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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,意匠に係る物品を包装用箱とする意匠登録第1440898号の意匠権(本件意匠権)を有する原告が,被告に対し,被告による別紙1物件目録記載の各商品(被告商品)の生産,譲渡,引渡し,譲渡の申出(販売等)が,本件意匠権の侵害を構成すると主張して,意匠法37条1項に基づき,被告商品の販売等の差止め,同条2項に基づき,被告商品及びこれに使用した各包装用箱の廃棄,同法41条に基づき,信用回復の措置として謝罪広告の掲載,並びに,同法39条3項に基づき,意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償金300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年6月11日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める意匠権侵害訴訟の事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(嶋末さんの合議体ですね。)は,原告の請求を全部棄却しました。要するに,似ていないよ~♪ということです。

 おっと~久々の意匠の事件です。
 受験生時代は意匠大得意だったのですけどね~(ちょうど,部分意匠制度とか導入され,大改正のあった年から受験を始めたので,ベテラン受験生と意匠は差が無かったのでしょう。代々木塾の答練で,名前が載ったのを思い出します。)。

 だけど~,弁理士になってからも,弁護士になってからも,あんまり使わないですね。本当,3年に一遍くらい事件が来るか来ないかくらいのものですので。
 出願数も低いですよね。日経の記事がこちらです。「出願ジリ貧変わるか」ですもんね。ひでえ書きよう~(あんたに言われたくないってか。)♪

 意匠権自体,同一意匠だけでなく類似の意匠にも権利が及びます(意匠法23条)。しかも,依拠とか故意過失とか要りません。なので,結構強い権利なのです,本当はね。

 だけど,出願しないといけないので,商品サイクルの短い業界には合わないよねえ。
 また,類似の意匠の範囲が実は狭かったりするので,結局デッドコピーしか捕捉できねえじゃん,だったら不競法の形態模倣でいいじゃん,不競法だったら金(出願費用)いらねえじゃん,しかも最近工業製品のデザインでも著作権でいいっていうようわからん判決出たじゃん,てなことで使い勝手がイマイチのようです。

 兎も角,今回の意匠権と被告の商品は,こちらです。
 
 上が,原告の意匠で,下が被告の商品のデザインです。

 どうですか?似てますかね。

2 問題点
 ということで,論点は意匠の類否です。
 まずは,条文から,23条から行ってみましょう。
 
(意匠権の効力)
第二十三条  意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
(登録意匠の範囲等)
第二十四条  登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。
 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。」

 ポイントは,まず,上でも述べましたが,意匠権の効力は,類似する意匠まで及びます。
 次に,24条からすると,その権利範囲は,「願書の記載及び願書に添附した図面に記載され・・・た意匠」に基づいた範囲となります。
 この図面が,上記の原告の意匠です。

 さらに,重要な点です。近時の改正で,24条2項が加わりました。類否基準は,需要者目線で行うってことですね。
 これ重要です。つまり,創作者の目線じゃないのです。

 言ってみれば,特許の進歩性の判断を当業者ではなく,消費者にするようなもんです。こうすると,特許の進歩性の場合は,ちょっとの工夫でも進歩性ありってことで,進歩性のハードルは低くなることになります。

 他方,類否の判断を創作者ではなく,需要者目線にしたらどうなるのでしょう。
 これは一概には言えません。通常,創作者は厳しい目で見ます。あれも違うこれも違うと言い出しかねません。類否判断も厳しく,よっぽど似ていないと権利範囲内とならないでしょう。
 他方,需要者は,素人ですので,それほど厳しくなく,まあ大体似ていれば権利範囲かなあって感じでしょうか。
 とは言え,どこを中心として見るのか,要するに要部はどこかという視点が加わるので,創作者と需要者で,ここがこう違うとは言い切れないところはあるでしょうね。
 でも,大雑把に言えば,上記のような傾向はあると思います。

 と書いたものの,意匠って難しいのですよね。商標は,類否判断が結構固まっています。審査基準にたくさん載っております。判決,審決の蓄積もたくさんあります。
 ところが,意匠の場合,登録の要件として,類否判断が必要なのですが(意匠法3条1項3号),具体例が審査基準にあんまり載っておらず,ようわかりません。

 まあ,パラメータが多すぎて,なかなか網羅することができないのでしょうね。いやはや。

3 判旨
「1 部分意匠に関する類否判断の留意点について
本件意匠は,意匠に係る物品を包装用箱とする部分意匠であることから,その類否判断の留意点について,まず,検討する。
意匠とは,物品(物品の部分を含む。)の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」ということがある。)であって,視覚を通じて美感を起こさせるもの(意匠法2条1項)であり,一定の機能及び用途を有する「物品」を離れての意匠はあり得ないところ,「物品の部分」の形状等の外観に関する部分意匠においても同様であると解されるから,部分意匠においては,部分意匠に係る物品とともに,物品の有する機能及び用途との関係において,意匠登録を受けた部分がどのような機能及び用途を有するものであるかが,その類否判断の際には確定される必要がある。そして,部分意匠においては,物品全体の形状等に係る意匠と同様,意匠登録出願の願書には,原則として,意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付する必要があり(意匠法6条1項柱書),願書に添付すべき図面は,意匠法施行規則の様式第6により作成しなければならず(同規則3条),同様式第6において,物品の部分について意匠登録を受けようとする場合は,一組の図面において,意匠に係る物品のうち,「意匠登録を受けようとする部分」を実線で描き,「その他の部分」を破線で描く等により意匠登録を受けようとする部分を特定し,かつ,その特定する方法を願書の「意匠の説明」の欄に記載すること(備考11)などが定められているから,部分意匠として意匠登録を受けた部分が,物品全体の形態との関係において,どこに位置し,どのような大きさを有し,物品全体に対しどのような割合を占める大きさであるか(以下,これらの位置,大きさ,範囲を単に「位置等」ともいう。)は,破線によって具体的に示された形状等を参酌して定めるほかはない。すなわち,部分意匠は,物品の部分であり,意匠登録を受けた部分だけで完結しないから,破線によって示された形状等は,それ自体は意匠を構成するものではないとしても,意匠登録を受けた部分がどのような用途及び機能を有するといえるものであるかを定めるとともに,その位置等を事実上画する機能を有するものであるというべきで,意匠登録を受けた部分の機能及び用途を確定するに当たっては,破線によって具体的に示された形状等を参酌して定めるほかはない。
もっとも,部分意匠制度は,破線で示された物品全体の形態について,同一又は類似の物品の意匠と異なるところがあっても,部分意匠に係る部分の意匠と同一又は類似の場合に,登録を受けた部分意匠を保護しようとするものであることに照らせば,部分意匠の類否判断において,意匠登録に係る部分とそれに相当する部分の位置等の差異については,上記部分意匠制度の趣旨を没却することがないようにしなければならず,破線部の形状等や部分意匠の内容等に照らし,通常考え得る範囲での位置等の変更など,予定されていると解釈し得る位置等の差異は,部分意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない(知財高裁平成18年(行ケ)第10317号平成19年1月31日判決参照)。

2 争点(1)(本件意匠と被告意匠の類否)について
(1) 本件意匠の構成態様
前記前提事実及び証拠(甲2,乙9)によれば,本件意匠は,別添意匠公報の【図面】の実線で示された部分意匠であること,同公報の【意匠に係る物品の説明】に「4面で形成される三角錐形状を基本形とした構造体の頂点と底面を形成する点とを2本の折れ曲がった線で結ぶことにより,新たにアクセントパネルとしての面が生まれ,多面体としての新しい見え方を可能にしている包装用箱である。」との記載があること,本件意匠の構成態様は,概ね,以下のとおりであることが認められる。
A 組立時において,三角形4面で形成される略三角錐形状を基本形状とし,
B 組立時の正面図において,天頂に位置する頂点から底面を形成する点に至る3本の稜線のうちの1本の稜線に,
C 当該稜線の縦方向中央を垂直に横切る谷折り線を底辺とし,天頂に位置する点を頂点とする二等辺三角形と,上記谷折り線を底辺とし,底面を形成する点を頂点とする二等辺三角形の二つの二等辺三角形を,底辺部分で上下に接続させて略菱形状の面(アクセントパネル)を形成し,
D アクセントパネルの中央部分は,三角錐形状の面よりも凹状にへこませて形成され,
E アクセントパネルの縦の長さと中央部分(上記Cの二つの二等辺三角形の底辺に当たる部分)の幅の比は,約8対1である。
(2) 本件意匠の要部
ア 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に基づいて行うものである(意匠法24条2項)。そのため,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意を惹きつける部分を要部と把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体としての美観を共通にするか否かを判断すべきであり,これは部分意匠においても異なるものではない。
 本件意匠に係る物品は,包装用箱であるから,何らかの物品を包装するための箱として購入する事業者や,箱の中に収納された物を購入する一般消費者を,意匠の類否判断における「需要者」と解すべきである。
イ また,本件意匠に係る物品である包装用箱は,何らかの品物を箱の中に収納することにより,当該品物を持ち運ぶ際に品物の形状を損なうことなどを防いだり,複数の品物をまとめたり,品物を贈答する際の外観上の装飾等の使途及び機能を有するものと解されるところ,本件意匠に相当する部分には,略三角錐形状の単一な印象から動的な美観を生じさせる多面体としての外観上の装飾(アクセント)としての機能を有するものと認められ,ほかに特別な使途及び機能を有するものではないものと認められる。
 そして,三角形4面で形成される略三角錐形状をした包装用箱の意匠それ自体は,少なくとも本件意匠登録の出願前に日本国内において公然知られたものであること(乙1,弁論の全趣旨)に照らすと,本件意匠の要部は,組立時において天頂に位置する頂点から底面を形成する点に至る3本の稜線のうち1本の稜線に(構成態様B),当該稜線の縦方向中央を垂直に横切る谷折り線を底辺とし,天頂に位置する点を頂点とする二等辺三角形と,上記谷折り線を底辺とし,底面を形成する点を頂点とする二等辺三角形の二つの二等辺三角形を,底辺部分で上下に接続させて略菱形状の面(アクセントパネル)を形成したこと(構成態様C),アクセントパネルの中央部分は,三角錐形状の面よりも凹状にへこませて形成されていること(構成態様D),アクセントパネルの縦の長さと中央部分(上記Cの二つの二等辺三角形の底辺に当たる部分)の幅の比は,約8対1であること(構成態様E)であると認めるのが相当である。
(3) 被告意匠の構成態様
 前記前提事実及び証拠(乙8)によれば,被告意匠の構成態様は,概ね,以下のとおりと認められる。
A 組立時において,三角形4面で形成される略三角錐形状を基本形状とし,
B 組立時において,天頂に位置する頂点から底面を形成する点に至る3本の稜線のうちの1本の稜線に,
C 当該稜線の三角錐の天頂に位置する点と底面を形成する点とを,稜線の縦方向中央部分にかけてふくらむように円弧状の線で結び,当該稜線を中心線として円弧状の線が左右対称になった略紡錘形状の面(アクセントパネル)を形成し,
D アクセントパネルの中央部分は,三角錐形状の面よりも凹状にへこませて形成され,
E アクセントパネルの縦の長さと中央部分の幅の比は約4対1である。
F アクセントパネルは,包装用箱の開口部として配置されている。
(4) 類否
ア 共通点
 本件意匠と被告意匠は,組立時において,三角形4面で形成される略三角錐形状を基本形状とし,組立時において,天頂に位置する頂点から底面を形成する点に至る3本の稜線のうちの1本に,その天頂に位置する点から底面を形成する点に至るまでの全体にわたって,アクセントパネルが形成され,アクセントパネルの中央部分は,三角錐形状の面よりも凹状にへこんで形成されている点で共通する。
イ 差異点
 本件意匠におけるアクセントパネルの形状は,稜線の縦方向中央を垂直に横切る谷折り線を底辺とし,天頂に位置する点を頂点とする二等辺三角形と,上記谷折り線を底辺とし,底面を形成する点を頂点とする二等辺三角形の二つの二等辺三角形を,底辺部分で上下に接続させて略菱形状としているのに対し,被告意匠は,稜線の三角錐の天頂に位置する点と底面を形成する点とを,稜線の縦方向中央部分にかけてふくらむように円弧状の線で結び,当該稜線を中心線として円弧状の線が左右対称になった略紡錘形状としており,アクセントパネルの具体的形状が異なっている。
 また,アクセントパネルの縦の長さと中央部分の幅の比は,本件意匠では約8対1,被告意匠では約4対1である点も異なる。
本件意匠においては,物品である包装用箱の開口部は破線部で示され,その開口部が設けられた三角錐形状の面とは別の面にアクセントパネルが配置されているのに対し,被告意匠においては,アクセントパネル自体が包装用箱の開口部として配置されている点が異なる。
ウ 判断
 上記イのとおり,本件意匠と被告意匠とは,本件意匠の要部を構成する(三角錐形状の天頂に位置する点から底面を形成する点に至るまでの全体にわたって形成されている)アクセントパネルの具体的形状において,差異があるところ,直線で構成された略菱形状は,一般的にシャープで固い印象を与えるのに対し,曲線で構成された略紡錘形状は,一般的に丸く,やわらかな印象を与える。また,アクセントパネルの縦の長さと中央部分の幅の比が,本件意匠では約8対1であり,ほっそりと鋭い感じを与えるのに対し,被告意匠では約4対1であり,でっぷりとゆるやかな印象を与える。したがって,本件意匠と被告意匠とは,上記の点において美観を共通にするものとはいえない。
 また,本件意匠は,部分意匠であるため,類否判断に当たっては,当該意匠それ自体のみならず,当該部分の物品全体における位置等についても参酌すべきことは,前記1のとおりであるところ,本件意匠では,アクセントパネルとは別の面に包装用箱の開口部が設けられ,アクセントパネルは開口部としての機能を有していないのに対し,被告意匠では,アクセントパネルが開口部として配置されていることにより,開口部としての機能を有している点においても差異がある。本件意匠に係る物品である包装用箱の機能として,収納された物品を取り出すことは必須であることからすると,開口部の配置は,包装用箱の需要者たる事業者や箱に収納された品物を購入する一般消費者にとってみれば,箱を開口してもアクセントパネルとしての美観に全く影響がないか,箱の開口によりアクセントパネルとしての美観が消失してしまうかは大きな差異であるというべきで,本件意匠と被告意匠とは,この点においても美観を共通にするものとはいえない。
 そして,本件意匠と被告意匠とは,前記イの差異点,とりわけ上述したところにより,看者に対し全体として異なる美観を与えるものであり,前記アの共通点は,差異点が看者に与える美観の差異を凌駕するものとは認められない。
 したがって,被告意匠が本件意匠に類似するとはいえない。」

4 検討
 何か,典型的なパターンが現れているので,ほぼ全文を引用しました。
 弁護士や弁理士のみなさんが,意匠の類否で,意見書などを求められたら,このとおりに書けばいいのではないでしょうか。

 本件意匠の認定(要部,物品も)→被告の意匠の認定→共通点と差異点の抽出→要部を絡めての共通点と差異点の評価→結論

 ま,要するに,似ている所が多くても要部じゃないところ(色んな意匠で共通な所ですね。例えばタイヤの意匠の場合,黒いとか丸いとか溝があるなんて言ってもはあ~そうですね~ってなる部分です。)が似ていてもしょうがないです。
 逆に多くの部分は似ていないんだけど,要部はそっくりそのままなんて言うと類似になってたりします。

 本件ではどうでしょうね。ポイントは,上記の図のとおり,三角すいでの稜線上の凹みの所ですよね。
 本件意匠では,その部分が,二等辺三角形二つで細長い感じです。他方,被告の商品では,ちょっと幅広で,丸みを帯びております。

 そうすると,この要部の違いは大きく,類似してないっていうことになると思いますね。

 ま,非常に典型的で面白い事案だと思います。

5 追伸
 そうそう,今日の午前中健康診断でした。
 この一年の散歩の成果を試されるとき~でした。

 ところが,何故か受付で大渋滞~。何かねえ,今年からカードでの支払いをOKにしたらしく,それで,カードの機械の調子が悪かったりして,にも関わらず,会計の窓口が1つしかなく,手際が悪いったりゃありゃしない。
 やっているのは弁護士国保ですが,委託先は,一般財団法人の日本健康増進財団ですね。
 私はみなさんが思っている以上に性格が悪いので,来年の委託先は別の所にした方がいいんじゃねえのって,弁護士国保に出しておきますかねえ。ムハハハ。

 そんなこんなで血圧も高くなっていると思いきや,何とか去年よりは下がりました。まあしかし,血圧って結構変わりますね。普段からつけておかないと個別の数字に一喜一憂してもしょうがないようです。
 兎も角も,多少は成果があったということです。

 これで今日は日本代表のサッカー見ながらビールもたくさん飲めるぞと(これで元の木阿弥ですかね。)。

6 さらに追伸(160201)
 この判決の控訴審判決が出ております。
 知財高裁平成27年(ネ)第10077号(平成28年1月27日判決

 とは言え,控訴審で特に目新しいことはないと思いますので,意匠の鑑定書を依頼された先生方は,地裁の判決で十分だと思いますよ。

 
 
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1 これは本日の日経の夕刊の1面の記事です。何か日経の1面に知財のことが載るのが久々だし,しかも意匠なんていつ以来の記事だろうということで,取り上げました。

 内容としては,意匠に関するハーグ協定に加盟し,意匠の国際出願&登録制度を利用して,意匠の国際的保護を通じて,企業の国際展開を支援しようというやつです。

 あ,ハーグ協定って言ってもハーグ陸戦条約じゃないですからね。さすがに戦争大好きのネトウヨとされている私もそこまでマニアックじゃありませんから。

 ただ,この日経の記事,私はいつ載るんだろうと,予想していたものでした。
 というのは,昨年末に,特許庁から,これに加盟すんだけどアリバイ作りとしてパブコメでも募集すっか~ということで,意見募集がされているのですね。

 世の中の99%はプロレスだと豪語したのは私ですが,そうすると,パブコメなんて募集するようなものは,すっかり既定路線なわけで,あとは大本営12・26発表として,いつマスコミに載るか問題になるだけですからね。

 そそ,日本のマスコミなんか権力と本当に戦う気なんかサラサラないですもんね。
 これを攻撃しても実害ないなあと思える攻撃しやすい所を叩いているだけですもん。まさに私と同様のヘタレぶり。
 つーことで,最近気になったのは,ミス・インターナショナルの件ですね~。興味の有る方は,ミス・インターナショナルでググれば色んなことが出てきます。
  
 いや,別に私は正義の味方を気取るつもりはなく,特に法律家なもんで,一方当事者の反対尋問を経ないような一方的な陳述なんて,何の意味もないと思っていますよ。
 でもさ~,マスコミっていつもは一方当事者の一方的な陳述の垂れ流しだけですよね(大本営発表もその1つでしょ。)。

 何故今回の件は,いつものように垂れ流さないんでしょ?大手芸能プロダクションも巻き込んだスキャンダルのようだから,世間の耳目を集め,営業的には美味しいはずなのにね。

 いやあそんな肝の座ってない奴らが,特定秘密法がどうのこうのなんてよく言えたもんだと呆れますよ。いやいや大丈夫,大丈夫,あんたらマスコミがいつもやっている出来レースなんて,特定秘密法とは全く無関係ですから,残念!

 おっとまたまた議題から逸れてしまいましたね~,ムフフフ。

2 で,ハーグ協定の内容ですが,基本,商標のマドプロと同じと見ていいようです。つまり,特許で言うPCTより上を行く,登録までOKの制度なわけです。

 ただ,日本の意匠制度は,登録になって初めて意匠が登録広報で公開されるのに,ハーグ協定経由だとそれ以前に公開されてしまうようです。
 これは結構気になります。意匠って,要は見た目ですので,例えばでかい会社のエース商品の意匠が登録前にわかったらどうします?もう真似し放題じゃないですかね。
 例えば,新車なんか,本当ギリギリまでデザインは隠しますもんね。ときどき東名でスクープ写真なんていう,次世代**の公道テストの模様が雑誌に載ることもありますが,デザインをスクープされないように,目隠しのテープとか一杯着けてますもんね。

 また,マドプロとほぼ同じと言っても,ハーグ協定の場合,自己指定ができるのはマドプロと大きく違う所です。マドプロは,自己指定ができないので,例えば日本の出願や登録を基にして,マドプロ経由で外国に出願するのです。他方,ハーグ協定の場合,自己指定ができますので,基となるものがなくてもはなから,だまで,日本と外国に同時に出願できるわけです。そのため,マドプロではちょっと面倒くさいセントラルアタックもないようですね。

 と偉そうなことを書きましたが,私はこの分野の半可通に過ぎませんので,きちんとしたことを知りたい人はもっとちゃんとした人のちゃんとしたものを見た方がよいと思いますよ。

 意匠はハーグ協定のハーモナイゼーション,商標は音などの新タイプのものを登録か,と近時特許以外の産業財産権がホットイシューとなっております。でも,上記のとおり,両方共出来レースもいいところですけどね。あーこりゃこりゃ。

3 ということで,仕事初めですので,午前中は大分に居たのですが,午後から東京に戻り,仕事もちょっとはしております。

 ただ,今日は寒いですね~。西の方から戻ってきた人は皆寒いなあと思ったのではないでしょうか。ここ数年,帰省すると東京よりも暖かい感がしますね。いやあ九州でしょ,と思われるかもしれませんが,九州も北の方は寒いのですよ。日本海側の冷たい風が直接来ますので。ですので,通常は,実家に帰ると寒いなあ,これじゃあ東京がましだ~と思うわけです。

 でも,ここ数年は東京が寒いなあって感じです。ま,兎も角も早く暖かくならないかなあ,はっきり言えば早く夏にならないかなあと思う次第です。
1 首記は,本日の日経紙の記事からです。珍しいですね,意匠の話ですもの。
 しかし,この記事の内容を読むとちょっと誤解しそうなところがあります。というのは,今までだって画面のデザインは保護されていましたから~。意匠法の意匠の定義を見てみましょう。

第二条  この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
2  前項において、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像であつて、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示されるものが含まれるものとする。

 この2項は,近時,平成18年改正法(H19.4.1から施行)で加わったものです。
 これは,「平成18年意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説(発明協会)」によると,「昨今の情報技術の発展に伴い登場してきた画面デザインについては,ある物品に一般に想定される使用目的や機能を実現するために必要不可欠であり,機器の一部を構成するものも数多く創作されているが,現行法のもとでは保護されない場合が生じている」(同書14頁)とあるように,まさに画面デザイン等を保護するために加わったものなのです。

 では何故?再度似たような法改正などをしようとしているのか?(もしかすると法改正ではなく,審査基準のみの改正で対応するのかもしれませんが。)ここがポイントになってくるわけです。

2 意匠って,上記のとおり,物品との結合なのですね。つまり,同じデザインでも物品が違うと意匠は違います。
 同じ車のデザインでも,自動車とおもちゃでは物品が違いますので,意匠は違うということになります。つまり,自動車の意匠の登録だけでは,おもちゃに対して,侵害だ!とは言えないのですね~。
 このように,意匠というのは単なる抽象的なデザインではなく,物品との結びつきの強いものなのです。これは,意匠がそもそも,「物」の外観を保護しようという趣旨に基づくものだからです。他方,物との結びつきがないものについては,そりゃ著作権で保護すればよい,ということになりますね。

 しかしながら,日本ていうのは,何でもそうですが,決めたら決めたとおり何でも杓子定規にやらないと済みませんから,この物品との関連性を強く求めております(上記の条文でもわかりますね。)。

 他方,諸外国の意匠制度は,勿論,物の外観を保護するものなのですが,さほど,物品との関連性を求めておりません。
 例えば,米国は,意匠法という法律はなく,特許法(USC35)の中の171条くらいから,patents for designsということで(通称デザインパテントと呼んでいます。),普通の特許と並列して保護しているのですが,物品(article of manufacture)というのが,そもそもアバウトで,しかも,日本でいう「結合」などという文言もありませんので(design for article of manufacture),物品との関連性はかなり薄いのですね。ですので,アイコン等も従来から保護されております。

 さらに,ヨーロッパの場合は,製品(product)にそもそも無体物まで含まれるということらしいですので,アイコン等が保護されるのは当然ですね。

 ということで,杓子定規の日本が若干他の国と違うということで,最初のポイントに戻るということです。

3 更に,こういう風に法改正,審査基準を変えるというのは,記事にもありますが,国際的な出願制度に加わりたいということがあるようです。

 それが,ヘーグ協定ですね。
 特許には特許協力条約(PCT)があり,商標にはマドリッドプロトコルという,国際的な出願制度があります(国際的な特許制度等と言うわけではありませんからね。何度も言いますが,そんな制度は現在ありませんし,未来永劫無いと思っております。詳しくは,こちらですが,詐欺的投資を持ちかけるときによく使われるので,要注意です。)。

 これらは,多国に出願しようとするときに,非常に便利です。この意匠版がヘーグ協定なわけです。このヘーグ協定,商標のマドリッドプロトコルのようなセントラルアタックすらありませんので,加入すれば,非常に便利な制度です。 
 ただしかし,意匠の場合,上記のとおり,初めの保護対象からして日本と他の国で違いましたので,なかなか便利な制度に加入できなかったわけですね。

 若干脱線気味ですが,これは,物品との関連性を重く見るかという論点とは別に,意匠の制度趣旨の違いも大きいです。つまり,私が弁理士試験受験生のころ,盛んだった,混同説,創作説,等等の争いですね。

 米国は,上記の通り,パテントの一部ですから,創作的な考えに立っています。
 他方,欧州は,商売の一環ということで,商標的な面もあります。つまり,各国によって,特許的な制度やら商標的な制度やらまちまちで,ヨーロッパ中心のヘーグ協定にはなかなか参加が集まっていないというのが現状です。

 さて,我が国の法制度は,創作的だと言われておりますが,上記の改正で加わった意匠法24条2項の規定「登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。」が,需要者基準であることから,完全に創作的な制度ではないのではないかという疑義も生じております。
 というのは,明白に創作的な特許の進歩性の基準が,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」という創作者基準であるのに,意匠法はそうでないからですね。

 まあともかくも,少なくとも保護の対象は統一して,便利な制度に加わりたい,ここが今回のポイントなのだと思いますね。

4 追伸
 特許庁で思い出しましたが,特許庁のHPはリニューアルしたのはよいのですが,私がよく使うfirefoxではかなり変な表示になります。このためだけにいちいちインターネットエクスプローラを立ち上げるのも面倒なので(サファリでも大丈夫なようです。),庁の担当者の方,何とか対応してください。
1 概要
  本件は,意匠に係る物品を「ゴルフボール」とし,原告を意匠権者とする意匠第1300582号について,被告が意匠登録無効審判請求をしたところ,特許庁がこれを認容する審決(公知意匠に類似する無効事由あり)をしたことから,これに不服の原告がその取消しを求めた事案です。

  これに対して,知財高裁(2部)は,原告の請求を棄却しております。

2 問題点等
  意匠というのは,意匠法2条1項に,「この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」とあるとおり,平たく言えば,物のデザインですね。

  ただ重要なことは,定義に「物品」とあるとおり,抽象的なデザインではなく,物品と一体となったデザインを保護するということです。つまり,自動車のデザインの意匠権があるとしても,それと全く同じデザインのおもちゃに対し,権利行使できないということです。自動車とおもちゃは,全く別の物品ですからね。

  また,意匠権は,特許権と同様,審査を経て権利が発生します。したがい,デザイン完成から権利発生まで,結構時間がかかるのです。

  以上のようなことから,意匠権が争いになることは非常に少ないのが現状です。実は,意匠の権利範囲はそう狭くないのですが,まあ仕方ありません。

  したがい,これを取り上げたのは,単純に,珍しいからです。

3 判旨
(1)引用意匠認定の誤り1
「そして,後記のとおり,ディンプルの大きさや配列を適宜調整することによって,384個の六角形のディンプルを,辺を共有するようにして密に配列することが不可能ということもできないから,結局,原告の取消事由1の主張は採用することができない。」

(2)引用意匠認定の誤り2
「そうすると,一部のディンプルの大きさや形状を調整することにより,384個の六角形のディンプルを辺を共有するようにして密に配列することが不可能であるとか,密に配列することができずディンプル同士が離れる箇所が多数生じ最低限の変形や修正では対応できない等とは,必ずしもいうことができない。」

(3)対比の誤り1
「前記イのとおり,引用意匠(引用例の図2)は,実際にゴルフボールに適用して製造する際には,適宜ディンプルの大きさ及び形状を調整する必要があるものの,引用例の図2の記載からは,384個の六角形のディンプルが,隣接するディンプル同士が辺を共有するようにして,ボールの球面全体に密に配設された状況を容易に看取することができ,上記記載自体は明確なものである。」

(4)対比の誤り2
「前記アのとおり,審決が引用意匠のディンプルを六角形のものと認定したことに誤りがあるとはいえないから,上記認定を前提に本件意匠との対比を行った判断に誤りはなく,原告の取消事由4の主張は採用することができない。」

(5)対比の誤り3
「前記イのとおり,審決が引用意匠を384個の六角形のディンプルを辺を共有するようにして密に配列したものであると認定した審決に誤りはなく,上記認定を前提に本件意匠との対比を行った判断に誤りはない。」

4 検討
  本件意匠の特徴は,総数362個のディンプルのうち12個が五角形,のこりが六角形であるという点です。他方,引用意匠は,384個の六角形のディンプルであるというところに特徴があります(この認定自体の争いはありましたが。)。

  しかし,知財高裁は,五角形が目新しいとしても,わずかなので,目立たず,美感への影響はわずかと認定しました。

  特許では,クレームの文言(言葉)の解釈が争いになりますが,意匠では図の解釈が争いになるというわけですね。ですので,意匠の事件を扱うには,美的なセンスが必要です。特許庁の審査官でも,特許→理系タイプ,商標→文系タイプ,となるのですが,意匠→美大生という感じで,他の部署と大きく違います。私もたまに,意匠や形態模倣の事件を扱うこともあるのですが,センスがないせいか,非常に難しく感じますね。
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