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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は,先週にひっそりと発表された同報告書の日本語要約版です。

 これがTPPのツリーのトピックスに置かれているところから見ると,今後アメリカがどのような要求をしてくるかわかります。 

 まあこの外国貿易障壁報告書を見てもらうと,何か見たことのあるような感じがしませんか。
 そう,昔,年次改革要望書と呼ばれていた奴です。この年次改革要望書については,「拒否できない日本」関岡英之著(文藝春秋社)なんぞを見てもらうと良いと思います。私も読みましたが,非常によく書かれている本です。

 まあTPPに関しては,私は何度も言ってますが,大反対です。
 全くメリットがわかりません。ただ,逆に言えばメリットの方が大きいんですよ,ときちんと説明してくれれば,何が何でも反対というわけではありません。でも,誰も説得力を持って説明してくれません。
 あまつさえ最近は,安全保障の問題だ!なんて言い出す始末です。そりゃ,経済の問題も安全保障と切り離すことはできないでしょうし,安全保障の問題も経済の問題と切り離すことはできないとは思いますよ。
 でも,自分が何を言っているか,よく自覚してから言った方がと思いますよ。要するに,守ってやるから娘をよこしな,という理屈と同じ,極めて下品な理屈なわけです。

 アメリカはまだいいですよ,その辺自覚的ですからね。つーか,上から日本に命令する方なので,自覚的も糞もないとは思いますがね。だって,相手に気を使わなくてもよい立場なんだから,欲望のままに,アレ出せ,コレ出せと言うわけです。

 例えば,首記の報告書,外務省のHPに載っているのですが,これを探すのには一苦労です。このページなのですが,どこにあるかわかりますか?一番下の方ですよ,探すのに苦労しますわ。

 ところが,本家USTRの方を見てください。私ゃ英語は荒井注程度しかできませんが,どこにあるかすぐにわかります。いやあ交渉力があるっていいですね。
 こういう違いって実は本質的なものだったりしますので,余計質が悪いです。

2 さて,今回は,このUSTRの報告書をdisるわけですが,抽象的にdisっても仕方ありません。私の仕事と関係あるところに行きましょう。

 まずは,司法サービスです。USTRの報告書にはこうあります。
 「司法サービス
 日本は外国弁護士が日本において国際法務サービスを効率的な形で提供する能力に制約を課している。米国政府は引き続き日本に対し,法務サービス市場をさらに開放するよう求めている。2012年3月,外国弁護士が日本国内において支店の開設が許可される日本の専門職法人を設立することを認める法案が国会に提出された。しかし,その法案は成立せず,再び国会に提出されるかどうかは不透明である。次なる重要なステップは,外国弁護士が専門職法人を設立したか否かを問わず,複数の支店を日本に開設することを認めることである。米国政府は引き続き,日本に対し,日本の弁護士が海外の弁護士とともに国際法務パートナーシップに加盟することについて,法的な障害や弁護士会において障害がないことを確保すること及び新規外国法務コンサルタントの登録手続の迅速化を含む他の重要な措置を取るよう求めている。」


 このうち,支店の開設が許可される日本の専門職法人を設立することを認める法案が何かはわかりますか?「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法ですね。ほんで,この法案は,去年の通常国会に提出されたのですが,ご存知のとおり,衆議院解散に伴って,廃案となった模様です(最終改正が平成15年ですから。)。

 で,このことについては,日経の記事を引いて,ここでも取り上げました。ただ,弁護士の業界については結構外弁は進出しておりますので,問題となるっちゃあなるのですが,想定の範囲内かもしれません(私の尊敬する先生がトップだった某知財の専門ブティックが,数年前外資に買われたことがありました。このように,進出想定のところはもう進出しているのだと思います。他方,街弁の事業に外資が進出してもね~ですからね。)。

 他方,外弁法人の設立で,弁護士以上に困りそうなのが,弁理士の業界です。
 というのは,弁護士法3条2項により,弁護士は弁理士の事務を当然に行うことができるのです。もっとも,現在の弁護士は,技術に疎く,特許にも疎く,実質的には脅威ではありません。

 ところが,パテントアトーニーたる外弁が日本の弁護士とくっついて法人を設立し,日本各地に支店を作ることができるとしたらどうなるでしょうか。パテントアトーニーというのは,パテントエージェントの資格を有している米国法弁護士(アトーニー)のことですが,アメリカでは彼らが特許明細書を書くのです。
 ですので,今現在は,弁理士の事務所を通して,外国(特に米国)に出願している仕事(内外と言います。)や,外国の出願人から日本の特許庁へ出願する仕事(外内と言います。)が,全部この外弁法人にとられる虞があるのです。

 いやあ怖いですね。ここでも何回か書きましたが,日本国内の特許出願の数は減っておりますので,特許事務所が生き延びるには,内外や外内の仕事を増やすしかないのです。でも,それが,外弁法人にとられるとしたら?こりゃお先真っ暗です。

 ただ,弁理士会は,政治活動に初な弁護士と異なり,昔からロビー活動が盛んで,このような情報に敏感に反応し,それなりの成果を上げました。外弁法人は外弁の事務しかできないように議員を通じて,法務省に働きかけたわけです。

 でも,TPP内では何が起きるかわかりません。アメリカが再度,この法案を通さざるを得ないようなTPPの条項を求めることは明らかです。その際,弁理士会の利益を優先し,TPPに反対と言えるのか,それとも客先の利益を優先し(弁理士のお客さんである大手メーカーのほとんどはTPP賛成ですからね。),TPP賛成と言うのか,無責任な野次馬の興味は尽きませんね~♪オホホ。

3 続いて,知的財産保護です。
 これには,面白いイッシューが見えます。①非親告罪化,②プロバイダ責任制限法の強化,③著作権法と不競法のデジタルコンテンツの技術的保護手段に対する保護の拡大,④著作権の保護期間の長期化と違法ダウンロードの刑事罰の対象の拡大,⑤地理的表示の保護,です。

 これらについては,私がここでアレコレ述べるよりも,福井先生の著作を読まれた方がよいです。

4 まあしかし,こうメリケンの要求を概観すると,本当身も蓋も無いというか,欲望に素直だなあという感じがします。上でも書きましたが,交渉力があるっていいですよね。

 いいんだよ,別に,守ってやらないだけだから~,自分で支那や朝鮮との問題が解決できるんだったらね~って言えばいいんだから楽ですわ~。日本もいっそ某国から核ミサイルの技術を供与してもらい,「無慈悲な」手段に訴えた方がよくね。

 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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