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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,小説家,漫画家又は漫画原作者である被控訴人ら(原告ら)が,控訴人ドライバレッジ(被告)は,顧客から電子ファイル化の依頼があった書籍について,著作権者の許諾を受けることなく,スキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成し,その電子ファイルを顧客に納品しているところ,注文を受けた書籍には,被控訴人らが著作権を有する原判決別紙作品目録1~7記載の作品(原告作品)が多数含まれている蓋然性が高く,今後注文を受ける書籍にも含まれる蓋然性が高いから,被控訴人らの著作権(複製権)が侵害されるおそれがあるなどと主張し,①著作権法112条1項に基づく差止請求として,控訴人ドライバレッジに対し,第三者から委託を受けて原告作品が印刷された書籍を電子的方法により複製することの禁止を求めるとともに,②不法行為に基づく損害賠償として,控訴人らに対し,弁護士費用相当額として被控訴人1名につき21万円の連帯支払を求める事案です。

 これに対して,原審(平成24年(ワ)33525号(東京地裁平成25年09月30日判決))の東京地裁民事第29部(大須賀さんの合議体ですね。)は,原告らの請求の一部(差止については全部)を認めました。
 ま,要するに,巷で話題の自炊代行業者に対する訴訟事件のやつです。

 で,上記のリンクのとおり,原審は,ここでも述べたとおり,もう本当杓子定規っていう感じのつまらない判決でした。例の,枢要な行為をしたのは誰か?っていう基準です。ほんで,原審は,これが自炊業者だからって,原告らの請求を認めたわけですね。

 さて,控訴審の知財高裁はどうだ?っていう話です。
 
 結論としては,知財高裁4部(富田さんの合議体ですね。)は,控訴を棄却しております。つまりは,原審のとおりでよし!というわけです。

2 問題点
 問題点は,もう誰が複製行為の主体か?っていうそれだけです。ただ,原審のときに私がちょっと書いたとおり,この論点自体原被告双方,何かイマイチ主張立証が不足していて,不意打ちのような気がしたのです。
 ですので,知財高裁できちんと原被告双方の主張立証を踏まえた判断があれば,いいなあと思っていました。

 で,原審がイマイチなのは,主張立証が不十分な上,上記の最高裁の規範をそのまんま使用したという点です。要するに悩みがないんだよねえ。

 いやあ裁判所って,お高くとまっているけど,所詮税金で賄われている役所に過ぎないわけです。
  官僚のシステム同様,試験を受かればそうなれますが,別にそれが絶対じゃあありません。米国のように選挙で選んだり,弁護士の中から選んだりしてもいいわけです。

 要するに,裁判官の地位なんかアプリオリなもんじゃありません。にも関わらず,納税者のオファーについてサボタージュするようなことがあれば,これは背信行為であり,給料泥棒と言っていいと思います。

 原審が腹立つのは,こういうサボりが見られたからですね。

 ま,とっとと判決に行きましょうか。

3 判旨
「「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)ところ,「複製」とは,著作物を「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」である(同法2条1項15号)。そして,複製行為の主体とは,複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。
 本件サービスは,前記1(1)で認定したとおり,①控訴人ドライバレッジに書籍の電子ファイル化を申し込む,②利用者は,控訴人ドライバレッジに書籍を送付する,③控訴人ドライバレッジは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,④控訴人ドライバレッジは,裁断した書籍を控訴人ドライバレッジが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,⑤完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過をたどるものであるが,このうち上記④のスキャナーで読み込み電子ファイル化する行為が,本件サービスにおいて著作物である書籍について有形的再製をする行為,すなわち「複製」行為に当たることは明らかであって,この行為は,本件サービスを運営する控訴人ドライバレッジのみが専ら業務として行っており,利用者は同行為には全く関与していない。
 そして,控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。
 そうすると,控訴人ドライバレッジは,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。」

4 検討
 控訴人の主張の中で,枢要な行為をしたのは俺じゃあねえよ~利用者だよ~という主張があるのですが,判決は,枢要な行為を判示したのは,これに対する応答のみです。
 ですので,上記のとおり,メインの判示の部分で,規範としても,当てはめとしても,枢要な行為という言い方は避けております。

 ですので,まあ多少原審よりは悩みも見えるかなあ,給料分くらいの仕事はしているかなあという所です。
 ただ,意思を持って行為するのが,その行為主体だと言ってるだけですので,そんなの当たり前じゃん,サッカーをするというのはサッカーをする行為のことを言うのであるとか,読書とは本を読むことであるとか,勿体つけて言ったり難しく言ったりすることはバカか若しくは極めて質の悪いやつがすることである,ってのと同じです。

 もう何なんでしょ。

 こういう著作権の判決を読んでよく思うことは,本当大企業寄りだなあってことです。
 テレビ番組のネット配信サービスの一連の判決で,何がどうなったかというと,ベンチャー企業を駆逐して大手電機会社を利することになった,ただそれだけです。
 これはソニーのサービスです。これはパナソニックです。このように,基本,ベンチャー企業がいろいろ頭を使っていたことを大企業はパパっとやっちまったわけです。ひどいと思いませんか。
 勿論,放送局がソニーやパナソニックを訴えることはありません。だって,スポンサーなんですよ,客を訴えるバカがどこにいますかいな。

 今回の自炊の話も同じですよね。バーターは何かというと,今般改正のあった電子出版権です(来年1/1から施行)。
 つまり,デカイ会社が自分の所で,電子書籍化するんだから,ゴミクソみたいなベンチャー企業がやる必要はねえんだよ,オタクは家でアニメ見てマスかいてりゃいいんだよ,バーカっていうのが,裁判所を初めとする偉い大人の皆さんの判断なわけですね。

 どうですか~お客さん~何かつまらん話だと思いませんかねえ。
 一事が万事,この調子~♪これで,アベノミクス第三の矢とかありえねえって思うのが普通ですよね。だって,イノベーションが大事なはずの知財の分野で,これだけ既得権益を守ることが明明白白に見られるわけですからね。いやあ,見通し暗いぜ,ベイベー。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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