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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,連結親法人である岡三証券グループ(控訴人)が,平成15年4月1日から同16年3月31日までの連結事業年度の法人税について,連結所得金額を49億4765万6093円として法人税の連結確定申告をしたところ,処分行政庁が,控訴人に対し,上記申告に係る連結所得金額について,控訴人が連結子法人である岡三情報システム株式会社(以下「OIS」という。)に支払った29億4324万円は,著作権等の対価ではなく,法人税法81条の6(ただし,平成18年法律第10号改正前の規定である。以下同じ。)が定める「寄附金」に該当し,また,控訴人の連結子法人である岡三証券株式会社(以下「新岡三証券」という。)が支払った7743万1963円は,租税特別措置法68条の66第1項(平成18年法律第10号改正前の規定である。以下同じ。)が定める「交際費」に該当するから,いずれも損金に算入すべきでなく,これらの合計79億6832万8056円を連結所得金額に加算すべきであるとして,平成17年7月29日付けで,控訴人の平成15年4月1日から同16年3月31日までの連結事業年度分の法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び当該法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をしたため,控訴人が,本件更正処分のうち,連結所得金額が49億4765万6093円を超える部分及び本件賦課決定処分の取消しを求めた事案です。

 原審の東京地裁は,控訴人が連結子法人であるOISに支払った29億4324万円は「寄附金」に該当し,また,控訴人が連結子法人である新岡三証券に支払った7726万6146円は「交際費」に該当するから,処分行政庁が行った本件更正処分及び本件賦課決定処分はいずれも適法であるとして,控訴人の請求を棄却しました。

そ こで,控訴人は,原判決のうち,控訴人が連結子法人であるOISに支払った29億4324万円を「寄附金」に該当するとした部分につき,これを不服として本件控訴を提起したのです。要は,交際費のところは,しゃあないなというところで,額の大きい,寄附金認定分を争ったということです。

 しかし,概要をざっと見てもよくわかりませんね。

2 問題点等
 法人税の基本は,法人税法21条と22条でしょう。21条は,「課税標準は,各事業年度の所得の金額とする。」とあります。そして,この所得について,22条で,「所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。」とあります。
つまり,所得に税率をかけると税額が出ます。ここでいう所得は,益金-損金ということです。ただ,実際,何が益金で,何が損金かは,結構難しいところがあるようです。

 本件は,あくまで,知財の判決紹介ですから,税法については,ポイントのみです。控訴人は,OISに支払った29億4324万円は損金にあたり,所得はぐんと少ないのだと主張し,これに対し,被控訴人たる処分行政庁は,損金じゃなく寄附金なので,控除できず所得は少なくなりませんよ,と主張しているのです。
 ですので,端的な問題点としては,OISに支払った29億4324万円が寄附金か否かということです。

3 判旨
「以上のとおり,本件ソフトウェアの著作権が本件譲渡契約前にOISから旧岡三証券に譲渡されたものとは認められないから,本件譲渡契約があえて作出された虚偽の外形であり,旧岡三証券がOISに支払った本件ソフトウェアの譲渡代金が「寄附金」に当たるとの被控訴人の主張は,理由がない。」

4 検討
 この事件を把握するためには,判旨でも書かれている経緯が非常に重要です。
 かいつまんで書きますと,控訴人の子会社であるOISの事業に興味を持った日本ユニシスが,OISから事業譲渡を企図したところが発端です。
 ところが,日本ユニシスの米国本社からOISの財務等に疑義を申立てられ,抽象的な事業譲渡でなくOISの有するシステムの著作権等の譲渡にすること,なおかつ信用力のある控訴人に信用力を担保してもらうため,一旦日本ユニシス-OIS間に入ってもらうこと,を条件とされたのでした。

 かかるスキーム自体は,滞りなく実行されました。したがい,システムの著作権等は,OIS→控訴人→日本ユニシスと譲渡され,それぞれ対価も支払われております。

 ところが,処分行政庁は,OIS→控訴人の譲渡が気にいらなかったのですね。本件で問題となっているシステムは,改良等を継続しながら,ずっと控訴人が使っていたもので,毎年毎年委託業務料として,OISにお金も払っていたものです。
 それ故,処分行政庁としては,システムの著作権等はもはや控訴人に帰属しているはずだ!,それを今になって,OIS→控訴人に譲渡できるわけがない!仮装の譲渡だ!と考えたわけですね。

 しかしながら,知財高裁は,丹念に事実を認定し,処分行政庁の主張を排斥しております。特に,核心的判示として,
被控訴人の上記主張は,ソフトウェアの開発費用を出捐した者は,ソフトウェアの創作行為をしていなくても,当然に著作権を保有するべきであるという著作権法に対する不適切な理解を前提とするものであって,失当である。
を挙げております。

 まあ何だか,この事件が知財高裁に係属した理由がわかりますね。本件の本質は,税務ではなく,著作権だというわけです。
 ただ,経緯を読めば,この事件を解決するには,税務,著作権の知識は当たり前ですが,M&A,契約に関する的確な知識・判断が必要とされます。
 本件の控訴人の代理人は,いわゆる四大渉外事務所の弁護士の方ですが,それぞれの分野のエキスパートがいないと,とても受けられる事件じゃないなあ,というのが私の感想でした。
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