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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,本訴請求と反訴請求の2つあります。
 まず,本訴請求は,原告は,被告が別紙5(被告広告1)及び6(被告広告2)の各広告を頒布する行為が,別紙1の広告(原告広告)について原告が有する著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害し,又は原告に対する一般不法行為に該当すると主張して,被告に対し,複製権侵害又は一般不法行為に基づく財産的損害に係る損害賠償金5万円,同一性保持権侵害又は一般不法行為に基づく精神的損害に係る損害賠償金30万円及びこれらに対する不法行為後の日である平成28年4月26日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求がメインのものです。

 次に,反訴請求は,被告は,原告が本件原告ファイルの記載された宣伝広告チラシを作成・頒布する行為が,別紙3の表(以下「本件被告ファイル」という。)についての被告の著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)又は著作者人格権(同一性保持権)を侵害すると主張して,原告に対し,著作権法112条1項,2項に基づき,本件被告ファイルの複製又は頒布の各差止め並びに本件原告ファイルが記載された宣伝広告チラシの頒布の差止め及び廃棄を求めるとともに,同一性保持権侵害に基づく精神的損害に係る損害賠償金33万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるという請求のものです。

 まあ,こう書くと何やら難しい,高尚な感じがしますが,その実態は大したものじゃありません。

 ここではもう原則として,お笑い判決しか紹介しないと書きましたが,今回は超大笑い判決と言ってよいでしょう。でも,弁護士としては身につまされ,背筋も凍るって所の事件だと思います。

 ちなみに,一審(東京地裁平成28(ワ)12608 , 平成29年2月28日 判決。47部の沖中さんの合議体ですね。)もこの控訴審と同様です。
 つまり,本訴も反訴も理由なしで請求棄却です。

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,広告チラシやそれに付随するファイルの頒布がそれぞれの著作権侵害になるかならないかというものです。広告自体は,一審の別紙が詳しいので,そちらを見てください。

 しかし,この問題点は本質的ではありません。

 本質的な問題点はただ一つ,それは困窮する士業~♫です。

 どういうことかというと,近時,ある大手の法律事務所が業務停止をくらったという話はご存知だと思います。ここでも若干紹介しました。

 そういう大手は自分の所で広告宣伝をやれるのですが,そうじゃない普通の小規模事務所(うちの事務所もそうですが。)は,同じことはやれません。

 なので,これもここで書いたように,無料相談会というのをチラシを配ってやるわけです。東京だと滅多にそんなチラシは入りませんが,地方に行くと,地元の弁護士じゃない弁護士の,そんなチラシが結構入ってくるようです。

 うちの実家は大分なのですが,東京や千葉,大阪の事務所がわざわざ昭和の町まで出張無料相談をやるわけですね。いやあ地元の弁護士もたまったものじゃないでしょうけどね。

 ちょい前は,過払い金がメインだったのですが,最近ではB型肝炎,あとは本件のような交通事故も良い金づるのようです。
 つまり,地方の情報弱者に広告による営業を掛け,美味しい所をガッサリ持っていくというビジネスモデルです。

 まあ資本主義の世の中だし,司法制度改革というのはこういうことだと思いますし,私も金権弁護士なので,こういうビジネスモデルをヤーヤー言う気はありません。
 ただし,問題が多少あって,このビジネスモデルの裏で糸を引いてるのは,広告代理店や今回のようなNPO法人だったりすることが多く,つまり非弁提携の虞がある,ということです。

 実は,今回の一審の原告は弁護士で,一審の被告は行政書士です(一審判決参照)。
 そして,その両人とも,あるNPO法人と提携して,そこから交通事故の事件の紹介を受けていたようなのですね。
平成23年から平成28年にかけて,1審原告が保険会社との交渉や訴訟等を担当し,1審被告が後遺障害認定申請等を担当し,連携して交通事故の事案を処理した件数が合計95件あり,本件侵害通知がされた時点においても,処理中の案件があった。また,1審原告は,Eや1審被告から,多数の交通事故の案件の紹介を受けていた。(乙16,18,21,41,55,56)
 というような事実認定もあります(Eというのは,NPO法人の代表者です。)。

 なので,今回の争いは身内の仲間割れです。
 じゃあどうしてそんな仲良く金儲けしていたこの人達が仲間割れするようになったか,そこはさすがに判決からではわかりません。

 しかし,一審原告は,一審被告だけではなく,仲間のはずの,他の提携弁護士であるA弁護士やB弁護士にも,警告の通知を送ったようなので,何かあったのでしょうね。

 どうですか。
 お客筋の良い弁理士の方や企業知財部の方からすると,え,もう弁護士の業界ってそんななんだ~と思われ,大笑いできるかもしれませんが,そうなのですよ。
 皆さんは大笑いできるかもしれませんが,私はとてもクスッともできません。なぜなら,明日は我が身,だからです。

3 判旨
「①一審原告広告は,本件NPO法人の地方相談会の広告として作成されたものであること,②1審原告は,1審被告から,本件NPO法人の地方相談会の集客のために,1審原告広告の現物を送付することを求められたこと,③1審原告は,平成25年8月7日,1審被告から,A広告が1審原告広告とほぼ同一内容であることを告げられたこと,以上の事実が認められるから,1審原告は,平成25年8月7日の時点において,A広告が1審原告広告とほぼ同一内容であること,1審原告広告とほぼ同一内容のものが本件NPO法人の地方相談会の集客のために用いられていることを認識していたものと認められる。そして,上記(1)の認定事実からすると,1審原告は,1審原告広告とほぼ同一内容のものが本件NPO法人の地方相談会の集客のために用いられていることを何ら問題とすることなく,かえって,A広告及び1審原告広告が同一の広告文言及び事例の紹介を用いていることを前提に,弁護士会からの指摘を回避するための1審原告広告の具体的表現に関する変更を提案しているものと認められる。また,上記(1)の認定事実からすると,1審原告は,上記の平成25年8月7日から約2年6か月後の平成28年2月5日に至って,1審被告に対して1審原告広告に関する1審原告の著作権の侵害を主張するようになったものと認められる。これらの一連の事実経過に,上記(1)認定のとおり,1審原告は,1審被告と連携して,多数の交通事故の事案を処理し,Eや1審被告から,多数の交通事故の案件の紹介を受けていたこと,すなわち,1審原告は,本件NPO法人と連携することによって利益を得ていたといえることを総合すると,1審原告は,本件NPO法人の地方相談会の広告として,1審原告広告を利用することを包括的に許諾していたものと認めることができる。この許諾は,A弁護士や姫路市の地方相談会に限られるものではない。
⑶  これに対し,1審原告は,本件NPO法人の提携専門家など全く知らない,本件訴訟において1審被告から提出された証拠を見てはじめて1審被告以外の提携専門家らが,1審原告広告を使用していることを知り,その後直ちに侵害行為を止めるよう警告したなどと主張するが,1審原告の主張は,客観的な証拠から認められる上記(1)の事実経過と矛盾するものであって,採用することができない。
・・・
⑹  1審原告は,1審被告による1審原告広告についての著作権の侵害行為として,1審被告広告1及び2について主張しているが,以上の⑴~⑸で述べたところからすると,1審原告広告の著作物性について判断するまでもなく,1審被告が,1審原告広告についての著作権を侵害する行為を行ったと認めることはできない。 」

4 検討
 まあ要するに,あんたはとぼけてるけど,あんたら仲間だったんで,あんたの作った広告を皆で使えるよう手配とかしたじゃんね~,それなのに,今更侵害だとか何それ?!って所でしょうか。

 反訴は,まあ売り言葉に買い言葉~で特段の意味はないと思います。

 どうですか。
 また,どうですかと聞かれても困るでしょうが,司法制度改革の成果(弱者を食い尽くしたあげく,ついには共食いを始める。)が如実に現れて,良い判決だと思いますね。

 こんな感じで弁護士一丸となって,金儲けに邁進していくわけです。勿論私もです。その先に何が待っているかは知る由もありませんが,そうなれば,このブログもいよいよ本当の最終回でしょうねえ。ムフフフ。
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理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
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