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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,総合格闘技競技である「Ultimate Fighting Championship」(UFC)の大会及び試合を撮影・編集した映像作品である別紙一覧表「作品名」欄記載の作品(本件各作品)の著作権を有する原告(ズッファ)が,被告は,本件各作品をウェブサイト「ニコニコ動画」にアップロードし,原告の公衆送信権を侵害したと主張し,上記著作権侵害の不法行為により原告が被った損害(ライセンス料相当額の逸失利益〔著作権法114条3項〕合計4681万9740円,信用毀損による無形損害1000万円及び弁護士費用600万円)のうち,別紙一覧表11番の作品(作品11番)の掲載による逸失利益395万1600円,同26番の作品(作品26番)の掲載による逸失利益419万9700円及び同68番の作品(作品68番)の掲載による逸失利益205万1100円の一部である184万8700円(合計1000万円)並びにこれらに対する訴状送達日の翌日である平成25年2月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(大須賀さんの合議体ですね。)は,請求を全部認容しました。

 ま,知財だけではなく,格闘技の話ですから,こりゃこのブログにまさに相応しい話というわけです。

 と言っても,知財の話からいきましょ。

2 問題点
 問題点は,被告が本人訴訟なので,損害に関することしか顕在化しておりませんが,これは要するにスポーツ中継ですので,本来著作物性を争うべき事案でしょう。

 だって,著作権法2条1項1号は,「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されていますからね。そうすると,普通のスポーツ中継は,思想又は感情の表現ではなく,単なる事実の報道に過ぎませんから,著作物性はないはずです。

 もっとも,それなりの演出や台本等がある,格闘技とは似てるけど,正反対のプロレスだと,逆に著作物性は優に認められるでしょうね(生だと10条1項3号,テレビ中継だと10条1項7号でしょうかね。)。

 ですが,UFCはガチンコということになっております。そうすると,単に勝ち負けを中継しているだけと思えますので,どこに人の思想ないし感情が表現されてんじゃ!と思われても不思議じゃない筈です。

 ということで,普通はスポーツ中継の海賊版って著作隣接権でやるのですね。放送事業者の権利として,著作権法の98条以下にあります。ところが,これは,当事者がWOWOWではなく(昨日5/26も生中継やってましたね。),大元のズッファなのですね。つまり,何らかの権利は持っているけど,放送事業者ではなく,この著作隣接権は使えないわけです。
 そうすると,多少弱くても著作権で行くしかないのです。

 ということで,ズッファとしては,色々演出しているんですよ,と言うしかありません。でも,上記のとおり,あまり演出のことを言うと,そんなに演出していて本当にガチンコなの?と痛くない腹を探られかねません(私が被告側代理人だったら,そういう底意地の悪いことをやりますね。)。

 ですので,原告ズッファの主張としても,「①単に定点から機械的に試合を撮影したものではなく,構図,カメラアングルなどに工夫を凝らすことで総合格闘技の有する迫力をより迫真的に伝えている点及び②単に撮影した映像をそのまま使用するのではなく,複数のカメラで撮影した映像をつなぎ,また,試合に関する情報を写真や文字で付加し,音声で解説を加えることで,試合の情報をより分かりやすく伝える点で,思想又は感情を創作的に表現したものに当たる。」という,底意地悪い弁護士からすると,そんなのありきたりのもので,誰がやっても大体同じ程度にしかならず,創作性も糞もない,と反論を許す程度のものしかありません。

 では,裁判所はどう判断したのでしょうかね。

3 判旨
 「作品11番,26番及び68番は,いずれも,総合格闘技であるUFCの大会における試合を撮影した動画映像であり,各場面に応じて被写体(選手,観客,審判等)を選び,被写体を撮影する角度や被写体の大きさ等の構図を選択して撮影・編集され,映像に,選手等に関する情報等を文字や写真により付加する等の加工を加えたものである(甲16の1ないし3)。このように,作品11番,26番及び68番は,試合の臨場感等を伝えるものとするべく,被写体の選択,被写体の撮影方法に工夫がこらされ,また,その編集や加工により,試合を見る者にとって分かりやすい構成が工夫されているものということができるのであって,思想又は感情を創作的に表現したものであると認められるから,映画の著作物に該当する。」

4 検討
 判旨だけ見ると,ええーって感じですね。というか,この著作物性に関して,被告の方は認めてしまっているのですね。なので,ここは原告主張を追認しただけで,ほぼスルーになっております。いやあ残念。
 唯一の主戦場を早々に放棄しちゃったわけで,こういうのを見ると,やはりちゃんとした代理人が就くべきだったと思いますね。ま,ただ,代理人でどうにかなる事件の割合は少ないとは思いますけどね。

 ちなみに,昨日上記のとおり,5/26,UFC160がありました。メインは,ヘビー級王座のケイン・ヴェラスケスとデカブツ,アントニオ・シウバのタイトル戦でした。これは軽く一蹴って感じですね。
 私が注目していたのは,その前の試合,ジュニオール・ドス・サントスとマーク・ハント(元K-1王者のあのハントです。)の一戦ですね。ハントは,長い戦歴がありますが,ここのところ,UFCでいい成績を納めており,前王者のジュニオール・ドス・サントスを破れば,タイトルマッチが見えていた試合です。

 試合は結構一進一退の攻防となり,ハントもいいところまで攻めたのですが,2Rの終盤,グランドで削られたこともあり,最後は残念な結果でした。

 ということで,これで,ケイン・ベラスケスとジュニオール・ドス・サントスの試合が早々に組まれそうですね。ケイン・ベラスケスにしても,唯一のKO負けがジュニオールですから,この前ジュニオールに勝ったと言っても,KOで退け返り討ちにしたいところです。

 いやあ日本の格闘技もこれくらい盛り上がって欲しいなあ。
 ただ,昨日一昨日の大相撲は,久々面白かったですよ。あとは,ヒョードル並のナチュナルファイターの隠岐の海の覚醒を待って,稀勢の里(13日目は北の湖理事長のようでしたね。)と切磋琢磨して欲しいところです。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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