忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,発明の名称を「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」とする特許第4312941号(平成10年9月22日出願(優先権主張平成9年10月17日)の特願平10-268475号の分割出願である平成12年10月12日出願の特願2000-312221号,平成21年5月22日設定登録,以下「本件特許」という。)の特許権者である原告に対し,被告が,平成24年4月6日,本件特許の請求項1に係る発明について無効審判を請求した(無効2012-800049号)ため,原告は,平成25年3月28日付けで訂正請求をしたものの(本件訂正),特許庁は,平成25年7月10日,訂正を認めた上で無効審決(進歩性なし。)をしたことから,これに不服の原告が審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁3部(設樂さんの合議体です。)は,審決を取り消しました。要するに,進歩性なしとは言えん,というわけです。

 おっと何だか久々の進歩性の審決取消訴訟の紹介って所でしょうか。

 まずはクレームです。
ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド(8)に,時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して,該ソレノイド(8)を駆動する駆動回路(7)と,90~264Vの間で電圧が異なる複数の交流電圧の電源(1)のうちの任意の交流電圧の電源(1)から整流されて駆動回路(7)に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段(5)と,該検出手段(5)で検出した直流電圧を一種の制御回路に対応した所望の直流電圧と比較し,且つ駆動回路(7)に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく該駆動回路(7)に制御信号を供給する演算処理部(6)とを具備し,電源(1)の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧としてソレノイド(8)に供給するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路(7)に提供される直流電圧をスイッチングし,前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。

 で,刊行物1発明です。
 「トランスの一次コイルに駆動電圧を供給して該一次コイルを駆動するスイッチング回路と,電圧が異なる交流電圧の電源が整流回路を介してスイッチング回路に提供される入力電圧を検出し,検出した検出電圧を一種のDC/DCコンバータに対応した所望の直流電圧と比較し,且つスイッチング回路に提供された入力電圧を所望の直流電圧に変換すべく該スイッチング回路に制御信号を供給する動作モード切換回路とを具備し,交流電圧が異なっても前記所望の直流電圧を駆動電圧としてトランスの一次コイルに供給するトランスの制御回路であって,前記制御信号は,スイッチング回路に提供される入力電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御するPWM信号であるトランスの制御回路。」

 回路自体はよく似ているような気もしますが,何か気づきませんか。本願発明は,ポンプの制御回路で,刊行物1発明って,電子機器のトランスの制御回路なのですね。

 一致点
コイルに駆動電圧を供給して該コイルを駆動する駆動回路と,電圧が異なる交流電圧の電源から整流されて駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段と,該検出手段で検出した直流電圧を一種の制御回路に対応した所望の直流電圧と比較し,且つ駆動回路に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく該駆動回路に制御信号を供給する演算処理部とを具備し,電源の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧としてコイルに供給するコイルの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号であるコイルの制御回路。

 「相違点
   (ア)  相違点1
  コイルに関し,本件訂正発明は,コイルはソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイドであるから,ソレノイド駆動ポンプが制御対象であって,更に,時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して,ソレノイドを駆動するのに対し,刊行物1発明は,コイルはトランスの一次コイルであるから,トランスが制御対象である点。
 (イ)  相違点2
    電圧が異なる交流電圧の電源に関し,本件訂正発明は,90~264Vの間で電圧が異なる複数の交流電圧の電源のうちの任意の交流電圧の電源であるのに対し,刊行物1発明は,このような具体的な限定が無い点。
      (ウ)  相違点3
 検出手段に関し,本件訂正発明は,直流電圧を分圧して検出するのに対し,刊行物1発明は,このような特定が無い点。
      (エ)  相違点4
 オン・オフのデューティを制御する信号に関し,本件訂正発明は,駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であるのに対し,刊行物1発明は,オン・オフのデューティを制御するPWM信号である点。

 なので,審決で,一致点・相違点を上記のとおり認定しても~?!って感じがしますね。

2 問題点
 ということで,問題点は,これって,主引例として適当なの?(動機付けないとも言えるかもしれませんね。)ということになると思います。

 特許庁の審査基準(進歩性)には,動機付け(まあこの文言はよくわからないのですね。つまり,私のようなスケベなおっさんの前に,ミニ・スカートのべっぴんさんが来ようものなら,何とかこのスカートの中身が見えないかなあと,例えば物を落とした振りなんかして,パンチラを狙おうなんて,色々の策を講じることになります。そうすると,このとき,ミニ・スカートの姉ちゃんは,物を落とした振りの動機づけとなり得るわけです。ま,そういうことかな~♥)として,①技術分野の関連性 ,②課題の共通性 ,③作用、機能の共通性 ,④引用発明の内容中の示唆とあります。

 なので,技術分野に関連性がないといくら似ているとか言っても,それを他の引用発明に組み合わせたり,適用したりって,そりゃなかなか出来ないぞってなります。だって,それとそれを合わせて,これにたどり着くか?っていうのが進歩性ですからね。勿論,ナットとボルトを見て,うーん,これはエロいっていうような中二病過ぎてヒラメキすぎるエンジニアも居るとは思いますよ。でも,条文上「通常の~」ってありますからね,いくら何でもナットとボルトで,うーん,こりゃティッシュ二箱みたいな~,想像力豊かな方は想定してないのです。

 それに,あまりにかけ離れた分野だと,②課題の共通性も,③作用、機能の共通性も,④引用発明の内容中の示唆も何もないんじゃないのって気もしますしね。

 ということで,何だか結論が見えた話ですね。

3 判旨
「ア  本件訂正発明は,前記(1)のとおり,ソレノイド駆動ポンプの制御回路に関する発明であり,ポンプの技術分野に属するものであって,その課題は,ユーザーが電源電圧の選択を必要とせず,かつ,種類が低減され,したがって,管理が容易なソレノイド駆動ポンプの制御回路を提供することである。
 これに対し,刊行物1発明は,前記(2)のとおり,パソコン等の電子機器に内蔵されたDC/DCコンバータの制御回路に関する発明であり,電子機器の技術分野に属する発明であって,その課題は,利用者の経済的負担を軽減でき,設置面積が少なくて済み,かつ様々な電源に対応可能な電源供給手段を備えた電子機器を提供することにある。
 このように,刊行物1発明は,電子機器の技術分野に属するものであるのに対し,本件訂正発明はポンプの技術分野に属するものであるから,両者の技術分野は明らかに相違する。しかるに,審決は,上記のとおり,交流電源を用いる電気機器において,電源電圧が異なっていても同じ機器を使用できるようにするとの課題は周知の課題であることを理由として,ソレノイド駆動ポンプにも上記課題があるとする。しかし,これは技術分野を特定しない交流電源を用いる電気機器における課題であって,ポンプの技術分野における課題ではないし,ポンプの技術分野において当然に要求される課題であることを示す証拠もない。
 そもそも,本件訂正発明が属するポンプの技術分野における当業者が,ポンプとは明らかに技術分野が異なる電子機器に関する刊行物1に接するかどうかも疑問であり,また,仮に,ポンプの技術分野における当業者が刊行物1に接したとしても,刊行物1発明は,携帯型パーソナルコンピュータ等の電子機器に関するものであり,刊行物1には,ポンプについての記載はなく,刊行物1発明が技術分野の異なるポンプに対しても適用可能であることについてはその記載もなければ示唆もない。したがって,携帯型パーソナルコンピュータ等の電子機器に関する刊行物1発明をポンプに適用しようとする動機付けもないといわざるを得ない。
 以上によれば,刊行物1発明を本件訂正発明の相違点1に係る構成とすることが容易想到であるとした審決の前記判断は誤りである。 」

4 検討
 ま,ということですね。電気を使う以外の何の共通点もない分野の発明だったので,ちょっとこれからは本願発明にはたどり着かないなあって所です。
 あ,私の進歩性の説明分かりやすかったですかね。進歩性というよりもチ○ポ性って感じでしたが。
 いやあ,先生の説明は分かりやすいんだけど,何せ下品でいけませんわ~ってよく言われます。でも,分かりにくいとまた文句言うくせに~♫

 あ,そうそう,今回のこういう論点を主引例の適格性とか,また小難しく言うのがちょっと流行っているようですが,そこまで一々論点を創りださんでもいいんじゃないかと思うのですね。組み合わせが容易かどうかの動機付けの問題~と従来の論点に乗っかる形でいいと思いますよ。

 ただ,主引例の適格性と言えば,何のことかわかる,それはそれで良い部分はあります。何せ,塚原パパが,進歩性を容易性と想到性に分割して以来,難しく言うのが流行っているようですが,この容易性と想到性,何のことか文字ヅラからはサッパリ分かりませんのでね。こういうのに比べりゃマシ!ってことです。

 ま,非関税障壁じゃないですけど,専門家ってわざと難しく言って,自分達に頼んでもらおうとすることがあるので,それは注意した方がいいですよ。

 例えば,登記なんて,結構簡単なものが多いです。そりゃ,相続でもめたものなんて司法書士に頼むに越したことはありませんが,住宅ローンを払い終わっての抵当権の抹消登記なんて,小学生だって出来るくらいのものですからね。そんなの自分でやっても1時間ありゃ済みます。

 ちょっと前に終わったはずの確定申告だってそうですね。青色申告でやりゃあ結構な手間ですが,複式簿記の基本がわかれば,ソフトとe-taxで済みますよ。普通の人で白色申告だったら,税務署の出張サービス(確定申告の期間やっているやつ)でちょちょい聞けば,税理士なんて要りません。

 それと同じです。難しいことを難しく言う奴にロクな奴はいません。だから,進歩性と来たら,チ○ポ性と覚えりゃいいのです。ボルトとナットじゃチンピクせんが,ミニ・スカ姉ちゃんなら,チンピクするでしょ,それが「通常の知識を有する者が・・・容易に・・」ってことですよ~ムフフフ。

 そろそろ誰かにおもいっきり怒られそうな気がするので,この辺にしときますかね。

5 追伸
 さて,桜です。
  目黒川のイマジカ付近です。木によって違うのですが,1分から2分って所じゃないですかね。でも,チラホラじゃないです。もうこちらも結構咲いております。
大崎側はこんな感じです。いやあ,季節って巡るものですねえ。
 台湾の学生達はひまわりがテーマらしいですが,こちらは桜でしょう。馬が倒れるまで頑張って欲しいものです。勿論,大陸の共産党の方がそれよりも早くぶっ倒れりゃいいのですが。
枝もよっては8分くらいのものもあります。今日は絶好の花見日和ですね。私も明日は毎年恒例の母校でお花見~♫に行きたいと思います。
PR
861  860  859  858  857  856  855  854  853  852  851 
カレンダー
09 2017/10 11
S M T W T F S
8 9 11 14
15 16 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]