りましょう。
 それでは,本年もよろしくお願いします。

1 概要
 本件は,発明の名称を「プラスチック成形品の成形方法及び成形品」とする発明について,特許出願をした原告に対して,拒絶査定がされ,さらに不服の審判を請求したものの,拒絶審決(進歩性なし)を受けた原告が,拒絶審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して知財高裁3部は,この審決を取り消しました。

 おっと,3部の請求認容判決といえば,いわゆる新傾向判決ですか~,いや今回は違います。

2 問題点
 進歩性の判断手順からすると,本願発明の認定の後,引用発明(いわゆる主引例です。)の認定を行うことになります。通常,ここまでは特段の問題がなく,結構適当に済ませてしまうことも多いとは思いますが,実は重要なのです。
 というのは,この後に,本願発明と引用発明とを対比させ,一致点・相違点認定を行うわけで,この相違点をどうやって埋めるかが進歩性の本質とも言えるわけですからね。
 ですので,何を主引例とするかで,結論が異なることは大ありです。ただ,この事件はそうじゃないんだなあ,とも言えます。

3 判旨
「当裁判所は,審決には,理由不備の違法があるから,審決は取り消されるべきであると判断する。その理由は,以下のとおりである。
審決は,刊行物1(甲1)を主引用例として刊行物1記載の発明を認定し,本願発明と当該刊行物1記載の発明とを対比して両者の一致点並びに相違点1及び2を認定しているのであるから,甲2及び甲3記載の周知技術を用いて(併せて甲4及び甲5記載の周知の課題を参酌して),本願発明の上記相違点1及び2に係る構成に想到することが容易であるとの判断をしようとするのであれば,刊行物1記載の発明に,上記周知技術を適用して(併せて周知の課題を参酌して),本願発明の前記相違点1及び2に係る構成に想到することが容易であったか否かを検討することによって,結論を導くことが必要である。
しかし,審決は,相違点1及び2についての検討において,逆に,刊行物1記載の発明を,甲2及び甲3記載の周知技術に適用し,本願発明の相違点に係る構成に想到することが容易であるとの論理づけを示している(審決書3頁28行~5頁12行)。・・・・・
そうすると,審決は,刊行物1記載の発明の内容を確定し,本願発明と刊行物1記載の発明の相違点を認定したところまでは説明をしているものの,同相違点に係る本願発明の構成が,当業者において容易に想到し得るか否かについては,何らの説明もしていないことになり,審決書において理由を記載すべきことを定めた特許法157条2項4号に反することになり,したがって,この点において,理由不備の違法がある。

・・・・金型に係る特定の発明を主引用例発明として用い,これを基礎として結論を導く場合は,刊行物1記載の発明を主引用例発明として用い,これを基礎として結論を導く場合と,相違点の認定等が異なることになり,本願発明の相違点に係る構成を容易に想到できたか否かの検討内容も,当然に異なる。そうすると,刊行物1記載の発明を主引用例発明としても,従来周知の金型を主引用例発明としても,その両者を組み合わせた結果に相違がないとする被告の主張は,採用の限りでない。」

4 検討
 裁判所の言うとおりですね。主引例と補助引例(ないし周知技術)の組み合わせが一緒なんだから,どっちが主でどっちが補助としようが同じだ!なわけないですよね。
 主引例と本願発明との差を,一致点・相違点認定で確認して,その差をどう埋めていくかが大事なのですから,主引例が違えば,一致点・相違点認定も違ってくるはずですよね。

 何だかあまりにずさん過ぎて笑ってしまうくらいです。いやあこんなのが訴訟段階から来ると代理人としてはおいしいし,裁判所も手間がかからなくていいなあと思ってしまいました。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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