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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 ま,私はひねくれ者だし,あまり人の役に立つってことも嫌いなのではありますが,このブログ,基本私の備忘ノートという趣旨もありますので,今般の知財法の改正について,ちょっとメモしておきます。

2 まずは,概要です。
 大きく,不正競争防止法と著作権法の改正がメインと思います。

 で,どちらも立法理由は同じだと思いますね。所謂,第四次産業革命とか,その辺のための改正です(経産省管轄の不競法についてははっきりと第四次産業革命が謳われ,ビッグデータに関しては,文科省管轄の著作権法でも謳われてます。)。
 
 どちらも今の通常国会に提出されたわけです。

3 不正競争防止法
 ということで,ま,一応経産省から侵害判定諮問委員の任命を受けていますので,そっちから説明することが流れでしょう。

(1)限定提供データ
 まず,重要なのは,ビッグデータの取り扱いです。
 結局ある種のデータが不正競争防止法で保護されるようになったということです。

 新たに,「限定提供データ」として定義されます(新不競法2条7項)。
この法律において「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)をいう。
 要件は,i 技術的管理性 ( ID/ パスワード等) ii 限定的な外部提供性 iii 有用性らしいです。

 中身は違いますが,「営業秘密」の取り扱いとよく似ております。

 例えば,新2条1項11号はこんな感じです。
窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により限定提供データを取得する行為(以下「限定提供データ不正取得行為」という。)又は限定提供データ不正取得行為により取得した 限定提供データを使用し、若しくは開示する行為

 つまり,不正取得した者自身の不正取得や使用等に関する態様がこの新11号です。
 これ以外に5類型あります(ただし,21条の改正はありませんので,民事的救済のみで刑事の制裁はありません。)。

 この件については,字面を追うよりも,直感的に理解した方がいいと思いますので,この経産省の作成資料のp5を見てもらった方がいいかなと思います。

(2)技術的制限手段の効果を妨げる行為の拡大
 保護の対象をコンテンツの視聴等だけでなく,データ(情報)の処理に広げたということでしょうか。
 さらに,行為についても,モノの譲渡等だけでなく,コト,つまりサービス(役務)の提供まで広げるようです。
 今だと11号12号に当たるもので,新17号,18号になります。

(3)インカメラ手続の拡大
 ま,これは特許のところでやりますかね。

4 特許法等
 今回,特許法も少し改正されます。しかし,この程度でも改正本は発行されるのかなあ。

(1)新規性喪失の例外~6ヶ月→1年へ
 ま,これは実務家には分かりやすい話です。論文発表など新規性喪失するようなことがあっても,それから1年以内に出願すれば,まあまあOKかなあということです。
 ま,これはアメリカのグレースピリオドの1年に合わせたわけです。何つっても属国ですからね(漁船操業中の湖にタンク落とされてもまともに文句言えるやつは誰もいねえっちゅう体たらく)。

(2)インカメラ手続の拡大
 これはむしろ条文の方がわかりやすいでしょう。

 現行105条です。
第百五条 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

2 裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。・・・

 で,新105条2項です。
2 裁判所は、前項本文の申立てに係る書類が同項本文の書類に該当するかどうか又は同項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。・・・

 違いが分かりますか?

 つまり今までは,①もう絶対その書類があれば侵害しているかどうか分かりまっせ→そうだよね,よし開示してもらわんと困る,②いやいやいやこれは営業秘密だからダメ,じゃあわしが見よう,と②の所だけのインカメラだったのです。

 これで何がまずいかと言うと,提出命令を出してもらうには、上記の「→そうだよね,」と裁判官に思わせないといけないわけです。
 つまり,そんなもん実際見ないと分からんのに,他の手段で「→そうだよね,」と裁判官に思わせないといけないわけです。だったら,その他の手段だけで,普通立証は終わりの筈で,そもそも無意味だったわけです。

 改正後は,それ故,上記の「→そうだよね,」と裁判官に思わせる必要まではなく,少なくとも裁判官には開示してもらえます。ま、ほんのちょっとだけと言えなくもないけど、原告には負担減の方向です。

 で,このとき,そうは言うものの専門的な書類(例えば,ソースコードの写し)をわしが見てもわしは文系じゃからよう分からんわ~というときには,専門委員が関与できるようにもなっています(新105条4項)。

 同様の改正が不競法にも入ります。実用新案法,意匠法,商標法も実質的には変わると思いますが,それぞれ準用(30条,41条,39条)ですので,形式的には改正なしということですね。
 ただし,著作権法はなぜか改正なしのようです(114条の3)。また,同様の規定のある独占禁止法も改正しないみたいですね(80条)。

(3)中小企業の特許料等の軽減
 例の,こんなことを普通の一般企業がやったら,国センものだと言ったやつです。

 ただし,新規に法改正してぶっこむみたいなので,それはびっくりです。
 109条の2という条文が追加されます。

 ほんで,繰り返しますが,「※特許特会を収支相償とするため、全ユーザーを対象に、減収見込み額見合いの料金引上げ」とありますので,要注意です。

(4)その他
 あとは焼け太りの判定~や特許に合わせて意匠も少し変わるのと,商標でもほんのちょっとの改正(ベストライセンス対策)があるようです。

 さらに,JIS法が大きく変わるようですが,その辺は詳しくないので割愛します。
 また,弁理士法も変わるようですが,弁護士・弁理士の私には実質的に関わりない話ですので,やはり割愛です。
 でも,標榜業務が増えるということは,守秘義務等の責任の範囲も広がるってことで,仕事が本当に増えないと良いことばかりとは言えないような気がしますよ。

5 著作権法
 ということで,次は文科省管轄の著作権法へ行きましょう。
 ポイントは4つあるらしいです。

 ① デジタル化 ・ ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(第30条 の 4、第47条の 4、第47条の5等関係)
 ② 教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(第35条等関係)
 ③ 障害者の情報 アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備(第37条関係)
 ④ アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(第31条、第 47 条、第 67 条等関係)

 ま,特筆すべきは,①ですね。特に30条の4です。
(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四  著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。   
 一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合   
 二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号 において同じ。)の用に供する場合
 
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

 特許法でいうと69条みたいなもので,特にこの1号は,特許法69条1項に似ています。
 でも,特筆すべきは,そこではないです。この条文は限定列挙ではありません。
その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」とあります。

 その他の,とありますよね。あ,「その他」と「その他の」とは意味が違います。前者は並列で,後者は例示です。なので,当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合の例示が1~3号です。
 
 ですので,この1~3号にとどまらないことが明白なわけです。

 じゃあどんな場合がこれに該当するかっていうと,まずはリバースエンジニアリングでしょうねえ。
 リバースエンジニアリングって機能や成果そのものを享受するもんじゃないですからね。

 あとは,旧47条の4~47条の9まで軒並み削除されていますので,これらも含むのでしょう。
 
 ですので,フェアユースとは言えませんが(普通のユースじゃダメっぽいですから。),所謂IT系の分野の著作物については結構使えるのではないかなあと思います。

6 まとめ
 経産省の管轄の法律について,一次資料を見たい人はこちら
 文科省の管轄の著作権法について,一次資料を見たい人はこちらです。

 ま,こういうのを見ると,経産省の方が親切だなあとよく分かりますよね。

 なお,著作権法の方は,もう施行日まで決っているらしいです(来年の1月1日です。)。国会で成立していないのに,気が早いなあ~ムフフフ。
 他方,経産省の管轄の法律については,当然施行日がいつになるかは分かりません。

 ま,こうしてみると,意外と全部の知財法が一気に改正!ってなるという,最近じゃ結構珍しい年ですね。

7 追伸
 散歩の話じゃありません。夕方,酷いニュースが入ってきました。
「リニア談合、鹿島幹部と大成元幹部逮捕 東京地検」です。これは日経の記事ですね。

  ま,リニエンシーして自白した大林組と清水建設については,うい奴じゃ見逃してたもーれっていうことで,逮捕なしです。

 いやあ,まさに人質司法そのものですね~。わたしゃ,刑弁マンセー,能力はないけど意欲は満タンっつうののまさに逆,刑弁全くやりませんし,能力は別として意欲はほぼありません~。
 でもねえ,こんな酷い話はないっすよ。

 まあ検察ってえのは本当酷い組織ですからね。いや,ほんの3ヶ月の修習にもかかわらず,頭にウジが湧いているだろ,ここ!みたいなことが何度もあったのです。

 実は,先週,同期同クラスの人と軽い同期会みたいなものをやったのですが,この度めでたく検察をやめたやつも来ました。
 修習中から彼はもうTHE正義感,みたいな感じの人だったのですが,その彼がやめた理由はまさにその正義感に照らして・・・という何とも皮肉な理由でした。彼の話を聞くと,ああ,酷かったのは横浜地検の一時期の話じゃやはりないんだなあ~例の大阪の証拠捏造の件があっても,検察というクソ組織は何も変わらねえんだなあという思いがしましたね。

 ほんで,この話でしょ。
 いやあ何ちゅうかな~。一応同じ法曹なので,言っておきましょう。仏心からです。
 そんな仕事やってて楽しい?面白い?

 ま,クソみたいなやつらにはクソのような仕事がお似合いってことですかね~♪ムフフフ。でも逮捕された人とその所属会社は,あんたらとは違うので,一緒にしないでほしいものですね。
 

 
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理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
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