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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は本日の日経紙朝刊一面(小さめ)に出ていた記事です。
 何か久々のTPPの話題です。

 ただ,これ単純な特許の話ではなく,新薬の認可も絡むちょっと複雑な話なので,一般の方には非常にわかりにくいのではないでしょうか。いやあ一般どころか,薬関係の特許を頻繁に扱っている薬会社の知財部か,そこと仕事をやっている弁護士とか弁理士じゃないと,本当何のことかわからない話だと思います。

 私も,電機メーカー出身ですし,日々の事件も電機系が多く,化学系も結構あるのですが,薬そのものというのは滅多にやりません。ですので,半可通の解説よりも,わかりやすい所を引用しましょう。

 日弁連が今年の9月に出した意見書が結構わかりやすいので,これにします。

 「再審査制度は,新医薬品について承認後一定期間,市販後の安全対策の一環として製造販売後調査等を実施して,有効性,安全性等に関する情報を収集して,医薬品の日常診療下での有用性を再確認することを目的とした制度である(再審査期間は,新規有効成分は8年,希少疾病用医薬等については最長10 年)。再審査の結果,薬事法第14条第2項の承認拒否事由があるとされれば,承認取消,回収措置,一部変更承認等の手続がとられる。医薬品の承認は,限定された症例数の臨床試験データ等に基づいて与えられるいわば仮の免許であり,市販後の使用成績調査によって得られた情報等を踏まえた再審査を経てこれがいわゆる本免許となると理解されている。日本では,再審査期間経過後でなければジェネリック医薬品の承認申請ができないため,再審査期間は先発医薬品の実質上の特許期間として機能している。 」

 つまり,ここに書いているように,新薬が上市されたと言っても,限定的な治験に基づくものだから,再審査して,本当に薬害がないか確かめようという制度なわけですね。日本独自の制度らしいです。

 で,上記のとおり,薬事法絡みの話なので,薬事法を引きます。

第十四条の四  次の各号に掲げる医薬品又は医療機器につき第十四条の規定による製造販売の承認を受けた者は、当該医薬品又は医療機器について、当該各号に定める期間内に申請して、厚生労働大臣の再審査を受けなければならない。
一  既に製造販売の承認を与えられている医薬品又は医療機器と、医薬品にあつては有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が、医療機器にあつては構造、使 用方法、効能、効果、性能等が明らかに異なる医薬品又は医療機器として厚生労働大臣がその製造販売の承認の際指示したもの(以下医薬品にあつては「新医薬 品」と、医療機器にあつては「新医療機器」という。) 次に掲げる期間(以下この条において「調査期間」という。)を経過した日から起算して三月以内の期 間(次号において「申請期間」という。)
イ 希少疾病用医薬品その他厚生労働省令で定める医薬品又 は希少疾病用医療機器その他厚生労働省令で定める医療機器として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものについては、その製造販売の承認のあつた日後六年を超え十年を超えない範囲内(希少疾病用医療機器その他厚生労働省令で定める医療機器にあつては、四年を超え七年を超えない範囲 内)において厚生労働大臣の指定する期間
ロ 既に製造販売の承認を与えられている医薬品又は医療機器と効能又は効果のみが明らかに異なる医 薬品又は医療機器(イに掲げる医薬品及び医療機器を除く。)その他厚生労働省令で定める医薬品又は医療機器として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意 見を聴いて指定するものについては、その製造販売の承認のあつた日後六年(医療機器にあつては、四年)に満たない範囲内において厚生労働大臣の指定する期間
ハ イ又はロに掲げる医薬品又は医療機器以外の医薬品又は医療機器については、その製造販売の承認のあつた日後六年(医療機器にあつては、四年)
二  新医薬品又は新医療機器(その製造販売の承認のあつた日後調査期間(次項の規定による延長が行われたときは、その延長後の期間)を経過しているものを除 く。)と、医薬品にあつては有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が、医療機器にあつては構造、使用方法、効能、効果、性能等が同一性を有すると認め られる医薬品又は医療機器として厚生労働大臣がその製造販売の承認の際指示したもの 申請期間(次項の規定による調査期間の延長が行われたときは、その延 長後の期間に基づいて定められる申請期間)に合致するように厚生労働大臣が指示する期間
2  厚生労働大臣は、新医薬品又は新医療機器の再審査を適正に行うため特に必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、調査期間を、その製造販売の承認のあつた日後十年(新医療機器にあつては、七年)を超えない範囲内において延長することができる。」 

 まあ,結構複雑な条文ですが,今回問題になっているのは,「 新有効成分含有医薬品」と言われるもので,この条文によると,調査期間(再審査期間のこと)は,原則6年です(製造の承認時等から起算です。)。

 しかし,2項に注目してください。延びることがあるのです。で,今はどうなっているかというと8年になってます(2007年4月1日)。

 まとめると,ジェネリックの会社は,特許期間を過ぎても,この調査期間の8年を過ぎないと,参入できないわけです。
 いや,別に,特許は切れているから参入してもいいんですよ。でも,この調査期間が終わっていないのに参入しようとすると,最初からの治験データ等が必要になるだけです。
 そういうデータ集めの費用がないため,ジェネリックは安い価格で提供出来るっちゅうのに,それが新薬会社と同じだけのデータが必要となれば,誰が参入しますかね~。

 ということで,この調査期間は,実質的に特許期間みたいになっているわけです。

2 他方,アメリカは?というと,もっとはっきりしておりまして,新薬データに独占排他的権利というか保護が存在するのですね(data exclusivityというらしいです。)。

 これが現在8年です。
 まあ,制度趣旨を全く異にする二国間の制度が,何故か実質的に同じものとして鎮座ましましているというこの不思議。別に皮肉じゃないっすよ。

 で,上記のとおり,現状日本は既に実質的にdata exclusivityの制度があり,しかも米国と同じ8年っていうわけです。なので,ここでは日米の利害はそんなに対立していないわけです。

 ただ,新興国にとっては,重大です。新薬のメーカーがあるってえのは,実はそんなに多くはありません。日本って,普段私も含めて日々暮らしているので,その凄さを感じることはあまりないと思いますが,問題となっている新薬会社も結構ありますし,世界を席巻する自動車メーカーも電機メーカーも,精密機器メーカーもあるという稀有な国なわけです。

 でも,新興国には,新薬のメーカーなどなく,早く安い薬が入ってくるのに越したことはないということになるのは当然です。ですので,新薬メーカーを有する国とそうでない国で対立があるわけです。

 ただ,新薬メーカーがある国には,ほぼ確実にジェネリックのメーカーもありますので(日本もそう。),単純に新薬メーカーの利益のみ追及すれば話が終わるかというとそうでもないらしいですがね。

 つーかさあ,こんなチンピラ弁護士が,何で,説明不足のマスコミのフォローをしないといけないんだ~??本当。

 まあいいです。何が問題点であるか,ということを考えないとTPPも考えにくいですからね。

 で,私はというと,TPPには大反対です。だって,アメリカだけが得をする制度ですから。いやあ日本の中にも賛成者はたくさんいますよ。でもそれらの人は,基本アメリカのおこぼれをもらおうという志の低い人達なわけです。
 ふざけんなアメリカ,お前の国も公用語を日本語にしろ!くらいの勢いでやればいいと思うのですけどね~(ま,現実は厳しいですが。)。

 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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