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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 昨日は結構寒かった東京ですが,今日はそこそこ暖かい東京です。来週は寒くなるという話ですが,いやあだなあ。

 さて,特許で面白い話が2つほどありましたので,それらにしましょう。

2 まずは,今日の日経の26面,経済教室です。一橋大学の相澤先生の「特許制度の抜本見直しを 第4次産業革命と知的財産 ソフト、正面から保護せよ」という論文の話です。

 このブログを見ている方は,日経紙読んでいる人が多いでしょうから(スノッブ趣味ですなあ。),今朝読んできたって人も多いでしょう。

 で,どうでしたか?私は読んでいてはあ~?!と思いましたよ。何ちゅうか,やっつけ仕事というかとっ散らかってるっていうか,そんな感じでした。

 大まかにまとめると,こんな感じですかね。

 第4次産業革命がやってきた
        ↓
 なのに,特許制度は旧来のモノ中心。これじゃあいかんからソフトウェアを正面から保護すべき。
        +
 もっともっと特許制度は,より積極的な方向に舵を切るべき

 
こういう意見があるってことは,まあまあ理解できることです。でもおかずが多くて主張が見えにくいですけどね。

 で,言いたいことがそういうことだという前提に立って,私がはあ~?!と思ったのは,上記のソフトウェアを正面から保護すべきっていうことです。

 ソフトウェア関連の特許をやっている実務家なら,今の審査基準上,ソフトウェア関連の技術は,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されていないと特許を取れないことを知っています。

 ということは,相澤先生の言いたいことは,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されていなくても,特許を付与せよということですかねえ~♬。
 でもねえ,それってもうソフトウェアじゃないでしょ。ソフトウェアってそもそもコンピュータで使ってナンボの世界です。

 クラウドからダウンロードされようが,ダウンロードもせずブラウザ上で実行されようが,パッケージソフトで売られようが,組み込みとして元々入ってようが,ソフトウェアってそもそもハードウェアを動かすものですから,ソフトウェア自体を正面から保護せよって言われたって,わけわからんこと言うなよって思いますけどねえ。

 いやいやいやいや一橋大学の教授ともあろう方がそんなわけわからん意見を持つわけがないでしょ,おう確かに確かに。ソフトウェアの本質はアルゴリズム(算法)って本人も言っているのだから,これを保護しろってことですよ~。何だ~そうだったんですね~って,ほんまかいな~♡。

 で,本当にアルゴリズムだけでも保護するってことになると,もう世の中大混乱ですわ。
 例えば,シュレディンガー方程式を変分法で解く方法なんてものが特許になりえるってことです。勿論,ビジネスモデルそのものが特許で保護されるってことにもなります(Alice判決とか知らないのかなあ。)。

 そんなのでいいのですかねえ。特許や著作権を始めとする知財なんて所詮でっち上げの権利に過ぎません。今だって,ソフトウェア関連の特許のせいでイノベーションが妨げられているかもって話が出ているのに,それより広げるなんてとても受け入れられるとは思えませんがね。

 何事もほどほどがいいのですよん。

3 次は,小野薬品工業が,オプジーボの特許を侵害しているとして,米メルクの日本法人MSD社を訴えた件です。

 薬は私の得意分野ではないのですが,オプジーボの作用機序は顕著なものがあり,かなり昔から注目しておったのです。ですので,それと似た作用機序を持つ,メルクのキートルーダが出たという話を聞いたとき,あれ,これオプジーボの特許大丈夫かなあと思ったものです。

 調べると,アメリカでは既に提訴されていたようですね。ほんで漸く日本でもこうなったってことのようです。
 
 で,報道によると,特許は2つです。特許第4409430号と特許5159730号です。
 さて,特許第4409430号のクレームは以下のとおりです。
【請求項1】 PD-1抗体を有効成分として含み、インビボにおいてメラノーマの増殖または転移を抑制する作用を有するメラノーマ治療剤。
【請求項2】 PD-1抗体が、完全ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体である請求項1記載のメラノーマ治療剤。 

 インビボということは生体内ですが,ようわからん限定ですね。インビートロじゃないってことが重要なんですかね。
 invivoとinvitroは,それぞれ生体内と試験管内ってやつですね。vivoより上手いのはvivoだけって覚えるのがいいと思いますね。あとvitroの方は,長崎にビードロというガラス製のおもちゃがありますが,それと同じですよ。
 おっと議題から逸れましたが,4409430特許はメラノーマ用というのが文言上明白です。

 次に,特許5159730号のクレームは以下のとおりです。
【請求項1】   PD-1抗体を有効成分として含み、インビボにおいて癌細胞の増殖を抑制する作用を有する癌治療剤(但し、メラノーマ治療剤を除く。)。
【請求項2】   癌が、肺癌、大腸癌または卵巣癌である請求項1記載の癌治療剤。
【請求項3】   肺癌が、肺扁平上皮癌または肺腺癌である請求項2記載の癌治療剤。
【請求項4】   さらに、インターフェロン-αまたは抗CTLA-4抗体と組み合わせることを特徴とする請求項1記載の癌治療剤。
【請求項5】   さらに、化学療法剤と組み合わせることを特徴とする請求項1記載の癌治療剤。
【請求項6】   さらに、癌抗原と組み合わせることを特徴とする請求項1記載の癌治療剤。
【請求項7】   PD-1抗体が、完全ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体である請求項1記載の癌治療剤。

 こちらは広く癌治療剤で,かなり広いクレームですね。

 両者ともPD-1抗体にポイントがあります。上記のとおり,私はこの分野詳しくないのでよくわからないのですが,技術のポイントは,癌だとかウィルスとかの変な奴(抗原)にくっつくやつ(抗体)で,そのうちモノクローナルということで,単一の種類だけを産生するという所にあるようです。

 とは言え,相手方のメルクのキートルーダがどのような組成なのかようわかりませんので,無責任な通りすがりとしては,このくらいの所が限界です。続報を待った方が良さそうですね。

 


 
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