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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,角化症治療薬の有効成分であるマキサカルシトールを含む化合物の製造方法の特許に係る特許権の共有者である被上告人が,上告人らの輸入販売等に係る医薬品の製造方法は,上記特許に係る特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであり,その特許発明の技術的範囲に属すると主張して(最高裁平成6年 (オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁 参照。以下,この判決を「平成10年判決」といいます。),上告人らに対し,当該医薬品の輸入販売等の差止め及びその廃棄を求め,これに対し,上告人らは,本件では,平成10年判決にいう,特許権侵害訴訟における相手方が製造等をする製品又は用いる方法(対象製品等)が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するから,上記医薬品の製造方法は,上記特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであるとはいえないと主張して,被上告人の請求を争っている事件です。

 所謂マキサカルシトール大合議事件の,最高裁判決です。
 
 大合議事件の方は諸般の事情により,後継ブログの方で書いておりますので,ここで引用するのは地裁の判決の方にしておきます。

 で,地裁の一審は,均等論で侵害,知財高裁の大合議でも均等論で侵害としたわけですね。ということで,怒り心頭の被告(控訴人)の方が最高裁に上告受理の申立てをしたわけです。

 とは言え,結論は,上告は受理したけど,上告棄却=請求認容のまま,ってことです。つまり,均等論での侵害を認めたってことですね。

2 問題点
 問題点は均等論ですが,詳しく言えば,均等論の第五要件ですね。恐らく,上告受理申立人は,均等論や無効論についてもたくさんたくさん主張したのだと思いますが,最高裁に取り上げられたのは,このうち均等論の第五要件のみです。

 ということで,最高裁も先例として挙げた平成10年判決の要旨を載せておきます。
明細書の特許請求の範囲に記載された構成中に他人が製造等をする製品又は用いる方法と異なる部分が存する場合であっても、①右部分が特許発明の本質的部分ではなく、②右部分を右製品等におけるものと置き換えても特許発明の目的を達することができ同一の作用効果を奏するものであって、③右のように置き換えることに当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が右製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、④右製品等が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は右の者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、⑤右製品等が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、右製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解すべきである。

 実は,平成10年というのは,私が知財部に異動した年です。異動したてということで,知財部の主催する研修を,はるか彼方の厚木から,ここ五反田の近くの御殿山のソニー本社近くまで受けに来ていたのですね。
 そのときの研修で,多くの講師からこの均等論の紹介がありました。いかに企業知財部に影響があったのかということがわかります。

 その私が研修を受けていた場所に建っていたソニーの建物も今はありません。積水系の建物が建ち,研修を受けていたその場所には,今は,東京いや日本いや世界でも有数のフランス料理店であるQuintessenceがあります(ちょうどあの辺なのですね。)。ソニーの往時を伝えるのは,今はのみです。
 港南の本社の跡にもそのうちこんな碑が立つのでしょうかね。ま,シャープのように外資に買収されれば,一応生き残れるかなあ,ムフフ。
 
 おっといつものように議題から逸れました。

 兎も角言いたいことは,今回の最高裁の判示は,上記⑤の要件,「⑤右製品等が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない」の吟味ってわけです。

 で,上告受理申立人としては,こんな事情で,第5要件に該当しないなんてありえなーいって所だったのでしょう。
 そうすると,何か?,要らんことは言うなというか,吟味の足りない明細書,所謂poorな明細書を出して,後で均等論を主張した方がいいってわけかい?ってなことになります。

 しかし,最高裁としては~って所ですね。

3 判旨
「 5(1)  特許制度は,発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図ることを通じて,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものである(特許法1条参照)。そして,特許法70条1項は,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないと規定する。しかるところ,特許権侵害訴訟における相手方において特許請求の範囲に記載された構成の一部をこれと実質的に同一なものとして容易に想到することができる他の技術等に置き換えることによって,特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができるとすれば,上記のような特許法の目的に反し,衡平の理念にもとる結果となることなどに照らすと,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,所定の要件を満たすときには,対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するというべきである。そして,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するときは,上記のような均等の主張は許されないものと解されるが,その理由は,特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないというところにある(平成10年判決参照)。
  しかるに,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかったというだけでは,特許出願に係る明細書の開示を受ける第三者に対し,対象製品等が特許請求の範囲から除外されたものであることの信頼を生じさせるものとはいえず,当該出願人において,対象製品等が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したと解されるような行動をとったものとはいい難い。また,上記のように容易に想到することができた構成を特許請求の範囲に記載しなかったというだけで,特許権侵害訴訟において,対象製品等と特許請求の範囲に記載された構成との均等を理由に対象製品等が特許発明の技術的範囲に属する旨の主張をすることが一律に許されなくなるとすると,先願主義の下で早期の特許出願を迫られる出願人において,将来予想されるあらゆる侵害態様を包含するような特許請求の範囲の記載を特許出願時に強いられることと等しくなる一方,明細書の開示を受ける第三者においては,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものを上記のような時間的制約を受けずに検討することができるため,特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができることとなり,相当とはいえない。
  そうすると,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それだけでは,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえないというべきである。
  (2)  もっとも,上記(1)の場合であっても,出願人が,特許出願時に,その特許に係る特許発明について,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,特許請求の範囲に記載された構成を対象製品等に係る構成と置き換えることができるものであることを明細書等に記載するなど,客観的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,明細書の開示を受ける第三者も,その表示に基づき,対象製品等が特許請求の範囲から除外されたものとして理解するといえるから,当該出願人において,対象製品等が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したと解されるような行動をとったものということができる。また,以上のようなときに上記特段の事情が存するものとすることは,発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与するという特許法の目的にかない,出願人と第三者の利害を適切に調整するものであって,相当なものというべきである。
  したがって,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において,客観的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである。
  そして,前記事実関係等に照らすと,被上告人が,本件特許の特許出願時に,本件特許請求の範囲に記載された構成中の上告人らの製造方法と異なる部分につき,客観的,外形的にみて,上告人らの製造方法に係る構成が本件特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながあえて本件特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたという事情があるとはうかがわれない。
6  原審の判断は,これと同旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。 」

4 検討
 この判旨を読んで,私が思ったことは,あれ,知財高裁の判決だっけ,これって?ということです。
 試しに,知財高裁の判決を見てみましょう。

「先願主義の下においては,出願人は,限られた時間内に特許請求の範囲と明細書とを作成し,これを出願しなければならないことを考慮すれば,出願人に対して,限られた時間内に,将来予想されるあらゆる侵害態様を包含するような特許請求の範囲とこれをサポートする明細書を作成することを要求することは酷であると解される場合がある。これに対し,特許出願に係る明細書による発明の開示を受けた第三者は,当該特許の有効期間中に,特許発明の本質的部分を備えながら,その一部が特許請求の範囲の文言解釈に含まれないものを,特許請求の範囲と明細書等の記載から容易に想到することができることが少なくはないという状況がある。均等の法理は,特許発明の非本質的部分の置き換えによって特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れるものとすると,社会一般の発明への意欲が減殺され,発明の保護,奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に反するのみならず,社会正義に反し,衡平の理念にもとる結果となるために認められるものであって,上記に述べた状況等に照らすと,出願時に特許請求の範囲外の他の構成を容易に想到することができたとしても,そのことだけを理由として一律に均等の法理の対象外とすることは相当ではない。
(イ) もっとも,このような場合であっても,出願人が,出願時に,特許請求の範囲外の他の構成を,特許請求の範囲に記載された構成中の異なる部分に代替するものとして認識していたものと客観的,外形的にみて認められるとき,例えば,出願人が明細書において当該他の構成による発明を記載しているとみることができるときや,出願人が出願当時に公表した論文等で特許請求の範囲外の他の構成による発明を記載しているときには,出願人が特許請求の範囲に当該他の構成を記載しなかったことは,第5要件における「特段の事情」に当たるものといえる。  
  なぜなら,上記のような場合には,特許権者の側において,特許請求の範囲を記載する際に,当該他の構成を特許請求の範囲から意識的に除外したもの,すなわち,当該他の構成が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したもの,又は外形的にそのように解されるような行動をとったものと理解することができ,そのような理解をする第三者の信頼は保護されるべきであるから,特許権者が後にこれに反して当該他の構成による対象製品等について均等の主張をすることは,禁反言の法理に照らして許されないからである。」

 結構同じですね。
 
 とは言え違いもあります。

 知財高裁の場合は,特段の事情に当たる例として,「①出願人が明細書において当該他の構成による発明を記載しているとみることができるときや,②出願人が出願当時に公表した論文等で特許請求の範囲外の他の構成による発明を記載しているとき」を挙げていますが,最高裁は「特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,特許請求の範囲に記載された構成を対象製品等に係る構成と置き換えることができるものであることを明細書等に記載するなど」と,知財高裁でいう①の例しか記載していないのですね。②の論文の例は書いてません。

 まあ,これは最高裁の価値判断として,そんな遠くのことまで知らんがな,それはもういいんじゃね,ってことなのだと思いますね。知財高裁の判決の評釈でも,だいたい納得できるけど,②の例は言い過ぎじゃね,って意見が多かったですもんね。
 
 ですので,出願人というか弁理士が気をつけるのは,あくまでも明細書だけでよし!ってことになると思います。

 まあこの程度の判示で,判決出すということは結構重要なことだったんだなあと思うとともに,大合議の裁判官はニンマリしているでしょうね。ほーら俺らの判示で大体いいじゃん,てね。
 個人的には第一要件の方が見たかったという気がするのですが,まあいいでしょう。久々の特許の最高裁ですもん。

 ですので,今回も後継ブログではなく,こちらで紹介した次第です。
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1 概要
 本件本訴は,米国法人であるA社との間で同社の製造する電気瞬間湯沸器(本件湯沸器)につき日本国内における独占的な販売代理店契約を締結し,「エマックス」,「EemaX」又は「Eemax」の文字を横書きして成る各商標(被上告人使用商標)を使用して本件湯沸器を販売している被上告人(日本建装工業)が,本件湯沸器を独自に輸入して日本国内で販売している上告人(エマックス東京)に対し,被上告人使用商標と同一の商標を使用する上告人の行為が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当するなどと主張して,その商標の使用の差止め及び損害賠償等を求める事案です。
 他方,本件反訴は,逆に,上告人が,被上告人に対し,上告人の有する各商標権に基づき,各登録商標に類似する商標の使用の差止め等を求める事案です。 
 これに対しては,被上告人は,上記各登録商標は商標法4条1項10号に定める商標登録を受けることができない商標に該当し,被上告人に対する上記各商標権の行使は許されないなどと主張して争っているわけです。

 本訴と反訴があるのでややこしいですが,本訴は独占販売権者が混同惹起行為として請求し,反訴は並行輸入業者が,商標権に基づき,請求しているわけです。
 なお,実は,並行輸入業者の方は,昔昔,独占販売権者から仕入れていたものの,トラブって仕入れることが出来なくなり,並行輸入したという経緯があります。

 さらに,以前もこの業者間で揉め,和解が成立したという経緯もあります(その辺は,山崎敏充裁判官の補足意見に詳しいです。)。

 原審(福岡高裁平成26(ネ)791,平成27年6月17日判決)は,①被上告人使用商標は不正競争防止法2条1項1号にいう「他人の商品等表示(中略)として需要者の間に広く認識されているもの」に当たり,上告人が被上告人使用商標と同一の商標を使用する行為は同号所定の不正競争に該当するとして,本訴請求の一部を認容すべきものとし,また,②被上告人使用商標は商標法4条1項10号にいう「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」に当たり,被上告人使用商標と同一又は類似の商標である本件各登録商標のいずれについても,商標登録を受けることができない同号所定の商標に該当するから,同法39条において準用される特許法104条の3第1項に係る抗弁が認められ,被上告人に対する本件各商標権の行使は許されないとして,反訴請求を棄却すべきものとしたわけです。

 つまり,独占販売権者の不競法の請求はOK,並行輸入業者の商標権の請求はNGとしたわけです。ちなみに,この原審の判決を見ようとしたら,私の使っているデータベースにも,裁判所のデータベースにもありませんでした。

 ただ,この両当事者が,商標権(「平成17年登録商標」ではなく,平成22年の登録商標ですね。)の登録性を争った事件があります(知財高裁平成27年(行ケ)第10083号,平成27年12月24日判決)。
 
 なので,あんまり話題には上っていなかった事件かなあと思いますが,判示は重要ですね。
 ちなみに,最高裁の結論は,破棄差戻しです。

 まあ,商標の最高裁なんて珍しいですよね。なので,マジ判決紹介するのをやめているこのブログでもさすがに紹介せんわけにはいかんだろうということで,書いた次第です。

2 問題点
 問題点は2つあります。
 1つは,不競法の事件での周知性です。さらに言えば,この不競法2条1項1号の周知性と,商標法4条1項10号の周知性は同じか,違うのかという論点もあると思います。条文上の文言はほぼ同じですけどね。

 ちなみに,原審の福岡高裁は,不競法2条1項1号の周知性を満たすと判断し,別事件の知財高裁は,商標法4条1項10号の周知性を満たさないと判断したのです。

 ですが,今回の最高裁はこの論点の判断はあるのですが,原審の判断が不十分という是非の判断をしただけで,特段の規範等を踏まえた判断までしたわけでありません。なので,ここはお預けですね。

 で,もう一つの判断が,権利の濫用の関係です。
 上記のとおり,「平成17年登録商標」は,登録から5年を経過しておりましたので,もはや無効審判を起こすことができないわけです(除斥期間の商標法47条1項)。
 なので,その場合には,無効の抗弁の主張はできないのか?仮にできないとすると一般的な権利濫用の抗弁はどうだ?ってやつです。

 まあ特許だと除斥期間ってやつが無く,この除斥期間は商標法独自のものです。だって商標法には,業務上の信用維持という産業の発達だけではない立法目的があるのです。長く使ってりゃ,信用が維持されるでしょ,多少ヤクザなことをしてもそういう事実状態になるともう信用が維持されんだから,無効にできないでしょってやつです。

 よくどっかの国の憲法に対しても,もう70年以上不都合なく使ってきたんだから,外国から多少無理矢理押し付けられたとしても,そういう事実状態を守るべきじゃないの~っていう屁理屈がありますが,それと一緒なわけですね。ただ,そんなこと言っていると,北方領土も竹島もそして沖縄も永久に帰ってこないと思いますけどね~♫あーこりゃこりゃ。

 おっとまた議題からずれそうだわい。
 で,そういう除斥期間という特別なやつが商標法にはあるのです。ちなみに,私が弁理士を受験したころは,「ミスは,以後なやむさ+4Ⅰ⑩」という語呂合わせで覚えたのですが,今はどうなんでしょうねえ。
 あ,この語呂合わせの中身知りたいって?いやあタダではねえ~。ムフフ。

 おっとまたまた議論が明後日の方向に・・・。

 戻しますと,そういう除斥期間後に,抗弁として無効の抗弁(特許法104条の3を準用する抗弁のこと)を主張できるかという論点がまずあるわけです。
 これには肯定説と否定説があります。条文上無効審判の請求できないんだから抗弁もできるわけないじゃないかというのが否定説で,いやいやいや無効の抗弁は無効審判を提起するのがmustじゃないでしょ,だからOKですよ,というのが肯定説です。

 で,否定説をとった場合には,じゃあそういう状況の下,民法的な権利濫用の抗弁はどうなの?それまで主張できないってのはおかしいよね,って言う論点があります。
 この論点については何かの抗弁は主張できるだろうというのが通説だと思うのですが,その抗弁の根拠については,民法だとか,いやいやキルビー判決だとか,多少割れています。

 まあ前提条件の説明としてはこんな所でしょうかね。ここまで説明したら分かるでしょ。

3 判旨
(1)不正競争防止法2条1項1号に関する部分について
「前記事実関係等によれば,被上告人が被上告人使用商標を使用して販売している本件湯沸器は,商品の内容や取引の実情等に照らして,その販売地域が一定の地域に限定されるものとはいえず,日本国内の広範囲にわたるものであることがうかがわれる。そして,被上告人による本件湯沸器の広告宣伝等についてみると,前記2(6)アからエまでのとおり,被上告人とA社との販売代理店契約の締結に関する紹介記事が複数の業界紙に掲載されたり,本件湯沸器の宣伝のため展示会への出展がされるなどしたものの,被上告人を広告主とする新聞広告が掲載されたのは平成7年及び平成11年の2回にすぎず,被上告人が平成6年度から平成24年度までに支出した広告宣伝費及び展示会費の額も,本件湯沸器の販売地域が日本国内の広範囲にわたることに照らすと,多額であるとはいえない。また,被上告人による本件湯沸器の販売についてみると,前記2(6)オのとおり,大手の建設会社を含む相当数の企業等に対する販売実績があり,販売台数も一定以上にのぼることがうかがわれるものの,具体的な販売台数などの販売状況の総体は明らかでない。そうすると,前記2(2)アのとおり上告人代表者が知人を介して本件湯沸器の存在を知り被上告人との間で販売代理店契約の締結の交渉を開始したことを考慮したとしても,これらの事情から直ちに,被上告人使用商標が日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになったということはできない。
 したがって,被上告人による本件湯沸器の具体的な販売状況等について十分に審理することなく,原審摘示の事情のみをもって直ちに,被上告人使用商標が不正競争防止法2条1項1号にいう「需要者の間に広く認識されている」商標に当たるとして,上告人が被上告人使用商標と同一の商標を使用する行為につき同号該当性を認めた原審の判断には,法令の適用を誤った違法があるというべきである。」

(2)商標法4条1項10号に関する部分について
「ア(ア) 前記3のとおり,原審は本件各登録商標のいずれについても商標法4条1項10号該当性の判断をしているところ,平成17年登録商標については,商標権の設定登録の日から,被上告人が本件訴訟において同号該当性の主張をした前記2(5)の弁論準備手続期日までに,同号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま5年を経過している。
 商標法47条1項は,商標登録が同法4条1項10号の規定に違反してされたときは,不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除き,商標権の設定登録の日から5年の除斥期間を経過した後はその商標登録についての無効審判を請求することができない旨定めており,その趣旨は,同号の規定に違反する商標登録は無効とされるべきものであるが,商標登録の無効審判が請求されることなく除斥期間が経過したときは,商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するために,商標登録の有効性を争い得ないものとしたことにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第353号同17年7月11日第二小法廷判決・裁判集民事217号317頁参照)。そして,商標法39条において準用される特許法104条の3第1項の規定(以下「本件規定」という。)によれば,商標権侵害訴訟において,商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,商標権者は相手方に対しその権利を行使することができないとされているところ,上記のとおり商標権の設定登録の日から5年を経過した後は商標法47条1項の規定により同法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判を請求することができないのであるから,この無効審判が請求されないまま上記の期間を経過した後に商標権侵害訴訟の相手方が商標登録の無効理由の存在を主張しても,同訴訟において商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認める余地はない。また,上記の期間経過後であっても商標権侵害訴訟において商標法4条1項10号該当を理由として本件規定に係る抗弁を主張し得ることとすると,商標権者は,商標権侵害訴訟を提起しても,相手方からそのような抗弁を主張されることによって自らの権利を行使することができなくなり,商標登録がされたことによる既存の継続的な状態を保護するものとした同法47条1項の上記趣旨が没却されることとなる。
 そうすると,商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後においては,当該商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き,商標権侵害訴訟の相手方は,その登録商標が同号に該当することによる商標登録の無効理由の存在をもって,本件規定に係る抗弁を主張することが許されないと解するのが相当である。
(イ) 一方,商標法4条1項10号が,商標登録の出願時において他人の業務に係る商品又は役務(以下「商品等」という。)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標につき商標登録を受けることができないものとしている(同条3項参照)のは,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品等の出所の混同の防止を図るとともに,当該商標につき自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている者の利益と商標登録出願人の利益との調整を図るものであると解される。そうすると,登録商標が商標法4条1項10号に該当するものであるにもかかわらず同号の規定に違反して商標登録がされた場合に,当該登録商標と同一又は類似の商標につき自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登録の出願時において需要者の間に広く認識されている者に対してまでも,商標権者が当該登録商標に係る商標権の侵害を主張して商標の使用の差止め等を求めることは,特段の事情がない限り,商標法の法目的の一つである客観的に公正な競争秩序の維持を害するものとして,権利の濫用に当たり許されないものというべきである(最高裁昭和60年(オ)第1576号平成2年7月20日第二小法廷判決・民集44巻5号876頁参照)。そこで,商標権侵害訴訟の相手方は,自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている商標との関係で登録商標が商標法4条1項10号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することができるものと解されるところ,かかる抗弁については,商標権の設定登録の日から5年を経過したために本件規定に係る抗弁を主張し得なくなった後においても主張することができるものとしても,同法47条1項の上記(ア)の趣旨を没却するものとはいえない。
 したがって,商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後であっても,当該商標登録が不正競争の目的で受けたものであるか否かにかかわらず,商標権侵害訴訟の相手方は,その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であるために同号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することが許されると解するのが相当である。そして,本件における被上告人の主張は,本件各登録商標が被上告人の業務に係る商品を表示するものとして商標登録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であるために商標法4条1項10号に該当することを理由として,被上告人に対する本件各商標権の行使が許されない旨をいうものであるから,上記のような権利濫用の抗弁の主張を含むものと解される。
(ウ) 以上によれば,平成17年登録商標について商標登録に係る不正競争の目的の有無を明らかにしないまま本件規定に係る抗弁を認めた原審の判断には誤りがあるものの,本件における被上告人の主張は上記(イ)のような権利濫用の抗弁の主張を含むものと解されるから,平成17年登録商標についても,商標登録に係る不正競争の目的の有無を問わず,商標法4条1項10号該当性に関する原審の判断の適否を検討すべきことになる。
イ そこで,本件各登録商標の商標法4条1項10号該当性についてみると,前記(1)のとおりの被上告人による本件湯沸器の広告宣伝や販売等の状況に照らし,被上告人使用商標が,本件各登録商標に係る商標登録の出願時までに,日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになったとは直ちにいうことができない。したがって,被上告人による本件湯沸器の具体的な販売状況等について十分に審理することなく,原審摘示の事情のみをもって直ちに,被上告人使用商標が商標法4条1項10号にいう「需要者の間に広く認識されている」商標に当たるとして,本件各登録商標につき同号該当性を認めた原審の判断には,法令の適用を誤った違法があるというべきである。」

4 検討
 まず,除斥期間後に,抗弁として無効の抗弁を主張できるかという論点については,最高裁は否定説を取ったということです。

 次に,その後,何らかの民法的な権利濫用抗弁を主張できるかという論点については,最高裁は通説と同様の肯定説を取ったということです。

 で,この民法的な権利濫用抗弁については,最高裁昭和60年(オ)第1576号平成2年7月20日第二小法廷判決を判例として引用しております。これは所謂,ポパイマフラー事件です。これを引用していることから,キルビーとか言うより民法と言った感じがしますね。

 なので,4Ⅰ⑩該当を理由として権利濫用主張を許される,という部分に線が引かれており,先例性があるのは,そこだけのように見えるのですが,いやいやこの判決の射程はもっと広いと思います。
 それに上記のとおり,山ちゃんの補足意見によると,さらに広く権利濫用の抗弁を認めても良さそうですから,この判決自体の射程はかなり広いのではないかと思います。

 あ,最後に宣伝ですが,今回の論点については,「実録 知財ビジネス法務」に良く載っています。ちょっとお世話になっている某先生によるとあまり売れなかったらしいですが,私も執筆者の一人ですので,お買い求めて頂くというのはいかがでしょうか?
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1 概要
 本件は,「(1) 抗告人は,児童買春をしたとの被疑事実に基づき,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の容疑で平成23年11月に逮捕され,同年12月に同法違反の罪により罰金刑に処せられた。抗告人が上記容疑で逮捕された事実(以下「本件事実」という。)は逮捕当日に報道され,その内容の全部又は一部がインターネット上のウェブサイトの電子掲示板に多数回書き込まれた。
(2) 相手方は,利用者の求めに応じてインターネット上のウェブサイトを検索し,ウェブサイトを識別するための符号であるURLを検索結果として当該利用者に提供することを業として行う者(以下「検索事業者」という。)である。
 相手方から上記のとおり検索結果の提供を受ける利用者が,抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件として検索すると,当該利用者に対し,原々決定の引用する仮処分決定別紙検索結果一覧記載のウェブサイトにつき,URL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋(以下「URL等情報」と総称する。)が提供されるが,この中には,本件事実等が書き込まれたウェブサイトのURL等情報(以下「本件検索結果」という。)が含まれる。
2 本件は,抗告人が,相手方に対し,人格権ないし人格的利益に基づき,本件検索結果の削除を求める仮処分命令の申立てをした事案である。」ということです。
 抗告人は一般の人,相手方はグーグルです。

 ま,要するに,過去の犯罪について,グーグル検索で出ないようにしてくれという申立てについて,削除せんでもよろし,という結論のものです。
 
 本案訴訟ではなく,仮地位仮処分なので,一審という表現が相応しくはないのですが,最初はさいたま地裁でした。
 平成27年(ヨ)第17号です。これは,驚いたことに忘れられる権利というのを認め,申立ての認容決定をしたのですね。これに対して,グーグルが保全異議をかけたのですが,これもダメでした。
 そこで,グーグルが,東京高裁に抗告したのが,原審ということになります(
平成28年(ラ)第192号,平成28年7月12日決定)。
 
 ここでの論理は,略今回の最高裁の決定と同じです。
 ・忘れられる権利は,要件効果が明確でなく,従来の名誉権ないしプライバシー権で検討すれば足りる。
 ・検索のスニペットやタイトルは,独立した表現として機能している。
 ・本件犯行(児童買春の件)については,表現の自由及び知る権利の保護が優越する。

 ということで,原審は逆転で,仮処分を認めなかった(却下)わけです。

 で,最高裁は,この原審を追認したと言ってよいでしょうね。

2 問題点
 問題点は端的に言うと,グーグル検索の結果を削除できるのはどんな場合?ってことになろうと思います。
 派生論点としては,グーグル検索ってそもそも表現なの?ってこともあろうと思います。

 プライバシー権に関する差し止め等の話は昔から色々あります。三島由紀夫の小説(宴のあと)の話,早稲田大学の名簿提出事件,あと石に泳ぐ魚事件とかありましたね。

 今回の事件が目新しいのはメディアが目新しいからでしょうね。プライバシー権的なものは昔からありますので。

 インターネットというのはすごいもので,場所の不公平さも時間の不公平さも無くすことができます。
 今回の最高裁の決定も,昨日のうちに日本全国はおろか世界中からアクセスできました。一昔前だったら,判例紙に載るのを数ヶ月待ち,そして,いざ出版されても,東京などの大都市と,地方では数日間のタイムラグが出ていたわけです。
 それが何と略その日のうちに,です。

 それを今や司ると言ってよいグーグル検索の威力というか破壊力も凄いものがあります。自ら表現しているわけではなく機械的にやっていると言いながらも,どういう意図?っていうのは,広告(
Google AdWords)を集めていることから明白でしょ。

 なので,こういう新しいメディアでの,どれ程の内容だったら,削除が認められるのかってえのは,実に興味深い話だったわけです。

3 判旨
「3(1) 個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は,法的保護の対象となるというべきである(最高裁昭和52年(オ)第323号同56年4月14日第三小法廷判決・民集35巻3号620頁,最高裁平成元年(オ)第1649号同6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁,最高裁平成13年(オ)第851号,同年(受)第837号同14年9月24日第三小法廷判決・裁判集民事207号243頁,最高裁平成12年(受)第1335号同15年3月14日第二小法廷判決・民集57巻3号229頁,最高裁平成14年(受)第1656号同15年9月12日第二小法廷判決・民集57巻8号973頁参照)。他方,検索事業者は,インターネット上のウェブサイトに掲載されている情報を網羅的に収集してその複製を保存し,同複製を基にした索引を作成するなどして情報を整理し,利用者から示された一定の条件に対応する情報を同索引に基づいて検索結果として提供するものであるが,この情報の収集,整理及び提供はプログラムにより自動的に行われるものの,同プログラムは検索結果の提供に関する検索事業者の方針に沿った結果を得ることができるように作成されたものであるから,検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有する。また,検索事業者による検索結果の提供は,公衆が,インターネット上に情報を発信したり,インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり,現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしている。そして,検索事業者による特定の検索結果の提供行為が違法とされ,その削除を余儀なくされるということは,上記方針に沿った一貫性を有する表現行為の制約であることはもとより,検索結果の提供を通じて果たされている上記役割に対する制約でもあるといえる。
 以上のような検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると,検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。
(2) これを本件についてみると,抗告人は,本件検索結果に含まれるURLで識別されるウェブサイトに本件事実の全部又は一部を含む記事等が掲載されているとして本件検索結果の削除を求めているところ,児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は,他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが,児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており,社会的に強い非難の対象とされ,罰則をもって禁止されていることに照らし,今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また,本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると,本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。
 以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。
4 抗告人の申立てを却下した原審の判断は,是認することができる。論旨は採用することができない。」


4 検討
 判旨のとおり,削除できる基準はかなり厳しいと言えます。
 当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に削除できるだけですので。

 つまり,引き分けの場合はダメ,明らかに優越~していないと削除できないのですね。

 で,従来のメディア(本)での典型例,今回の最高裁決定でも判例として引かれた石に泳ぐ魚事件ではどうだったか,見てみます。

どのような場合に侵害行為の差止めが認められるかは,侵害行為の対象となった人物の社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ,予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべきである。そして,侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めを肯認すべきである。

 これを見てみると分かるとおり,やはり比較衡量なのですね。最高裁はこの手の事案で,比較衡量を所謂審査基準に使っていることがわかります~(憲法の学者の皆さん,残念でしたね。)。
 ほんで,この石に泳ぐ魚事件でも,差し止めはかなり厳しい条件でしか認めていません!つまり,今回のグーグルの事件でも,安易な削除は認めない,これは従来の判断の延長線上にあることですから,表現の自由の重要性に鑑みると妥当な結論じゃないかと思います。

 それに,やっぱ,女子大生の容貌に関することと,児童買春したことでは,それに対する表現の必要性の高低が違うという気がします。
 昨今,色物の犯罪には厳しいですからね,ま私もスケベなオッサンの一人ではあるので,抗告人に多少は同情するのですが,ここは涙を呑んでもらいましょう。

 ところで,今回の抗告人の代理人は,所謂パカ弁のカリスマと言える先生です。私も昔パカ弁をやっていたのですが,今やサッパリ依頼がありません。
 昔やっていたころは,判例検索に載るような判決も勝ち取ったこともありますし,何の先例も無かったツイッターでの名誉毀損についても,実質勝訴の和解を得たこともあります(この事件がきっかけでツイッター辞めたのですが。)。

 ところが,いつころか,何かピタリと依頼がなくなったのです。何故か?今でもいいですよ,グーグルで,誹謗中傷 弁護士だとか,ネット被害 弁護士だとかで検索してみてください。もう無茶苦茶広告が出ます。広告じゃなくてもSEO対策している所ばかりです。

 うちの事務所のサイト,見てください。何すか,これ,って感じでしょ。SEO対策なんぼのもんじゃあって感じですかね,良く言えば。

 まあ,過払いと一緒ですよ。ばあっと広告やらSEO対策出来た所が勝ち残ったのでしょうね。ということで,私の方はこの分野から足を洗うというか,締め出されたわけです。致し方ない所です。

 それでもときどきはこの件で泣きつかれるようなこともあります。
 例えば,頼んだ弁護士が70過ぎのおじいちゃんで,よく考えたらそんな人にネットの対策ができるわけがないという,やはり過払いでよくあった事務員等丸投げパターン,2chのスレ埋めを頼んだら残り200はあと20万円払え(1000になったらDAT落ちで見れなくなるのです。)という悪徳業者パターン,などですね。

 でね,こういうパターンを考えるにつけ,ネットで何か書かれた場合,どうすればいいか教えましょう。
 それはほっとく!これだけです。

 弁護士に頼んだり,業者に頼んだりしても,運が悪いと全く消せませんし,相手が誰かもわかりません。でも金は確実に取られます。
 人の噂も七十五日と言うじゃないですか。ネットでも同じです。そんなずーっとあんたのことなんか興味無いですって,誰も。ほっときゃいいのです。

 いやいや殺人予告とか,そうなったら,とてもほっとけないのがあるじゃないですか,それは?
 それは警察に行けばいいのです。警察が動くようならそりゃほっとけない程度の酷さですから,あとは警察に任せればいいわけですね。しかもタダ!

 わかりましたかね,原則はほっとく,そして例外的に警察,これで十分です。

 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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