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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 昨日に続いて商標の小ネタですね。しかもマスコミで話題になったものです。

 報道は報道として,商標ってすぐに登録できるものではありません。

 ということで,昨日と同様,J-platpatで検索してみました。検索は,勿論,出願人/権利者として「小池百合子」というものです。

 そうすると,3件見つかりました。

2 まずは,これです。
・「都民ファーストの会
 標準文字でした。
 商願2017-20202(出願日:平成29年(2017)2月20日)
 こういうのは指定商品等が重要なのですが,こんな感じです。

16    印刷物,紙製のぼり,紙製旗,文房具類,紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋 18C04 18C09 19B22 25B01 26A01
41    技芸・スポーツ又は知識の教授,政治・経済・地方行政・地方自治・財政・税・待機児童・福祉・医療・議会・選挙制度その他国政・地方政治に係る課題に関する知識の教授及びこれらに関する情報の提供,政治家及び政治家を志す者への知識の教授(政治塾を含む。)及びこれに関する情報の提供,セミナー・研究会・研修会・講演会・シンポジウムの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。) 41A01 41A03 41C02 41E05 41F06
42    政治・経済・地方行政・地方自治・財政・税・待機児童・福祉・医療・議会・選挙制度その他国政・地方政治に関する調査・研究及び提言並びにこれらに関する情報の提供,政治政策課題の解決に向けた調査及び研究,建築又は都市計画に関する研究 42Q02 42Q99

 となります。
 登録(第5977656号)は,9/1でした。ちなみに,拒絶理由通知はされず,ストレートで登録になっております。

・「希望の党
 これも標準文字です。
 商願2017-20203(出願日:平成29年(2017)2月20日)
 指定商品等は上と同じです。

 やはり,登録(第5977657号)は,9/1でした。ちなみに,これも拒絶理由通知はされず,ストレートで登録になっております。

・「希望の塾
 これも標準文字です。
 商願2017-20204(出願日:平成29年(2017)2月20日)
 指定商品等は上と同じです。

 やはり,登録(第5977658号)は,9/1でした。ちなみに,これも拒絶理由通知はされず,ストレートで登録になっております。

 この3つの出願について,同日の出願,出願人も同じ,指定商品も同じ,そして勿論,代理人(かなりのベテランの先生です。)を立てて出願しております。

 そうすると,結構前から準備をしないと出来ない話,というわけです。今年のはじめに,都民ファーストの会に関して小池新党だという報道があったようです。
 そうなると,この時期にはもう今日の話は考えていたということで,まあそりゃそうでしょうねえ。だってその程度の先のことを考えられないでどうするって所です。

 とは言え,いい面の皮となったのは,我らが刑事部長です(刑事部長の話は,こので。)。まあ所詮は法曹風情~集票力がないとこうなるのだなあという例ですね。
 今度の選挙にも法曹の方が,右左問わず一定程度出馬されると思いますが,身の程を知った方がいいと思いますけどねえ。あ,要らんお世話でした~♡

 さて,こういう話となると,ジャミラが気になる所です(ジャミラの話はこちらです。)。
 J-Platpatによると,ジャミラは,今年のはじめに「都民ファースト」で出願しております。
 しかし,例によって出願料を払わなかったようで,最初の出願は却下となったようです。そのため,今はその出願の分割出願が係属されているようです(商願2017-82553)。

 だけども,上記のとおり,本家の出願が登録になってしまったようなので,あんまり意味が無かったようですね。ジャミラ,残念。

 なお,商標については,知財高裁平成28(行ケ)10262 という,ちょっと大問題じゃないかなあという判決が出ております。しかし,マジな話はここでは扱いません。ご了承のほどを。

3 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日はここ高野山東京別院に来ております。
 
 知っている人は知っていますが,高輪にあるのですね。高輪と言っても広いのですが,田町近くではなく,どちらかと言うと高輪台の方が近いのではないかと思います(さら近くには四十七士で有名な泉岳寺もあります。)。

 先週までブラタモリは3週連続,高野山の特集でした。私は例によって腰が重いので,本家の高野山に行ったことはありません。しかし,空海自体は小さいころから身近なものもあり,あまり遠い存在ではありません。

 どういうことかというと,おせったい,って知っていますかね?

 大分の北部で今も続けられていますが,赤いのぼりのある家に小銭を持っていって,お参りしてお菓子をもらって帰るという習わしです。

 実家の実家が田染の蕗という所なのですが,そこでのおせったいが,ちょうど今年は夏休みの帰省から東京に戻る日で行けず仕舞いでした。でも今でもあるってことです。

 このおせったいは,どこかで見てもらうといいのですが,空海祈念日本版ハロウィン,みたいな習わしなのですね。

 まあ,それは宇佐神宮の威力というか権力が絶大だったからでしょうね。しかし,うちの実家のある国東,宇佐地区にある有名なお寺は,大体どこも天台宗のお寺です。

 天台宗,それは空海のライバルの最澄が開いたものです(空海といい,最澄といい,名は人を表すって感じですかねえ。)。ですが,一般伝承として,空海のことも伝わっているということです。
 まあさすが,神仏習合の起源ともされる我が田舎です。まさに,こまけーことはいいんだよ~っちゅうところですかね。

 ちなみに,私,結構散歩の途中にこういう感じでお参りに行くことが多いです。
 私はまあどちらかと言うと一応無神論者という感じなのですが,結構お参りします。

 いや,一応無神論者と書いたのは,だって,わざわざ財布の中に,ただの良質な紙に印刷しただけもの(お金と呼ばれています。)を後生大事に持っている癖に,神や仏となると,途端に信じない,そんなもんは居ないっちゅうのも,何だかなあって所ですからね。

 一言で言えば,この世はすべてでっち上げ!,同じでっち上げなら,踊りゃな損損~♫ですよ~♡

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1 これは今朝の日経の朝刊のどっかの下の方にひっそりと載っていた記事です。

 知財やってても見落とした人も多いかもしれません。ま,たまにはまともな知財の話でも書こうかなあって所です。気紛れなもんでね。

 日経の記事によると,インテルとBMWと大幸薬品の3社に,初めて歌詞のない音だけの商標で登録が下りたってことです。

 商標って簡単なようで難しく,それはここでも書いた通りです。難しくいうと,自他商品等識別力がどの程度あるかっていう話です。

 そこでの例のとおり,森進一の真似をするときに,「こんばんはもり~しんいち~です」と言わないのに,森進一の真似だとわかる,これはモノマネのレベルとしては高いわけです。

 今回,インテルとBMWと大幸薬品の3社に歌詞なしで認められたというのは,そういう意義があるというわけです。

2 音の商標は,今から2年と少し前,2015/4/1~認められるようになったものです。このブログのでもその経緯は書きまして,音の商標のことも書いております。
 やはりこう見ると,歌詞つきが多いですね。

 で,せっかくなので,各社の,恐らくこれだろうというのを検索してみました。
 
 まずはインテルです。
 恐らく商願2015-29981(平成27年(2015)4月1日出願)と思われます。 
image
 指定商品は,9類のコンピュータハードウェア等です。


 つぎに,BMWです。
 恐らく,国際登録1177675(平成27年(2015)8月18日)と思われます。
 image
 指定商品は,12類のMotor vehicles等と,35類があります。

 最後は大幸薬品です。
 恐らく,商願2015-29809(平成27年(2015)4月1日)と思われます。
 image
 指定商品は,5類の薬剤です。

 ただ,私は楽譜は全くわかりません。特許庁ではこういうのがわかる審査官を置いているらしいですが,侵害事件のときは一体どうなるのでしょうねえ。

3 追伸
 午後になって,特許庁から,きちんとしたものの開示があったようです。
 ま,私の推測は全部当たりましたが,音も聞けるので,こちらの方がいいでしょう。

 さて,折角なので,別の話にしましょう。
 最近,びっくりしたのは,安室奈美恵引退です。え!何でって感じでした。マジで。

 殆ど音楽を聞かない私(ちなみに「本」も殆ど読みません。),実は,日本のアーティストでコンスタントに聞いてる,唯一の女性が安室ちゃんですね。

 あ,所謂小室ファミリーのころは全くです。Try meっていい曲だなあと思っていたら,変なヘニャヘニャした感じに様変わりして,ウエーってなもんでした。
 そうそうTRFが出たときも,おおZOOの偽物が出てきたわ~と思ったら,偽物が本物を駆逐してしまいましたねえ。あれにはびっくりです。

 ま,所謂TKサウンドで,まだましな曲って数曲しかないですが(私の思うところですよ,勿論),何よりも気に入らないのは,歌詞です。
 TKの歌詞って,何ちゅうかバカ丸出しというか,小学生の夏休みの宿題ちゅうか,はあ何じゃこれ?!っていうのばっかりです。ただし,洋楽ファンが聞いてる流行りのソウル・ミュージックとかヒップホップとかの歌詞も酷いですけどね。

 言葉って頭の良し悪しが如実に出ますね。こんなブログで人のこと言えるのかって?いやあ金を払ってくれる人にはちゃんとしたマシなもんを出しておりますので,ご心配なく~♡

 なので,世の中の主流がTKからモー娘。系のつんくPに行ったときは,ああ良かったなあと思いました。歌詞が随分マシになりましたから。

 とは言え,その頃(ちょうど20年前くらいでしょうか・・・)の安室ちゃんブームで良かったこともあります。その頃の私は,ソニーでエンジニアしていた頃ですが,もう不良社員もいいところ,なので・・・おっとこれ以上はさすがにマズイかな。。

 で安室ちゃんの話に戻りますが,私が安室ちゃんを聞き始めたのは,小室ファミリーをやめて少し経ったころからです。

 自宅のPCの音楽ソフトを見ると,Queen of Hip-Popから殆ど揃えてましたね(勿論,最新の_genicもあります(これはiphoneにも入れてます。)。)。
 時期的に,修習生になったころからなので,時間が出来て聞き始めたのだと思います。

 だから私の感覚としては世間と違うのですね。世間ではあの一世を風靡した過去の名歌手が今更何故?という書き方です。
 でも私は,え,もう新譜でねえの?プリンスと同じじゃん!てな反応です。

 ですので,安室ちゃんが過去の人だと思っている人は,本当浅はかだあ~と思いますよ。小室ファミリー辞めてからの方がずっといいですって。
 まずは最新作(2015)の_genicですかね。これもオリコンの1位でプラチナ・アルバムになっております~。お試しあれ。


 

1 耳の早い人はもう知っていると思いますが,ついに色彩のみからなる商標が登録になるそうです。

 新しいタイプの商標について,このブログで導入直後にちょっとだけ触れたことがあります。しかし,その後はサッパリですねえ。
 ま,新しいタイプの商標を出願する所はどこかというと,基本大企業なのですね。私は中小ベンチャーのお客さんが多いので,商標登録出願を頼まれても,一般的な従来とおりのものだけです。
 となると,去る者は日々に疎しってことで,この新しいタイプの商標の話題からも遠ざかっていたわけです。

 でもあれから約2年。漸く色彩だけの商標が登録になるという発表が,経産省のサイトでありました。ただ,何故特許庁のサイトじゃないのだろう?というのは不思議です。
 恐らく特許庁は経産省の外局に過ぎませんので,重要なことは本社というか宗主国というか,そちらがやるわけです。まあ日本とアメリカのような関係と言えばわかりやすいですかね。ムフフフ。

 兎も角もちょっと見たら,2件
  一つは,トンボ鉛筆の,「消しゴム」の指定商品で,例のMONO消しゴムのパッケージデザインの複数の色彩ですね(青,白,黒)。
 もう一つは,セブンイレブンの35類で,やはりこちらも,街頭のマークの複数の色彩ですね(オレンジ,緑,赤,白)。

 ということで,単色は無理なようですね~。今回登録になりそうなものは,パッと見ても,あああれだ~とわかります。識別力は結構ありますね。

 ということになると,この手のタイプしか登録できないような気もしますが,どうなんでしょ。

2 さて,いつの間にやらもう3月です。いよいよ花見ももうすぐですわ。でも,よく考えると早いなあ。
 ということで,毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーです。本日は,いつも早い花見が見られる,ここ目黒川沿いのポイントに行ってきました。
 
  ちょっと,変じゃないですかね。では,去年の3/28の写真と比べて見てみましょう。
 
 おっと,桜の枝がありません。向こうの枝垂桜の方は変わりませんが,その手前の桜がないのです。木ごと無くなってしまったようですね。いやあここはしょっちゅう通っていたのですが,いつ無くなったのかなあって感じです。

 ここにあった桜は早く咲くので良かったのですけどねえ。
1 概要
 本件は,原告が,双日ジーエムシー株式会社(双日GMC)の請求した本件各商標登録の取消審判に係る各審判手続(審判手続)及び同審判についてされた各不成立審決の取消訴訟に係る訴訟手続(審決取消訴訟手続)に関し,原告の有する商標権の独占的通常使用権者であった被告に対し,①被告は,本件ライセンス契約に基づき,被告の費用と責任において,必要に応じて原告から委任状を取得するなどして弁護士を選任し,審判手続及び審決取消訴訟手続において防御させるべき義務を負っていたが,同義務を怠ったために原告に弁護士費用相当額の損害を与えた,②被告は,本件ライセンス契約に基づき,原告が審判手続及び審決取消訴訟手続において支出した弁護士費用を補償する義務を負う,③被告は,本件ライセンス契約に基づき,審判手続に利害関係人として参加し,また,審決取消訴訟手続に補助参加人として参加すべき義務を負っていたが,同義務を怠ったために原告に弁護士費用相当額の損害を与えた,と主張して,債務不履行を原因とする損害賠償請求権(民法415条。上記①又は③)に基づき,又は本件ライセンス契約の定める補償義務履行請求権に基づき(上記②),損害賠償金又は求償金1962万8682円(原告が支払った弁護士費用相当額)及びうち1883万4725円に対する請求後の日(内容証明郵便到達の日の翌日)である平成27年8月25日から,うち79万3957円に対する請求後の日(訴状送達の日の翌日)である平成28年2月13日から,各支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(嶋末さんの合議体ですね。)は,請求をすべて棄却したものです(つまりは理由なし)。

 ま,このブログでは面白判決しか紹介しないのが原則なのですが,これはちょっと違います。
 強いて言えば,関連事件をここで書きましたので,その続きということでしょうか。
 さらに言えば,踏んだり蹴ったりだなあこりゃ~(その意味では面白判決かも)という所もあったからです。

2 問題点
 問題点は,このIBEXとチヨダ間の契約について,チヨダに債務不履行等が見られるか?ということになります。

 とは言え,関連事件の経緯が重要です。

 詳細には,私の前のブログの記事を見てもらうと良いのですが,掻い摘みます。

 IBEXとチヨダ間の契約では,IBEXに商標権のあるサンダルについてライセンスを付与されたと思われます(スニーカーの商標権はもっていません。)。それ故,チヨダの自社製品はサンダルだったのです。
 しかし,そのサンダルは,商標権のないスニーカーに似ていた!(そういうサンダルがが流行った時期がありましたよね。)

 そのため,スニーカーの商標権者である双日GMCが怒って,ライセンシーによる変な商標の使用だから取り消しじゃ!と取消審判を提起し,そこではIBEXは勝ったのですが,結局審決取消訴訟でIBEXは負けてしまいました。
 ほんで,結局IBEXの商標は取消の憂き目に遭ったわけです。

 つまり,ライセンシーが変なことをやって商標が取消されたので,その落とし前をどうつけんじゃ!というのが本件なわけです。

 普通に考えれば,ライセンサーたるIBEXは被害者と言えるわけです。

 ですが,上記のとおりの結論です~。なんでかなあ~。

3 判旨
「1 争点1(被告は,本件ライセンス契約に基づき,被告の費用と責任において,必要に応じて原告から委任状を取得するなどして弁護士を選任し,審判手続及び審決取消訴訟手続において防御させるべき義務を負っていたか)について
(1) 原告は,双日GMCによる本件各審判請求及びこれに引き続く本件審決取消訴訟の提起は,本件契約書7条2項にいう「甲(判決注:被告)の販売方法に起因してクレームを受けた」場合に当たるから,被告は,本件ライセンス契約に基づき,これらをすべて被告の責任と負担において解決すべき義務,具体的には,被告の費用と責任をもって弁護士を選任し,必要に応じて原告から同弁護士宛の委任状を取得して,審判手続及び審決取消訴訟手続において防御させる義務を負っていたと主張する。
(2) 双日GMCが行った本件各審判請求は,商標法53条1項に基づくものであるところ,同条項に基づく審判請求が可能となるのは,法文上,「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたとき」(判決注:下線を付した。)である。
 しかるところ,本件契約書7条は,1項において,「本契約に基づく本件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提起を受けた場合,あるいは第三者による本件商標の侵害行為を発見した場合,甲乙丙は直ちにその旨をそれぞれに連絡し,当該クレームまたは訴訟に対する防御あるいは第三者による侵害行為の排除を共同して行うものとし,これに要した費用負担については,甲乙丙が協議の上定めるものとする。」(判決注:下線を付した。)と規定しているのであるから,双日GMCが行った本件各審判請求及びこれに引き続く本件審決取消訴訟については,「本契約に基づく本件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提起を受けた場合」に当たる(少なくともこれに準ずる)ものとして,本件契約書7条1項が適用されるものと解するのが相当である。
(3) これに対し,原告は,本件契約書7条2項の文言上,クレームをする者が一般消費者であるか,クレームを受けた者が被告であるかなどについて限定はないから,同クレームが被告の販売方法に起因したものであれば,本件契約書7条2項が適用されるべきであって,双日GMCによる本件各審判請求は,被告の販売方法に起因するクレームであるから,同条項が適用されるべき旨主張する。
 そこで検討するに,本件契約書7条は,まず1項において,「本契約に基づく本件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提起を受けた場合,あるいは第三者による本件商標の侵害行為を発見した場合,甲乙丙は直ちにその旨をそれぞれに連絡し,当該クレームまたは訴訟に対する防御あるいは第三者による侵害行為の排除を共同して行うものとし,これに要した費用負担については,甲乙丙が協議の上定めるものとする。」と規定し,商標の使用に関して生じた紛争については,原則として1項により規律されるべき旨を明らかにしている。ここで,本件ライセンス契約上,被告は,原告から許諾を受けて本件各商標を使用する(本件各商標の付された指定商品を販売する)立場にあるから,1項にいう「本契約に基づく商標の使用」の主体が被告となることは,本件ライセンス契約が当然に想定していることである。もっとも,商標の使用といっても,当該商標が使用された商品の品質に欠陥があり,又は商品を販売する際の販売方法に問題があって,このために顧客等に損害を及ぼすなどしたというような紛争が発生した場合には,かかる紛争は,形式的には商標の使用行為によって生じたものではあるが,実質的には商標に関する紛争とはいい難く,当然に,商品を実際に製造し,又は販売した者(被告)が責任を負担してしかるべき性質のものということができる。本件契約書7条2項に「本件商標を付した指定商品の品質上の欠陥及び甲の販売方法に起因してクレームを受けた場合は,全て甲の責任と負担において処理解決をすることとする。」とあるのは,このような認識に立って,被告が販売する商品の品質に欠陥があり,又は商品を販売する際の販売方法に問題があったために顧客等から苦情を受けた場合など,実質的にみて商標に関する紛争とはいえない場合には,被告がその責任において同紛争を処理解決すべき旨を規定したものと解するのが相当である。双日GMCによる本件各審判請求は,原告の主張によっても,①被告商品が,双日GMC商品と酷似していること,②両商品において付された商標の位置や種類がほぼ同じであること,③両商品とも,被告の店舗において紛らわしい売り方をされていたことなどを理由にしてされたというのであり,上記③のように,「被告の販売方法」に着目してされた主張も存在するものの,本件各商標を付した被告商品の販売が,双日GMCの業務に係る商品(双日GMC商品)と混同を生ずるものであるかが問題とされているのであり,実質的に見て商標に関する紛争でないとはいい難い。むしろ,前記前提事実及び証拠(甲1,4,6)によれば,双日GMCの保有する関連各商標権は,平成20年10月29日に(分割前の)本件各商標権から指定商品を「履物(「サンダル靴,サンダルげた,スリッパを除く」)」とする商標権が分割移転されたものであり,関連商標1ないし同5と本件商標1ないし同5とは,それぞれ同一の商標であって,関連各商標登録の指定商品である「履物・・・但し,履物(サンダル靴,サンダルげた,スリッパを除く)を除く」と本件各商標登録の指定商品である「履物(「サンダル靴,サンダルげた,スリッパを除く」)」とは,形式的には重複しないものの,相互に類似する関係にあると認められるから,本件各審判請求は,商標に関する紛争そのものというべきであって,本件契約書7条1項にいう「本契約に基づく本件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提起を受けた場合」として,同項により規律されるべき性質のものというべきである。
 また,前記前提事実及び証拠(甲3,7,乙9)によれば,原告は,本件各審判請求を受けた後,双日GMCの審判請求の理由を認識した上で,本件覚書に調印し,本件各商標登録を取り消す旨の審決が確定したときは,既払ミニマムロイヤリティの一部を被告に返還することや,被告が販売することができなくなった在庫商品につき一定の補償をすることを約したことが認められ,他方,原告が,上記調印当時,被告に対し,審判手続への参加その他の協力を求めたり,原告が同手続のために支出し又は支出することとなる弁護士費用の負担を求めたりした形跡がないことからすれば,原告は,本件覚書を調印した平成25年10月1日当時,被告ではなく,本件各商標権の商標権者であって,本件各審判請求における被請求人である原告こそが,本件各商標権を維持できるよう努め,本件ライセンス契約に基づく被告の利益を擁護すべき立場にあった旨認識していたことは,明らかである。
 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 以上によれば,双日GMCによる本件各審判請求及び本件審決取消訴訟の提起について本件契約書7条2項が適用されることを前提として被告の債務不履行をいう原告の主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。」

4 検討
 この事件の訴訟物と請求原因を見て,いやいやいや,変な商標の使用をしたのが被告なんだから,そこを正面からストレートに債務不履行で問えばいいんじゃないの!という感想を皆様持つと思います。

 私も最初は何でこんな弁護士費用の補償とか,そういう回りくどいことをしているのかと思いました。

 しかし,契約上こういう条項もあったようです。
第2条(指定商品に対する指示)
1.甲は,本件商標を付そうとする指定商品についての試作品を作成し,丙に確認を受け納品時に丙の指定する数量(品目,色ごとに2点づつ)の現物商品を提供する。
2.丙は,試作品に付き検討し,本件商標を付する商品として妥当と判断したときは,本件商標を付して甲が販売することを了承するものとする。
3.甲は,丙の提供する証紙を指定商品の全てに貼付することとする。
4.甲は「指定商品」を契約締結の日より起算して180日以内に販売するもの
とする。」(なお,株式会社チヨダ(以下「甲」という)と株式会社IBEX(以下「乙」という)と株式会社ボーンズ(以下「丙」という)です。)
 丙と乙の関係がよくわかりませんが,チヨダに並べられたスニーカー風サンダルはチヨダが勝手にやったのではないようです。

 また,こんな条項もあります。
第10条(損失補償)
1.乙は,本件商標が無効となったときは,遅滞なく甲及び丙に通知するものとする。
2.本件商標が無効になったとき,または前条の規定により本契約が解除されたとき乙及び丙は,甲より支払済みのミニマムロイヤリティ,ロイヤリティ,証紙代金を速やかに返還するものとする。
3.前項の返還をもって,甲はその他の損失補償を乙及び丙に請求しないものとする。
 結構,ライセンサーがバーゲニングパワーで弱かったのかなあと思える条項です。

 ま,要するに,チヨダがバーゲニングパワーで強かったために,契約でライセンシーの方にリスクを課すような条項を設定出来無かった,ということでしょう。
 なので,IBEXとしては,ライセンシーのやったことにもかかわらず,商標権は無くなるわ,応訴に応じざるを得ず,弁護士費用の負担はあるわで踏んだり蹴ったりになったわけです。

 とは言え,これは商標権の管理をやっている所やそこでの契約書をレビューする弁護士には実に勉強になる事例ではないでしょうか。
 商標制度は私益保護だけではなく,公益保護の面があります。なので,古くから商標権侵害罪が親告罪ではなかったという面があります(TPPのときに勘違いされた自称専門家も多いと思いますけどね。)。

 そのため,取消審判も様々のものが用意されており,特許には無い類型が結構あります。そうすると,特許のライセンス契約とパラレルに作ってしまうと,そういう商標ならではの制度に穴が出来るわけですね。

 勿論,知ってはいるものの,立場の強弱でどうしてもそんな規程を盛り込むことが出来ない!って場合もあります。私もどちらかと言うとそんな立場で起案したりレビューしたりすることが多いです(何せ弱小弁護士ですからね。)。

 ですが,もし立場的にそういう条項を盛り込むことが出来るのにもかかわらず,知らずに適当に特許の雛形を流用したり,ネットで探してきた雛形を流用したりしたらどうなるんでしょ?

 餅は餅屋ですよ(ステルスマーケティングですよ。)。


 あと,気になったのが,原告のIBEXが被告のチヨダに被せようとした弁護士費用ですが,「原告は,前記(4)の取消審判請求事件の手続(審判手続)及び上記(5)の審決取消訴訟事件の手続(審決取消訴訟手続)の弁護士費用(弁護士報酬及び経費を含む。以下同じ。)として,平成27年8月20日までに,***事務所から合計1962万8682円の請求を受け,平成28年2月1日までに,その全額を同事務所に支払った。」とのことです。

 審判5件,訴訟5件とは言え,いやあ良い値段ですわ。私もいつかこれくらいの弁護士報酬を請求してみたいですわ~本当。

5 追伸 2017/9/8
 控訴審判決(知財高裁平成29(ネ)10011, 平成29年8月30日 判決)が出ました。しかし,基本,一審同様です。

 ちなみに,控訴人が,可哀想な,ライセンサーの商標権者です。

 控訴審で,控訴人は契約の7条2項の適用があると主張しました。
 なお,7条はこんな感じでした。
 「第7条(商標侵害等)
1.本契約に基づく本件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提 起を受けた場合,あるいは第三者による本件商標の侵害行為を発見した場合,甲乙 丙は直ちにその旨をそれぞ れに連絡し,当該クレームまたは訴訟に対する防御ある いは第三者による侵害行為の排除を共同して行うものとし,これに要した費用負担 については,甲乙丙が協議の上定めるものとする。
2.本件商標を付した指定商品の品質上の欠陥 若しくは 甲の販売方法に起因して クレームを受けた場合は,全て甲の責任と負担において処理解決をすることとする。」

 この2項の適用があるなら,控訴人の主張にも理由がありそうではあります。しかし,控訴審は,次のように判断しました。

本件契約書7条1項及び2項の各文言の文理や各条項の整合性等を考慮すると,双日GMCが行った本件各審判請求及びこれに引き続く本件審決取消訴訟については,「本契約に基づく本件商標の使用に関し,第三者よりクレームまたは訴訟の提起を受けた場合」に当たる(少なくともこれに準ずる。)ものとして,本件契約書7条1項が適用されるものと解するのが相当であることは,前記認定のとおりである。
  また,商標法53条1項に基づき,本件各商標登録の取消しを求める審判請求をする場合には,同項ただし書の抗弁についても検討を要することになるところ,控訴人は,使用権者である被控訴人に新たに本件各商標を使用させるに当たっては,本件各商標と同一の構成である関連各商標を有する双日GMCの商品の周知の程度や双日GMCの商品における関連各商標の具体的な使用態様を確認し,被控訴人の本件各商標の具体的な使用態様が,双日GMCの業務に係る商品との具体的な混同を生ずるおそれがないかどうかについて注意する義務を負っていたというべきであり,控訴人は,そのような混同が生じるおそれがあることを知るための相当の注意を欠いていたというべきであるから,本件各審判請求及び本件審決取消訴訟について,専ら被控訴人の不正行為を原因として提起されたものであるということはできないし,被控訴人が単独で責任を負うべき問題であるともいい難い。本件契約書7条の解釈に関する控訴人の主張を前提としても,本件契約書7条2項が適用されるものと認めることはできない。

 7条1項と7条2項の文言は微妙に違い,商標プロパーのクレームは,1項の適用であって,2項の適用ではないと判断しました。まあそりゃそうですね。

 価値判断的には,以下のような事情が大きかったのではないかと思います。
控訴人は,被控訴人が 本件各商標 を付して販売する商品については,販売前に被控訴人か ら写真と共に報告を受け,これを被控訴人が確認した上で,販売を承認することと しており,被控訴人商品について,事前に報告を受けそのデザインや商標を付す位 置や構成等について知っていたことが認められる 。

 結論というか商標実務に活かすためには,ライセンス契約時に想像力を膨らますというのが必要です。
 7条1項で今回の取消審判的なものも含むように明確に書くこと(今回は一応認められましたが。),そして,商標権者は強い立場であるのですから,何かあったときには全部ライセンシーにおっ被せるように契約文言を作らないといけないわけです。

 色々と勉強になる事件ですね。

 

1 概要
 本件は,原告(ベストライセンス株式会社)が,登録第5753538号商標(本件商標)について特許庁長官に登録異議申立て(本件登録異議事件)をしたのに対し,特許庁審判官が本件商標の商標登録を維持するとの決定(本件維持決定)をしたことから,被告に対し,①本件維持決定の取消し,②本件登録異議事件についての商標登録取消決定の義務付け,③商標登録出願の全部を分割しても出願分割の効果が認められず出願日の遡及効が認められない旨の解釈が,憲法13条後段及び73条1号前段に反し違憲無効であることの確認,④本件登録異議事件の審理において商標登録異議申立人に反論の機会を全く与えず商標登録の維持決定をすることが,憲法13条後段,31条及び14条1項に反し違憲無効であることの確認,⑤商標登録維持決定に対する不服申立てができない旨規定する商標法43条の3第5項が,憲法13条後段,76条2項後段,32条及び14条1項に反し違憲無効であることの確認,⑥本件登録異議事件の審理において口頭審理をしなかったことが,商標法43条の6第1項ただし書に反し違法であるとともに憲法13条後段及び73条1項前段に反し違憲無効であることの確認,⑦本件登録異議事件の審理において原告が上申した引用出願を審理しなかったことが,商標法43条の9第1項の趣旨に反し違法であるとともに憲法13条後段及び73条1項前段に反し違憲無効であることの確認をそれぞれ求める事案です。

 要するに,異議申立てをしたものの,維持決定が出てしまったため,それに不服の異議申し立て人が,上訴したというものです。

 まず,本件商標ですが,以下のような商標です。


【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】  
第12類  陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),動力伝導装置,制動装置,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・三輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品
【出願日】平成26年11月18日(2014.11.18)
【商標権者】 トヨタ自動車株式会社

 例の燃料電池車!の商標なわけです。

 で,これに異議申し立てをしたのが,ベストライセンスだったので~す。あれ?,この会社の名前どこかで聞いたことがあるぞ。

 結論的には,「本件訴えを却下する。」という,珍しい却下判決ですね(合議体は,知財高裁1部の設楽さんの所です。)。

2 問題点
 問題点は,色々あります。
 とは言え,そもそも,維持決定に不服申立てができるかどうかという問題があります。

 条文から行きましょうね。
(決定)
第四十三条の三  
4  審判官は、登録異議の申立てに係る商標登録が前条各号の一に該当すると認めないときは、その商標登録を維持すべき旨の決定をしなければならない。
5  前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 ま,ということなので,もうこの時点でアウト!という気がします。

 登録異議の申立てって要するに再審査みたいなものだから,権利者に不利にグニャグニャにするのではなく,早期に確定させる必要があるわけですね。
 それに,不服があるなら,無効審判っていう手もありますから。

 ということで,本質的にはこれでおしまいです。

 原告の代表者は元弁理士でしょうから,この条文は当然知っているはずです。ですので,このままだと,却下判決は必至ということもわかっていたでしょうから,②から⑦の請求をくっつけたわけです。

 だからと言ってね~??って所ですわな。

3 判旨
「第3 当裁判所の判断
1 請求の趣旨第1項に係る訴えの適法性について
 商標法43条の3第4項は,審判官は,登録異議の申立てに係る商標登録が同法43条の2各号所定の登録異議事由のいずれかに該当するものと認めないときは,その商標登録を維持すべき旨の決定(以下「維持決定」という。)をしなければならない旨を規定し,また,同条の3第5項は,維持決定に対しては不服を申し立てることができないと規定している。そうすると,同項の規定によれば,本件維持決定に対しては不服を申し立てることができないのであるから,請求の趣旨第1項に係る本件維持決定の取消しを求める訴えは,そもそも同項の規定に違反するものであって,不適法なものである。
2 請求の趣旨第2項に係る訴えの適法性について
 請求の趣旨第2項に係る訴えは,原告が,本件登録異議事件について商標登録取消決定をすべき旨を特許庁長官に命ずることを求めるものであり,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項2号所定のいわゆる申請型の義務付けの訴えとして提起するものと解される。
 しかしながら,同号所定の義務付けの訴えは,当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴えと併合して提起しなければならないところ(行訴法37条の3第3項),上記取消訴訟又は無効等確認の訴えが不適法なものであれば,上記処分又は裁決はもとより取り消されるべきものとはいえないから,上記義務付けの訴えは,行訴法37条の3第1項2号所定の訴訟要件を欠くものであって,不適法なものとなる。 
 そうすると,本件維持決定が行訴法37条の3第1項2号所定の「当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決」に該当するとしても,請求の趣旨第1項に係る本件維持決定の取消しを求める訴えが前記1のとおり不適法である以上,請求の趣旨第2項に係る義務付けの訴えは,行訴法37条の3第1項2号所定の訴訟要件を欠くものであって,不適法なものである。
3 その余の各訴えの適法性について
(1) 裁判所法3条1項の規定にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対象
となるのは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に限られるところ,このような具体的な紛争を離れて,裁判所に対し抽象的に法令等が憲法に適合するかしないかの判断を求めることはできないと解するのが相当である(最高裁昭和27年(マ)第23号同年10月8日大法廷判決・民集6巻9号783頁,最高裁平成2年(行ツ)第192号平成3年4月19日第二小法廷判決・民集45巻4号518頁参照)。
(2) 請求の趣旨第3項,第4項,第6項及び第7項について
 請求の趣旨第3項,第4項,第6項及び第7項に係る各訴えの適法性についてみるに,上記各訴えは,いずれも本件登録異議事件に係る審理経過における審判体の審理の違法をいうものであり,本件維持決定に対する不服の手段があれば,本来,その中で主張されるべきことである。しかし,上記1のとおり,そもそも本件維持決定に対しては不服を申し立てることはできないのであって,上記各訴えは,もとより本件維持決定を左右するものではなく,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争を解決するものではない。すなわち,同第3項に係る訴えは本件維持決定における商標法10条1項を根拠として審判体がした法令解釈につき,同4項に係る訴えは本件登録異議事件において原告に反論の機会を全く与えず,審判体が本件維持決定をしたことにつき,同第6項に係る訴えは,審判体が本件登録異議事件の審理において口頭審理によらなかったことにつき,同第7項に係る訴えは本件登録異議事件の審理において,審判体が原告が上申した引用出願を審理しなかったことにつき,それぞれ違憲又は違法を主張するものであるが,その実質はいずれも本件維持決定の審理経過に対する不服をいうものであって,上記各訴えは,本件維持決定に関する具体的な紛争を解決するものではなく,結局,裁判所に対し本件登録異議事件における審判体の審理経過につき上記違憲又は違法に関する判断を抽象的に求めるものに帰する。
 そうすると,上記各訴えは,上記(1)にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対象となるものとはいえず,いずれも不適法なものである。
(3) 請求の趣旨第5項に係る訴えの適法性について
 請求の趣旨第5項に係る訴えの適法性についてみるに,同第5項に係る訴えは,商標法43条の3第5項の規定が違憲無効であることの確認を抽象的に求めるものにすぎないものであるから,上記訴えは,上記(1)にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対象となるものとはいえず,不適法なものである。」

4 検討
 民訴法的論点もありそうですが,そういうのは学者連中にでも任せて,ちょっと異議申し立て(異議2015-900195)のときから振り返ってみます。

 異議申し立て人は,引用商標として,3つ提示しました。
(1)商願2015ー25192(以下「引用出願1」という。)は、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなり、第9類、第12類、第35類、第39類及び第42類に属する別掲2のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成26年9月8日に登録出願された商願2014-75417(以下「親出願」という。)を原出願とする、商標法第10条第1項の規定による商標登録出願である旨主張して、親出願と同一の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同27年3月20日に登録出願されたものである。  なお、親出願は、平成27年3月23日に、引用出願1は、同年10月5日に、それぞれ、出願却下の処分がされている。
(2)商願2015ー56246(以下「引用出願2」という。)は、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなり、上記(1)に記載の引用出願1を原出願とする、商標法第10条第1項の規定による商標登録出願である旨主張して、別掲2に示す指定商品及び指定役務中の第12類と同一の商品を指定商品として、平成27年6月13日に登録出願されたものである。
(3)商願2015ー68401(以下「引用出願3」という。)は、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなり、引用出願1を原出願とする、商標法第10条第1項の規定による商標登録出願である旨主張して、別掲2に示す指定商品及び指定役務中の第9類、第12類及び第35類の商品及び役務と同一の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成27年7月18日に登録出願されたものである。

 現在のステータスですが,親出願の商願2014-75417(出願人は上田育弘となっております。),は却下となっております。
 (1)の商願2015-25192,これも却下です。

 とは言え,親出願の出願日は,平成26年9月8日ですから,トヨタのミライの商標の平成26年11月18日という出願日の前です。ある意味,結構ヤバい話です。

 さて,特許庁の合議体がどういう理由で,維持決定したかというと,
しかしながら、商標法第10条第1項は、商標登録出願の分割の要件を定めたものであり、その第1項で「商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しく は再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に限り、二以上の商品又は役務を指定商 品又は指定役務とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。」と規定されており、同条第2項において、「前項の場合 は、新たな商標登録出願は、もとの商標登録出願の時にしたものとみなす。」とされているところ、引用出願1は、親出願の出願に係る指定商品及び指定役務のすべてを指定商品及び指定役務としており、「商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる(下線は、合議体による。)」としている商標法第10条第1項の要件を満たしていない。

 ということなのですね。つまり,子出願は親出願の全部そのままなので,分割じゃない!というわけです。
 
 しかし,これ,商標法8条3項を使った方が早くないでしょうか。
(先願)
第八条  同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に二以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。
3  商標登録出願が放棄され取り下げられ若しくは却下されたとき、又は商標登録出願について査定若しくは審決が確定したときは、その商標登録出願は、前二項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。

 特許庁での維持決定が出たのが,今年の3月10日のようです。その時点では,引用商標の一部に却下されていないのがあったのかもしれませんね。
 でも,分割要件違反でNGとすると,コスく一部の指定商品をわざと漏らして,分割要件をクリアする場合も有り得そうです。

 そうではなく,出願料を払わないなら却下で,先願でも何でもなく,無いものなんだから,維持決定!とした方が後々のトオリは良いかなあという気がしないでもありません。

 とは言え,これ,権利者にしてみると結構な負担です。
 トヨタの知財部の商標の担当者も,先願があるってことは知っていたでしょうね(拒絶理由通知が来ますので。)。
 その時は,ああ,ベストライセンス相手ならきっと大丈夫だろうと思いつつも,もしや出願料の後払いなどが認められた日には・・・ゲゲ!って思ったことは想像に難くない所です。

 良かったですねえ。トヨタの知財部の皆さん,でもちっと,出願するのがギリギリでしたね(車の発表と同時の出願日のようです。)。こういうのは,発表の数カ月前に,候補を全部出願しておくのがデフォーじゃありませんかね。

 ま,お利口さん達だから,これからは間違えないかな。でも,ちょっとまずったらどうなってたでしょうね。ムフフフ。

 あと,ちなみに,ベストライセンスが何故無効審判をやらないかというと,特許庁の費用が結構高いからでしょうね。

 ということで,おもしろ判決ですので,ここで取り上げました。まとまな判決は,後継ブログだけ!ですので。
 その後継ブログがどこかはいまだ内緒にしておきます。暇な人は探すといいかもしれませんが,まあ見つからないでしょうね。
 

1 知財界隈でのごく最近の話題といえばこれでしょう。いや,知財界隈だけではなく好事家の興味もかなり集めているようです。

 これは,特許庁が昨日ウェブサイトに載せた注意喚起です。
 http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_shouhyou/shutsugan/tanin_shutsugan.htm
 
 まあ中身は上記URLから飛んでもらった方が早いです。

 で,知財界隈の人も好事家の人も,この注意喚起のうち,「最近、一部の出願人の方から他人の商標の先取りとなるような出願などの商標登録出願が大量に行われています。」の「一部の出願人」が誰を指しているかお分かりだと思います。

 そう,元弁理士の人と,その元弁理士が設立した会社,この2つのことですよね。

 私の同期の弁理士の方からも,連絡がつかない弁理士の知り合いが居ると,元弁理士が無茶苦茶な数の商標登録出願をして,しかも金を払わないという事例があるようだ,そういう方面に走ったのではないかと心配のメールが来たりしました。

 ま,それくらい知られた話です。
 ですので,特許庁も漸く重い腰を上げたのだなあと思います。

2 とは言え,悪徳金権弁護士で知られたこの私,大量出願迷惑だ~調査のノイズだ~けしからん~などと,学級委員的道徳的教条的,要するにつまらんことを言う気はさらさらありません。

 何つっても,9・11も,おおそういう方法があったか~,これぞイノベーションやなあ,天晴じゃ,と思うくらいのものですから。

 そう,世の中,何事にも理由はあります。
 私が9・11でビン・ラディン側に立つのは,敗戦国の恨み骨髄ということですし,今回,「一部の出願人」側に立つのもそれなりの理由があります。

 本件で,知財界隈の人も好事家の人も既に知っているように,この元弁理士の方,「弁理士法第24条第1項第5号に該当するに至った為」登録抹消されたわけです。
 そして,この弁理士法第24条第1項第5号は何かと言うと,このような条文です。
五  第六十一条の規定による退会の処分を受けたとき。
 さらに,弁理士法61条はというと,
(弁理士会の退会処分)
第六十一条  弁理士会は、経済産業大臣の認可を受けて、弁理士会の秩序又は信用を害するおそれのある会員を退会させることができる。
 となります。

 じゃあ,何かやらかしたんだなあと思うのですが,世の中そう単純とは言えません。

 この元弁理士の方,名前で検索すると弁理士会の会報である「パテント」の論文も上がってきます。そして,単発ではなく,少なくとも5本以上の論文が上がってきます。
 読んでみますと,かなりきちんとした見識を備えたものであることがわかります(ただちょっと気になる所もあるのですけどね。後述。)。

 そして,元弁理士ですので,登録時の登録番号もわかります。そうすると,1994(平成6)年の登録で,登録月からその年の弁理士試験の合格者であろうということが推測できます。
 だとすると,私より5年先輩ということになりますね。
 登録抹消が,平成25年ですので,約20年間の弁理士生活だったということになります。

 合格したときに何歳だったかはわかりませんが,平成の一桁台合格(恐らく合格者は100人前後しか居ないはず)で,その後,「パテント」にコンスタントに論文を書いていた所を見ると,かなり出来る人だったのではという推測が働きます。

 そういう人が,退会させられて,その後今のような行動を取っているのです。普通に考えると,これは意趣返し,つまり復讐でしょうね。

3 本年は2016年です。私の同級生の早生まれの人達は,今年50歳になったわけです。

 その生まれた年の1966年,昭和41年は丙午で,非常に数が少ないことで有名ですが,他に,この年に生まれたものがあります。
 そう,それはウルトラマンですね。今年はウルトラマンの生誕50周年に当たります。

 で,ウルトラマンでの記憶に残る回となると,色んな意見はあろうと思いますが,ジャミラの回,「故郷は地球」っていうのが挙げられると思います。

 この回の中身はいいですよね。
 打ち捨てられた元宇宙飛行士の怪獣が,地球に復讐しにやってくるという話です。

 ただ,よく考えると,今回会社を設立し,そこと一緒にやっていることを考えるとジャミラじゃなくて,帰ってきたウルトラマンに出たメイツ星人とムルチの方ですかな。いや雪ん子とウーか,と広がる妄想,離れる議題~♬

 でもまあ言いたいことはわかりますよね。

 論文を読んで上記のとおり,ちょっと気になることがあったと書きましたが,それは立法論の多さです。パテントの論文は,ほぼすべてに立法論が組み込まれておりました。つまり,現状の制度にかなりの不満があったであろうことが推察されます。

 ですので,そういうことが特許庁や弁理士会と揉める遠因になったのではないかなあと思われるのですわ(揉めて退会させられたのではないかという前提なのですが。勿論,これも私の妄想です。)。

 ということで,ジャミラを批判する気にはなれないし,さらにビン・ラディン一派やトルーマン一派と違い,そもそも違法行為をやっているわけじゃありませんからね,私としては,黙示に応援する次第です。ムハハハ。

 
1 概要
 本件は,本件商標権(指定商品を「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」(5類),PITAVA (標準文字),第4942833号の2)を有する控訴人(興和)が,被控訴人各標章を付した薬剤(被控訴人各商品)を販売している被控訴人(小林化工)に対し,当該販売行為は本件商標権を侵害するものであると主張して,本件商標権に基づき,被控訴人各商品の販売の差止め及び廃棄を求める事案の控訴審です。

 原審の東京地裁民事40部(東海林さんの合議体ですね。)は,「被控訴人各商品に付された被控訴人各標章は,商標としての自他商品識別機能又は出所表示機能を果たす態様で使用されているということはできず,被控訴人各標章の表示は商標的使用に該当すると認めることができないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した」わけです(平成26(ワ)767,平成26年10月17日判決)。
 ちなみに,このときは,例の商標法26条1項6号の施行前ですので,商標的使用の立証責任は原告にあり,と考えていたようです。

 で,やはりこの結果に気に入らない原告が控訴したのが本件というわけです。   

 これに対して,知財高裁1部(設樂さんの合議体ですね。)は,控訴を棄却しました。その理由は,商標的使用はしていないってことではなく,商標法26条1項2号該当だから~です。
 ズル―って感じです。

 1ヶ月ちょい前に同じような話を2件紹介しましたね。そう!これも,原告も商標権も同じで,被告が違うだけです。  
 そして,これも何かの判決で書かれたように,後発薬を商標権で牽制したものの,見事に失敗~♫の事例の一環です。   

 で,わざわざこんな同じような事件を取り上げたのは理由があります。上記にちょっと書きましたが,色んなパターンがあるなあってことです。

2 問題点
 問題点は,まあ商標的使用なのですが,今までの知財高裁の判示で2つパターンがありました。

 もう正面から商標法26条1項6号の適用を行い,この条項の主張立証責任は,被控訴人(被告)だと考えた4部パターン。
 他方,そこはスルーで一審に乗っかり,商標的使用の主張立証責任は,控訴人(原告)だと考えた2部パターンです。

 これ以外のバリエーションはあろうと思いますが,今回は,ええそこかよ~ってパターンですね。商標法26条1項2号の話です。

(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条  商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
二  当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標

 いわゆる記述的なやつですね。例えば,車の商標で「くるま」とか,法律事務所で「ローファーム法律事務所」とかのやつで,審査基準には,「うまーい」とか載っています。
 こんな商標は,そもそも登録できませんので(商標法3条3号など),過誤登録なのですが,無効審判を起こすまでもない~という所ですね。

 で,この条文と商標的使用の関係なのですが,こういういわゆる記述的なやつに当たらなくとも,価値判断的に,これで権利行使可能としちゃあマズイ~♫って場合をどうにかしようと考え出されたのが,商標的使用の概念でした。
 
 なので,厳密に言うとダブリはないのかもしませんが,両方主張されることは多いと思います。

 ただねえ,この事件,一審で判示されたのが,商標的使用の件だからねえ,どうでしょうね??

3 判旨
「当裁判所は,被控訴人各標章は,本件商標権の指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」の有効成分の略称であり,「…指定商品…の…品質,原材料…を普通に用いられる方法で表示する商標」(商標法26条1項2号)であると認められ,同条同項本文により,本件商標権の効力は,被控訴人各標章には及ばないから,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。・・・
 本件事案に鑑み,争点(3)(被控訴人各標章の表示が指定商品等の品質等の普通に用いられる方法での表示(商標法26条1項2号)に該当するか)について判断する。
(1) 争点(3)に係る主張立証責任について
 争点(3)については,被控訴人において,被控訴人各標章の表示が指定商品等の品質等の普通に用いられる方法での表示に該当することを主張立証すべきことになる。・・・
(4) 小括
 以上によれば,被控訴人各標章は,本件商標の指定商品の品質,原材料を普通に用いられる方法で表示したものにすぎないと認められるから,商標法26条1項2号及び同項本文により,本件商標権の効力は,被控訴人各標章には及ばないというべきである。
 したがって,その余の争点について判断するまでもなく,控訴人の請求はいずれも理由がない。」

4 検討
 うーん,逃げたな~って感じです。
 被告の方は,それこそ色んな否認や抗弁の主張をしていますので,そのうちどれを採用して請求棄却(控訴棄却も)にするかは裁判所の勝手です。

 ですが,一審では商標的使用の判断だけだったので,控訴審でもそれを引き続き~と思いますよね。でも,これですわ~。

 まあ当事者,特に被告にしてみれば,別に請求棄却の結論が変わらないなら理由は何でもいいよ~って所でしょうが,この無責任な野次馬の第三者としては,そんなわけにはいきません~♡。

 とは言え,判決で,主張立証責任がどっちにあるか明示するものって実は珍しいです。なので,商標的使用の条文ではなく,昔からある商標法26条1項2号だとしても,これは抗弁だ!と明示したのにはそれなりの意義があったのかもしれません。

 兎も角も,新たなパターンも加わり,この商標的使用の主張立証責任については,まだまだ注目し甲斐があろうってなもんですね。

5 追伸
 昨日も大雨のことを書いたのですが,今日も全然やみません。
 何と言っても,去年広島に甚大な被害をもたらした線状積乱雲がどんどんやって来ているらしいですからね。

 これだけの降りの雨がこれだけ続くというのは,記憶にないです。明日は天気が良い予報なのですが,本当に止むのかなあ。

 何と言っても明日は例の,アレ,「知財実務のセオリー  ~特許制度の基本、クレーム活用、特許戦略の理論と実践~ 」の本番なので,何とかいい天気になって欲しいなあと思いますね。

 ちなみに,もう資料の方は,主催者に提出しており,講師である私以外は完璧って所でしょうかね。大過なくできればいいなあと思っております。と,あんまり書くと緊張してくるからやめておきましょう。
 
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