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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 今日は雨で梅雨寒の東京です。よう降りますなあ。

 さて,IT系の人々での話題の法律セグメントの事件って,今2つあると思います。

 まず,1つは,リツイートした写真が著作者人格権侵害になった~これから気軽にリツイートできないよ~という話です。

 事案は,この事件(知財高裁平成28年(ネ)第10101号 発信者情報開示請求控訴事件,平成30年4月25日判決)の概要の所を見てもらった方が早いですかね。
 著作権侵害となるようなツイートに対するリツイートでは,ブラウザ等のHTMLやCSSの仕組みで勝手にトリミングされたとしても,著作者人格権の侵害になる!と判断したものです。

 これは知財高裁2部の森部長の所の合議体の判断ですねえ。

 ま,多少問題かなあと思うのですけど,所詮発信者情報開示請求の事件ですから,あまり深刻にならなくても今の段階ならいいのではないかと思います。
 というのは,だって,被告というか被控訴人,やる気ないですもん。原告(控訴人)は権利者ですからやる気満々ですけど,被告はプロバイダー等(今回は日本のツイッター社とアメリカのツイッター社)であり,実際リツイートした人ではなく,はっきり言ってどうでもいい~って所でしょうからね。

 つまり,プロバイダーとしては,発信者情報開示するから,下々の人同士,勝手にやってくれ~って,それが本音です。ムフフフ。

2 そんなことよりも心配なのは,コインハイブ(coinhive)の件です。

 コインハイブというのは,実に面白い,本当素敵な仕組みです。
 インターネットでマネタイズしようとすると,結局今まではアフェリエイトを初めとして広告!しかなかったわけです。

 facebookや上で問題になったツイッター,あとグーグルもそうですね。巨大プラットフォーマー,株価◯倍~,今をときめくIT企業~♪と言われながらも,そのマネタイズの方法は,そこら辺のユーチューバーやブロガーと基本同じなのです。

 ところが,このコインハイブ,所謂仮想通貨のマイニングをやらせることによってマネタイズするという画期的なものです。

 例えば,このブログを見ていると,まあ数秒から数時間くらい,見る場合もあろうと思うのですけど,その間,このブログに仕込まれたスクリプトによって,見ている人のPCのCPUのパワーの一部を仮想通貨のマイニングに駆り出すようになるって代物です。

 なので,見ている時間が長ければ長いほど,見ている人が多ければ多いほど,沢山マイニングされ,ブログ等の主催者にマイニングされた仮想通貨が入ってくるというわけです(勿論,コインハイブの主催者に上がりの一部を取られますけどね。)。

 どうでしょ,結構素晴らしいと思うのですけどね。
 ただし,ダマでやられると,急にCPUのファンが回り出したり,あれ勝手にCPU使用率が急上昇~,場合によってはなんで遅いの~ちゅうことになると思います。

 で,こっからが問題なのですが,今現在,ダマでコインハイブを自分のブログ等に埋め込んだ人が全国的に逮捕等されています。

 家宅捜索を受けたということで,数日前話題になってましたが,今朝のニュースでは逮捕者が出たようです。

 被疑事実は,刑法168条の2付近です。
「(不正指令電磁的記録作成等)
第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。

 ポイントは,1項の1号ですね。「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令」です。

 コインハイブがこれに該当するか,端的な問題点はここです。

 立法の趣旨は,簡単です。コンピュータウイルス対策,ということになります。

 私の持っているコンメンタール(条解刑法第3版,弘文堂)によりますと(ちゃんと刑法のコンメンタールくらい持っているのですよ),
本条の罪は,電子計算機のプログラムに対する社会一般の信頼を保護法益とするものであるから,あるプログラムが使用者の「意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」ものであるか否かが問題となる場合,その「意図」は,そのような信頼を害するものであるか否かという観点から規範的に判断されることになる。すなわち,個別具体的な使用者の実際の認識を基準としてではなく,当該プログラムの機能の内容や機能に関する説明内容,想定される利用方法等を総合的に考慮して,その機能につき一般に認識すべきと考えられるところを基準として,規範的に判断されることとなる。」
とあります。

 つまり,規範的ということですから,アバウトなヤバさでもダメな場合もあるってことですね。しかも個別的ではなく一般的にヤバイかどうかが問題となるようです。

 裁判例だと,どのようなものがあるか,私の検索できるデータベースでちょっと見てみました。

①千葉地裁平成25年(わ)第1111号等
 携帯電話機に記録された電話帳データをアメリカ合衆国フロリダ州内に設置されたサーバコンピュータに送信する指令を与える電磁的記録であるウイルス・プログラム

②京都地裁
平成24年(わ)第133号等 
 アダルト動画を再生しようとした者が使用する電子計算機上に,マウス操作による移動,サイズ変更及び最小化ができず,閉鎖しようとしても数秒後に再表示され,かつ電子計算機を再起動しても再表示される機能を有した,同サイトの有料会員登録が完了した旨及び同サイトの閲覧料金を支払うまでそのウィンドウが消えない旨等を半裸の女性像や卑わいな文言と共に表示するウィンドウを常時表示させる
指令を与えるphpファイル

③東京地裁
平成25年(合わ)第48号等(某有名事件ですね。) 
 他人のパソコンを遠隔操作するためのプログラム

④東京地裁平成26年特(わ)第927号等
 電気通信回線に接続されたパーソナルコンピュータ内で起動すると自動的に電気通信回線を介して被告人使用のパーソナルコンピュータとの通信を開始させるとともにIPアドレス情報等を同パーソナルコンピュータに通知する機能及び同パーソナルコンピュータでの操作によって起動場所であるパーソナルコンピュータ内の電磁的情報を検索して被告人使用のパーソナルコンピュータに送信させる機能等を有するプログラム

 下級審ですけど,裁判にまで至ったのは,典型的コンピュータウィルスのやつばかりです。
 ①は個人情報を吸い上げるやつで,②はエロで脅すってやつで,③は有名,④は迷惑メールでよく付いてくるパターンです。

 他方,こういうのに比べると,今回のやつはCPUのパワーをお借りします~っていうくらいなもので,当罰性はかなり低いかなあと思います。謂わば,協力したくない元気玉~♪って所でしょうか。

 ま,こう協力したくないと書きましたが,協力したくないからって直ちに違法で犯罪にまでなるかというと,そりゃ別問題です。

 CPUのパワーを勝手に使われるというのはよくあります。例えば,今はあんまりなくなりましたが,フラッシュですね。
 法律事務所だって,いきなり要らん動画で始まるサイトなんかいっぱいあります。別に,この事務所のサイトに来たら動画でCPUやメモリを沢山食う,なんて事前告知はありません。あーあスキップするのはどこかなあと探して,スキップすればいいわけです。

 この辺,私もときどき見る高木先生のブログに詳しいのですが,やはりそうだろうなあと思います。あ,私はIT弁護士って言っても,IntikiのITですから,大して技術に詳しいわけではありませんので,ね。

 なので,当罰性は低く,裁判例から考えると,こんなので,検挙すんの!ってことになると思います。

 とは言え,上記のコンメンタールのことを考えると,ちょっとまずいわけです。
 規範的というのは,どういうことかと言いますと,早い話,それは裁判官の胸先三寸で決まる,ということです。当否はともかくも,日本の刑事裁判では起訴されたらほぼ100%有罪ですから,裁判官の胸先三寸がコンメンタール的に判断する可能性は極めて高いと思いますよ。

3 ただねえ,この事件,被害者(潜在的被害者も含めて)が大手企業じゃなく,どうしてこれで警察が動いたのか,不思議だったのですね。

 いや,著作権でも,不競法でも,何でもいいのですが,新しい技術がポイントとなっている場合の刑事事件って,大企業からの告訴だとか被害届だとか,そういうのがないと警察って本当動かないのですね。
 そりゃそうです。そんな難しくて面倒なの,やりたくありませんからね。だけど,大手からのやつだと重い腰も上げるわけです。

 他方,今回,マイニングが進んでも,日本の大手企業がマイニングに進出したのはごく最近の話だし,フィンテックっつって言っても,銀行とかそれ系のコンベンションナルな大企業とはあまりバッティングしないなあと思ったのですね。
 つまり,これをやられて個別の個人等は多少困るだろうけど,そんな大手企業で困る所ってないから,それでどうして警察が動いたんだろう~ってえのがわからなかったわけです。

 ところが,上記高木先生のブログに,その答えまで書いてありました~。ああ,セキュリティソフト会社ね,確かにそうだわ~。
 コインハイブを検出しても違法じゃないってことになったら,そんな検出機能別に要らないです~ってなるのが人情ですもんね。

 ともかくも,一般的な「意図」には反しない~という所が攻めどころですかねえ。ここを何とか攻めれば,もともと当罰性は低いので,起訴されても無罪方面まで持っていくことは可能だと思います。
 しかし,油断は禁物です。上記コンメンタール的に,検察の起訴を信頼→一般的にもダメなやつでしょこれ→有罪ってあり得ます。
 無責任な通りすがりとしては,波高し,各人奮励努力せよ,という所でしょうかね。
 
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1 概要
 本件は, 一審原告(国立大学法人旭川医大),一審被告(NTT東日本)及びNTTファイナンス株式会社は,一審被告が一審原告のために病院情報管理システム(本件システム)を構築し,NTTファイナンスをその所有者として一審原告に本件システムをリースすることを目的とする契約を締結したが,同契約の目的が達せられなかったことについて,一審原告及び一審被告が各請求をする事件が併合審理されている事案です。

 要するに,よくあるベンダーとユーザー間のシステム紛争です(NTTファイナンスが登場しておりますが,これは上記のとおり,契約の形態がリースなので,現れているだけです。通常のシステム紛争と考えて大丈夫です。)。
 ただし,上記のとおり,登場人物たちがメジャーな上に,訴額もデカイので,私のような野次馬も大集合という所です。

 で,一審では,本件システムを開発するための一連のプロジェクト(本件プロジェクト)が頓挫したことについては,一審原告に2割,一審被告に8割の責任があるとして,一審原告の請求については,3億6508万5426円及びこれに対する平成23年4月2日(第1事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,一審被告の請求(主位的請求)については,3億8386万1689円及びこれに対する平成22年9月3日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれの請求を認容し,その余の一審原告及び一審被告の請求をいずれも棄却したようです。

 要するに,痛み分けってわけです。双方とも責任があるけど,ベンダー側のNTT東日本の方が責任が重大!というわけです。

 さて,本件ですが,札幌高裁の第3民事部(竹内さんの合議体ですね。)は,一審とは異なり,一審原告の請求を棄却して, 「一審原告は,一審被告に対し,金14億1501万9523円及びこれに対する平成22年9月3日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 」という,一審原告の方に多くの責任があると認定したわけです。

 旭川医大としては,違うベンダーにやってもらったお金も払い,今度はNTT東日本にも払い~ということで踏んだり蹴ったりというわけです(一審の報道はこちらから。)。

 昨日に続き,特許でも知財でもありませんが,まあ広い意味で両方ともITに関係するものってことでしょうか。

2 問題点
 問題点としては,システム紛争の典型です。
 仕事は完成しているか?→完成しているなら瑕疵はどうだ?
 という手順で考えるってやつです。

 システム紛争って結局請負の話に過ぎませんので,大工さんが家の建築を請負った場合と基本は変わりません。家が完成したら,お金がもらえるし,完成していなかったら,お金はもらえない,ということです(民法633条)。

 そりゃ細かい色んな点はありますよ,システム紛争特有のね。でも,専門家は色々なことを言って,ほら素人さんには無理でしょ,うちに頼まないとダメでしょ,ってなりますが,基本を押さえておけば,結構何とかなります。

 その基本が,仕事の完成があるかないかという,メルクマールです。

 この点について,一審(旭川地裁平成23年(ワ)第99号,平成23年(ワ)第148号,平成28年3月29日判決)では,こういう風に判断しました(私の使っているデータベースでは検索できましたが,裁判所のサイトには蓄えられていないようです。)。

(1) 平成22年1月3日の時点における完成の有無について    
ア 前記1(8)キのとおり,被告は,平成21年12月28日には,試験の実施をしていない一部項目を除いて,総合試験に合格したとする総合試験成績書を原告に提出しているところ,被告は,同成績書等を根拠に,平成22年1月3日までには本件システムは完成していたと主張し,L1PLもこれに沿う陳述をする(乙524〔40ないし43〕)。    
イ しかしながら,前記前提事実(2)キ,前記1(4)ソ(イ)に照らせば,本件システムは,本件要求仕様書等において原告が要求し,被告が本件技術仕様書等において提供することを約束した機能等が実現され,稼働する状態が達成されて初めて完成とみなされる。      
 ところが,前記1(8)キによれば,本件システムについては,平成21年11月には総合試験を開始していたと認められるところ,前記1(7)サ,スのとおり,同月14日に実施されたプレリハーサルにおいては複数の不具合が発生し,同月28日の第1回外来リハーサルにおいても,やはり複数の不具合が発生していた(被告は,不具合の原因は,端末の設置場所の変更や設定の誤り等にすぎないというが,同リハーサルで確認された不具合がおよそ本件システムの完成度と無関係であると認めるに足りる証拠はない。)。また,前記1(8)ウ,エ(イ)のとおり,被告は,同年12月9日,不具合の存在等を理由に平成22年1月の稼働開始を延期したい旨申し入れ,その結果,平成21年12月13日に予定されていた第2回外来リハーサルも中止される事態となっている。しかも,前記1(8)オのとおり,同日実施された被告のスルーテストでは,複数の不具合が発生していたところ,前記1(8)カ(ウ)のとおり,その原因として,L1PLは,十分なテストができていなかったことを認める発言をしている。      
 加えて,前記1(9)エのとおり,平成22年1月18日の第16回専門部会では,原告から,被告の作成した資料に記載されていない不具合があることが指摘され,被告が試験項目数やマスタ設定数の設定に不備があったこと,開発が完了したとの判定に不適切なものがあったこと,試験の実施方法に問題があったことを認め,謝罪し,今後は修正や変更後のテストを徹底すると述べるに至っている。      
 そして,前記1(9)オのとおり,原告が平成22年1月から同年2月にかけて本件プロジェクトを継続するか否かを判定するため本件システムの完成度を評価したところ,その結果は,最終的には6WGにおいて「否」とされ,総合評価も「否」とされている
 加えて,前記1(9)クのとおり,平成22年3月16日に被告が原告に提出した「プロジェクト再開に向けてのご提案」と題する書面(甲15)においては,平成22年3月に不具合改修・開発を行うこと,同年5月上旬までに自主的品質点検を行うこと,その上で納期を平成23年1月又は平成22年9月下旬とすることが提案されている。    

ウ こうした経緯を踏まえると,前記1(8)キのとおり,被告は,総合試験を終了したとして,平成21年12月28日,原告に総合試験成績書を提出しているものの,その内容をたやすく信用することはできないというべきであって,平成22年1月3日までに本件システムが完成,すなわち稼働する状態を実現していたと認めるに足りる証拠はないというべきである。

 まあ,色々出来ていない所があるよね~,これじゃあダメなんじゃない~って所です。
 
 で,結論が一審と違うってことは,札幌高裁はどう判断したのでしょうねえ。

3 判旨
「争点(2)(平成22年1月3日又は同年4月26日の時点における本件システムの完成の有無)について
    (1) システム開発では,初期段階で軽微なバグが発生するのは技術的に不可避であり,納品後のバグ対応も織り込み済みであることに照らすと,バグ等が存在しても,システムを使用して業務を遂行することが可能であり,その後の対応で順次解消される類のものであれば,仕事が完成したと認定すべきである
    (2) 上記の見地から検討するに,以下のような事実に照らすと,本件システムは,遅くとも本件解除時(平成22年4月26日)までには,一審原告の協力が得られずに保留せざるを得なかった1項目を除き,全て完成していたものと認められる。
      ア  リハーサルの実施について
        (ア) 平成21年11月14日実施の外来プレリハーサルでは3点の不具合が指摘されたが(認定事実(7)サ。ただし,「各種帳票の調整(フォント,印字位置等)は,追加開発要望であると認められる。),同月28日実施の第1回外来リハーサルまでには全て修復された(甲9の2,甲10の2)。
        (イ) 第1回外来リハーサルでは9点の不具合が指摘された(認定事実(7)ス)。
    ・・・
 (エ) このように,遅くとも平成21年12月13日までには,本件システムは外来リハーサルを実施できる程度にまでは完成していた。
      イ  総合試験結果
        (ア) 「単体テスト」は,内部設計で定義した処理ロジックの正しさを確認する過程である。
            「結合テスト」は,単体テストが終了したプログラムを組み合わせて動作を確認するテストであり,プログラムを組み合わせた際の動作に問題がないか,必要な機能が実現できているかどうかを外部設計書に照ら
し合わせて確認する過程である。
            「総合テスト」(総合試験)は,結合テストにより外部設計書どおりの機能が実現できていることを確認したプログラムと,そのプログラムが動作するハードウェア,ネットワーク,利用者端末などを組み合わせ,本番と同じ環境,あるいは本番に近い環境で動作を確認するテストであり,要件定義書等の内容が実現できているかどうかを総合的に確認する過程である。総合テスト終了後は,不合格項目について障害処理票を作成して,バグの除去及び分析を行い,テスト成績書(総合試験成績書)を作成して,プログラム完成に至る。(甲141〔146ないし148,152〕)
        (イ) 一審被告は,同年11月以降,現行システムを本件システムに切り替える際,又は切替後に実施すべき6項目以外の項目について総合試験を実施し,平成21年12月28日,総合試験成績書(乙525の1)を作成した。同成績書では,同日時点での判定として,47個の問題が発生し,12項目が不合格と判定されたが,その後,一審被告は,平成22年1月8日までに全ての問題発生箇所について対応を完了し(一部は,別途部門システムのベンダが対応した。),同月29日までに上記不合格項目のうち10項目を合格とする旨訂正した総合試験成績書の一部差替部分(乙525の2。2項目が不合格のままになっているのは,訂正漏れと認められる。)を作成し,一審原告に提出した。(認定事実(8)キ)
        (ウ) このように,一審被告は,本件システムへの切替時又は切替後に実施すべき6項目を除く項目について総合試験を実施し,総合試験を実施した全ての項目について合格と判定されるに至っている。
      ウ  「技術仕様書未実施リスト」
    (ア) 平成22年1月5日の第15回専門部会で一審被告が配布した「技術仕様書未実施リスト」(甲149)では,本件仕様凍結合意時に本件システムに含めることに合意された機能6486項目のうち,開発未了の項目は57項目のみであった(認定事実(9)ア)。
            上記57項目のうち35項目は,DWH(データウェアハウス)の提供であり,既に完了していたし(一審原告は,DWHの提供のみならず,データの抽出機能までが契約範囲内であると主張していたため,上記リスト上,未完成項目とされているが,これらは分類1に属する項目であり,一審被告が更にカスタマイズを行うということは予定されていなかった。),18項目は,システム移行・切替の最終工程で作業が必要な項目であり,同日時点で完成させる必要がない項目であった(乙524〔40〕)。
            結局,同日時点で未完成だったのは,「(C3-10)栄養管理部門業務1-8-3-3」(甲149〔2〕),「(C4-2)放射線オーダ1-1-2」,「(C4-2)放射線オーダ1-1-13」及び「(C4-2)放射線オーダ1-1-15」(甲149〔5〕)の4項目に過ぎず,これら4項目を欠いた状態でも本件システムを運用することは十分に可能であった(乙524〔41〕)。
        (イ) 同年2月1日の第17回専門部会で一審被告が配布した「技術仕様書未実施リスト」(乙2の17,乙565)では,上記(ア)の未完成の4項目のうち,「(C4-2)放射線オーダ1-1-2」は同年1月18日に仕様が確定し,テンプレート作成が済んだ旨が記載されており,同日時点で開発未了だったのは3項目のみになっていた。
        (ウ) 同年3月16日に一審被告が提出した「プロジェクト再開に向けてのご提案」に添付された「技術仕様書未完了リスト」(甲15〔16-1〕)には,同日時点で開発未了だったのは9項目である旨記載されている。・・・
  エ  「プロジェクト再開に向けてのご提案」
          前記ウ(ウ)の「プロジェクト再開に向けてのご提案」(甲15)は,同日時点における本件システム開発の進捗状況として,「プログラムの不具合」(バグ)112個のうち110個は既に対応が完了しているとしていた(認定事実(9)ク)。
          未完了の2項目のうち,「日本光電への帳票送信データ項目」は,一審原告が確定すべき帳票フォーマットの仕様に関するものであり,平成22年1月14日の内視鏡・病理・放射線RI  WGの席上,5日以内に完成可能である旨が伝えられていた。他の1項目「R1オーダ画面「コメント」欄に,詳細指示画面で入力した文字列が反映されないこと」は,本件技術仕様書上,分類1((C4-2)放射線オーダ)とされており,バグではなく,開発対象外の開発要望であった。(甲166・添付資料6〔3〕,弁論の全趣旨)
      オ  完成証明資料(乙527)
          一審被告が平成22年6月25日までに作成した完成証明資料(乙527)によれば,同日までには,一審原告の協力が必要であった1項目(前記ウ(ウ)d)を除き,本件システムが完成していた事実が認められる。
          上記完成証明資料は,同年4月26日時点での完成度を直接に示すものとはいえないが,同年2月1日以降,一審原告の協力が得られなくなったこと(認定事実(9)オ),上記ウのとおり,同年3月16日までには本件システムは一審原告の協力が必要であった1項目以外全て開発を完了していたこと,本件解除通知後に更にプログラム作成作業を継続していたとは考え難いことなどに照らすと,同年4月26日時点でも同程度の完成度であったと見るのが相当である。 ・・・

 (3) これに対して,一審原告は,本件解除時までに本件システムは完成していなかった旨を主張する。
      ア  一審原告は,外来プレリハーサル及び第1回外来リハーサルで多数の不具合が発生した旨を主張する。
          しかしながら,上記不具合については,全て平成21年12月23日までに対応が完了していたことは,上記(2)アのとおりである。
      イ  平成21年12月13日実施のスルーテストの結果について,一審原告のG副部長が不具合を指摘している(認定事実(8)オ)。また,一審原告側において,平成22年1月から同年2月にかけて実施した本件システムの完成度の評価において,5WGにおいて「否」と評価され,総合評価も「否」とされている(認定事実(9)オ)。
          しかしながら,「否ではないが,他部門等を考えると,心情的には否」とした1WGの評価は,他の「否をつけるほどではない」とした4WGと同様の評価であると考えられ,このような評価をしたWGがあったということ自体,WGにおける評価が客観的なものであったか疑いを抱かせるものである。さらに,一審原告は,分類1及び2についてもカスタマイズを要求することができ,また,本件仕様凍結合意後も追加開発要望を出すことができると考えており,実際,平成22年1月4日以降も,同年3月16日までの間に304項目もの追加開発要望を出し(認定事実(9)ク),一審被告がこれら追加開発要望に応じるべきであると考えていた(第2の3(3)ないし(5)参照)。G副部長も同様の考えであり,スルーテストの結果について不具合を指摘する際も,併せて種々の追加開発要望を出し,一審被告による対応を求めていた(認定事実(8)オ)。
          上記評価は,そうした一審原告による評価であって,本件仕様凍結合意時に合意された開発項目についての本件システムの完成度を正確に評価したものとは考えられない。 ・・・・」

4 検討
 論点はたくさんあるのですが,一番わかりやすいと思える仕事完成の所にしぼりました。
 一審では,重要視されたところが二審ではそうでもないという,結構予測可能性がない判旨でしょうかね。でも,規範はよく使われているものです。

 さて,システム紛争の場合,ユーザーの,こんなバグだらけのシステムに誰が金を払うかよ,バーカ,というのから端を発することが多いと思います。
 そして,ベンダーとしては,システム構築したんだから金払えよ,このしみったれが,ちゅうことで争いになるわけです。

 この紛争が生じると,ユーザーとしては,動かないシステムをそのままにしておくわけにはいきませんから,①元のベンダーをなだめすかして再度やらせる(追加の工数をどう処理するかが,今度は問題になります。様々な力関係で,ベンダーの持ち出しになることもあれば(この場合元の見積額しかもらえないってことです。),ユーザーが追加の料金を負担する(勿論最初の見積額ももらえます。)こともあります。)ってのがやはりデフォーでしょう。
 ベンダーとしても,お客様ですし,長く付き合ってウインウインということもありますし,ユーザーも中途半端な状態で新たなベンダーを探す時間も金も惜しいので,お互い途中で矛を収めるって感じです。

 しかし,ベンダーもユーザーも,お互い頭に血が上ると,もういい!,お前の所とは付き合わん!として,まずはユーザーから契約解除の内容証明郵便が飛んできて(ここでユーザーに弁護士が入ることが多いですね。),それに呼応し,ベンダーも,債務不履行なんかあるかボケ!仕事完成してんだから金払えや,この穀潰しが!ってことになります。この場合は,②ユーザーは他のベンダーに頼み,新たな出捐をして,未完成?のシステムを稼働に持っていくということになるでしょうねえ。

 で,この②のパターンが,訴訟にまで発展するシステム紛争の典型的パターンです。
 なので,ベンダーとしては,未払いの報酬を求める訴訟になりますし,逆にユーザーは,システム未完成での得べかりし利益の損失や,他のベンダーに頼んだ費用分の損害賠償を求める訴訟になるわけです。

 本件では,両者がほぼ同時に別件で訴訟を提起したようですが,どうですかねえ,通常は報酬を払ってもらえないベンダーが先に訴訟を提起し,その反訴として,ユーザーが損害賠償を求めるというパターンが多いですかねえ。

 でね,ポイントは,上記のとおり,仕事の完成にあるのですが,これが結構分かりにくいっちゅうことです。
 弁護士が入っても(通常の弁護士では筋読みは無理です。だからと言って,IT紛争に長けた弁護士と言えども,今回のように,上訴で判断が変わったりします。),筋読みに苦労するわけで,落とし所がわからないのですね。

 そういう意味では特許の侵害訴訟に似ていると思います。ある程度,1:0の世界ってことです。特許侵害していれば差止や賠償もOK,仕事完成していれば報酬OK損害賠償NGで逆なら報酬NGで損害賠償OKということです。

 で,更に問題なのは,この訴訟類型,兎に角時間がかかります。
 この旭川地裁の一審,H23の提起で,判決があったのが去年です。5年!もかかっております。特許の訴訟も昔は結構時間がかかりましたが,今や大体1年程度です。
 ところが,システム紛争の訴訟って本当時間がかかります。数ある訴訟類型のうち,今現在ではトップクラスでしょうね。

 つまり,結論も読めないし,時間もかかるわけです。

 なので,システム紛争が起こった場合,私の経験上,まずは上記の①のとおり,旧来のベンダーにやってもらうのがベストだと思いますよ。
 大体は,ユーザー側が仁義なき追加発注をしていてベンダーがやりきれなくなったというパターンですから,納期が何とかなれば,落とし所はたくさんあります。

 で,しょうがなく②の訴訟に行っても,兎に角,和解を探るってことですね。ということは,相手方の弁護士と仲良くしておくっつうのが重要です(ベンダー,ユーザーとも)。そうすると,裁判所にも和解を言いやすいですもんね。

 ま,兎に角,今回はNTT東日本がある程度,填補してもらったわけですが,ならば,平成23年の時点で,何とかならんかったのかなあと余計に思いますね。

 ということで,昨日はCvsCでのIT紛争,つまりは誹謗中傷関係,今日は,BvsBでのIT紛争,つまりはシステム関係の判決を紹介しました。
 昨日もそうですが,今日のようなシステム関係の訴訟も,意外と判決が大っぴらに見れるものが少なく,こういう事件を扱う弁護士やら当事者の参考になれば,ということです(勿論自分も。)。
1 概要
 本件は,原告が,被告が原告になりすましてインターネット上の掲示板に第三者を罵倒するような投稿等を行ったことにより,原告の名誉権,プライバシー権,肖像権及びアイデンティティ権を侵害されたとして,被告に対し,不法行為に基づき,慰謝料,発信者情報開示費用及び弁護士費用の合計である損害賠償金723万6000円及びこれに対する不法行為の日である平成27年5月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 これに対して,大阪地裁第22民事部(北川さんの合議体ですね。)は,原告の主張を一部認め,130万6000円と遅延損害金の支払いを認めました。

 まあ,特許でもなく,知財でもないのですが,要するに,ネットの事件ということで,取り上げたわけです。

2 問題点
 問題点は,上記のとおり,なりすましによる様々な被害を被った場合,どれでやるといい?って所だと思います。

 私もその昔というか,独立したてのころは,所謂パカ弁関係をよくやっておりました。
 その手順は,このブログでも書いたとおりなのですが,この記事はよく引用されております。しかし,お陰様で,私への依頼は全く来なくなったのも,ここで書いたとおりです。

 では何故,今回取り上げるかというと,この手の事件ってあんまり判決までいかないかなあということで,備忘のため,似たような事件を扱う代理人のため,という所でしょうか。

 実は,私もその昔の,パカ弁をやっていたころ,この事案に非常に似た事件が舞い込んだときがあります。
 で,そのときに困ったのが,請求の立て方,つまりは訴訟物なのですね。

 どういうことかというと,なりすましって,この事件だと誹謗中傷しております。判決も以下のとおり,認定しております。

これらの投稿は,いずれも他者を侮辱や罵倒する内容であると認められ,前記(1)のとおり,原告による投稿であると誤認されるものであることと併せ考えれば,第三者に対し,原告が他者を根拠なく侮辱や罵倒して本件掲示板の場を乱す人間であるかのような誤解を与えるものであるといえるから,原告の社会的評価を低下させ,その名誉権を侵害しているというべきである。

 しかし,頭のいいなりすましって,こんな下手なことはしません。さもそれっぽいような感じでそれっぽいことを書き込むから,余計問題なわけです。

 とすると,普通は,名誉毀損ってなかなか難しいわけです。

 とすると,あとは,プライバシー権かということになります。でもこれもなあって感じです。
 というのは,プライバシー権って要件が結構厳しいです。なので使いにくいのですね。じゃああとは・・・・ということになるのですが,これは判旨を見た方が早いかな~という所です。

3 判旨
「(1)  原告は,被告が本件アカウントのプロフィール画像として原告の顔写真を公開したことにより原告のプライバシー権及び肖像権を侵害した旨主張する。
 この点,前記争いのない事実等(3)及び前記1で認定したとおり,被告は,本件アカウントのプロフィール画像として原告の顔写真を使用して本件投稿を行ったことを認めることができる。
(2)  ところで,プライバシー権は,その外延がいまだ明確に定まっていない部分があるものの,私生活上の自由の保護をその中核とし,他人に知られたくない私生活上の事実又は情報をみだりに公開されない利益又は権利をその内容とするものと解される。そして,原告の陳述書(甲16)によれば,原告は,本件投稿の当時,被告に使用された顔写真を本件サイトのプロフィール画像に自ら設定していたことが認められ,本件サイトは不特定多数の者がアクセスできるインターネット上のページであることを踏まえれば,原告の顔写真は,原告によって第三者がアクセス可能な公的領域に置かれていたと認めるのが相当であり,他人に知られたくない私生活上の事実や情報に該当するということはできない。
 そうすると,被告が使用した原告の顔写真を第三者から無断で公開されないという利益は,少なくともプライバシー権によって保護されるものと認めることはできない。
(3)  肖像は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有すると解される(最高裁平成24年2月2日判決・民集66巻2号89頁参照)。他方,他人の肖像の使用が正当な表現行為等として許容されるべき場合もあるというべきであるから,他人の肖像の使用が違法となるかどうかは,使用の目的,被侵害利益の程度や侵害行為の態様等を総合考慮して,その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかを判断して決すべきである(最高裁平成17年11月10日判決・民集59巻9号2428頁参照)。
 前記1及び(1)で認定説示したとおり,被告は,原告の顔写真を本件アカウントのプロフィール画像として使用し,原告の社会的評価を低下させるような投稿を行ったことが認められ,被告による原告の肖像の使用について,その目的に正当性を認めることはできない。そして,前記争いのない事実等⑶のとおり,被告が,原告の社会的評価を低下させる投稿をするために原告の肖像を使用するとともに,「わたしの顔どうですか?w」(平成27年5月18日午前10時39分),「こんな顔でHさんを罵っていました。ごめんなさい」(同日午前10時54分)などと投稿したことは,原告を侮辱し,原告の肖像権に結びつけられた利益のうち名誉感情に関する利益を侵害したと認めるのが相当である。
 そうすると,被告による原告の肖像の使用は,その目的や原告に生じた不利益等に照らし,社会生活上受忍すべき限度を超えて,原告の肖像権を違法に侵害したものと認められる。
(4)  したがって,原告の前記⑴の主張のうち原告の肖像権が違法に侵害されたことを認めることができる。 」

「(1)  原告は,権利性が認められている氏名や肖像を冒用されない利益の根源が他者から見た人格の同一性を保持する必要性にあるとすれば,憲法13条後段の幸福追求権又は人格権から他者との関係において人格的同一性を保持する利益であるアイデンティティ権が導き出され,被告が原告になりすまして本件投稿を行ったことは原告のアイデンティティ権を侵害した旨主張する
(2)  個人が,自己同一性を保持することは人格的生存の前提となる行為であり,社会生活の中で自己実現を図ることも人格的生存の重要な要素であるから,他者との関係における人格的同一性を保持することも,人格的生存に不可欠というべきである。したがって,他者から見た人格の同一性に関する利益も不法行為法上保護される人格的な利益になり得ると解される。
 もっとも,他者から見た人格の同一性に関する利益の内容,外縁は必ずしも明確ではなく,氏名や肖像を冒用されない権利・利益とは異なり,その性質上不法行為法上の利益として十分に強固なものとはいえないから,他者から見た人格の同一性が偽られたからといって直ちに不法行為が成立すると解すべきではなく,なりすましの意図・動機,なりすましの方法・態様,なりすまされた者がなりすましによって受ける不利益の有無・程度等を総合考慮して,その人格の同一性に関する利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものかどうかを判断して,当該行為が違法性を有するか否かを決すべきである。
(3)  本件では,前記2で認定説示したとおり,被告は,本件アカウント名にて,原告の社会的評価を低下させるような内容を含む投稿を行っていることからすると,なりすましが正当な意図,動機によるものとは認められない。
 しかしながら,なりすましの方法,態様についてみると,原告が,被告による原告のなりすましとして主張する行為とは,具体的には,前記2(1)で認定説示したとおり,被告が原告の本件サイトにおけるアカウント名を冒用し,プロフィール画像に原告の顔写真を登録した上で,本件掲示板への投稿を行ったというものであるところ,通常は,アカウント名やプロフィール画像は,本件サイト内での通用を予定して設定されるものであること,前記争いのない事実等(4)のとおり,本件サイトの利用者は,アカウント名・プロフィール画像を自由に変更することができることからすると,社会一般に通用し,通常は身分変動のない限り変更されることなく生涯個人を特定・識別し,個人の人格を象徴する氏名の場合とは異なり,利用者とアカウント名・プロフィール画像との結び付きないしアカウント名・プロフィール画像が具体的な利用者を象徴する度合いは,必ずしも強いとはいえないというべきである。
 また,原告が被告によるなりすましによって受けた不利益について検討するに,前記2及び3で認定説示したとおり,原告の名誉権及び肖像権の侵害による不利益については別に不法行為上の保護を受けると認められる。その余の不利益については,被告によるなりすましは本件サイト内の投稿にとどまること(弁論の全趣旨),証拠(甲5)によれば,被告によるなりすまし投稿の直後から,他の本件サイト利用者により,投稿が原告本人以外の者によるものである可能性が指摘されていたことが認められること,前記争いのない事実等(3)のとおり,本件掲示板に「C」とのアカウント名及び原告の顔写真のプロフィール画像が表示されていたのは約1か月余りの間であり,その後これらは変更されたことが認められる。
 以上の事実を総合考慮すれば,本件では,被告のなりすまし行為(名誉権侵害行為,肖像権侵害行為は除く)による原告の人格的な利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものとまでは認められないというべきであり,当該行為が違法とは認められない。 」

4 検討
 前半が,プライバシー権と肖像権に関する部分で,後半がアイデンティティ権に関する部分です。

 で,今回,プロフィール画像が原告の顔写真であったことから,肖像権の侵害は認めてもらえました。でもプライバシー権の侵害はないということです。

 他方,原告の立てた,アイデンティティ権(要するに,なりすまされない権利と言える,今回のような事件についての単刀直入な権利です。)については,侵害を認めてもらえませんでした。要するに,侵害の度合いが強くなく,不利益も大きくないということですね。

 本件だと,プロフィール画像が顔写真で,肖像権の侵害がOKだったので,良かったのですが,例えば,似顔絵とかだとNGになるでしょうね。
 だとすると,そのような似顔絵でのプロフィール画像を冒用し,なりすましされた場合の救済って,やはり今回でいうアイデンティティ権などで認めてもらうしかありません。

 いや,こういうのが問題になってなけりゃ別にいいのですよ。でも,なりすましが問題になる場合って,上で書いたように,名誉毀損的なことは言わないし,顔写真冒用のような,下手なことはやらないってことです。

 そうすると,今回認められた名誉毀損も無理だし,肖像権も無理なわけです。なので,今回でいうアイデンティティ権とかでやるしかない場合もあるのです。
 そして,今のなりすましの主流がそういう場合だと思われるのですね(私にはもうあんまり依頼がないので,あくまで推定です~♫)。

 このような場合,どうすりゃいいかを,以前,ここでも書きました。それは,肖像権が財産権化してパブリシティ権になったように,プライバシー権も財産権化出来るのではないか,強いて言えば,目的外使用を禁ずるような権利ですね。

 そんなこと言うと,今現在は個人情報保護法があり,そこでいう個人情報に・・・という観点もあると思いますが,個人情報って個人情報保護法に定義があり,それに該当しないと保護されません。

 そうではなくて,もうちょっとパブリシティ権的なもので認められないかなあって感じです(立法ではなく判例上ね。)。

 ま,以前書いた通り,チンピラ弁護士の妄言に過ぎませんので,このくらいでやめておきますわ~♡

 あと,そうだそうだ,この事件の陪席の裁判官の名前,某有名学者の先生の名前にクリソツです。法曹業界は,政治家業界以上に二世三世法曹が多い業界ですが(さらに,特許事務所の所長弁理士の二世三世で弁護士っていうパターンも多いですね。),ここもそうなのでしょうか。

5 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日はここ山本橋に来ております。
 
 セミは鳴いておりますが,さすがに,素手で捕まえられる場所には居ませんね。桜の葉もよく見ると色づき,そして散っている部分もあります。
 東京は,日曜は一日雨で,昨日今日と良い天気になっております。

 しかし,日曜は風も強く,桜もところどころ折れておりました。
 私の実家の近くも凄い雨が降ったようで,佐伯や津久見の方の模様がテレビによく出てました。幸い実家のある豊後高田は,大災害という所まで行かず,多少は安心しております。しかし,天災は忘れた頃にやってくると言ったのは寺田寅彦でしたっけ?まだまだ台風の季節ですので,気をつけておいた方がいいでしょう。

 ちなみに,台風とその他の要因のため,先週のサーフィンはおやすみでした。今週末は行けるといいですね。
1 ということです。
 ご興味の有る方は一読をどうぞ。東京新聞朝刊7面ですね。
「ネット障害で補償あるの?」という記名記事です。

2 私って基本的にはマスコミの取材は受けないことにしております。
 理由は,面倒臭いし,金にもならんことはしたくないし~つうところです。

 でも一番の理由は,マスコミの人って本当に偉そうにしているので,ちょっと話しててもムカついてしょうがないのです。なので,取材は受けねえよーと電話をガチャ切りするのがデフォーです。

 じゃあ何故今回は金にもならんのに受けたかというと,この記名記事の記者の人の誠実さ,ですね。
 私は鬼でも悪魔でもないので,普通の,ごく普通の(別に丁寧じゃなくても構いません。),本当に普通の対応をして頂ければ,必要性を認めた際には結構積極的に動くわけです。

 ですので,今回は事務所にお越し頂き,短時間インタビュー的な取材に応じたということです。
 ほんで,それを記事まとめてもらって,多少私が確認し手直しして,本日の掲載となったということです。取材があったのが,先週の9/7ですから,やはり1週間かからないってわけです。

 今年は年始に,日経新聞の「私見卓見」にも小論文が載りましたが,あれも早かったです。やはり新聞は早さが命です。

3 東京新聞を見ることができるのは,東京近辺に限られていると思いますが,機会がありましたら,是非よろしくお願いします。
1 この表題で何のことか分かった人は,相当のマニアですね。
 ま,今日は,何か久々理系っぽい話です。

 TSUBAMEというのは,東工大のスーパーコンピューターの名前です。東工大関係者しか知らないと思いますが,東工大の校章には燕が入っているのですね(工という字をアレンジしてあるのです。)。それでこのネーミングということですわ。

 さて,その東工大のスーパーコンピューターが3.0にバージョンアップされるというので,記念のシンポジウムをやるということで,聞きに言ってきたわけです。

 と言っても私はインチキ理系ですので,あまりに専門的なことはわかりません。ですが,午前中にはNVIDIAのエンジニアが来て,チュートリアルのセッションをやるというので,それだけ聞きに行ったわけです。

2 まあ内容は私にはかなり高度でしたが,言いたいことはわかりました(AI関係は最近多少本を読んでいるのです。)。

 なので,スーパーコンピューターで何故NVIDIAとなるのですが,そういうことか~ってことなのですね。
 どういうことかというと,GPUをスーパーコンピューターに最初に搭載したのは,東工大のTSUBAMEということでした。勿論,今回の3.0もGPU搭載です(それがNVIDIA製ってことなんですね。)。

 じゃあ,何故スーパーコンピューターにGPUを搭載するのかということです。普通のパソコンだとCPUだし,GPUってゲームするときにすげえだけじゃねえのって話にもなります。
 それがあんたGPUって単純にコアの数が多いのですね。例えば,x86系のCPUで有名な某I社のCPUのコアってせいぜい4つです。これに対して,GPUのコアの数は,これと桁が3つ違いますね。

 なので,CGとかのグラフィック処理に優れているわけです(並列処理が大変な所で効果的)。で,今流行りのディープラーニングも,この並列処理を幾つもやらなきゃいけないってことで(多層のニューラルネットで,正誤の差をロス関数で処理し,それから算出した重みをフィードバックさせるには並列処理の嵐),GPUの方がいいんじゃねってことらしいですわ。

 いやあ勉強になりましたなあ。
 あんた弁護士なのに,何やってんの?感じですが,ま,変わり者ですからね。

3 ということで,今日は毎度おなじみ流浪の弁護士の散歩の特別編です。
 本日は上記のとおり,私の母校である,ここ東工大に来ております。

 昔はこの角度で本館は見えなかったのですが,今は見れます。

 というのは,昔影になってた旧図書館の取り壊しが終わったからですね。でもまた跡地に何か建つようです。

 そう言えば,東工大博物館で,大隅先生のノーベル賞の実物が展示されているということでしたが,今日は見れませんでした。残念。
 また花見のときにでも期待しよっと。

 その桜はまだこんな感じです。

 本館前のスロープの桜です。ピンぼけで申し訳ない所です。かなり膨らんではいますが,まだピンクは見えません。

 で,せっかくなので,昼飯を二食で食べて帰りました。
 二食と言えば,そう,チキンガーリックです。
 ですが,チキンガーリックはありませんでした。

 仕方なくハサミかつを食べて帰りました。これで400円以下ですからね。価格は30年前と同等と言えます(逆に言えば,日本は進歩していないってことですね。)。

 若い人からすると,チキンガーリックって昭和か?って所でしょうね。いつ無くなったんだろう。鉄板出ししないといけないので,面倒臭くなったのでしょうかねえ。

 ま,とは言え,母校っちゅうのはいいもんだなあという話で終わります。
1 首記は,本日の日経の社会面に載っていた記事です。

 要するに,業者のネット記事等の削除代行は,非弁行為ですよ~ということですね。
 いやあ原告代理人のグッドジョブ!ですね。

 まあここで何度か書きましたが,その昔,私もパカ弁の仕事を結構やっていました。でもここ数年サッパリです。ごく最近に限定するともはや相談すらありません。

 なぜかというと,そりゃググればわかります。
 「ネット 誹謗中傷」とか「ネット 削除」だとかです。SEO対策している事務所もさることながら,業者がもう腐るほど出てきます。こんな中で私のような者が入り込む隙はもうありません。

 でも,よく考えると,この業者って非弁行為じゃないか~というのは,昔から弁護士なら思うことだったのかもしれません。まあでもなかなかそれを争う機会なんて無かったのが実情だと思います。

 それが今回,こういう結論です。勿論,これによって業者が全く居なくなるってことは無いと思いますが,弁護士会の取り締まり次第では実効性はあると思います(でもしかし肝腎の弁護士会がねええ。)。

 兎も角も,職域確保の面からすると実に良い判断ではないか,弁護士にとっては大きなニュースだと思った次第です。

2 と書いて,そして,それを読んだ皆さん,何か弱火だなあと思ったかもしれません。

 実は,本日日中に,弁理士会の研修で,東京地裁民事29部の嶋末部長の講演がニッショーホールであったのですね。

 それを大々的に・・・と思っていたのですが,講演を聞いてやめました。
 いやあオフレコの話が多すぎてさすがの私も全く触れることができません。これは別に私の立場が・・・ではなくて,折角踏み込んだ話をしてくれた嶋末部長のために,そして,次回のためにってことです。

 だって,ここで何か書いて,嶋末部長の耳に入れば,あああれは・・・となるじゃないですか~凡そ。そうすると,次回他の裁判官が講演をするときに,当たり障りのないしょーもない話しかしてくれなくなる,それが困るわけです。

 行った皆さんはお分かりだからいいでしょう。本当,実に価値ある講演だと思いました。冒険してくれた嶋末部長に大拍手です。
 行けなかった人は残念でしたね。
1 個人的な興味もあって,最近はフィンテック系の情報に接することが多いです。

 こういう「新しい」分野は,当然規制との戦いになりますので,法務の出番も多くなり,それ故,それ相応のデカイ事務所で相応の体制を敷いているってわけですね(フィンテックの法律関係の本を出した某渉外事務所とかね。)。

 ただ,私は弁護士と言っても,知財がメインテリトリですし,弁理士でもあるので,興味のあるのは,事業化の前の段階の方なのですね。

 こういうことがやれるかな,こういうことをやれると凄いよねっていう段階の所です。それが実現できることがわかり,金も集められ,さあ事業だってことになると,私の興味の段階からは遠ざかっていきますニャ~。
 この辺は,理系と言っても,howには興味がなくwhyにしか興味の無い理学部出身だからでしょう。

 で,こういう前置きをしているのですが,そんなテックとの結びつきが,まさかここまで具体的になっていると思いませんでした。いやあ新規技術に関して,今年一番の衝撃でした。

2 それは,弁護士ドットコムのチームがSoftbank World Challenge 2016で最優秀賞を受賞したというです。

 詳細は上記のリンクを読んでもらうとわかります。確かに,弁護士ドットコムのQ&Aはビッグデータと化していますから,それをAIで用いれば検索しやすくなるのは想像できます。
 しかし,それ以上に,企業法務で用いるというのは気づきませんでしたね。フィンテックならぬリーガルテックと言うらしいです。いやあ足元を掬われたって感じです。

 こういうことが普及すると,もう企業法務系の弁護士とかは要らなくなりますね。更には,法務部自体不要となるでしょう。法務的な案件が事業部だけで解決できるのですから。
 で,恐ろしいのは,そういうことも将来できるようになるといいね~大阪にリニア新幹線が開通するころには~って言うのではなく,上記のとおり,かなり具体的だってことです。

  私もミルテック(軍事とITの融合)までは想像できたのですが,いやいやいや~。怖さ半分面白さ半分という話でした。
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理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
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