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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,幼児用箸を製造販売する控訴人(1審原告)が,同種製品を製造販売する被控訴人(1審被告)に対し,被控訴人による別紙被控訴人商品目録記載1ないし20の各幼児用箸(被告各商品)の製造販売は,控訴人が有する原判決別紙原告著作物目録1記載の図画(原告図画)及び同別紙原告著作物目録2記載1ないし19の各幼児用箸(原告各製品)に係る各著作権を侵害すると主張して,①著作権法112条1項・2項に基づき,被告各商品の製造販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,②平成25年1月から平成27年9月28日(本件訴え提起日)までの間における前記各著作権の侵害を内容とする不法行為に基づく損害賠償請求として,2400万円のうち100万円及びこれに対する不法行為の後の日である同年11月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 一審の東京地裁(民事29部で嶋末さんの合議体ですね。平成27年(ワ)第27220号)では,原告図画及び原告各製品のいずれについても著作権(複製権及び翻案権)侵害を認めず,控訴人の請求をいずれも棄却しました。

 そして,控訴審の知財高裁も,「原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。」として,控訴棄却(請求棄却)したわけです。

 ま,今日の判決も,後継ブログ向きではなくどっちかというと面白の方の上,ちょっとマジで,良かった良かった~ということもあるため,ここでの紹介にしました。

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,著作権侵害で,幼児用箸のような工業製品の著作権いかんというよくあるパターンの話です。

 これが近時話題になっているのは,例のTRIPP-TRAPP事件控訴審判決のためです。このブログでも紹介しました。
 要するに,工業製品と言えども,純粋美術と同視できるほどとかいう高いハードルを要求せずに著作権法でも保護しうるということを判示したからです。

 もう色んな所で,ヒエ~,ドへー,ジャバーみたいな感じになりました。

 まああまり自分の意見じゃない他人の意見を言うのはアレですが,直接聞いた範囲でも,元知財高裁の部長の皆様方の中でこのTRIPP-TRAPP事件の控訴審判決に賛成していた方は皆無ですね。
 勿論私も大反対(後述のとおり)~。

 そして,その後,地裁レベルでは,大阪地裁のピクトグラム事件(平成25年(ワ)1074号。何故か最高裁のサイトから姿を消しました。)が,ある程度従前のとおり,「美的鑑賞となり得る美的特性を備えている場合」と,そこそこ高いハードルだったので,皆一安心という状況でした。
 
 とは言え,これは地裁レベルです。なので,知財高裁で,工業製品の著作権が問題になる事例での判示が出ないとそりゃ安心できませんわな。

 で,今回漸く知財高裁で,工業製品の著作権が問題になった事例の判決が出たわけです。

 事例自体はいいですよね。特に私の本を読んだ方には。

3 判示
「ア 控訴人は,工業的に大量生産され,実用に供されるものであるからといって,「美的」という観点からの高い創作性の判断基準を設定することは相当でなく,「美術工芸品」に該当しない応用美術であっても,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を満たすものについては,「美術の著作物」としてこれを保護すべきである(意匠法等の他の法律によって保護されることを根拠として,実用に供される機能的な工業製品ないしそのデザインは,その実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていない限り,著作権法が保護を予定している対象ではないとするのは誤りである)とした上で,原告各製品は,①キャラクターが表現された円形部材により最上部で結合された連結箸である点,②1本の箸に人差し指と中指を入れる2つのリングを有し,かつ,他方の箸に親指を入れる1つのリングを有して,合計3つのリングが設けられている点において,他社製品(甲16~26)に比べて特徴的な形態を有しており,そこには作者の個性が発揮されていて創作性が認められるから,「美術の著作物」として保護されるべきものである,と主張する。
(ア) 第一に,実用品であっても美術の著作物としての保護を求める以上,美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞の対象となり得るような特性を備えていることが必要である(これは,美術の著作物としての創作性を認める上で最低限の要件というべきである)。したがって,控訴人の主張が,単に他社製品と比較して特徴的な形態さえ備わっていれば良い(およそ美的特性の有無を考慮する必要がない)とするものであれば,その前提において誤りがある。
・・・
(エ) 以上に基づいて検討するに,まず,箸を連結すること自体はアイデアであって表現ではない(なお,連結部分にキャラクターを表現することも,それ自体はアイデアであって,著作権法上保護すべき表現には当たらない。)し,その具体的な連結の態様を見ても,原告各製品が他社製品(甲16~26)と比較して特徴的であるとまではいえず,まして美的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされているとは認め難い。よって,前記①の点に美術の著作物としての創作性を認めることはできない。
 次に,箸を持つ指やその位置が決まっている以上,これを固定しようと考えれば,固定部材を置く位置は自ずと決まるものであるし,人差し指,中指,親指の3指を固定することや固定部材として指挿入用のリングを設けることも,例えば,原告各製品が製造販売されるより前に刊行された乙5,7,8の各公報においても類似の構成が図示されている(すなわち,乙5及び乙7には,一対の箸のうち1本が人差し指と中指を入れる2つのリングを有し,他方の1本が親指と薬指を入れる2つのリングを有するものが図示されている。乙8には,一対の箸のうち1本が人差し指と中指を入れる2つのリングを有し,他方の1本が薬指を入れる1つのリングを有するものが図示されている。)ように,特段目新しいことではない。原告各製品も通常指を置く位置によくあるリングを設けたにすぎず,その配置や角度等に実用的観点からの工夫があったとしても,美的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされているとは認め難い。よって,前記②の点についても,美術の著作物としての創作性を認めることはできない。
(オ) 以上のとおり,控訴人が主張する前記①②の点は,いずれも実用的観点から選択された構成ないし表現にすぎず,総合的に見ても何ら美的鑑賞の対象となり得るような特性を備えるものではない。
 よって,前記①②の点を理由に,原告各製品について美術の著作物としての著作物性を認めることはできないというべきである。」

4 検討
 どうですか~?例のTRIPP-TRAPP事件控訴審判決に比べれば,かなり従来の判決寄りだとは思います。というか,ピクトグラム事件の系列かなあという感じです。

 なので,工業製品だからと言って凄い高いハードルを課すというのではなく,今後は,「美的鑑賞の対象となり得る特性を備えているか」どうかが,著作権法で保護されるかどうかの決め手になりそうです。

 とは言え,考え方としては,例のTRIPP-TRAPP事件控訴審判決に比べればずっと妥当だと思えますし,少なくとも知財高裁3部は清水さんと同様には考えないと分かって良かったと思います。

 ところで,私の良かった良かったという部分ですが,私の著作は,この事件ではないのですが,特許の方の事件を参考にしたものです。ですので,ケーススタディ等に幼児用箸が出て来るのですね。
 ということはですよ,今回の事件で著作物性が肯定されるようなら,私の著作も著作権侵害の虞が出て来るわけですよ~。いやあ,危ねえ,危ねえ。
 なので,良かった良かったって所なのですね。

5 追伸
 本日の東京は天気がよいものの,風は冷たいものでした。上着を着て無かった私にはかなり寒かったです。
 

  これはいつもの散歩の際ですね。品川駅の向こうの京浜運河です。
 ちょっと前は,コイキングなんか集めてもしょうがないなあと思ったのですが,ギャラドスに進化しますからね。ゲットしない手はありません。

 さて,目黒川沿いもいいのですが,この辺もまたおつなものです。目黒川だと若干ドブ臭いときもありますが,ここまで来るとほぼ海ですので,ドブ臭さはなくなります。

 あと,隅田川沿いもそうですが,水辺ぎりぎりまでビルが来ているっていうのもいいですね。堤防と河川敷のある川もそれなりに良いものであるのですが,そんなのうちの田舎でも見れます。でもこういう河川敷も堤防もないウオータフロントって都会って感じがして,かなり好きですね。

 東京の好きなところの一つは,山がほぼ見えないということがあります。うちの田舎は当然ですが,大分市に行っても山が見えます。ところが東京は普段暮らしていて山は全く見えません。ああ,都会だなあってしみじみ思いますね。

 ところで,昨日サーフィンに行ってきました。久々でした。
 一昨日行った友人によるともう凄く波が厳しくて大変だったらしいです。昨日はそこまでは無かったのですが,セットでコシハラ程度だったので,まあちょっとデカいときは沖に出るとき若干キツさはありました(台風のスエルですかね。)。しかも人が多め。何かわかりませんが,夏よりも混んでるんじゃないかと思いますね。最近またサーフィンブームか何かなんですかねえ。

 そんな中,私は果敢に攻めましたね。頑張って沖に行って,セットの大きな波を待って,波争いもやり,ボトムに下りて,ちょっと上に行くくらいまでは出来ました。

 海の水はまだまだ温かいです。でも,風が冷たいですね~。長袖半ズボンの所謂ロングスプリングのウェットだとちょうどよいかなあという所です。
 冬はサーフィンしないヘタレサーファーの私。サーフィンできる時ももう秒読みですなあ。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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