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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,被告(弁護士法人ボストン法律経済事務所)が,平成25年7月5日から平成26年1月15日までの期間,別紙写真目録記載1ないし6の各写真(本件写真)を「BOSTON law firm(ボストンローファーム)」の名称で被告が運営するウェブサイト(被告ウェブサイト)に掲載したことに関して,本件写真の著作権者,独占的利用権者又は著作者であると主張する原告らが(株式会社アマナイメージズと自然人ら),被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求をするとともに,当該請求の一部と選択的に不当利得返還請求をした事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(嶋末さんの合議体ですね。)は,原告らの請求を一部認めました。つまり,著作権等の侵害はあったということですね。

 まあ,予告に反して特許の記載不備に関する判決ではなく,こっちの基本ゆる系の判決にしました。
 その理由は~?被告に注目です。

 そう!パッと判旨を見ると気付かないのですが,よくよく見るとうぇ~!っということに気づきます。何ということか,弁護士の事務所自体が被告代理人ではなく,被告!そのものなのです。

 いやあ,何ちゅうか本中華なのですが(古くてごめんねー),こんなこともあるんだなあって感じのする事例です。

2 問題点
 つーことで,問題点なのですが,法律上の問題点はありますよ~。でもそんなことよりも,本件で気になるのは事実上の問題点です。つまり,何故気付かなかったのか?この事務所の弁護士連中は?ってことです。

 原告の主張によると,原告のアマナイメージズは,「ケ 本件サービスに供する写真その他のコンテンツは,使用媒体・使用期間・エンドユーザーの履歴を管理しているライツマネージドとよばれる種類の作品(以下「RM作品」という。)とエンドユーザーの履歴を管理せず,他社でも販売しているロイヤリティフリーとよばれる作品(以下「RF作品」という。)とからなるが,原告アマナイメージズは,本件各写真(本件写真1及び2については,上記エのとおり,原告アマナイメージズが当該写真の著作権を有しており,本件写真3ないし6については,上記オないしキのとおり,原告アマナイメージズが当該写真の著作権を独占的に利用する権限〔第三者に再利用許諾する権限を含む。〕を有している。)をRM作品として本件サービスに供している。」ということをしていたらしいです。

 他方,これも原告の主張によると,被告の法律事務所の方は,「イ 被告又は被告の被用者であるE1ことE(以下「E」という。)は,本件各写真(なお,本件写真3ないし6につき,著作者の氏名が表示されることはなかった。)を別紙「被告ウェブサイトにおける使用態様」に示される態様により,少なくとも平成25年7月5日から平成26年1月15日までの期間,被告ウェブサイトに掲載した。」そうです。

 この点については,被告の事務所の方も,「被告ウェブサイトを作成するに当たり,同サイトに本件各写真を掲載したのは,被告の従業員のEであるが,同人は,第三者が原告アマナイメージズから購入し,又は何らかの方法で取得した後,フリー素材としてウェブサイト上に流出させたものを「フリー素材である」と誤信したものと思われる(Eは,被告ウェブサイトのデザインを検討するうえで,様々なところから写真を取得しており,かつ,既に一定期間経過していることから,本件各写真のデータをどのように手に入れたか記憶していない」ということで,積極的には争ってはおりません。

 ま,つまりは,事務所内でのウェブサイトの担当者がどっかから写真を持ってきて,サイトを作ったけど,その写真がフリー素材ではなかった~アチャー~ってことなわけです。

 なので,被告の事務所としても,そんなのわかんねーしチェックもできねーよ~って主張をしているわけなのですね(まあ,知財のことをちょっと理解している方々からすると,そんな言い訳通るわけねえのですけどね。)。

 そこそこ有りそうな話と言えましょう。

3 判旨
「(2) 故意・過失について
ア 被告の被用者であるEは,前記(1)アのとおり,本件掲載行為に際し,何らかの手段により本件各写真を複製し,これを公衆の用に供されている電気通信回線に接続された自動公衆送信装置に入力したものであって,本件各写真を複製し,送信可能化した直接の主体者である。
イ  Eがどのような手段により本件各写真にアクセスしたのかは明らかでないが,証拠(乙2,24)及び弁論の全趣旨によれば,Eは,ホームページを作成する会社に勤務してホームページ作成技術を学んだ後,平成20年に独立してホームページの作成を業務として行うようになり,平成21年にコンピューターシステムの設計,開発及び販売のほか,インターネットのホームページの作成,企画,立案及び運営などを目的とする株式会社オプティクリエイションを設立して,平成24年まで同社の事業としてホームページの作成業務を行っていたところ,同年10月からは,弁護士法人である被告の従業員として被告ウェブサイトの作成業務を担当していたことが認められるから,このようなEの経歴及び立場に照らせば,Eは,本件掲載行為によって著作権等の侵害を惹起する可能性があることを十分認識しながら,あえて本件各写真を複製し,これを送信可能化し,その際,著作者の氏名を表示しなかったものと推認するのが相当であって,本件各写真の著作権等の侵害につき,単なる過失にとどまらず,少なくとも未必の故意があったと認めるのが相当というべきである。
ウ この点,被告は,フリーサイトから写真等を入手する際に,識別情報のない著作物についてまで権利関係の調査を要するとすれば,表現の自由(憲法21条)が害されるとし,警告を受けて削除すれば足りるかのような主張をする。
 しかし,仮に,Eが本件写真をフリーサイトから入手したものだとしても,識別情報や権利関係の不明な著作物の利用を控えるべきことは,著作権等を侵害する可能性がある以上当然であるし,警告を受けて削除しただけで,直ちに責任を免れると解すべき理由もない。被告の上記主張は,いずれも独自の見解に基づくものであって,採用することができない。」

4 検討
 まあ,判旨はそのとおりなのですが,未必の故意~!まで認められて,結構シビアに書かれています。

 ウェブサイトを内製すると,そりゃあお金関係は少くてもいいのですが,こういう権利侵害みたいなことがあったときには結構ヤバイですよね。外注すると,契約でインデムできるので(例えば,第三者から権利侵害だと訴えられたときには,弁護士費用も含めてベンダーの貴様が全額費用を出しやがれ~このやろー,みたいな条項を入れる。),お金はかかりますが,その点安心です。

 なので,企業法務とか知財とか今風の仕事をしたいんだったら,もうちょっとその点に明るい人に相談するとか~,なんかした方が良かったすよね~。ミイラ取りがミイラじゃないけど,イケイケなのも結構だけど,それだけじゃ困ることもあるでしょうに。
 営業の方に関心が行って,そういう所が疎かになったのかもしれませんがね。

 とは言え,私も気をつけましょう~。著作権って本当こんなことが関係あるの~っていうことが結構問題になりますからね。

 あ,ところで,この被告の事務所,有名なコンサル会社のボストン・コンサルティンググループと何か関係あるんですかね~。もし関係ないとしたら,今度は,こっちから何らかの反応があるかもしれませんよ。

 あと,こんな事例で,判決が出るとかなりダメージになるだろうし,認容額もそんな大したことないのに,判決いや裁判になる前に落とし所はなかったのかなあという点も気になりますね。いやあそれにしても鼻から茶が出そうになりましたよ。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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