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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,発明の名称を「活性発泡体」とする発明について,平成17年5月16日に国際出願(日本国内出願番号は,特願2006-536494号で,国際公開番号は,WO2006/117881。)をした原告ら(自然人二人です。)が,平成23年6月23日付けで拒絶査定を受けたため,同年9月28日,これに対する不服の審判を請求するとともに,平成26年1月27日,手続補正書を提出し,特許庁は,この審判請求を,不服2011-20954号事件として審理したものの,拒絶審決(実施可能要件NG)を下したことから,これに不服の原告らが審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁3部(鶴岡さんの合議体ですね。ただし,昨日ちょっと書いたように,鶴岡さんはここの所,差し支えとなっております。体調でしょうかね。)は,審決を取り消しました。要するに,実施可能かもしれんなあ,ってことです。

 明細書の記載要件が問題になり,しかも逆転でOKぽくなったので,取り上げたわけです。
 しかし,単にそれだけではなく,うーん,UFO型の明細書でも時には救われることもあるんだなあって感じです。

 実施可能要件なので,クレームはあんまり関係ないのですが,一応。
「【請求項1】
天然若しくは合成ゴム又は合成樹脂製で独立気泡構造の気泡シートを備えた活性発泡体であって,前記気泡シートは,ジルコニウム化合物及び/又はゲルマニウム化合物を含有し,薬剤投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いることを特徴とする活性発泡体。」


 こんなやつですね。
 で,何に使うかというと,クレームにちょっと載ってますが,「本発明は、天然若しくは合成ゴム又は合成樹脂製の活性発泡体に関し、血行を促進し、体質改善や、癌等の病気の治癒を促進することができる活性発泡体に関するものである。」に使うもののようです。

 つまりは,この活性発泡体と薬を併用すると,「本活性発泡体は、薬剤投与の際に、人体に直接又は間接的に接触させて用いれば、その薬剤の効果を上げることができる。また、大量に使えば副作用のある薬剤であっても、本活性発泡体を併用すれば少量ですむので、副作用を抑えることができる。」らしいです。

 うーん,ほんまかいな~ほんまだとするとすげえけどね。

2 問題点
 問題点は上記のとおり,実施可能要件です。条文です。特許法36条4項1号です。
4  前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一  経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。


 趣旨はいいですよね。
 特許制度は発明公開の代償なのだから,公開と言えないような明細書の開示じゃだめよ~ちゃんと作れて使えるように公開せんか!ボケ!カス!ていうやつです。

 で,上にUFO型って書きましたが,まあこんなやつですわ。
 クレーム→UFO
 明細書→超合金のボディに,反重力エンジンでひとっ飛び~♡

 で,超合金ってどんな合金なのか,反重力エンジンってどんなエンジンなのかは当然書いていないってやつですな。
 これじゃあ誰も作れない,誰も使えないってわけです。

 まあただ世の中こんな典型的に酷いものってそんなにありません。今回の本件特許も,UFOの作り方そのものは,書いているっぽいです。そして,その中に乗り込むこともできるようです。
 ただしかし,その乗り物が,アニメやSFの世界で描かれているような飛び方をするかどうかまでは知らん!ということのようですね。

 例えば,本件の明細書には,「【0009】   本活性発泡体は、人体に直接又は間接的に接触させて用いるが、さらに、活性発泡体と人体との間で摩擦を起こせば、より効果的である。本活性発泡体は、血行を促進させ、体質改善や病気の治癒を促進させるが、そのメカニズムは解明されていない。」とあります。
 つまりようわからんけど,こういうのを作って薬と使えば,何か知らんけど,いい感じになるんじゃ,とにかく,ってやつです。

 明細書は,全体的にこんな感じで,実施例もあることはあるのですが,1個しか例が無かったり,その結果もあやふやなもんで,特許庁としてはとてもこんなのに特許付与できんと拒絶査定→拒絶審決した気持ちは十分にわかります。

 とは言え,発明の開示といえるのは,どの範囲?って問題にはなると思います。
 つまりは,上のUFOの例だと,光速で飛ぶことまで開示しないといけないのか,それとも,とにかく浮上できる程度でもいいのか,乗り込めるくらいまでで十分なのか,って疑問のある所です。
 まあこれは作用効果との兼ね合いなんだと思いますけどね。

3 判示
「2 本願明細書が実施可能要件を充足しているか否か
(1) 実施可能要件の内容
 特許法36条4項1号は,明細書の発明の詳細な説明の記載は,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定める。
 特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。特許法36条4項1号が上記のとおり規定する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことにあると解される。
 そして,物の発明における発明の実施とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号),同法36条4項1号の「その実施をすることができる」とは,その物を作ることができ,かつ,その物を使用できることであり,物の発明については,明細書にその物を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき,当業者がその物を作ることができ,かつ,その物を使用できるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。
 さらに,ここにいう「使用できる」といえるためには,特許発明に係る物について,例えば発明が目的とする作用効果等を奏する態様で用いることができるなど,少なくとも何らかの技術上の意義のある態様で使用することができることを要するというべきである。
 これを本願発明についてみると,本願発明は,前記第2の2に記載のとおりの活性発泡体であるから,本願発明は物の発明であり,本願発明が実施可能であるというためには,本願明細書及び図面の記載並びに本願出願当時の技術常識に基づき,当業者が,本願発明に係る活性発泡体を作ることができ,かつ,当該活性発泡体を使用できる必要があるとともに,それで足りるとい
うべきである。・・・

(3) 活性発泡体を使用できるかについて
 次に,当業者において,本願明細書の記載及び本願出願当時の技術常識に基づいて,本願発明に係る活性発泡体を使用できるかどうかについては,活性発泡体を前記(2)のとおりの形態とすることができる以上,当該活性発泡体を「薬剤投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いる」こと自体は当然にできると考えられることから,かかる用い方にどのような技術上の意義があるのかについて検討する。
ア 本願明細書には,本願発明が解決しようとする課題として,「血行を促進し,体質改善や,癌等の病気の治癒を促進することができる活性発泡体を提供すること」との記載がある([0007])。しかしながら,これらの効果については「そのメカニズムは解明されていない」とあり([0009]),その作用機序に関しても,ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物によって活性発泡体外へ発生させた特定波長の赤外線と人体の波長とが共振する結果,人間の自然の治癒力が増進される旨の記載はある([0010])ものの,これも本願明細書自体が認めるとおり,推測の域を出るものではない。
イ そして,本願明細書では,<試験1>として,被験者1名が活性発泡体を敷いた椅子の上に30分間静止状態で座った後の血流量,血液量,血流速度及び体圧を,活性発泡体を敷いていない椅子の上に30分間静止状態で座った後のそれらと比較した結果を踏まえ,「本活性発泡体を使用すれば,血行がよくなり,体圧が下がることが分かる。」と結論付けている([0035]ないし[0040])。
 しかしながら,この試験は,活性発泡体を「人体に直接又は間接的に接触させて用いる」態様で行われた試験ではあるものの,この試験において用いられた活性発泡体がどのようなものであるのか(特に,ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物のどちらを,あるいはその両方を,どの程度含有するのか)については,本願明細書に記載がなく定かではない。また,本願出願当時の当業者の技術常識に照らしても,被験者は50代の女性1名のみであるから,その試験結果を人体一般に妥当する客観的なものとして評価することが可能であるともいい難いし,試験条件の詳細も明らかではないから,この試験における血流量や体圧の計測結果から導かれるとされる「本活性発泡体を使用すれば,血行がよくなり,体圧が下がる」との効果が,活性発泡体を使用したことによるものであるのか,それ以外の要因に基づくものであるのかどうかについても,直ちに検証することはできない。
 そうすると,<試験1>の結果のみから,活性発泡体を「人体に直接又は間接的に接触させて用いる」ことに,人体の血行を促進することが期待できるという技術上の意義があるというのには疑問がある。とはいえ,例えば,<試験1>に係る諸条件の説明や,他の試験結果の存否及びその内容次第では,本願発明に係る活性発泡体の使用に,かかる技術上の意義があることが裏付けられたということのできる余地もあるというべきである。
ウ また,本願明細書は,<試験2>に基づき,「活性発泡体は,ガン細胞のアポトーシス回路を立ち上げ,ガン細胞の働きを弱体化する作用を促進する。」とする([0051])。
 しかしながら,<試験2>は,前立腺癌細胞を培養した培養皿を上下から活性発泡体で挟んだ状態で培養し,活性発泡体なしの状態で培養したものとの比較を行ったというものであり,活性発泡体を,「人体に直接又は間接的に接触させて用いる」場合として想定されるような態様とはおよそ異なる態様で用いているから,本願出願当時の当業者の技術常識を踏まえても,かかる試験結果から,活性発泡体を「人体に直接又は間接的に接触させて用いる」ことに,癌細胞の弱体化を期待できるという技術上の意義があるということはできない。
エ さらに,本願明細書には,本願発明の効果や産業上の利用可能性に関して,「本活性発泡体は,薬剤投与の際に,人体に直接又は間接的に接触させて用いれば,その薬剤の効果を上げることができる。また,大量に使えば副作用のある薬剤であっても,本活性発泡体を併用すれば少量ですむので,副作用を抑えることができる。」との記載がある([0024],[0061])。そして,これらの効果に関して,<試験3>に基づき,「活性発泡体とHDACIとを同時に用いることにより,活性発泡体は,HDACIのヒト前立腺癌細胞の増殖抑制効果を促進することができる。原理的には,この方法は全ての癌に有効な治療法と考えられる。」とする([0059])。
 しかるに,<試験3>についても,前立腺癌細胞を培養したマイクロプレートにSB(酪酸ナトリウム)を添加し,プレートを活性発泡体で上下から挟んだものと,活性発泡体を用いずに前立腺癌細胞を培養し,SBを添加したものとの比較を行ったというものであり,活性発泡体を,「人体に直接又は間接的に接触させて用いる」場合として想定されるような態様とはおよそ異なる態様で用いているから,本願出願当時の当業者の技術常識を踏まえても,これらの試験結果から,活性発泡体を「人体に直接又は間接的に接触させて用いる」ことに,薬剤の効果を増強させることが期待できるという技術上の意義があるということはできない

(4) 審決の判断について
 以上を踏まえて,審決の判断の適否を検討する。
 審決は,活性発泡体の薬剤との併用効果について当業者が理解し認識できるような記載がないことを理由に,本願明細書が特許法36条4項1号所定の要件を満たしていないと結論付けている。
 しかしながら,本願発明の請求項における「薬剤投与の際に」とは,その文言からして,活性発泡体を用いる時期を特定するものにすぎず,その請求項において,薬剤の効果を高めるとか,病気の治癒を促進するなどの目的ないし用途が特定されているものではない。よって,本願明細書に,活性発泡体の薬剤との併用効果についての開示が十分にされていないとしても,活性発泡体を「薬剤投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いる」ことに,それ以外の技術上の意義があるということができるのであれば,少なくとも実施可能要件に関する限り,本願明細書の記載及び本願出願当時の技術常識に基づき,本願発明に係る活性発泡体を「使用できる」というべきである。そして,検討次第では,少なくとも,本願発明に係る活性発泡体を,血行促進効果を発揮させることができるような形で「使用できる」と認める余地があり得ることは,前記(3)イにおいて説示したとおりである。
 よって,審決には,かかる点についての検討を十分に行うことなく,上記のような理由により本願明細書が特許法36条4項1号所定の要件を満たしていないと結論付けた点で,誤りがあるといわざるを得ず,審決は,取消しを免れない。」

4 検討
 何だか,悩んだ挙句,ようわからんからもう一回やれ!って言ってるだけのようにも見えます。

 要するにクレーム自体には,病気の治癒を促進する目的とか効果とか用途とか謳ってないんだから,「実施」のうちの使用と言っても,限りがあるでしょ,ってわけです。
 未確認飛行物体(UFO)なんだから,飛行できりゃいいんだよ,中に人が乗る必要もないし,光速で移動する必要もなし,ただもしかすると,その辺できるかもしれんから,その辺はもう一丁検討してみてちょ~っちゅうのです。
 面倒なことは先送り~ってことですね。

 ただ,この判決,実施可能要件の一般的な規範はよく書かれていると思います。
 ということなので,準備書面やら,鑑定書やらで,実施可能要件を引くときって,審査基準を引くことが多かったのですね(サポート要件については,例のパラメータ判決を引けば問題なし!)。これからは,そういうときには,この判決の規範を引くといいと思います。

5 追伸
 先般,このブログで,iphone6+を交換したと書きました。
 それから,3週間弱。また交換する羽目になりました。

 というのは,この前,銀座のジーニアスバーで交換したiphone6+のタッチパネルの挙動がおかしかったのです。

 まあ,液晶のタッチパネルというと,インセルタッチ(セルの内部にタッチパネルというか,タッチパネルのための静電容量を組み込めるってやつです。)ということで,JDIがかなり優位です(この対応にシャープが遅れたため,シャープがアップルを初めとする大手のスマホメーカーでの売上を伸ばせず,本日の報道のとおり,液晶事業を売却する羽目になったとかならなかったとか~♡)。

 不具合が生じてわかりますが,この液晶のタッチパネルって本当,スマホの肝ですね。
 これが思うようにならないともの凄いストレスです。例えば,Gを押そうとして,Tになったり,単にスワイプしたつもりが,その箇所をタップしたような反応になったり・・・(変なURLがバンバン立ち上がったりするわけですわ。)。

 で,こんな状況が,その3週前に交換した直後から続いていたわけです。

 ほんで,初期化しても直らないということで,本日,五反田のオフィシャルサービスプロバイダなる所に行き,またまた交換してもらったわけです。
 ちなみに,今度はタダでした。当たり前ですけどね。

 まあ私も電機会社に勤めていたのでわかるのですが,この交換品っていわゆるB級品ですわな。正規の販売網でサラで売るには何かの性能がイマイチだったけども,完全なる不良品とも言えないってやつです。
 よくあるパターンが,液晶に画素欠陥があり,それが基準より若干多い~でも目立たない場所(端っことかね)にあるので,まあ交換品としてならOKだろうってやつです。

 だけど,今回のはハズレのB級品だったってわけです。まあ,今度の交換品もきっとB級品でしょうから,ハズレでないことを祈りますがね。

 あと,五反田のオフィシャルサービスプロバイダの対応は良かったですね。やはり外だからですかね。
 他方,銀座にあった直営店のジーニアスバーは,格好だけ一人前ですが,もう対応が全然ダメですね。こういう修理関係は,せめて回路かコードのどちらかを読めるエンジニア上がりの人にして欲しいもんですニャ。


 さて,天気の話も書いておきましょう。
 昨日ちょっと蒸し暑くなったのですが,今日もまた低く,東京は22.9度の最高気温です(今の時点)。朝は,半袖だと寒いなあって感じでした。
 
 これからしばらくもはっきりしないようですし,このまま秋になりそうですね。そうすると,今年の夏は,8/23までだったってことになりますね。結構短い夏でしたね。

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