知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本日は発明の日,らしいです。
特許庁もこんなページを用意しております。私にとってはだから何なんだ?って所ですので(恐らく他の多くの人にも),違う話,まあ小ネタで行ってみましょう。
(こんなバナーも使い放題らしい。)
2 まずは本日の日経の一面です。
「新日鉄住金、元従業員側が解決金 ポスコ技術流出で」ということで,民事の和解が,元の従業員と成立したみたいですね。
結構な大きな話です。
水面下では今までもあったかもしれませんが,営業秘密を漏らした元従業員にけじめをつけさせたというのはあまり聞きません。
大きな会社というのは体面を気にしますが,最近は株主への説明責任とか,そういう所謂コーポレートマターの観点から,ナアナアで済ませなくなったようです。まあ私の商売的には良い傾向ですが,大局的にはどうなんでしょうねえ。
で,この問題となった技術の,方向性電磁鋼板というのを,特許権者の新日鉄住金の昔の名前の新日鉄で検索してみました。
JPlatPatの「特許・実用新案テキスト検索」で,特許請求の範囲と要約「方向性電磁鋼板」AND 出願人/権利者「新日本製鐵株式会社」ですね。特許公報のみです。
そうしたところ,何と700件もの特許が挙がりました。一番古いのは,特願昭60-017591ですね。「鉄損の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法」です。
「【請求項1】Si 4.5重量%以下を含むけい素鋼熱延板を、必要に応じて行なう900゜~1200℃での焼なましの後、1回または中間焼なましをはさむ2回以上の冷間圧延により最終製品板厚となし、脱炭焼なましののち最終仕上げ焼なましを行なう一方向性電磁鋼板の製造方法において、前記脱炭焼なまし工程と前記最終仕上げ焼なまし工程との間で、鋼板表面に形成されている酸化層の厚み方向の一部を鋼板表面上部分的に除去し、該除去部が、鋼板の片面あるいは両面の全表面積の3~97%の範囲内で、しかも50mm×50mmの面積範囲内に少なくとも1つ以上存在することを特徴とする磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。」
まあこれはいいとして,要するに特許をかなり出願しているということです。
今回の話の前段階であるポスコとの訴訟の和解でも,営業秘密だけではなく,特許権侵害を含めた和解だった筈ですから,特許をかなり出願しているというのは当然なのでしょう。
なので,着目すべきはその戦略ですよね。
特許を出願していたにもかかわらず,今回の動きが始まったのは,韓国での訴訟からです。ポスコのノウハウをポスコの元社員が中国メーカーに売ったという訴訟で,その元社員が,いやいやいや売ったのはポスコのノウハウではなく,新日鉄のノウハウでっせ~♡ということで火がついたわけですね。
つまり,そういう事情がないと分からない!ものだったのです。いや別にノウハウってそんなもんでしょ,リバースエンジニアリングで分からない,疑わしいけど証拠がない,解析しても分からない,だからこそのノウハウでしょ?,だからこそ秘匿すんでしょ?そりゃそうです。
そりゃそうなのですが,じゃあちょっと検索しただけで700件もあった特許(無方向性電磁鋼板もありましたけどね。),って謂わば殆ど無意味だったってことになりませんか。
リバースエンジニアリングして,すぐにこの特許が使われてる!っていうような特許じゃないと~♫。方向性電磁鋼板と言えども,買えないものじゃないですからね(大手の自動車メーカーは,ライバルの新車を買ってきてはほぼすべてリバースエンジニアリングしています。)。
まあ本来ノウハウにすべき,リバースエンジニアリングで分からないようなものまでも特許出願したのでしょうね。そして,リバースエンジニアリングで分かるようなことは特許出願しなかった(できなかったのかもしれませんが。),ということなのでしょう。
私は大手企業の知財部に居ましたから,よく分かります。冴えている人も居ますが,抜け作も大勢居ます。新日鉄住金には良い勉強代だったのではないでしょうかね。
なので,今後の新日鉄住金は,手強くなるでしょうねえ。
3 お次は人事です。
この春,知財高裁と東京地裁の民事部(知財専門部)通じて,唯一部長が変わった東京地裁民事46部ですが,新しい部長がウェブサイトに出ていますね。
柴田義明部長です。平成17年から平成20年ころに知財高裁の陪席だったようですが,全然記憶がないですなあ。
さて,どのような訴訟指揮でしょうかねえ。
4 さらに人事関係というか,懲戒関係です。
と言っても弁護士ではなく弁理士です。
弁理士の場合,人数も少なく,お客さんも大手企業が多いことから,懲戒になる場合って弁護士に比べて圧倒的に少ないと思うのですね。
とは言え,今月,2件懲戒処分が出ております。一つは1年6月の業務停止,もう一つは,戒告です。戒告の方は若干可哀想な感じがします。ちなみに,これは弁理士法に基づく懲戒ですね。
今月のパテントはもう届いている方も居ると思いますが,それにはJPAAジャーナルというのが毎月封入されていて,会則違反のペナルティーが載っております。
それによると,今月は,会費滞納で2名の弁理士が退会処分になっておりますねえ。うー世知辛い世の中です。
弁護士も弁理士も強制加入方式を捨て去れば,こんな会費滞納で資格を失うことはなくなりますので,早く実現すると良いニャーと思います。
5 追伸
毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーです。
本日は,ここ目黒新橋に来ております。目黒川にかかる目黒通りの橋ですね。
いやあ,先週とは打って変わっての緑です。初夏って感じもしますねえ。
今日の東京の最高気温は,25.7度でした。散歩すると汗が出てきますもんね。さすがに冬物のコートなどはもうクリーニングに出してもいいような気もしますが,どうなんでしょうねえ。
恒例の山本橋です。
こちらも緑,ところどころに花が残っている木もありますが,まあこんな感じですね。
特許庁もこんなページを用意しております。私にとってはだから何なんだ?って所ですので(恐らく他の多くの人にも),違う話,まあ小ネタで行ってみましょう。
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2 まずは本日の日経の一面です。
「新日鉄住金、元従業員側が解決金 ポスコ技術流出で」ということで,民事の和解が,元の従業員と成立したみたいですね。
結構な大きな話です。
水面下では今までもあったかもしれませんが,営業秘密を漏らした元従業員にけじめをつけさせたというのはあまり聞きません。
大きな会社というのは体面を気にしますが,最近は株主への説明責任とか,そういう所謂コーポレートマターの観点から,ナアナアで済ませなくなったようです。まあ私の商売的には良い傾向ですが,大局的にはどうなんでしょうねえ。
で,この問題となった技術の,方向性電磁鋼板というのを,特許権者の新日鉄住金の昔の名前の新日鉄で検索してみました。
JPlatPatの「特許・実用新案テキスト検索」で,特許請求の範囲と要約「方向性電磁鋼板」AND 出願人/権利者「新日本製鐵株式会社」ですね。特許公報のみです。
そうしたところ,何と700件もの特許が挙がりました。一番古いのは,特願昭60-017591ですね。「鉄損の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法」です。
「【請求項1】Si 4.5重量%以下を含むけい素鋼熱延板を、必要に応じて行なう900゜~1200℃での焼なましの後、1回または中間焼なましをはさむ2回以上の冷間圧延により最終製品板厚となし、脱炭焼なましののち最終仕上げ焼なましを行なう一方向性電磁鋼板の製造方法において、前記脱炭焼なまし工程と前記最終仕上げ焼なまし工程との間で、鋼板表面に形成されている酸化層の厚み方向の一部を鋼板表面上部分的に除去し、該除去部が、鋼板の片面あるいは両面の全表面積の3~97%の範囲内で、しかも50mm×50mmの面積範囲内に少なくとも1つ以上存在することを特徴とする磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。」
まあこれはいいとして,要するに特許をかなり出願しているということです。
今回の話の前段階であるポスコとの訴訟の和解でも,営業秘密だけではなく,特許権侵害を含めた和解だった筈ですから,特許をかなり出願しているというのは当然なのでしょう。
なので,着目すべきはその戦略ですよね。
特許を出願していたにもかかわらず,今回の動きが始まったのは,韓国での訴訟からです。ポスコのノウハウをポスコの元社員が中国メーカーに売ったという訴訟で,その元社員が,いやいやいや売ったのはポスコのノウハウではなく,新日鉄のノウハウでっせ~♡ということで火がついたわけですね。
つまり,そういう事情がないと分からない!ものだったのです。いや別にノウハウってそんなもんでしょ,リバースエンジニアリングで分からない,疑わしいけど証拠がない,解析しても分からない,だからこそのノウハウでしょ?,だからこそ秘匿すんでしょ?そりゃそうです。
そりゃそうなのですが,じゃあちょっと検索しただけで700件もあった特許(無方向性電磁鋼板もありましたけどね。),って謂わば殆ど無意味だったってことになりませんか。
リバースエンジニアリングして,すぐにこの特許が使われてる!っていうような特許じゃないと~♫。方向性電磁鋼板と言えども,買えないものじゃないですからね(大手の自動車メーカーは,ライバルの新車を買ってきてはほぼすべてリバースエンジニアリングしています。)。
まあ本来ノウハウにすべき,リバースエンジニアリングで分からないようなものまでも特許出願したのでしょうね。そして,リバースエンジニアリングで分かるようなことは特許出願しなかった(できなかったのかもしれませんが。),ということなのでしょう。
私は大手企業の知財部に居ましたから,よく分かります。冴えている人も居ますが,抜け作も大勢居ます。新日鉄住金には良い勉強代だったのではないでしょうかね。
なので,今後の新日鉄住金は,手強くなるでしょうねえ。
3 お次は人事です。
この春,知財高裁と東京地裁の民事部(知財専門部)通じて,唯一部長が変わった東京地裁民事46部ですが,新しい部長がウェブサイトに出ていますね。
柴田義明部長です。平成17年から平成20年ころに知財高裁の陪席だったようですが,全然記憶がないですなあ。
さて,どのような訴訟指揮でしょうかねえ。
4 さらに人事関係というか,懲戒関係です。
と言っても弁護士ではなく弁理士です。
弁理士の場合,人数も少なく,お客さんも大手企業が多いことから,懲戒になる場合って弁護士に比べて圧倒的に少ないと思うのですね。
とは言え,今月,2件懲戒処分が出ております。一つは1年6月の業務停止,もう一つは,戒告です。戒告の方は若干可哀想な感じがします。ちなみに,これは弁理士法に基づく懲戒ですね。
今月のパテントはもう届いている方も居ると思いますが,それにはJPAAジャーナルというのが毎月封入されていて,会則違反のペナルティーが載っております。
それによると,今月は,会費滞納で2名の弁理士が退会処分になっておりますねえ。うー世知辛い世の中です。
弁護士も弁理士も強制加入方式を捨て去れば,こんな会費滞納で資格を失うことはなくなりますので,早く実現すると良いニャーと思います。
5 追伸
毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーです。
本日は,ここ目黒新橋に来ております。目黒川にかかる目黒通りの橋ですね。
いやあ,先週とは打って変わっての緑です。初夏って感じもしますねえ。
今日の東京の最高気温は,25.7度でした。散歩すると汗が出てきますもんね。さすがに冬物のコートなどはもうクリーニングに出してもいいような気もしますが,どうなんでしょうねえ。
恒例の山本橋です。
こちらも緑,ところどころに花が残っている木もありますが,まあこんな感じですね。
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