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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,別紙原告商品目録記載の各バッグ(原告商品①,原告商品②)を販売する原告が,別紙被告商品目録記載の各バッグ(被告商品①被告商品②)の輸入販売等が不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当する旨主張して,同法3条1,2項に基づき,被告らに対し,被告各商品の輸入販売等の差止め,廃棄等を求めると共に,同法4条に基づき,被告1に対し,損害賠償金482万2054円及びこれに対する不法行為の日の後である平成24年9月21日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払(うち元金160万0688円及びこれに対する平成24年9月21日から支払済みまでの遅延損害金の限度で被告2との連帯支払)を,被告2に対し,損害賠償金160万0688円及びこれに対する不法行為の日の後である平成24年9月1日から支払済みまで商事法定利率の年6分の割合による遅延損害金の支払(うち元金160万0688円及びこれに対する平成24年9月21日から支払済みまでの遅延損害金の限度で被告1との連帯支払)をそれぞれ求める事案です。

 これに対して,大阪地裁21部(谷さんの合議体です。)は,原告の請求を一部認めました。要するに,形態模倣あり,ということです。

 ここでは,あまり不競法の判決を取り上げることは少ないのですが,珍しく取り上げました。それはやはり,形態模倣を認めたという珍しい事案だからです。

2 問題点
 裁判官の誰だったかな~,最近のだから,東海林さんの講演だったかな~,不競法の事件は凄く少なくなっているという話がありました。
 だから,ここで取り上げることも少ないのでしょうね。そもそも,今も,東京地裁の3Fに行くと,シーンとしていますもんね。全く活気がありません。

 で,議題から本格的にそれる前に戻りますと,形態模倣は,不競法2条1項3号です。

 「他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為」

 そして,商品の形態については,2条4項があります。

 「この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。」

 ですので,見ることができるのであれば,内部の形状でもいいし,他方,意匠法3条2項のような創作非容易性は求められていないということがわかります。

 ただ,そうは言うものの,クレームで,ピシっとわかる特許や,読んだり見たりすれば,これもピシっとわかる商標(ないし商品等表示)などと異なり,意匠や,この形態模倣というのは独特の難しさがあります。つまり,モノのデザインが似ているとはどういうことで,どのくらい似ている場合に,NGかってことが,条文そのものからはようわからんのです。勿論,形態模倣にも,模倣の定義はあります。

 「この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。」

 つまり,実質的に同一って何??どの程度似ていたら,実質的に同一と言っていいの,ということが問題ですので,結局,判決でどういうのがNGになるのか,そういう蓄積を待たないと,この条文だけじゃあ,解決できないということです。

 で,その判決で,よくリーディングケースなんて言われているのは,ドラゴンソード事件でしょうね(東京高裁平成10年02月26日判決)。

 これで,東京高裁は,「ここで、作り出された商品の形態が既に存在する他人の商品の形態と相違するところがあっても、その相違がわずかな改変に基づくものであって、酷似しているものと評価できるような場合には、実質的に同一の形態であるというべきであるが、当該改変の着想の難易、改変の内容・程度、改変による形態的効果等を総合的に判断して、当該改変によって相応の形態上の特徴がもたらされ、既に存在する他人の商品の形態と酷似しているものと評価できないような場合には、実質的に同一の形態とはいえないものというべきである。」と判示しました。

 要するに,デッドコピー,ないし準デッドコピーしか認めん!というわけです。ということで,形態模倣が認められた判決はかなり少ないです。勿論,形態模倣には,19条の適用除外というやつもありまして,「日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為」については,適用除外になるのですね。さらには,形態模倣の趣旨は,この「三年」に現れるように,先行者(開発者)の先行利益等を保護するということになっており,そうすると,単なる輸入者とか販売者なんて者は,保護しなくてもよいとも思え,その考えに沿った判決もあるため,余計少なくなっているような気がします。

3 判旨
 「不正競争防止法は,先行者の開発利益を保護することを目的として,新たな商品の形態を模倣する行為は,その形態が当該商品の機能を確保するために不可欠である場合を除き,新たな商品が最初に販売された日から3年を経過しない範囲で,これを不正競争とする旨を定めた(同法2条1項3号,19条1項5号イ)。・・・,個別にみると同一の部分的形態を有する商品が,原告各商品の販売以前に存在したことが認められるとしても,全体としての形態において,これらを組み合わせた商品が存在していなかった以上,当該商品を初めて市場に出した者は,その形態を模倣する者との間では,先行者として保護されるべきである。」

「原告商品①と被告商品①は,いずれも,基本的形態のうち,①バッグ本体及び左右の一対のハンドルからなる婦人用ハンドバッグであること(A1,a1),②バッグ本体の寸法は,高さ22cm,幅30cm,奥行き12cmであること(E1,e1),③バッグ本体のデザインは,側壁を取り巻く帯状の合成皮革を上下方向に3段に重ねた,いわゆる3段のティアード型であること(B1,b1),④バッグ内部は,幅方向に3つの収納部に分割されており,その中央にある開口部をファスナーで開閉可能にした主収納部,その両サイドにある開口部をオープンにした副収納部からなる,いわゆる両あおりであること(C1,c1)において共通する。
 また,具体的形態のうち,⑤バッグ本体の底面は,略角丸横長長方形状であること(H1,h1),⑥左右一対の各ハンドルは,バッグ本体と同一素材で,バッグ本体の開口部の両内側から,逆U字状にバッグ本体と同程度の高さで突出して設けられていること(I1,i1),⑦各ハンドルは,バッグ本体と同一素材を長手方向に折重ねて,縫い目を内側幅方向中央に形成していること(J1,j1),⑧一方のハンドルの一端には吊り飾りが吊り下げられていること(K1,k1),⑨バッグ内部の主収納部のファスナーの終端部は,主収納部の上縁端部に配されていること(L1,l1),⑩一方の副収納部の主収納部に対向する壁面には,上縁開放の横幅の長さが異なる大小の小ポケットが横方向に連続して設けられ,他方の副収納部の主収納部に対向する壁面にはファスナーポケットが設けられていること(M1,m1)において共通する。
 このように,原告商品①と被告商品①は,基本的形態及び具体的形態の多くが共通し,全体としての形状も同一であることから,両者の形態は実質的に同一であるというべきである。
 確かに,原告商品①と被告商品①との間には,①ショルダーベルトの有無(A1,a1),②質感(D1,d1・G1,g1),③色(F1,f1),④本体の底面と側面との縫い面の加工の違い(H1,h1),⑤吊り飾りの形状の違い(K1,k1),⑥副収納部の小ポケットのマチの有無(N1,n1),⑦収納部の布地の模様,タグの違い(O1,o1)があるが,これらはいずれも外観の相違に影響を与えない些細なものに過ぎず,実質的同一である旨の判断を覆すものではない。」

4 検討
 上記の概要のところから,それぞれの商品の写真のpdfをたどれますので,ちょっと見て下さい。
 このハンドバックは,3段のティアード型というらしいですが,平たく言うと,カネゴンの腹みたいなものが3段あるような形態です。で,印象としては,ほぼ一緒ですね。そりゃ細かいところで,違いはあるのでしょうが,デッドコピーと言ってよいくらい似ているという印象です。

 つまりは,そのくらい似ているので,この判断もしょうがないかなあという気がします。

 ただ,気になるのが,保護主体の方です。上記のとおり,不競法2条1項3号の趣旨は,開発者利益の保護です。とすると,厳密な開発者とは言えなくても,独占的販売者や,独占的輸入者については,保護してもいいとは思います。でもね~,今回は,そういう認定はありません。原告は単なる輸入販売業者です。とすると,おまえは開発者でもそれに準じる者でもないじゃんかよ~,と被告の方で主張できたのではないかという気がしますね(被告のそのような主張はないようです。)。

 もっとも,ユニクロ程度まで,きっちりとはいかなくても,アパレルの業界での製造小売の一形態として,ある程度アラアラのデザインやスタイルを製造先(中国やバングラデシュなどの工場)に出し,そこで製造されたものをほぼ全量買い取りしているような場合もあり得ます。
 このような場合は,そういう発注を出した会社は,不競法2条1項3号で保護される者と言ってもよいかもしれませんね。でも,これも程度問題ですので,被告がそこをもっと争えば良かったんじゃない~という感想は変わりませんね。
 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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