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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 私は元々弁理士だったので,弁理士試験は受かっております(そう言えば,短答の合格発表があったらしいですね。285名です。論文試験はもうすぐですので,油断なく。)。ただし,そのころの弁理士試験に著作権法の科目は無かったのですね(今はあるって言ってもお情け程度ですが。)。

 なので,特許法や商標法に比べると,当然落ちます。と言ってもそんじょそこらの弁護士に比べれば随分分かっているとは思いますが。
 それに私の場合,著作権関係のご相談って,やっぱプログラム,ソフトウエア等が多いのですね。そうすると,あまり論点はありません。

 権利で問題になるのは著作権だけで,支分権は複製権か翻案権,たまに公衆送信が問題になったりしますが,裁判例上ポイントとなる所は決まっていますので,あれ?どういうことだっけ?みたいにはなりません。

 でもねえ,昨日の報道なんか聞くと,いやあ著作権法って難しいよねって思うのではないでしょうか(私は少しはわかりましたが。)。

2 昨日の報道は,こんな感じです。
 美容室などで無許諾でBGMをかけていたってわけです。

 私は専ら床屋ですが,若い頃は美容室に通っていたころもありました(その方が安い時期があったのです。今は1000円程度の床屋が普及しましたけどね。)。
 なので,まあ雰囲気はわかります。流行りの曲をかけたいのでしょうねえ。

 でもそれって演奏権の侵害になりそうです(著作権法22条)。あ,演奏権って,音楽教室の話でクローズアップされていますが,生演奏に限りませんので(2条7項),要注意です。

 でも,こういうことは著作権法のイロハのイで,私だってわかります。
 問題は,ラジオにすれば良かったのにねえってことです。

 この辺が著作権法って難しいよねって感じる所ですわ。

 実は,iphoneに入っていた曲を流せば上記のとおり,演奏権の侵害になりそうですが,普通の安い家庭用ラジオからJwaveを流していても演奏権の侵害にならないのです。

 著作権法38条3項です。
3  放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。)は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。

 前段はどうでもいいです。ポイントは後段です。家庭用のラジオなら,営利目的だろうが,視聴料金をとろうが,別にOK!というわけです。

 私がよく行く床屋も普通のラジオをつけっぱなし(床屋なのでAMですけどね。)~おお,著作権法にかなっておるわいといつも感心しております(これはウソ)。

 兎も角も,こういう細かい規定まで知らないといけないのですねえ。

3 そういう例が他にもあります。

 上は音楽の著作物の話でした。これは結構厳しい類ですね。ところが,ほぼユルユルで全く厳しくない著作物もあります。

 これもすぐに頭に浮かばない人が多いのではないでしょうか。

(公開の美術の著作物等の利用)
第四十六条  美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
・・・
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合

 これも前半はどうでもよくて,後半の建築の著作物が問題です。

 要するに,模倣建築(あとその分譲など)以外,何やってもOKってわけです。

 スカイツリーは立体商標の登録もしているようですが,著作権の範囲なら,ミニチュアモデルだとか模したお土産だとかやり放題のし放題ってわけです。

 でも,これも一個難点があって,人格権との兼ね合いですね。
 著作権法30条以降の例外って著作権の例外であって,人格権の例外ではないのです。なので,あまり変な後付けの模様やらアンテナなんてくっつけると同一性保持権でやられる可能性もあります。

(同一性保持権)
第二十条  著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2  前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
・・・
二  建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変

 その例外も上記のとおりありますが,実用を越えた改築はやばそうなわけです。

 ということで,著作権法って難しいよねって話でした。

4 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日は,ここ目黒通りの一部でもある目黒新橋に来ております。
 
 中目黒方面が写っているというわけです。
 画面の右の方に大きな煙突があります。これは目黒清掃工場ですが,現在操業停止中です。建て替えるそうですね。

 いやあ梅雨の晴れ間って感じです。昨日よりは気温は上がっており,若干蒸し暑い東京ですね。

 先週末はサーフィンはおやすみだったのですが,この時期あんまり波がないのですねえ。しばらくは湘南でのサーフィンが辛い季節です。
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1 このタイトルで何のことか分かったあなたは相当な特撮マニアですね。

 このブログでも,そのロケ地に行ったことやら,最終回のことやら,結構書いておりますね。

 ユウキというのは,そのヒロインですね。ヒーローの如月弦太朗の方は,朝ドラのあまちゃんでのヒロインの恋人役から大出世でしょっちゅう見ますし,ユウキの方も,朝ドラのまれでのヒロインのライバル役からけっこう見ます。

 なので,突然~って感じですよね。

2 まあ弁護士のブログですと,その際のリスク回避策やら対策,防衛策なんちゅうのがタイムリーでいいのでしょうね。でもひねくれ者で変わり者の私,そんなの興味ないのです。それにそういう重要な話は,これ(お金ね)貰わないとって感じですわ。

 そう言えば,今回の相手方の団体の方は,ここ五反田界隈でけっこう見ますよ。
 本部が1号沿いにあるからかもしれません。うちの事務所の近くで再開発が進んだ大崎フォレストビルの近くにも,建物がありますしね。
 さらに,散歩していたら他の建物も見かけますよ。泉岳寺駅の近くにすごい大きなゴシック調の建物があるし,1号を川崎方面に行くと,戸越の手前でやはり大きな建物がありますしね。

 創始者の家が,白金台の聖心女子大の近く(いや北里大の近くって言った方が早いかな。)にあるからかもしれませんね(ここも私の散歩コースの一つです。)。やはり職住近接というのは,重要なことなのでしょう(土地勘のない人に補足すると,白金高輪というのは五反田から岡というか山を越えた向こうでけっこう近いのです。)。

3 だから残念なのは,フォーゼの10周年とかにユウキの登場がないかなあということですね。
 如月弦太朗の相棒の,歌星賢吾も芸能界を引退してしまっていますし,フォーゼに何があった?!って感じになっております。

 まあでも,上に出たまれも,ユウキに思いを寄せる丸坊主の人がいなくなっておりますから,様々各方面色々大変なんだなあって所でしょうかね。


4 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日は,ここ,上記の団体,本部近くに来ております。
 
 このとおり,1号線に直接面しております。報道陣などでごった返しているかと思ったら,誰も居ません。シャッターが閉まっており,今日はどうやらお休みのようですね。
 とすると,凄いうまいタイミング,ですね。
1 ということで,昨日はジュウオウジャーの最終回でした。

 ジニスを倒すのは既定路線として,その後ジューマン達との付き合いはどうなるのかと思っていたら,まさかのジューランドとの融合とは想定外でした。特別編とかやりにくくなるだろうけど,地球は我が家さ~♫だからいいのですかね。

 前のニンニンジャーもなかなか凝った話で面白かったですが,今回のジュウオウジャーも,敵方もやはり凝った設定が多かったですね。

 特に私が感心したのは,クバルの裏切りの回ですね。

 クバルは,結局オーナーであるジニスの威力に恐れをなし,裏切りはやめて日没までに地球上の全生物を滅ぼすというブラッドゲーム(この設定も実に良かったです。)を設定したものの,ジュウオウジャー達にやっつけられたわけです。その焦りぶりというか,敗走ぶりというかが,とても他人とは思えない小物っぷりで,私ってこんな感じだなあと感心した次第です。

 敵方の描写は仮面ライダーよりも良いのではないかと思います。恐らく,対象年齢から行くと,味方の描写は単純でわかりやすくしている分,遊び心のある作り手連中の興味は,敵方に自ずと向かうのではないかと思うのですね。だから,敵方の描写が凝っているのだと思います。

 次回から始まるキュウレンジャーは,史上最多の9人のスーパー戦隊らしいです。とは言え,私の記憶が確かならキョウリュウジャーは最終的にもっと多かったような気がしますけどね。ま,始まった時点基準なら,そうかもしれませんね。

 相変わらず敵の描写に期待しますが,脚本は,毛利亘宏さんですか~。ちょっと不安ですね。
 ここ最近ドラマって本当脚本でほぼ全てが決まるなあとしみじみ思っておりますので,過去の作品からするとなかなか不安になりますニャー。

2 特撮ものということで,ここで書いていなかった最終回のやつがありましたね。それは年末で終わったウルトラマンオーブです。

 怪獣を倒す団体のメンバーという,トラディショナルなヒーロー像のウルトラマンXとは全く違う,さすらいの風来坊であるクレナイガイ(名前もそのまんま)のウルトラマンオーブでしたので,始まったころはこんなんで持つのかいなと思ったのですが,実に面白かったです。

 そう言えば,今年で50周年になり,今tokyo mxテレビで再放送をやっているウルトラセブンも風来坊のモロボシダンが主人公でしたね。実はこの設定もトラディショナルなものだったのかもしれません。

 3月に映画をやるらしいので,そちらも検討せねばいけませんなあ。
 
 ということで,私の興味は今日もジャンルを問わず,色んなところに向くのでした。
1 何だか仮面ライダーの映画の紹介も久々って感じがしますね。夏のやつは紹介したかな~,ま,いいか。

 昨年まではmovie大戦でした。
 そのパターンは大体同じで,前のライダーのその後の話→今のライダーの番外編→何故かその2つがつながって最後は二人でライダーキック~!!っていうパターンでした。

 でも今回は違いますね。

 まあ,movie大戦もいいのですが,折角の映画なので,細切れじゃなくきちんとストーリーのつながったやつでいいんじゃないの~それで新旧ライダーが見られりゃいいよね~ちゅうところはあったんじゃないですかね,私以外の皆様も。

 ということで,今回は,初めから,エグゼイドとゴーストは共闘します。と言っても,何故かゴーストは変身できなくなるのですけどね。
 おっとあんまり言うとネタバレになってしまう~,まだ公開2週目ですからね。多くを語るのはやめておきましょう。

 あと,レジェンドライダーですが,ドライブ,鎧武,ウィザードが出ます。ただ,鎧武は客演なく,声だけです。
 ドライブこと泊進ノ介は,今というかついこの間までラストコップに出ていて忙しそうです。ウィザードこと操真晴人も,つい先週まで真田丸に出ておりました(木村重成役で先週戦死)。葛葉紘汰こと鎧武が一番暇そうなのに,出ていないのは解せないですニャー。撮影時期の関係ですかね。

 まとまりのあるものはやはり面白いですね。先週の一弁の知財の部会の忘年会でも見に行くと言ってた先生がいましたが,感想を聞きたい所です。今週末は妖怪ウォッチの映画第三弾の公開ですが,どこまで行きますかねえ。

2 さて話はまったく変わりますが,昨日の日経の朝刊に非常にいい記事が載ってました。
 経済教室の面の「私見卓見」の「人間の本性と向き合う道徳教育を」という,三菱商事の元副社長の宮内孝久さんのものです。

 いやあ,よくわかってる人もいるもんだなあ,さすがだなあと感心しましたね。我が意を得たりとはこのことで,こういう人が色んな所にいりゃあ,私ももっと伸び伸び生きられるのになあと思った次第です~って,十分伸び伸びしてるって~こりゃ失礼。

 ま,兎も角機会があったら,是非全文を読んで欲しいですね。
1 概要
 本件は,本判決別紙3「控訴人加湿器目録」記載1及び2の加湿器の開発者である控訴人(一審原告)らが,被控訴人に対し,①本判決別紙1「被控訴人商品目録」記載の加湿器は,控訴人加湿器1又は控訴人加湿器2の形態を模倣したものであるから,その輸入,販売等は不正競争防止法2条1項3号の不正競争(形態模倣)に当たるとして,同法3条1項及び2項に基づいて,被控訴人商品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を,②控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2は,いずれも,美術の著作物(著作権法10条1項4号)に当たるから控訴人らはこれらに係る著作権(譲渡権又は二次的著作物の譲渡権)を有するとして,著作権法112条1項及び2項に基づいて,被控訴人商品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに(上記①とは選択的併合),③不正競争防止法違反又は著作権侵害の不法行為に基づき(選択的併合,不正競争防止法5条3項2号又は著作権法114条3項の選択的適用),損害賠償金各120万円(逸失利益各95万円と弁護士費用各25万円の合計120万円の2人分で総計240万円)及びこれに対する不法行為後の日である平成27年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案です。

 一審の東京地裁成27年(ワ)第7033号(平成28年1月14日判決)は,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2につき,①両者は,いずれも,市場における流通の対象となる物とは認められないから,不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらない,②両者は,いずれも,美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えていると認めることはできないから,著作物に当たらないとして,控訴人らの各請求をいずれも棄却しました(民事第46部の長谷川さんの合議体ですね。)。

 これに対して,今回の控訴審の知財高裁2部(清水さんの合議体ですね。)は,逆転で控訴人(一審の原告)の請求を一部認容しました。

 逆転で認容したのは,不正競争防止法の件で,当事者には凄く重要なのでしょうが,私のような無責任な第三者からするとあまり興味がありません。

 じゃあ何故このブログ,しかももうあんま判決を紹介する気もなくなったこのブログで取り上げたからというと,侮れない男,清水部長のちょっと日和った姿が見られたからです。つまり面白判決の範疇ってことです。

2 問題点
 メインの問題点は上記のとおり,不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」の解釈です。これについて,一審は,まだ発売していない(展示会に展示しただけ。)商品は,市場における流通の対象となる物とは認められないから,不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらないとしたわけです。

 他方,二審が上記のとおりの結論だということは,要するに「商品」に当たると判断したわけです。そこも重要なんですけどね,ま,それはいいでしょう。

 で,隠れ論点は,そうではなく,例の工業製品の著作物性です。ちょい前にブログに書きましたが,ここ数年の流れはこんな感じでした。

 ①工業製品の著作物性には高いハードルを課した一連の流れ(博多人形事件が鏑矢で,最近のだとファッションショー事件とかですね。)

 ②そこに突然現れたTRIPP-TRAPP事件(知財高裁平成26年(ネ)10063号,平成27年4月14日判決)。これは知財高裁2部で清水部長の合議体。規範は,「応用美術に一律に適用すべきものとして,高い創作性の有無の判断基準を設定することは相当とはいえず,個別具体的に,作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべきである。」でした~♫

 ③その後,地裁レベルでは,ピクトグラム事件(大阪地裁平成25年(ワ)1074号,平成27年9月24日判決)がありました。規範は,「美的鑑賞となり得る美的特性を備えている場合」でした。

 ④さらに,知財高裁で,幼児用箸事件の判決がありました(知財高裁平成28(ネ)10059,平成28年10月13日判決)。知財高裁3部で,鶴岡さんの合議体です。私のも差止めくらう虞がなくなりホッとしました。規範は,「美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞の対象となり得るような特性を備えていることが必要である(これは,美術の著作物としての創作性を認める上で最低限の要件というべきである)。」でした。

 そして,この度,漸く,問題のTRIPP-TRAPP事件と同じ清水部長の合議体に,工業製品の著作物性が問題となる事案が係属するに及び,もう各方面から早く判決が出ないかなあ~どうなんだろうなあ~と首を長くして待つという事態になったのですね。

 それがこの判決です!
 どうですか~この判決の意義はわかりましたか?侮れない男はやはり侮れないのか,それとも多少デヘヘ~となるのか,世間も注目しておりました。
  
 ちなみに控訴人と被控訴人の製品はこんな感じです。
 

 試験管の形状をした,携帯型の加湿器ですね。

3 判旨
「(1) 応用美術と著作物性について
 著作権法2条1項1号は,著作物の意義につき,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定しており,そして,ここで「創作的に表現したもの」とは,当該表現が,厳密な意味で独創性を有することまでは要しないものの,作成者の何らかの個性が発揮されたものをいうと解される。
 控訴人らは,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2が,加湿という実用に供されることを目的とするものであることを前提として,その著作物性を主張する(著作権法10条1項4号)から,本件は,いわゆる応用美術の著作物性が問題となる。
 ところで,著作権法は,建築(同法10条1項5号),地図,学術的な性質を有する図形(同項6号),プログラム(同項9号),データベース(同法12条の2)などの専ら実用に供されるものを著作物になり得るものとして明示的に掲げているのであるから,実用に供されているということ自体と著作物性の存否との間に直接の関連性があるとはいえない。したがって,専ら,応用美術に実用性があることゆえに応用美術を別異に取り扱うべき合理的理由は見出し難い。また,応用美術には,様々なものがあり得,その表現態様も多様であるから,作成者の個性の発揮のされ方も個別具体的なものと考えられる。
 そうすると,応用美術は,「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)に属するものであるか否かが問題となる以上,著作物性を肯定するためには,それ自体が美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えなければならないとしても,高度の美的鑑賞性の保有などの高い創作性の有無の判断基準を一律に設定することは相当とはいえず,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,著作物として保護されるものと解すべきである。
 もっとも,応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とするものであるから,美的特性を備えるとともに,当該実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能を実現する必要があり,その表現については,同機能を発揮し得る範囲内のものでなければならない。応用美術の表現については,このような制約が課されることから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は,通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が,上記制約を課されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても,その著作権保護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。そうすると,応用美術について,美術の著作物として著作物性を肯定するために,高い創作性の有無の判断基準を設定しないからといって,他の知的財産制度の趣旨が没却されたり,あるいは,社会生活について過度な制約が課されたりする結果を生じるとは解し難い。
 また,著作権法は,表現を保護するものであり,アイディアそれ自体を保護するものではないから,単に着想に独創性があったとしても,その着想が表現に独創性を持って顕れなければ,個性が発揮されたものとはいえない。このことは,応用美術の著作物性を検討する際にも,当然にあてはまるものである。
 以上を前提に,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2の著作物性を判断する。・・・

 ・・・これは,アイディアをそのまま具現したものにすぎない。また,控訴人加湿器1の具体的形状,すなわち,キャップ3の長さと本体の長さの比(試験管内の液体の上面),本体2の直径とキャップ3の上端から本体2の下端までの長さの比(試験管の太さ)は,通常の試験管が有する形態を模したものであって,従前から知られていた試験管同様に,ありふれた形態であり,上記長さと太さの具体的比率も,既存の試験管の中からの適宜の選択にすぎないのであって,個性が発揮されたものとはいえない。
 したがって,著作物性を検討する余地があるのは,上記構成以外の点,すなわち,①リング状パーツ5を用いたこと,②吸水口6の形状,③噴霧口7周辺の形状であるが,いずれも,平凡な表現手法又は形状であって,個性が顕れているとまでは認められず,その余の部分も同様である。
 したがって,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2には,著作権法における個性の発揮を認めることはできない。」

4 検討
 男ってやつは厄介です。特に中年を過ぎた男ってやつは。
 プライドとか体面とかが気になって素直にごめんって言えなくなるのです。私もそうなんですよね。頑なに失敗を認めず,いやこれは**のせいだとか,***が&&&になったからで,致し方ないのだ~てな具合になります。

 だからわかりますよ。去年出した判決の規範を変えるなんて,プライドが許すわけがない!しかも何を言われるかわかったもんではありませんからね。
 だから,今回もTRIPP-TRAPP事件と規範は同じです。作者の個性!です。

 とは言え,やっぱTRIPP-TRAPP事件はラディカル過ぎたと反省したのでしょうね(ま,何事も挑戦すること自体は悪いことじゃないですけどね。)。その後ウダウダと言い訳がましい補助的規範を連ねています。やれ応用美術は実用品だから,その目的の機能を発揮する範囲内だとか,選択の幅が狭く保護範囲も狭くなるだとか,アイデアを保護するものじゃないんだよだとか,いやあ面倒臭いな~って感じです。
 チェッカーズのように素直にi'm sorryって言えば簡単なのに,面倒臭いんですね,色々と~♡。

 とは言え,方向性は固まったって所でしょう。工業製品の著作権法での保護は,やはり悪手だということです。

 特許庁の意匠関係の皆様もホッとしたことでしょう。何より一番ホッとしているのは,知財高裁2部自身かもしれませんがね。ムフフフ。
1 概要
 本件は,相手方(大渕先生)が,「相手方は,編集著作物たる著作権判例百選[第4版](本件著作物)の共同著作者の一人であるところ,抗告人(有斐閣)が発行しようとしている著作権判例百選[第5版](本件雑誌)は本件著作物を翻案したものであるから,本件著作物の著作権を侵害する。」などと主張して,本件著作物の翻案権並びに二次的著作物の利用に関する原著作物の著作者の権利を介して有する複製権,譲渡権及び貸与権,又は著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)に基づく差止請求権(本件差止請求権)を被保全権利として,抗告人による本件雑誌の複製・頒布等を差し止める旨の仮処分命令を求める申立て(本件仮処分申立て)をし,これに対し,東京地方裁判所は,平成27年10月26日,この申立てを認める仮処分決定(本件仮処分決定)をしたため,これを不服とした抗告人が保全異議を申し立てたが,原決定は,平成28年4月7日,本件仮処分決定を認可したことから,本件は,この原決定を不服とした抗告人が,原決定及び本件仮処分決定の取消し並びに本件仮処分申立ての却下を求めた事案です。

 去年から今年にかけての,知財界隈で最もスキャンダラスな事件である,例の著作権判例百選第5版事件のです。
 漸く,知財高裁の保全抗告の決定の全文がアップされたわけです。

 結論を言いますと,知財高裁3部の鶴岡さんの合議体は,「相手方による本件仮処分申立ては理由を欠き却下されるべきものであるから,これを認めた本件仮処分決定及びこれを認可した原決定をいずれも取り消し,本件仮処分申立てを却下する」としたわけです。

 つまり,逆転で著作権侵害を認めなかったということです。

2 問題点
 問題点としては,色々ありました。

 原決定である,保全異議のときは,
(1) 債権者が編集著作物たる本件著作物の著作者の一人であるか。(争点1)
(2) 本件雑誌の表現から本件著作物の表現上の本質的特徴を直接感得することができるか(本件雑誌が本件著作物を翻案した二次的著作物に当たり,本件著作物の同一性保持権を侵害するものとなり得るか。)。(争点2)
(3) 本件著作物は別紙「『著作権判例百選』(第4版)搭載判例リスト(案)」のとおりの原案(以下「本件原案」という。)を原著作物とする二次的著作物にすぎず,本件著作物において新たに付加された創作的表現が本件雑誌において再製されてはいないということができるか。(争点3)
(4) 著作権法19条3項の趣旨に照らし,本件雑誌のはしがきの表示をもって,同条1項後段の原著作物の著作者名の表示がされたとして,氏名表示権の侵害がないといえるか。(争点4)
(5) 本件雑誌における本件著作物の改変が債権者の本件著作物に係る同一性保持権を侵害するか(債権者の「意に反して」改変したもの(著作権法20条1項)といえるか。また,「やむを得ないと認められる改変」(同条2項4号)に当たるか。)。(争点5)
(6) 債権者が債務者に対し,本件雑誌の出版に関して,黙示的に,本件著作物の利用を許諾し,著作者人格権を行使しない旨同意したか。(争点6)
(7) 債権者が他の共同著作者との間で本件雑誌の出版に関する合意を拒むことについて,正当な理由(著作権法65条3項)がなく,信義に反する(同法64条2項)ということができ,かつ,そのことが本件差止請求に対する抗弁となるか。(争点7)
(8) 債権者の債務者に対する本件差止請求権の行使が権利の濫用に当たるか。(争点8)
(9) 本件雑誌の出版前にその複製・頒布等を差し止めることが,「事前抑制の法理」の要件を満たさないとして許容されないことになるか。(争点9)
(10) 本件仮処分申立てについて保全の必要性があるか。(争点10)

 このくらいあったのですね。で,原決定(東京地裁民事29部,嶋末さんの合議体でしたね。)は,基本,債権者つまりは大渕先生の言い分を大凡認め,仮処分を認可したわけです。

 で,その中で,第5版の編集過程というか,学者同士の確執というのか,そういうのが見え隠れして,私のようなゲスな人間には実に趣深いものになったわけです。

 いやあ,蛇蝎のごとく嫌われるなんて,可哀想~♡,他方,A教授は年末で解散するとか何とか言っているどっかのアイドルグループの事務所のお偉いさんのようですなあ~♡なーんて無責任に思ったものです。

 で,話を元に戻しますが,今回の保全抗告で判断したのは,上の争点1のみです。そりゃそうですね,ここで切られたのですから。

3 判旨
「(ア) 第4版の編者選定にあたり,抗告人担当者のEは,基本的には,体調面からして相手方は編者とするにふさわしくないという考えを持っていたことがうかがわれる(前記(1)エ(ア)b,(イ)b)。他方,Eからこの点について相談を受けたA教授も,そのようなEの考えに理解を示しつつ,東大教授という相手方の地位や判例百選の性格その他の事情を考慮すると安易に相手方を編者から外すわけにもいかず,相手方の意向を確認したところ編者を引き受けることに強い意欲を示したこともあって,やむなく,相手方を名目的ながらも第4版の編者とすることとし,同時に,相手方に対しては,原案作成に当たり口出ししないように強く注意を与えたというのである(前記(1)エ(ア)b,c,(イ)b)。しかも,これを受けた相手方も,A教授から原案作成の権限を取り上げられたものと理解したのであり(前記(1)エ(ア)c),A教授の上記意図はおおむね正しく相手方に伝わったということができる。
 また,このようなA教授の意図はEに対しても伝えられた(前記(1)エ(イ)b)。
 さらに,B教授も,第4版の編者を持ちかけられた当初はこうした経緯を把握していなかったため,相手方を中心とした編集作業を想定していたところ,経緯の詳細を聞かされたことで,自らが中心的役割を果たすことを了解したことがうかがわれる(前記(1)エ(イ)a)。
 そうすると,第4版の編者選定段階において,少なくとも抗告人,A教授,B教授及び相手方との間では,相手方は「編者」の一人となるものの,原案作成に関する権限を実質上有しないか,又は著しく制限されていることにつき,共通認識が形成されていたものといってよい。このことは,相手方が上記A教授からの注意につき承服し難い思いを抱いていたことを考慮しても異ならない。
 そして,いまだ編者選定を進めているにすぎないこの段階において,その性質上本件著作物の編集著作物としての創作性のうち質量ともに中核的な部分を占めることになると思われる原案作成に関する権限を実質上なしとされ,又は著しく制限されることは,本件著作物の編集著作物としての創作性形成に対する関与を少なくとも著しく制限されることを事実上意味するものといってよい。
(イ) 実際,第4版の編集過程においては,まず,A教授とEとが,B教授及び編集協力者であるD教授が原案作成に当たること,大きな編集方針を決定するための編者会合は開催せず,B教授及びD教授が作成した原案に基づいて初回の編者会合から具体的な検討に入ることとすること,こうした方針を実現するための編者間での話の進め方などを相諮って取り決めた上(前記(1)エ(イ)b),後にB教授及びD教授の了解をも得つつ,これらを実現した(前記(1)エ(イ)c~e)。
 また,B教授及びD教授は,内容につき逐次A教授の確認を得,また,執筆者候補の選定につきA教授並びに同教授を介して相手方及びC教授の意見をも聞きつつも,おおむね相互のやり取りを重ねることを通じて主体的に原案作成作業を進めたものといってよい(前記(1)エ(イ)f)。
 なお,この段階での相手方の関与は,執筆者候補として商標・意匠・不正競争防止法判例百選,特許判例百選の執筆者が参考になり得る旨のかなり概括的な意見を述べたにとどまる(前記(1)エ(イ)e,f)。
(ウ) こうして,B教授及びD教授が主体となって本件原案がまとめられたが,その後の修正の程度及び内容に鑑みると,本件著作物の素材である判例及びその解説(執筆者)の選択及び配列の大部分が本件原案のままに維持されたものといってよく,本件著作物との関係において本件原案それ自体の完成度がそもそもかなり高かったものと評価し得る。
(エ) B教授及びD教授が作成し,A教授の確認を経た上で,本件原案が相手方及びC教授に送付されたところ,C教授はこれにつき10項目の意見を述べ,B教授はこのうち2項目を採用して本件原案を修正した(前記(1)エ(ウ)a)。C教授の意見には,簡単な理由の付されているものと理由の付されていないものとがあるが,B教授がこれをもとに修正を行うに先立ち,C教授とB教授,さらには相手方及びA教授との間で意見交換や議論が行われたことをうかがわせる事情は見当たらないことに鑑みると,上記修正はB教授単独の判断により行われたものとうかがわれる。しかも,上記修正後も,C教授がその修正を了承する旨回答するのみで,相手方及びA教授がこの点につき特に言及をしたことをうかがわせる疎明資料はない。
 他方,相手方は,B教授に対し,電話及びメールで本件原案における執筆者候補につき特定の実務家1名の削除及び3名の追加を提案し,これを受けたB教授は,まず,1名の削除及び2名(a判事及びc弁護士)の追加(及び執筆対象となる判例の割当て)という形で本件原案を修正し,本件著作物編者らに示したが,b弁護士の方がc弁護士よりも優先順位が高い旨の相手方の意見を受け,結局,相手方の意見を全て受け入れた修正を行った(前記(1)エ(ウ)b)。この間のやり取りの具体的内容にはやや判然としないところはあるものの,相手方及びB教授の各陳述書や関係するメールの内容等に鑑みると,両者の間で,提案の理由等に関する実質的な議論ないし意見交換が十分に行われたとは考え難い。また,この相手方の提案につきA教授及びC教授は特に言及しなかったことがうかがわれる。そうすると,相手方の意見を踏まえた本件原案の修正についても,修正の要否及び内容の判断はあくまでB教授主導で行われたものと見るのが適当である。
 また,特定の実務家1名の削除及び3名の追加という執筆者候補に関する相手方の提案は,その後現に行われた執筆者候補の変更等を考慮すれば,創作性を認める余地がないほどありふれたものとまではいい難いが,追加すべきとされた3名の地位,経歴等に加え,相手方の提案が反映されるに至る経緯をも考慮すると,斬新な提案というべきほど創作性の高いものとはいい難く,むしろ,著作権法分野に関する相応の学識経験を有する者であれば比較的容易に想起し得る選択肢に含まれていた人選といってよいから,その提案に仮に創作性を認め得るとしても,その程度は必ずしも高いものとは思われない。
(オ) こうして本件原案修正案が作成されたことを受け,本件編者会合の日程調整が進められるとともに,本件一覧表素案原案,本件一覧表素案,本件一覧表素案修正案が順次作成されたが,相手方は,日程調整を除きこのプロセスに何ら関与していない。
(カ) 相手方も出席して開催された本件編者会合においては,事前に本件著作物編者らに送付された本件一覧表素案修正案に基づき検討が行われるとともに,事前にD教授からEに対してされた指摘(前記(1)エ(エ))に基づき編集部から北朝鮮事件知財高裁判決の追加が提案され,執筆者候補1名と併せその追加が決定され,その後,本件著作物編者ら全員の一致により,第4版に収録されるべき判例(113件)の選択,配列及びその執筆者候補(113名)の割当てが,項目立ても含めて決定された(前記(1)エ(オ))。本件編者会合における出席者間の具体的なやり取りの詳細は判然としないが,出席者らの各陳述書の内容に鑑みれば,議論の紛糾等はないまま比較的短時間で終了したことがうかがわれる。そうすると,本件編者会合における相手方の具体的な関与は,上記判決の追加並びに第4版に収録されるべき判例及び執筆者候補の選択,配列等に賛同したという限度にとどまるといってよい。
 前記のとおり,他人の行った素材の選択,配列を消極的に容認することは,いずれも直接創作に携わる行為とはいい難いところ,本件編者会合において,相手方は,既存の提案(本件一覧表素案修正案)や第三者の提案に賛同したにとどまるのであるから,このような相手方の関与をもって創作性のあるものと見ることは困難である。もっとも,本件編者会合での決定が基本的には本件著作物における素材の選択及び配列に関する最終的なものと位置付けられていたと見られることに加え,相手方がその学識経験に基づき熟慮の上で賛同した場合を想定すれば,なおこのような関与に創作性を認め得る場合もあるとは思われるが,その場合であっても,相手方の関与はあくまで受動的な関与にとどまることや本件原案の完成度の高さ等を考慮すれば,その程度は必ずしも高くないと思われる
(キ) 本件編者会合後に各執筆者候補に対する執筆依頼が行われ,これに対する執筆者候補の反応を受けて共同執筆の申入れの了承,執筆者候補の変更等が行われたが(前記(1)エ(カ)a~e),こうした各執筆者候補の要望等に関するEからの相談に対し,相手方の対応は,b弁護士からの共同執筆の申入れに関するものを除き,応答しないか,他の本件著作物編者らないしEの提案に賛成という結論のみを回答するにとどまるものであった。b弁護士からの共同執筆の申入れに関しては,相手方は,これを是とする理由をいくつか挙げた上で,共同執筆を認めてよい旨意見を述べたが,この時点で,他の執筆者については既に共同執筆を認めた例が1件あり,また,相手方に先立ち,B教授が既に了承し,C教授も基本的にB教授の判断を尊重する旨の意見を述べていた。
 ここでの相手方の関与についても,その経過やb弁護士からの申入れに賛同する理由として示された内容を踏まえると,本件編者会合における相手方の関与に関する評価(上記(カ))と同様の評価が妥当するというべきである。
(ク) 本件編者会合後に上級審の判決が出された事件や執筆者から疑問点等の指摘のあった判例に関し,収録すべき判例の変更も本件編者会合後にいくつか行われたが(前記(1)エ(カ)f~h),これに対する相手方の対応は,Eが,他の本件著作物編者と相談の上,変更を決定した旨報告をしたのに対し,その対応を了承する旨の意見を述べるにとどまるものであった。なお,本件編者会合後にロクラクⅡ事件控訴審判決
が出されたことを受けての対応につきEから本件著作物編者らにされた相談に対しては,相手方は,簡単な理由を付して意見を述べたが,結論的には先に述べられたC教授の意見に賛成するというものであった。
 ここでの相手方の関与についても,その経過やC教授の意見に賛成する理由として示された内容を踏まえると,本件編者会合における相手方の関与に関する評価(上記(カ))と同様の評価が妥当するというべきである。
(ケ) また,本件編者会合後,ある判例の項目名及びその配置が問題となったところ,Eは,最終的には相手方の示唆に基づきこれに対応したが,その示唆とは,当該項目の属する章のタイトルにつき「『差止め』を『差止め等』に変更して逃げておいた方がいい」という趣旨のものであった(前記(1)エ(カ)i)。ここでの相手方の関与については,そもそも本件著作物の編集著作者としての創作性を認め得る程度のものではないというべきである。
エ このように,少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たしたB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求められ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,この点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な関係者との間に共通認識が形成されていたものといえる。しかも,相手方が本件原案の作成作業には具体的に関与せず,本件原案の提示を受けた後もおおむね受動的な関与にとどまり,また,具体的な意見等を述べて関与した場面でも,その内容は,仮に創作性を認め得るとしても必ずしも高いとはいえない程度のものであったことに鑑みると,相手方としても,上記共通認識を踏まえ,自らの関与を謙抑的な関与にとどめる考えであったことがうかがわれる。
 これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において,相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむしろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるものと理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。
(4) そうである以上,法14条による推定にもかかわらず,相手方をもって本件著作物の著作者ということはできない。」

4 検討
 原決定では,著作者性のところでは,こんな判断がされていました。

前記1(4)で認定した事実によると,①債権者は,執筆者について,特定の実務家1名を削除するとともに新たに別の特定の実務家3名を選択することを独自に発案してその旨の意見を述べ,これがそのまま採用されて,本件著作物に具現されていること,②本件著作物については,当初から債権者ら4名を編者として『著作権判例百選[第4版]』を創作するとの共同の意思の下に編集作業が進められ,編集協力者として関わったD教授の原案作成作業も,編者の納得を得られるものとするように行われ,本件原案については,債権者による修正があり得るという前提でその意見が聴取,確認されたこと,③このような経緯の下で,債権者は,編者としての立場に基づき,本件原案やその修正案の内容について検討した上,最終的に,本件編者会合に出席し,他の編者と共に,判例113件の選択・配列と執筆者113名の割当てを項目立ても含めて決定,確定する行為をし,その後の修正についても,メールで具体的な意見を述べ,編者が意見を出し合って判例及び執筆者を修正決定,再確定していくやりとりに参画したことを指摘することができる。そして,執筆者の執筆する解説は,本件著作物の素材をなしているところ,その執筆者の選定については,とりわけ実務家を含めると選択の幅が小さくないこと,債権者が推挙した当該3名の人選について,誰が選択しても同じ人選になるようなものとはいえないことに照らせば,債権者による上記①の素材の選択には創作性があるというべきである。その上,上記③の確定行為の対象となった判例,執筆者及び両者の組合せの選択並びにこれらの配列には,もとより創作性のあるものが多く含まれているところ,債権者が編者としての確定行為によりこれに関与したとみられるのである。そうすると,上記①ないし③を総合しただけでも(その余の債権者主張事実の有無について認定・判断するまでもなく),他の共同著作者の範囲はともかくとして,債権者が本件著作物の編集著作者の一人であるとの評価を導き得るところ,本件において,前記イの推定を覆す事情が疎明されているということはできない。
 したがって,債権者は,編集著作物たる本件著作物の著作者の一人であるというべきである。
エ これに対し,債務者は,前記ウ①に関し,(ア) 執筆者を推挙しただけでその執筆者に判例を割り当てていない段階では,編集著作物の素材である解説の特定をしていないから,素材の原料の提案にすぎず,素材の選択には当たらない,(イ) 債権者の推挙した上記3名は,東京地裁知財部の部総括判事,元知財高裁判事の弁護士及び著作権分野で高い実績を有し第3版においても執筆者になっていた弁護士であるから,極めて「ありふれた」人選であって,創作性は全くない,(ウ) 仮に3名の候補者を選択したのみで創作的な表現として著作権が生じるとすると,以後,同一の3名を選択することが複製に当たり著作権侵害となってしまう旨,前記ウ②に関し,(エ) 共同創作の「意思」があっても,何ら著作者性を基礎付ける事情とはならない旨,前記ウ③に関し,(オ) 著作権法においては,自ら物理的に創作的表現を表出していない者は,著作者たり得ないところ,著作者の認定においては,あくまでそのような客観的な創作的表現行為の有無のみが問題となるのであり,「立場」や「肩書」は何の意味も持たないし,「最終的な確定権限を有する者」というような行為者の権限を考慮することも許されない(当該権限を要件とするような解釈に基づいて著作者の認定をすることは,同法2条1項2号,1号に反する。),(カ) 本件編者会合における決定に参加したことは,他人が世に現出した表現について最終的に公表すべき表現であることを事後的に承認したにすぎず,本件著作物の作成に創作的関与をしたとの評価にはつながらない,(キ) 本件編者会合後の修正については,債権者は他者のした提案を一部事後承認したにすぎず,上記(カ)と同様に,本件著作物の作成に創作的関与をしたとの評価にはつながらない,(ク) 債権者の前記ウ③の行為を債権者が本件著作物の編集著作者の一人であることの根拠とすることは,「それまで表現されたものとして存在しなかったものを初めてつくり出す行為」をしていない者を著作者とすることであるから,同法2条1項2号,1号の文理に反するし,著作物が創作され公表されるまでの間に関与する多数の者(学術論文の査読者から果てはマスコット・キャラクターを採択する会議に至るまでありとあらゆる「確定者」)にいたずらに著作者の外延が拡大されてしまいかねない,(ケ) 債権者の本件編者会合における承認及びその後の一部承認を創作的関与に含めて考えることは,智恵子抄事件最高裁判決に反する旨をそれぞれ主張した上,(コ) 本件著作物の編集に関し,債権者は,極めて限定的な関与しかしていないから,債権者が本件著作物の編集著作者の一人であるとの評価は導き得ない,(サ) 債権者の関与していない部分は,債権者の関与した箇所と分離して利用することができるから,同項12号の共同著作物の要件(分離利用不可能性の要件)を満たさないなどと主張する。
 しかしながら,上記(ア)の点については,本件著作物において,執筆者の執筆する解説が本件著作物の素材をなしていることは前記ウで説示したとおりであるところ,本件著作物においてそのような解説を執筆する者を,いずれの判例を割り当てるかとは独立に選定することは可能であり,その場合,執筆者を推挙した段階で,「当該執筆者がいずれかの判例について執筆する解説」が観念されるから,これが素材の選択におよそ当たらないということはできない。また,いずれにせよ,判例と執筆者の組合せが特定されていなかったからといって,本件著作物における「執筆者の執筆する解説」という素材の選択に関して債権者が寄与したことが否定されるものではない。
 上記(イ)の点については,本件著作物における解説の執筆者として,学者を選ぶか実務家を選ぶか,実務家にしても裁判官にするか弁護士にするかについて,選択の幅は大きく,裁判官や裁判官OBについても知財高裁・地裁知財部経験者の人数は決して少なくないこと,現に第4版に関するそれまでの執筆者の案(本件原案のほか,A教授が列挙した候補者の案なども含む。)では当該3名が含まれていなかったこと(前記1(4)ウないしカ),第3版や本件雑誌にもa判事とb弁護士は入っていないこと(別紙「著作権判例百選判例変遷表」,甲2の3),B教授は,当初,b弁護士を執筆者として追加することに消極の意見を表明していたこと(前記1(4)ク)などに照らすと,当該3名について,誰が選択しても同じ人選になるようなものとはいえず,「ありふれた」人選などということもできない。
 上記(ウ)の点については,ここでの執筆者3名というのは,本件著作物の執筆者となった113名の中の一部であるところ,前記ウの判断は,当該3名を選択したのみで直ちに創作的な表現として独立の編集著作権が生じるとするものではなく,あくまでも本件著作物全体の表現(素材の選択及び配列)について創作性が認められる場合に,これを構成する一部の創作への関与(換言すれば,債権者が関与した部分が上記創作性を有する表現を形成する一部をなしているか)を問題とするものであるし,また,債権者の当該行為時点について見ても,執筆者110名から1名を削除し3名を加えて112名とする場合の当該3名の選択が問題となっているのである。さらに,前記ウの判断は,必ずしも同①の行為のみで編集著作者となり得ると判断しているわけではなく,同①ないし③を総合して編集著作者となり得ると判断しているのであって,債権者が,同③の行為をしているほかに,自ら同①の行為もしていることを,全体として評価すべきところである。
 上記(エ)の点については,前記ウ②の事情は,同③の債権者の行為の前提となるものであるから,同①ないし③があいまって全体として債権者の編集著作者性を基礎付ける事情になるということができる。
 上記(オ)の点については,本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる事案においては,編集著作物の完成に向けられた表現(素材の選択・配列)の創作に係る複数の者の一連の行為(一瞬の物理的な行為のみではない。)を全体として観察し,そのような一連の編集過程への実質的な関与の有無やその位置付け等を総合的に検討して,一定の規範的な評価をすることは,避けられないものと解される。そして,それ自体としては同じように見える行為についても,どのような状況(コンテクスト)において,どのような立場(一貫して編集の主体とされ,内容について決定権や責任を有する者としての行為なのか,アドバイスを求められた外部の第三者としての行為なのか,事務的な補助者としての行為なのか等々)でそれを行ったのかということにより,その行為の社会的な意味合いや位置付けは異なり得るのであって,そのことが事実認定及び法的評価にも影響するのは当然というべきである。上記のような意味での行為者の立場を全く捨象して単純に裸の作為(「物理的な」創作的表現表出行為)のみを取り出すことは,実態にそぐわない編集著作者の認定をすることにつながりかねず,相当ではない。既に認定,説示したところからすれば,本件著作物の編集過程において,債権者が,素材の選択及び配列に関する実質的な権限を有しそれに基づき実質的な関与をしたことは明らかであって,単に名義を貸しただけとか,単に名目的な「肩書」のみを有して形だけ関わったといったケースとは明らかに異なる。なお,編集著作物の素材の選択・配列の確定に関し行為者がどのような権限を有していたかという点も,編集著作者の認定に当たって一つの事情となり得るものであって,これを考慮すること(もとよりこれを「要件」とするものではない。)が許されないということはない。
 上記(カ)ないし(ク)の点については,当該編集著作物の編集過程において,当該者自身が当該創作的表現を「物理的にこの世に現出させる」独自の提案作成行為をしなかった場合においても,当初から当該者を含めた複数の者を編者として当該編集著作物を創作するとの共同の意思の下に共同作業をしている他の者が先行して「物理的にこの世に現出させる」提案をした部分について,当該者が,それを修正することもできたのに検討の上修正せずに,当該部分をそのとおり採用する決定に加わったという行為は,創作への関与として一概に無視することはできない。前記1(4)で認定した事実経過に照らすと,債権者は,本件著作物の編集過程に客観的・外形的に関与しているのみならず,素材の選択及び配列について実質的な中身を思考しこれに基づき上記行為をしているとみられるものであって,前記ウ③の債権者の行為は,著作物の形成ないし創作性の形成への「客観的な事実行為としての実質的な関与」に当たるということができる。本件著作物の「創作」については,本件著作物の完成に向けた一連の編集過程が開始される前には「それまで表現されたものとして存在しなかったもの」を,同編集過程が完了し本件著作物が完成した時点で「初めてつくり出す行為」であり,その「創作」の主体が債権者を含めた複数の者となるとみられるのであって,これが著作権法2条1項2号,1号の文理に反するということにはならない。また,既に認定,説示したところに従って,債権者の同③の行為を債権者が本件著作物の編集著作者の一人であることの根拠としたとしても,著作物が創作され公表されるまでの間に関与する多数の者にいたずらに著作者の外延が拡大することにはならない(単に名前を貸して形式的に権威付けをしただけの者や,債務者が例に挙げる「学術論文の査読者」等,もともと創作する側の主体とは異なる立場から関与したり,表現内容の形成・変更の直接の決定権を有していない者などは,共同著作者の一人とは認められない。)。「認定」ということの性質上,個々の事案に合致した認定をして「共同編集著作者」の範囲を適切に画するほかはないし,かえって,常に「最も早く物理的に表出した者が誰か」のみに着目するということでは,本件のような事案で実態にそぐわない結論を導いてしまいかねない。
 上記(ケ)の点については,智恵子抄事件最高裁判決は,当該個別事案における認定を示した事例判例であって,本件における債権者のような者を編集著作者と認めてはならないとの判断を何ら含意しているものではないから,前記ウ③に係る判断が同最高裁判決に「反する」ということはない。
 上記(コ)の点については,前記ウ①の行為と,同②を前提とした同③の行為を総合した場合に,債権者の関与が「極めて限定的」で編集著作者の一人との評価を導き得ないものであるということはできない。
 上記(サ)の点については,前記ウ③の債権者の行為は,本件著作物全体に係っているし,同①の債権者による素材の選択も,前示のとおり,他の素材の選択及び組合せとあいまって全体の編集著作物を構成しているものであるから,債権者の関与部分のみを分離して個別に利用することはできない。本件著作物は,著作権法2条1項12号の「二人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」に当たるというべきである。
 以上によると,債務者の上記各主張によって,債権者が本件著作物の編集著作者であるとの推定を覆すことはできない。


 長いですが,重要ですので。

 要するに,俎上の事実自体は原決定ともそんなに変わり無いわけです。まあそりゃ出し惜しみなんぞしませんから,当たり前ですがね。

 そうすると,何が違うかというと,そういう現れた事実に対する裁判所の評価です。

 保全異議の嶋末さんの合議体では,そうだよね~そのくらいやってりゃこりゃ編者でいいですわなあっていうのに対し,保全抗告の鶴岡さんの合議体では,え,その程度,そんなことしかやっていないの!それは追随というかスルーというか流れに沿うというか,そんな感じだよね,ガツンと言ったりとか,オリジナルのものをドバンと通すとか,そんなことしていないよね,だよね~♪という違いです。

 いやあ本当裁判所の評価というか裁判官の胸先三寸で決まってしまうこの感じ,弁護士ならば毎回毎回,自分の主張と裁判官の評価との相克を感じているのではないでしょうか(私もそうですけどね。)。
 司法の世界にも,早い所,人の支配を脱して,AIの導入をして欲しいもんですなあ。

 さて,さて,これによって著作権判例百選第5版は,来月12月13日に無事刊行できるようになりました(結局D教授って誰なんだろうっと。)。次の,第6版には今回の事件は載るのでしょうかねえ。ああ,大学の先生方の本件に対する評釈が早い所出ませんかにゃ~。

 ところで,特許の方の判例百選も著作権と同様の編者です(第4版がね。)。
 次回の第5版,今回と同様の面白い経過を辿るのでしょうか。さすがにそれは無いかな。要注目ですな(因みに,私は,大学の先生方に嫌われているらしいですから,執筆者に選ばれることはマジで無いと思います。何故って?そりゃ私が本当の事を言い過ぎるからですよね。つまらん本や論文をつまらんと言っちゃうもんでね~。ムハハハ。)。

5 追伸
 変な判決(本当は判決じゃないけどね。)の紹介はいいとして,先週の金曜のセミナーの件です。

 おかげ様で,無事終わりました。出席者の皆様お疲れ様でした。私も4時間喋りっぱなしでかなり疲れましたが,聞いているだけって結構疲れますからね。

 業者主催のセミナーでしたので,セミナー終わりでのアンケートも見せてもらいました。
 ほんで,そんなに悪い評価じゃなかったですね。むしろ良い方かなあって所です。

 これまでのセミナーは特許の基本というか,入門編みたいなものばかりで,そうじゃない応用ばかりをやったのは,実は,今回が初めてでした。

  なので,アンケートがそこそこ良かったので,一安心です。そんなに低い額の料金ではなかったので,払った分くらいの元が取れたのでしたら本当私も良かったなあと思うのですが,どうなのでしょうねえ。

 そのうちにセミナーもやるかもしれませんので,興味を持った方はまたそのときにでも。ただ,来年にかけては宿題があるので,それが先ですねえ。
1 本件は,幼児用箸を製造販売する控訴人(1審原告)が,同種製品を製造販売する被控訴人(1審被告)に対し,被控訴人による別紙被控訴人商品目録記載1ないし20の各幼児用箸(被告各商品)の製造販売は,控訴人が有する原判決別紙原告著作物目録1記載の図画(原告図画)及び同別紙原告著作物目録2記載1ないし19の各幼児用箸(原告各製品)に係る各著作権を侵害すると主張して,①著作権法112条1項・2項に基づき,被告各商品の製造販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,②平成25年1月から平成27年9月28日(本件訴え提起日)までの間における前記各著作権の侵害を内容とする不法行為に基づく損害賠償請求として,2400万円のうち100万円及びこれに対する不法行為の後の日である同年11月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 一審の東京地裁(民事29部で嶋末さんの合議体ですね。平成27年(ワ)第27220号)では,原告図画及び原告各製品のいずれについても著作権(複製権及び翻案権)侵害を認めず,控訴人の請求をいずれも棄却しました。

 そして,控訴審の知財高裁も,「原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。」として,控訴棄却(請求棄却)したわけです。

 ま,今日の判決も,後継ブログ向きではなくどっちかというと面白の方の上,ちょっとマジで,良かった良かった~ということもあるため,ここでの紹介にしました。

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,著作権侵害で,幼児用箸のような工業製品の著作権いかんというよくあるパターンの話です。

 これが近時話題になっているのは,例のTRIPP-TRAPP事件控訴審判決のためです。このブログでも紹介しました。
 要するに,工業製品と言えども,純粋美術と同視できるほどとかいう高いハードルを要求せずに著作権法でも保護しうるということを判示したからです。

 もう色んな所で,ヒエ~,ドへー,ジャバーみたいな感じになりました。

 まああまり自分の意見じゃない他人の意見を言うのはアレですが,直接聞いた範囲でも,元知財高裁の部長の皆様方の中でこのTRIPP-TRAPP事件の控訴審判決に賛成していた方は皆無ですね。
 勿論私も大反対(後述のとおり)~。

 そして,その後,地裁レベルでは,大阪地裁のピクトグラム事件(平成25年(ワ)1074号。何故か最高裁のサイトから姿を消しました。)が,ある程度従前のとおり,「美的鑑賞となり得る美的特性を備えている場合」と,そこそこ高いハードルだったので,皆一安心という状況でした。
 
 とは言え,これは地裁レベルです。なので,知財高裁で,工業製品の著作権が問題になる事例での判示が出ないとそりゃ安心できませんわな。

 で,今回漸く知財高裁で,工業製品の著作権が問題になった事例の判決が出たわけです。

 事例自体はいいですよね。特に私の本を読んだ方には。

3 判示
「ア 控訴人は,工業的に大量生産され,実用に供されるものであるからといって,「美的」という観点からの高い創作性の判断基準を設定することは相当でなく,「美術工芸品」に該当しない応用美術であっても,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を満たすものについては,「美術の著作物」としてこれを保護すべきである(意匠法等の他の法律によって保護されることを根拠として,実用に供される機能的な工業製品ないしそのデザインは,その実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていない限り,著作権法が保護を予定している対象ではないとするのは誤りである)とした上で,原告各製品は,①キャラクターが表現された円形部材により最上部で結合された連結箸である点,②1本の箸に人差し指と中指を入れる2つのリングを有し,かつ,他方の箸に親指を入れる1つのリングを有して,合計3つのリングが設けられている点において,他社製品(甲16~26)に比べて特徴的な形態を有しており,そこには作者の個性が発揮されていて創作性が認められるから,「美術の著作物」として保護されるべきものである,と主張する。
(ア) 第一に,実用品であっても美術の著作物としての保護を求める以上,美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞の対象となり得るような特性を備えていることが必要である(これは,美術の著作物としての創作性を認める上で最低限の要件というべきである)。したがって,控訴人の主張が,単に他社製品と比較して特徴的な形態さえ備わっていれば良い(およそ美的特性の有無を考慮する必要がない)とするものであれば,その前提において誤りがある。
・・・
(エ) 以上に基づいて検討するに,まず,箸を連結すること自体はアイデアであって表現ではない(なお,連結部分にキャラクターを表現することも,それ自体はアイデアであって,著作権法上保護すべき表現には当たらない。)し,その具体的な連結の態様を見ても,原告各製品が他社製品(甲16~26)と比較して特徴的であるとまではいえず,まして美的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされているとは認め難い。よって,前記①の点に美術の著作物としての創作性を認めることはできない。
 次に,箸を持つ指やその位置が決まっている以上,これを固定しようと考えれば,固定部材を置く位置は自ずと決まるものであるし,人差し指,中指,親指の3指を固定することや固定部材として指挿入用のリングを設けることも,例えば,原告各製品が製造販売されるより前に刊行された乙5,7,8の各公報においても類似の構成が図示されている(すなわち,乙5及び乙7には,一対の箸のうち1本が人差し指と中指を入れる2つのリングを有し,他方の1本が親指と薬指を入れる2つのリングを有するものが図示されている。乙8には,一対の箸のうち1本が人差し指と中指を入れる2つのリングを有し,他方の1本が薬指を入れる1つのリングを有するものが図示されている。)ように,特段目新しいことではない。原告各製品も通常指を置く位置によくあるリングを設けたにすぎず,その配置や角度等に実用的観点からの工夫があったとしても,美的鑑賞の対象となり得るような何らかの創作的工夫がなされているとは認め難い。よって,前記②の点についても,美術の著作物としての創作性を認めることはできない。
(オ) 以上のとおり,控訴人が主張する前記①②の点は,いずれも実用的観点から選択された構成ないし表現にすぎず,総合的に見ても何ら美的鑑賞の対象となり得るような特性を備えるものではない。
 よって,前記①②の点を理由に,原告各製品について美術の著作物としての著作物性を認めることはできないというべきである。」

4 検討
 どうですか~?例のTRIPP-TRAPP事件控訴審判決に比べれば,かなり従来の判決寄りだとは思います。というか,ピクトグラム事件の系列かなあという感じです。

 なので,工業製品だからと言って凄い高いハードルを課すというのではなく,今後は,「美的鑑賞の対象となり得る特性を備えているか」どうかが,著作権法で保護されるかどうかの決め手になりそうです。

 とは言え,考え方としては,例のTRIPP-TRAPP事件控訴審判決に比べればずっと妥当だと思えますし,少なくとも知財高裁3部は清水さんと同様には考えないと分かって良かったと思います。

 ところで,私の良かった良かったという部分ですが,私の著作は,この事件ではないのですが,特許の方の事件を参考にしたものです。ですので,ケーススタディ等に幼児用箸が出て来るのですね。
 ということはですよ,今回の事件で著作物性が肯定されるようなら,私の著作も著作権侵害の虞が出て来るわけですよ~。いやあ,危ねえ,危ねえ。
 なので,良かった良かったって所なのですね。

5 追伸
 本日の東京は天気がよいものの,風は冷たいものでした。上着を着て無かった私にはかなり寒かったです。
 

  これはいつもの散歩の際ですね。品川駅の向こうの京浜運河です。
 ちょっと前は,コイキングなんか集めてもしょうがないなあと思ったのですが,ギャラドスに進化しますからね。ゲットしない手はありません。

 さて,目黒川沿いもいいのですが,この辺もまたおつなものです。目黒川だと若干ドブ臭いときもありますが,ここまで来るとほぼ海ですので,ドブ臭さはなくなります。

 あと,隅田川沿いもそうですが,水辺ぎりぎりまでビルが来ているっていうのもいいですね。堤防と河川敷のある川もそれなりに良いものであるのですが,そんなのうちの田舎でも見れます。でもこういう河川敷も堤防もないウオータフロントって都会って感じがして,かなり好きですね。

 東京の好きなところの一つは,山がほぼ見えないということがあります。うちの田舎は当然ですが,大分市に行っても山が見えます。ところが東京は普段暮らしていて山は全く見えません。ああ,都会だなあってしみじみ思いますね。

 ところで,昨日サーフィンに行ってきました。久々でした。
 一昨日行った友人によるともう凄く波が厳しくて大変だったらしいです。昨日はそこまでは無かったのですが,セットでコシハラ程度だったので,まあちょっとデカいときは沖に出るとき若干キツさはありました(台風のスエルですかね。)。しかも人が多め。何かわかりませんが,夏よりも混んでるんじゃないかと思いますね。最近またサーフィンブームか何かなんですかねえ。

 そんな中,私は果敢に攻めましたね。頑張って沖に行って,セットの大きな波を待って,波争いもやり,ボトムに下りて,ちょっと上に行くくらいまでは出来ました。

 海の水はまだまだ温かいです。でも,風が冷たいですね~。長袖半ズボンの所謂ロングスプリングのウェットだとちょうどよいかなあという所です。
 冬はサーフィンしないヘタレサーファーの私。サーフィンできる時ももう秒読みですなあ。
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