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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要

 本件は, 平成21年8月7日,発明の名称を「継手装置」とする発明につき,特許出願(特願2009-184095号)をした原告が,平成24年1月24日付けで拒 絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたものの(不服2012-7737号),特許庁は,同年12月25日,拒絶審決(進歩性なし)を下したため,これに不服の原告が審決取消訴訟を提起したものです。 

 これに対して,知財高裁2部(塩月さんの合議体ですね。)は,原告の請求を認容し,審決を取り消しました。要するに,進歩性はあるよ~,ということですね。 

 何だか,夏枯れだったのか,久々の進歩性って感じですね。

 さて,久々の進歩性ということで,審決を取り消した事例,しかも技術もそんな難しくないので,この判決を取り上げたということですね。

2 問題点

 問題点は,上記のとおり,進歩性です。ま,進歩性の論点と言っても,色んなパターンが有ります。

 一番良くあるパターンは,事実認定の所です。つまりは,一致点・相違点認定の所が間違っているというやつです。これだと簡単ですね。もう,審決の違法性をあげつらう,一番よくあるパターンです。

  ということは,この事実認定の所で戦えないと,普通はなかなか覆りません。法的な評価,すなわち容易想到性の評価の所で,審決をあれこれあげつらった所 で,カエルのツラにションベンというか,馬耳東風というか,猫に小判というか(どんどん離れて行きますかな。),知財高裁のエリート裁判官の皆さんは全く 聞いてくれません。そう,通常はね,通常は。

 ところが,最近,容易想到性の法的評価の所でも,結構覆るパターンが出てきました。それが,今回のやつですし,ここでもちょっと紹介した平成23年(行ケ)10121もそのパターンです。

 どういうパターンかというと,上記のとおり,一致点・相違点認定は間違えてないわけなので,主引例の評価はOKなわけです。でも,そこで認定した相違点を変な副引例(又はそれに相当する周知技術)で補って,知財高裁から,バカタレとなじられる,こういうパターンですね。

 ま,上記の平成23年(行ケ)10121号については,判例時報に評釈を 書きましたので,それを見たほうが早いです。ただ,サービスで,ちょっとだけ書きますと,強引に架空の周知技術を認定し,更に強引にそれで相違点を補っ て,ほーら想到容易だろ~っとした事例なわけです。いやあ,安物のコントのようなすげえ荒業で,もはや笑うしかないくらいのものです。全く,特許庁大丈夫 かいなと思わせられます。 

 で,今回は,具体的にはどんな強引な方法を使ったのでしょうかね。 

3 判旨

(1) 本願発明と引用発明との間には審決認定のとおりの相違点があるところ,引用発明は,前記に記載したとおりのものであり,パイプ等の部材が溶接される筒状部と 本体とを接続するという継手部材の機能からして当然に本体と筒状部とが強固に一体化することが要求されることは明らかであることに加え,刊行物1中においても,パイプの引張,圧縮力が作用した場合に本体を係止可能な抜け止め手段を採用することが望ましいことが記載されている(段落【0052】。なお,同段 落には「抜け止め防止手段」と記載されているが,その文脈から「抜け止め手段」又は「抜け防止手段」を意味することは明らかである。)。したがって,第1 部材と第2部材との一体性をより強固なものにするという点においては,本願発明と共通の課題を有している。

しかしながら,本願発明が,ユニバーサルジョイントに限定されるものでないのは被告主張のとおりであるが,「継部に溶接された部材に捻り力等の荷重が加わった場合に,継部が接続部本体から抜けたり,継部が変形したりするおそれ」(甲3の段落【0002】)や,「捻り力等の荷重が加えられても,溶接された第1の継手と,この第1の継手部材を鋳包んだ第2の継手部材との一体性を強固にする」,「第1の継手部材が変形したり,第2の継手部材から抜けたりすることを防止」(甲3の段落【0004】)することを目的とするのに対して,引用発明に係る刊行物1にはそのような記載はない

また,刊行物1には,筒状部20(第1の継手部材)は,鋳鉄製の本体1(第2の継手部材)内に埋め込まれた端面と,前記端面の周方向に間隔を存して配置され,前記端面の外側縁から中央に向けて延び,かつ,前記端面に対して垂直に形成され前記端面の周方向に離間した内壁面を有する複数の切欠き部とを備え,前 記内壁面間の間隔が前記端面の外側縁に近づくにつれて拡開されていること(本願発明の相違点1に係る構成)は,記載も示唆もされていない。

(2) 他方,刊行物2には,超硬リング2が,鋳ぐるみ金属30内に埋め込まれた端面と,端面の周方向に間隔を存して配置され,端面の外側縁から中央に向けて延び, かつ,端面の周方向に離間した内壁面を有する複数の凹凸面(21)とを備えるとともに,内壁面間の間隔が端面の外側縁に近づくにつれて拡開するように形成されていることが記載されている。

しかしながら,刊行物2発明は,前記のとおり,鉄鋼線材,棒材等の圧延に使用されるロールに関するものであって,本願発明や引用発明が継手装置に関するものであるのとは,技術分野を異にしている。また,刊行物2発明の超硬リング2は筒状形状といえるとしても,刊行物2発明の超硬リング2とロール本体1(鋳ぐるみ金属30)との配置構造は,本願発明や引用発明の第1の継手部材(筒状部20)と第2の継手部材(本体1)との配置構造とは異なり,超硬リング2はロール本体に完全に埋め込まれているため,ロール本体1から超硬リング2が抜けることのない構造であり,引張,圧縮力が作用した場合に本体を係止可能な抜け止めのために,本体と筒状部の一体化を求める引用発明とは解決課題を異にしている。

そうすると,引用発明と刊行物2発明が,複数の部品を鋳ぐるみ鋳造によって一体的に形成する複合部品に関する技術という点で共通するとしても,引用発明に刊行物2発明を適用することが,当業者にとって容易に着想し得るとはいえない。

(3) また,仮に,引用発明に刊行物2発明を適用するとしても,刊行物2発明の超硬リングは,刊行物2の図6のように波状に連続した凹凸面であって,本願発明のように端面に対して垂直に形成されてはいないから,直ちに本願発明の相違点に係る構成となるものでないところ,引用発明に刊行物2発明を適用する 際に,波状に連続した凹凸面を端面に対して垂直なものに変更することが,当業者にとって設計的な事項であるとはいえない。そして,複数の部 品を鋳ぐるみ鋳造によって一体的に形成する複合部品に関する技術分野において,鋳ぐるみ部品の抜けや空回りを防止するために,鋳造時に溶融した材料が流入する部分の形状を端面に対して垂直に形成することが,従来周知の技術手段(甲1の図5の周溝25,甲2の図3の突条22)であるとしても,引用発明に刊行 物2発明を適用して,筒状部(第1の継手部材)の端面に波状に連続した凹凸面を形成した上で,さらに上記周知の技術手段を適用して,波状に連続した凹凸面 を端面に対して垂直な凹凸面に変更することの動機付けがあるとはいえず,そのような構成を採用することが当業者にとって容易に想到し得ることとはいえない。 

4 検討

 まあ,これもお笑い特許庁~,ってえのが最適な評価でしょうね。

 若干説明しておくと,これはパイプ等の継ぎ手の発明で,第一の部品と第二の部品を矩形のギザギザ構造(円形にギザギザがあり,外に行くほど,ギザの幅が広 くなるようなやつ。石臼のようなイメージ。)にして噛み合わせて強固に結合させ,継ぎ手に働く捻り力に対抗するような発明なのですね(機械の発明は図がないとわかりにくい~,どこかで図を見てそれを参照してください。すぐにわかります。)。

 他方,主引例は,従来からある単なる継ぎ手です。勿論しっかり固着できるような構造はありますが,当然,本件発明のようなギザギザ構造は開示も示唆もありません。

ということで,本件発明のようなギザギザ構造を副引例で補うしかないのですが,この副引例が,継ぎ手とは全く分野の違う圧延等に使うロールの発明だったわけです。しかも,空回りしないように,ギザギザに似た波型の噛み合わせ構造があるだけだったのですね。ですので,分野がそもそも違うため,課題も全く違うし,上記のとおり,形もちょっと違うので(断面が一方は矩形波,一方は正弦波ですので。),主引例に組み合わせても,相違点が完全に埋まらないのです! あーあ。 

どうですか,この強引な認定~。笑うしかないでしょ。要するに,変な副引例しか探せなかったから,こうなったわけです! 

でも,将来特許庁の主催する委員で呼ばれる可能性も考えて,特許庁への御機嫌取りも若干やっておきますね。

最近こういうような判決が相次ぐのは,私は実は特許庁だけのせいじゃないと思っております。どういうことかというと,要するに,引例の調査がイマイチなので,こういう強引な審査等をやるしかないわけですね。 

実は,今,特許庁の審査に必要な引例の調査(先行技術調査)は特許庁内でやらない場合もあります。外部に委託している場合も結構あるのですね。具体的には,この審査官経験者のパテントの記事を見てください。

別に,外注自体が悪いって言っているわけじゃありません。いい調査だったか,主引例でどれだけ迫ったか,そして,相違点を埋められるだけの副引例が見つかったか,こういうことを最終的に審査官等がきちんと評価すればいいのですからね。

まあ,しかし人間誰しもミスをしますし,関わる人間が多くなれば,ミスも多くなるんですよね~特許庁さん♪

要するに,審査官も劣化しているし,外注先も頼りにならねえという,その結果,この体たらくってわけですね。責めてるわけじゃあないですよ,決して。

 ね,世の中笑って暮らしたいじゃないですか,とすると,判決を読んで大笑いできるなんて実に喜ばしいことじゃないですか,ムフフフ。

5 追伸
 本日は,一度ワードに書いたものをこちらにコピペしたのですが,妙に字の間隔が空き,イマイチ読みづらいですね~。
 9月からshinobiブログのエディターが簡易バージョンのものしか使えなくなったので,そのためかもしれません。ちょっと引っ越しか何かを考えないといけないかもしれませんね。

で,恒例の散歩シリーズです。と言っても,また目黒川沿いです。これは何ていま言うんだろう。昔は大崎テックと言っていたテレビ事業部のあった場所に立っている,私が元居た会社のビルです。おーい,○○くん,仕事しているかーい,こっちは大して仕事してないぞ~♪
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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