忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,特許権者から専用実施権の設定登録を受けた原告(エレコム)が,被告各製品を製造・販売・輸入等する被告(バッファロー)の行為が,当該特許権(特許番号4472550号,発明の名称「ユニバーサルシリアルバス応用装置」)の専用実施権を侵害するとして,差止と損害賠償を求めた特許権侵害訴訟です。

 これに対して,大阪地裁民事26部(山田さんの合議体ですね。)は,請求を棄却しました。

 クレーム(訂正後)を書いておきます。

 訂正A USBプラグにUSB電子応用モジュールが接続され,
 訂正B 前記USBプラグがケース層で載置板を被覆してなり,
 訂正C 該載置板の上表面と前記ケース層の間に接続挟持層が形成され,
 訂正D 並びに前記載置板の上表面に前記USB電子応用モジュールと電気的に接続可能な複数の第1接続端子が固定され,
 訂正E 前記接続挟持層が対応するUSBソケットとの接続に供され,
 訂正F USBソケットが前記接続挟持層に挿入される時,前記第1接続端子がUSBソケット内に固定された複数の第2接続端子と電気的接続を形成し,また
 訂正G USBプラグ内部の前記載置板の平坦な底表面と前記ケース層との間に前記底表面とケース層とで画定される板底挟持層が形成され,
 訂正H 該板底挟持層内の一部に,前記載置板の底表面に該底表面から突出した少なくとも一つの電子装置が固定され,
 訂正I 前記板底挟持層内の一部に該板底挟持層の変形を防止するための支持装置を設け,
 訂正J 該板底挟持層の外界との接続面のみに前端保護層を設けたことを特徴とする,
 訂正K ユニバーサルシリアルバス応用装置。


 報道も結構されたので,見た人が多いと思います。USBメモリや無線LAN機器,ブルーツース機器,その他USBを使う小型機器を対象としていたようです。

 そのとおり,上のクレームを見ると,本当構造だけで,何用の機器かは問わない形式ですので,非常に広いクレームかなあと思います。でもこれが仇となったと思いますが。
 で,そんなに珍しくないパターンではあるのですが,へそ曲がりがここで取り上げたとなると・・・。

2 問題点
 論点は,無効の抗弁(新規性と29の2)なのですが,今回そんなのってあり?という攻撃防御が見られたので,取り上げました。

 実は,「原告は,被告各製品が本件特許発明の技術的範囲に属する旨主張しているところ・・・,被告は,答弁書において,本件特許の無効を主張し,原告の上記主張に対する認否反論は「次回以降,必要に応じて適宜行う予定である。」と述べ,その後は,原告の上記主張に関する具体的な認否,反論をしていない」のですね。

 つまり,構成要件該当性のところは,流しているのです。
 よっぽどドンズバの引例を見つけることができたのだと思いますが,今までこういう攻撃防御は見たことがありません。だって,こんなことやったら,普通は,民訴法159条1項で,擬制自白を取られてしまいます。しかも,訴訟って,100%勝ちや負けなんてありえませんから(時々ハッタリでそんなことを言う低能な代理人に遭遇し,ウンザリしますが。),リスクを低くするためにも,せめて,御座なりでも構成要件該当性の認否はやるわけです。今回それを全くせず,もはや無効の抗弁一本で勝負というのは,潔いというか身も蓋もないというか,侵害訴訟の無効審判化というか,本当凄いです。

 実は,数年前無効の抗弁の威力が凄まじいときに,これからは侵害訴訟が無効審判化してくるという議論がありました。それが,去年,一昨年と,無効の抗弁でなく,構成要件該当性で切る訴訟が増えた結果,そういう議論は下火になったと思います。もちろん,進歩性のハードルが下がり,無効の抗弁で死ななくなったというのも大きいとは思いますけどね。

 という問題点喚起だけの記事なので,判旨はどうでもいいって言えばいいのですが,一応見ますかね。

3 判旨
 「(3)本件特許発明と乙1発明の対比
 乙1発明を本件特許発明と対比すると,① 乙1発明の「基板」は本件特許発明の「載置板」に,② 乙1発明の「金属ケース」は本件特許発明の「ケース層」に,③ 乙1発明の「開口」部分は,本件特許発明の「接続挟持層」に,④ 乙1発明の「基板」の底表面と「金属ケース」との間に存在する層は本件特許発明の「板底挟持層」に,⑤ 乙1発明の「接触子」は本件特許発明の「第1接続端子」に,⑥ 乙1発明の外部電子機器に設けられた接続端子は本件特許発明の「第2接続端子」に,⑦ 乙1発明の基板の底表面に固定された「電子素子」は本件特許発明の「電子装置」に,それぞれ相当することが認められる。
 したがって,乙1発明は,USB規格に基づくものであるか否かが明らかではないものの,その他の点では本件特許発明と同一の構成であると認めることができる(原告も明らかに争っていない。)。
 乙1文献には,プラグの規格に関する記載が見当たらないものの,USB規格を除くなど,限定的に解釈する理由は見当たらない。かえって,乙6によれば,本件優先日(平成16年11月1日)当時,USB規格は広く知られていたことが認められる。前記(1)図1,図2aのプラグの形状からしても,乙1文献に接した当業者は,乙1発明におけるプラグの規格として,USB規格も想起したことが明らかである。乙1文献のプラグの規格にUSB規格を採用することについて,何らかの阻害要因が存したことを窺わせる事情もない。
 そうすると,上記相違点に係る本件特許発明の構成(プラグがUSB規格によったものであること)は,実質的に乙1文献に記載されているものと同視することができる。
 したがって,本件特許発明は,乙1発明と同一であると認められる。」

4 検討
 無効の抗弁でも,これ,進歩性じゃないのですね。新規性です。ちなみに,被告は進歩性の主張をしていないようです。何て,男らしいんでしょう(ここは皮肉なしに。)。

 つまり,被告の攻撃防御は,構成要件該当性については,擬制自白で結構,主戦場の無効の抗弁でも,新規性と29の2という引例との同一性のみの主張なのですね。そして,あっさり,原告をぶった切ったわけです。

 いやあ感服しますね。これは代理人の弁護士の手柄というよりも,ここまで接近した引例を探した弁理士チームのお手柄でしょうね。しかも代理人になっておらず,補佐人に留まっているのが渋いですね。

 他方,無効審判の方は,弁理士のみの代理人です(無効2011-800228)。こちらは,いまだ審決取消訴訟の提起がないようですが(侵害訴訟と異なり,特許権者は外国法人ですので,附加期間があると思います。特許法178条5項参照。),侵害訴訟でも判断された引例の他にも,違う引例との同一性で無効理由ありとされておりますので,めちゃくちゃ限定しないと勝ち目はないですね。
PR
559  558  557  556  555  554  553  552  551  550  549 
カレンダー
04 2017/05 06
S M T W T F S
1 4 5
7 8 9 12 13
14 17 18 20
22 25 26 27
28 29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]